公認心理師 2020-67

2021年02月23日火曜日

本問は保護観察官が行う処遇に関する理解が問われています。

事例問題というよりも法律の内容を把握しているかを問われています。


問67 21歳の男性A。Aは実母Bと二人暮らしであった。ひきこもりがちの無職生活を送っていたが、インターネットで知り合った人物から覚醒剤を購入し、使用したことが発覚して有罪判決となった。初犯であり、BがAを支える旨を陳述したことから保護観察付執行猶予となった。

保護観察官がAに対して行う処遇の在り方として、最も適切なものを1つ選べ。

① 自助の責任を踏まえつつ、Aへの補導援護を行う。

② Bに面接を行うことにより、Aの行状の把握に努める。

③ Aが一般遵守事項や特別遵守事項を遵守するよう、Bに指導監督を依頼する。

④ 改善更生の在り方に問題があっても、Aに対する特別遵守事項を変更することはできない。

⑤ 就労・覚醒剤に関する特別遵守事項が遵守されない場合、Aへの補導援護を行うことはできない。



解答のポイント

更生保護法に定められている保護観察官の役割について把握していること。

補導援護と指導監督の枠組みについて理解していること。



選択肢の解説


① 自助の責任を踏まえつつ、Aへの補導援護を行う。

まず保護観察官は更生保護法第31条に以下のように規定されています。

  1. 地方委員会の事務局及び保護観察所に、保護観察官を置く。
  2. 保護観察官は、医学、心理学、教育学、社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき、保護観察、調査、生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。

こちらに対して保護司は「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い、地方委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて、保護司法の定めるところに従い、それぞれ地方委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする」という役割になります。


そして本選択肢にある「補導援護」についても更生保護法には規定があります。

まず第49条には「保護観察は、保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、第五十七条及び第六十五条の三第一項に規定する指導監督並びに第五十八条に規定する補導援護を行うことにより実施するものとする」とあります。

この第58条については以下の通りになっています。

保護観察における補導援護は、保護観察対象者が自立した生活を営むことができるようにするため、その自助の責任を踏まえつつ、次に掲げる方法によって行うものとする。

  1. 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
  2. 医療及び療養を受けることを助けること。
  3. 職業を補導し、及び就職を助けること。
  4. 教養訓練の手段を得ることを助けること。
  5. 生活環境を改善し、及び調整すること。
  6. 社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。
  7. 前各号に掲げるもののほか、保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。

このように、本選択肢にある「自助の責任を踏まえつつ」というのが、こちらに記載されていることがわかりますね。


そして重要なのが、こうした補導援護を誰が行うかに関する規定です。

こちらについては更生保護法第61条に以下のように定められています。

  1. 保護観察における指導監督及び補導援護は、保護観察対象者の特性、とるべき措置の内容その他の事情を勘案し、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。
  2. 前項の補導援護は、保護観察対象者の改善更生を図るため有効かつ適切であると認められる場合には、更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うことができる。

このように、補導援護については保護観察官の行う事項であることが示されていますね。


以上より、自助の責任を踏まえつつ補導援護を行うのは保護観察官の役割の一つと言えるでしょう。

よって、選択肢①が適切と判断できます。



② Bに面接を行うことにより、Aの行状の把握に努める。
③ Aが一般遵守事項や特別遵守事項を遵守するよう、Bに指導監督を依頼する。

更生保護法第57条には「保護観察における指導監督は、次に掲げる方法によって行うものとする」とし、以下が定められています。

  1. 面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること。
  2. 保護観察対象者が一般遵守事項及び特別遵守事項を遵守し、並びに生活行動指針に即して生活し、及び行動するよう、必要な指示その他の措置をとること。
  3. 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。

この文章表現をよく理解しておくことが重要です。


まず選択肢②の正誤判断のポイントは「Bに面接を行うことにより」という箇所になります。

上記第1項には「接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち」とありますから、保護観察対象者(本事例ではA)の母親(本事例ではB)に面接を行うというのは、この定めと矛盾する箇所と言えますね。

また、選択肢②の「努める」という箇所もやや気になります。

上記では「面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること」とありますから、これは「努力」ではなく「義務」として行う必要がある事項と読み取れますから、「努める」という表現は適切か疑問です。


また、選択肢③の「Bに指導監督を依頼する」という箇所にも誤りがあることがわかりますね。

上記第2項には「保護観察対象者が一般遵守事項及び特別遵守事項を遵守し、並びに生活行動指針に即して生活し、及び行動するよう、必要な指示その他の措置をとること」とありますから、対象者に直接行うことが前提となっております。

更に、更生保護法で定められている事項に関しては「保護観察所の長」がその責務を負うものとなりますから、保護観察所の外の人間であるBにその責務の内容を依頼することはできないと見なすのが自然ですね。


上記のように、更生保護について、親を介在することは法律上明記されていません。

以上より、選択肢②および選択肢③は不適切と判断できます。



④ 改善更生の在り方に問題があっても、Aに対する特別遵守事項を変更することはできない。

特別遵守事項の変更については、更生保護法第52条に定められています。

  1. 保護観察所の長は、保護観察処分少年について、法務省令で定めるところにより、少年法第二十四条第一項第一号の保護処分をした家庭裁判所の意見を聴き、これに基づいて、特別遵守事項を定めることができる。これを変更するときも、同様とする。
  2. 地方委員会は、少年院仮退院者又は仮釈放者について、保護観察所の長の申出により、法務省令で定めるところにより、決定をもって、特別遵守事項を定めることができる。保護観察所の長の申出により、これを変更するときも、同様とする。
  3. 前項の場合において、少年院からの仮退院又は仮釈放を許す旨の決定による釈放の時までに特別遵守事項を定め、又は変更するときは、保護観察所の長の申出を要しないものとする。
  4. 地方委員会は、保護観察付一部猶予者について、刑法第二十七条の二の規定による猶予の期間の開始の時までに、法務省令で定めるところにより、決定をもって、特別遵守事項(猶予期間中の保護観察における特別遵守事項に限る。以下この項及び次条第四項において同じ。)を定め、又は変更することができる。この場合において、仮釈放中の保護観察付一部猶予者について、特別遵守事項を定め、又は変更するときは、保護観察所の長の申出によらなければならない。
  5. 保護観察所の長は、刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付されている保護観察付執行猶予者について、その保護観察の開始に際し、法務省令で定めるところにより、同項の規定により保護観察に付する旨の言渡しをした裁判所の意見を聴き、これに基づいて、特別遵守事項を定めることができる。
  6. 保護観察所の長は、前項の場合のほか、保護観察付執行猶予者について、法務省令で定めるところにより、当該保護観察所の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所に対し、定めようとする又は変更しようとする特別遵守事項の内容を示すとともに、必要な資料を提示して、その意見を聴いた上、特別遵守事項を定め、又は変更することができる。ただし、当該裁判所が不相当とする旨の意見を述べたものについては、この限りでない。

そして、特別遵守事項について変更があった場合には、「保護観察所の長は、保護観察対象者について、特別遵守事項が定められ、又は変更されたときは、法務省令で定めるところにより、当該保護観察対象者に対し、当該特別遵守事項の内容を記載した書面を交付しなければならない」とされています(更生保護法第55条)。


そもそも特別遵守事項とは「保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において、具体的に定めるものとする」(更生保護法第51条)のですから、選択肢④の冒頭にある「改善更生の在り方に問題がある」場合には、それが変更されるのが当然であると言えますね。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。



⑤ 就労・覚醒剤に関する特別遵守事項が遵守されない場合、Aへの補導援護を行うことはできない。

まずそもそも補導援護と指導監督の違いを理解しておきましょう。

保護観察は対象者を更生させて再犯・再非行を防止するという重要な刑事政策的な意義をもつものであり、そのための手法として指導監督と補導援護があります。

指導監督とは、対象者の行状を把握し、遵守事項や生活行動指針を守って生活するよう指示し、薬物依存等に対応した専門的処遇を実施することです(更生保護法56条)。

補導援護とは、対象者が自立した生活を送るために住居、医療、職業、教育その他生活全般にわたるサポートを与えることです(更生保護法第58条)。


特別遵守事項は、次に掲げる事項について、保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において、具体的に定めるものとされています(更生保護法第第51条)。

  1. 犯罪性のある者との交際、いかがわしい場所への出入り、遊興による浪費、過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。
  2. 労働に従事すること、通学することその他の再び犯罪をすることがなく又は非行のない健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し、又は継続すること。
  3. 七日未満の旅行、離職、身分関係の異動その他の指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について、緊急の場合を除き、あらかじめ、保護観察官又は保護司に申告すること。
  4. 医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。
  5. 法務大臣が指定する施設、保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって、宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること。
  6. 善良な社会の一員としての意識の涵かん養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。
  7. その他指導監督を行うため特に必要な事項

そして、これら特別遵守事項は指導監督の一環として行われるものになるわけです。


本選択肢が問うているのは、こうした特別遵守事項が守られない時の対応です。

保護観察に付された少年が遵守事項に違反した場合、保護観察所の長は、保護警告を発することになり(更生保護法67条1項)、警告を発した日から起算して3か月間を「特別観察期間」として指導監督を強化することになっています。

そして「保護観察所の長は、前項の警告を受けた保護観察処分少年が、なお遵守事項を遵守せず、その程度が重いと認めるときは、少年法第二十六条の四第一項の決定の申請をすることができる」とされており、これは少年院等に送致する申請を行うことができるということを指します。

もちろん、選択肢④にもあるように、改善更生の在り方に問題があれば、特別遵守事項を変更するという対応もあり得るでしょう。


ただし、先述の通り、特別遵守事項は「指導監督」の範囲で行われるものですから、「特別遵守事項を守らない=補導援護を行うことができない」ということを意味するわけではありません。

指導監督と補導援護のそれぞれの領域で、対象者の構成を図っていくことになるということですね。

なお、「補導援護を行うことはできない」という表現は、更生保護法には存在しません。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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