公認心理師 2020-53

2021年01月20日水曜日

犯罪被害者を支援する制度はさまざまあります。

犯罪被害者保護法、犯罪被害者給付金支給法、更生保護法などです(本問では総合法律支援法もちょっと関わってきますね)。

きちんと「被害者支援制度」という枠組みでまとめて把握しておくようにしましょう。


問53 被害者支援の制度について、正しいものを2つ選べ。

① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している。

② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる。

③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される。

④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる。

⑤ 日本司法支援センター〈法テラス〉は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付を受けない。



解答のポイント

さまざまな法律に渡って定められている被害者支援制度について把握していること。



選択肢の解説


① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している。

被害者支援センターの根拠法は、犯罪被害者給付金支給法(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)になります。

この第23条に「犯罪被害者等早期援助団体」として、以下のように定められております。

公安委員会は、犯罪被害等を早期に軽減するとともに、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう支援することを目的として設立された営利を目的としない法人であつて、当該都道府県の区域において次項に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、同項に規定する事業を行う者(以下「犯罪被害者等早期援助団体」という)として指定することができる。

そして、この犯罪被害者等早期援助団体が「被害者支援センター」となります。

つまり、被害者支援センターは、都道府県公安委員会から指定を受けた団体を指すわけです。


犯罪被害等を受けた直後の被害者や遺族は、混乱や精神的ショックなどにより、自ら援助を求めることができない場合があります。

こうしたことから、犯罪被害者等早期援助団体(被害者支援センター)では、被害者や遺族の同意を得た警察本部長等から、犯罪被害の概要などに関する情報の提供を受け、被害者や遺族に積極的にアプローチし、必要とされる援助を行っています。


このように、被害者支援センターは法務省ではなく公安委員会が設置することがわかります。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。



② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる。

こちらについては更生保護法第38条の「被害者等の意見等の聴取」に以下の通り定められております。

地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理を行うに当たり、法務省令で定めるところにより、被害者等(審理対象者が刑を言い渡される理由となった犯罪により害を被った者から、審理対象者の仮釈放に関する意見及び被害に関する心情を述べたい旨の申出があったときは、当該意見等を聴取するものとする。ただし、当該被害に係る事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。

これはいわゆる「意見聴取制度」と呼ばれているもので、地方更生保護委員会が行う加害者の仮釈放・仮退院の審理において、意見等を述べることができます。

希望がある場合は申出の手続が必要となります。

申出ができるのは、①仮釈放・仮退院の審理の対象となっている加害者の犯罪等により被害を受けた人、②被害を受けた方の法定代理人、③被害を受けた方が亡くなった場合又はその心身に重大な故障(病気やけがなど)がある場合におけるその配偶者、直系親族又は兄弟姉妹となります。


他にも、心情等伝達制度(被害に関する心情等を聴き、これを保護観察中の加害者に伝える)、被害者等通知制度(加害者の仮釈放・仮退院審理や保護観察の状況等に関する情報を、希望する被害者や遺族等に通知する)などが設けられております。

以上より、選択肢②は正しいと判断できます。



③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される。

犯罪被害者給付金は、犯罪被害者給付金支給法に定められています。

この法律は、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族又は重傷病を負い若しくは障害が残つた者の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、犯罪被害等を受けた者に対し犯罪被害者等給付金を支給し、及び当該犯罪行為の発生後速やかに、かつ、継続的に犯罪被害等を受けた者を援助するための措置を講じ、もつて犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現に寄与することを目的としています(第1条)。


犯罪被害者給付金支給法第2条第7号には「この法律において「犯罪被害者等給付金」とは、第四条に規定する遺族給付金、重傷病給付金又は障害給付金をいう」とされております。

そして第4条には「犯罪被害者等給付金の種類等」として以下が定められています。

  1. 遺族給付金 犯罪行為により死亡した者の第一順位遺族(次条第三項及び第四項の規定による第一順位の遺族をいう)
  2. 重傷病給付金 犯罪行為により重傷病を負つた者
  3. 障害給付金 犯罪行為により障害が残つた者

これらが犯罪被害者給付金が支給される対象となります。


このように、本選択肢の「財産犯の被害」については、本法の犯罪被害者等給付金の対象とならないことがわかりますね。

ちなみに財産犯とは、刑法では窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、横領罪、背任罪、恐喝罪、盗品等関与罪、器物損壊罪などが該当します。

それを踏まえても、犯罪行為で死亡した場合、重症病を負った場合、障害が残った場合に支給される犯罪被害者等給付金の支給対象とならないことがわかりますね。

強盗罪の場合は、その怪我の度合いによってはあり得るでしょうが、それはあくまでも「怪我」に対して支給されるものであり、財産に被害が出たことに対して支払われるものではありません。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。



④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる。

こちらは犯罪被害者保護法(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律)の第3条に以下の通り定められております。

  1. 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする
  2. 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
  3. 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。

このように、被害者は裁判所に公判記録の閲覧・謄写(書き写すこと、コピーも含む)を求めることができます。


また、閲覧・コピーをしようとする事件の被告人等により行われた、その事件と同種の犯罪行為の被害者(同種余罪の被害者)は、損害賠償を請求するために必要があると認められる場合には、事件記録の閲覧・コピーをすることができます(犯罪被害者保護法第4条)。

希望する場合には、刑事事件の被害者は、事件を審理している裁判所に申し出ることが必要です(同種余罪の被害者は検察官に申し出る)。

他にも刑事手続きにおける犯罪被害者のための制度として、裁判の優先的傍聴の配慮、刑事裁判への参加(殺人・傷害・自動車運転過失致死傷等の一定の刑事事件の被害者は、裁判所の許可を得て、被害者参加人として刑事裁判に参加することができる)、公開の法廷で氏名等(被害者特定事項)を明らかにしない措置、証人の不安や緊張等を緩和するための措置(家族の付き添いなど)、法廷での心情や意見の陳述、民事上の争いについて示談ができた場合の刑事裁判の公判調書への記載などがあります。


以上より、選択肢④は正しいと判断できます。



⑤ 日本司法支援センター〈法テラス〉は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付を受けない。

法テラスは、総合法律支援法(民事・刑事を問わず、全国において法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを基本理念とする総合法律支援構想を具体化するために公布された法律)に基づき、独立行政法人の枠組みに従って、日本国政府が設立した法務省所管の法人で、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的としています。

法テラスでは寄付も受け付けており、以下の3つの枠組みがあります。


1.一般寄付

法テラスは特定公益増進法人に指定されていますので、法テラスに寄附することで税制上(所得税、相続税、法人税)の優遇措置を受けることができます。

また、個人(納税者)から法テラスに寄附した場合は、特定寄附金として所得税の寄附金控除の対象となります(確定申告時に使用する)。

寄付金は、犯罪被害者支援や民事法律扶助、司法過疎対策などのような公共性の高い事業資金として活用することになります。


2.しょく罪寄付

道路交通法違反、覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する弁償ができない刑事事件」などの場合に、被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために、公的な団体等に対して行う寄附です。

事件への反省を込めてなされるしょく罪寄附は、裁判所において情状の資料として評価されています(このように書くと、情状目的の寄付がありそうで何かイヤですね)。

寄付金は、犯罪被害者支援や民事法律扶助、司法過疎対策などのような公共性の高い事業資金として活用することになります。


3.更生寄付

この寄付の背景には、更生保護法第2条の「民間の団体等により自発的に行われる犯罪予防の活動を促進し、これらの者と連携協力するよう努めなければならない」があります。

法テラスでは、これら更生保護法の趣旨等を踏まえ、保護観察中・保護観察終了後も、過去に犯罪をした者や少年が反省の気持ちを長く持ち続けるとともに、被害者等が受領しない等の事情がある場合の被害弁償に代わるものとして、また、被害者のいない事件においては再び犯罪をしないための決意表明の方策として、寄附を受け入れる仕組みを設けています。

つまり、更生寄付とは、保護観察中の方や保護観察を終了した人が、犯した罪の重さを認識し、悔悟の情を深めるとともに、再び罪を犯さない決意を長く持ち続けるため、被害者等が被害弁償金を受けとられないなどの事情があるときはそれに代わるものとして、また、被害者のいない事件においては再び犯罪をしないための決意を表明するものとして、法テラスに行う寄附を指します。

保護観察対象者等の置かれた状況に鑑み、寄附金額の多寡を問題とするものではなく、自由かつ公正な社会の形成に資することを目的として設置されたものです。

更生寄附金は、犯罪被害の回復に役立つ情報提供や被害者支援に精通した弁護士の紹介等を行う犯罪被害者支援業務、資力に乏しい方への無料法律相談や裁判費用の立替え等を行う民事法律扶助業務などに活用されています。


このように、法テラスでは「しょく罪寄付」を受け付けています。

ただし「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する弁償ができない刑事事件」などの場合になっていますね。

後者の場合は「被害者との示談ができない刑事事件」という読替えも可能かもしれません。

なお、このようなしょく罪寄付は他の機関(例えば、弁護士会・日本弁護士連合会など)でも受け付けていますね。

寄付金の活用法はそれぞれの機関で違いますから、寄付する際には「何に使われるのか」も考えつつ行うと良いかもしれないですね。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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