公認心理師 2020-29

2021年01月16日土曜日

糖尿病の特徴や治療法に関する問題になっています。 

糖尿病に関しては過去に何度も出題されていますから、しっかりと勉強しておく必要がある領域です。

また、「何度も出ている」ということは「過去問の範囲を超えて勉強しておくことが大切な領域である」と捉えることが重要ですよ。


問29 糖尿病について、正しいものを1つ選べ。

① 糖尿病は、1型から2型に移行することが多い。

② 糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である。

③ 2型糖尿病患者に、血糖自己測定〈SMBG〉は不必要である。

④ 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある。

⑤ 検診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い。



解答のポイント

糖尿病の型の特徴や、必要な治療に関する理解があること。



選択肢の解説


① 糖尿病は、1型から2型に移行することが多い。

1型糖尿病の発生機序と2型糖尿病のそれとを理解しておくことが大切です。


1型糖尿病は、インスリンを合成・分泌する膵ランゲルハンス島β細胞が破壊されることにより、インスリン分泌能が低下・消失し、インスリン欠乏が生じる病態で、生存にはインスリン補充が必要な「インスリン依存状態」となることが多いとされています。

小児~15歳で発症することが多いとされていますが、中高年になって発症する例もあります。

β細胞の破壊には、HLA遺伝子などが関与していると考えられています。

HLAは白血球中の免疫機能を調整する遺伝子のひとつであり、それがウイルス感染などをきっかけに自己免疫反応を引き起こすと考えられています。

1型糖尿病には、糖尿病発症後わずか1週間のうちにケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る「劇症1型糖尿病」、数年をかけてゆっくりインスリン依存状態になる「緩徐進行1型糖尿病」があります。


1型糖尿病は、遺伝要因を有する人に、環境要因がトリガーとなって免疫異常をきたし、発症すると考えられています。

環境要因としては、食事がトリガーになっている可能性が以前から指摘されており、もっとも有名な食品は牛乳です(1型糖尿病を発症した小児において、乳製品摂取の時期が早かったこと、消費量が多かったという報告がある)。

ただし、その後の研究では一定した見解が得られておらず、そのほかにもさまざまな報告があるので、現在も研究中という状態です。


これに対して、2型糖尿病は、過食・運動不足でエネルギー摂取の過剰状態が続くと、血糖値を正常に保つために多くのインスリンが分泌されます(これを代償インスリン過分泌と言います)。

そして、過剰に分泌されたインスリンにより脂肪が蓄積されていきます。

脂肪細胞は内分泌細胞でもあるため、脂肪が分泌されることによって悪玉アディポサイトカインが増加、善玉サイトカインが減少し、結果としてインスリン抵抗性(簡単にいうと「インスリンの効き具合」を意味する。膵臓からインスリンが血中に分泌されているにもかかわらず、標的臓器のインスリンに対する感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態)が起こります。

なお、「アディポ」は脂肪、「サイトカイン」は生理活性物質を意味し、アディポサイトカインは脂肪細胞から分泌されるその多彩な生理活性物質の総称で、アディポサイトカインには悪玉物質と善玉物質があり、悪玉には血栓をつくりやすくするPAI-1、インスリン抵抗性を起こすTNF-α、レジスチン、血圧を上げるアンジオテンシノーゲンなどが、また善玉にはインスリン抵抗性を改善し、動脈硬化を防ぐアディポネクチンがあります。

インスリン抵抗性によるインスリン過剰分泌状態が続くと膵β細胞は疲弊し、インスリン分泌能力が低下します。

それに加え、高血糖が持続すると、高血糖自体がインスリン分泌能を低下させ、同時にインスリン抵抗性を増大させることにより、更なる高血糖を助長します(この悪循環を「糖毒性」とよぶ)。

これらの変化は徐々に起こり、インスリン分泌のピークが遅れて食後の高血糖がみられる境界型糖尿病から、十余年かけて糖尿病へと進展します。

さらにインスリン分泌能低下が進行すれば、高血糖の是正にインスリン治療が必要になってきます。


このように1型糖尿病と2型糖尿病の発症機構は異なりますから、1型糖尿病が2型糖尿病に「移行する」ということはありません(つまり昨日まで1型糖尿病だった人が、今日からは2型糖尿病に変わりました、ということはない)。

一方、1型糖尿病と2型糖尿病の併発はあり得ます。

ただし、1型糖尿病に比べて2型糖尿病の症状は顕著ではないので併発しても自覚症状が明確にあることは少ないですし、そもそも1型糖尿病の治療をしているならば必然的に過食などの身体に良くない習慣をあまり行わなくなると思われますから、1型糖尿病の治療に専念している限り2型糖尿病の合併はそれほど心配することではないと考えられます。


また、この点に関しては経過を見るとわかりやすいと思います。

以下が糖尿病を1型や2型などの病因に基づいて分類し、さらに病態によって5つに区分したものになります。


糖尿病の病因が発症した後で変化することはあり得ないので、この表の縦方向に移動することは通常おこりません。

ただし、新しい糖尿病原因遺伝子が発見され、実は1型や2型と思われていた患者が「その他の特定の型」に移る可能性はあります。


以上のように、糖尿病の型が移行するということはありません。

よって、選択肢①は誤っていると判断できます。



② 糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である。

運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療(主に2型糖尿病)の基本になります。

2型糖尿病は、種々の生活習慣(肥満、過食、運動不足)が発症の重要な因子となっているので、運動によりエネルギーを消費して、肥満を解消 ・抑制することが重要です。

1型糖尿病は、インスリンを合成・分泌する膵ランゲルハンス島β細胞が破壊されてしまっているため、運動によるインスリンの機能自体の回復という治療としての効果は望めませんが、運動は筋力を高めたり、ストレス解消にも役立つとされています。


糖尿病を改善させる運動として、有酸素運動とレジスタンス運動の実施が推奨されています。

また、有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳・自転車などのできるだけ大きな筋を使用する運動)とレジスタンス運動(腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどのおもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動)の併用はそれぞれの運動単独よりも効果的に糖尿病を改善させることも報告されています。

有酸素運動により、内臓の脂肪細胞が小さくなることで肥満を改善し、脂肪組織から産生されるアディポサイトカインなどのインスリンの働きを妨害する物質の分泌が少なくなり、このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値が安定するとされています。

また、レジスタンス運動によって、筋力トレーニングによって筋肉が増えることでも、インスリンの効果が高まり、血糖値は下がりやすくなります(=インスリン抵抗性の改善)が、運動をやめてしまうとその効果は3日程度で失われるとされており継続が重要と言えますね。


ただし、運動療法を開始時のリスク管理も重要になります。

中高年者の運動中の心血管イベントとしては、主に急性心筋梗塞とそれによる突然死となります。

これは、運動不足で体力レベルの低い人が、高強度の運動を急に始めた場合に起こりやすい現象です。

しかし、定期的な運動習慣はこれらのリスクを減少させるので、当初は強度の低い運動から開始し、積極的に運動に取り組むのが望ましいと考えられます。

アメリカスポーツ医学会の運動参加のアルゴリズムでは、対象者を運動習慣の有無に分けた上で、心血管病・代謝疾患(糖尿病を含む)・腎疾患の既往と、徴候・自覚症状の有無で、医学的な評価の必要性をまとめています。

それによると、運動習慣のある無症候の糖尿病患者は、心血管病の既往があっても、医学的評価無しに中強度運動(速足のウォーキング相当)を継続してよいとする一方、運動習慣のない糖尿病患者では心血管病を疑わせる自覚症状がなくても医学的な評価が必要としています。


このような点に気をつける必要はありますが、糖尿病治療において運動療法は必要であり、その運動の内容は有酸素運動が中心となっています。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



③ 2型糖尿病患者に、血糖自己測定〈SMBG〉は不必要である。

血糖値の変動は、その人の日常生活そのものを反映したものです。

糖尿病では、社会生活や家庭生活の中で、血糖値に悪影響を与える食べ過ぎや運動不足などのライフスタイルを変革していく必要がありますが、そのために自分の生活のどのような側面が血糖値を悪化させる原因なのかを自覚し、ライフスタイルを確実に改善していく努力のために、血糖自己測定(Self Monitoring of Blood Glucose:SMBG)は重要となります。

老人では血圧を測ることが多かったり、それ以外の人でも便の形状から自分の体調を把握したりすると思いますが、それと同じように血糖値を把握することは、自分の状態を知る上で重要な手がかりとなります(もちろん糖尿病の状態にある人は、もっと切迫して把握することが重要ですが)。


自覚症状のない糖尿病のコントロール状態は、血糖値やHbA1c値などでしかわかりません。

診察時に悪化が見えたとしても、その理由を患者が把握していないことも少なくありません。

この点で血糖自己測定では、毎日の糖尿病コントロール状態を把握するには良い手段となります。

もちろん、ただ測れば良いのではなく、血糖を測定する前に自分の血糖値を予測することが重要です。

食べ過ぎや運動不足の自覚があれば血糖値が高く出る可能性が考えられますし、適切な生活習慣を送っていれば良い値が出ると予測できますね。

もちろん予測が外れることもありますが、それによって「なぜ予想と違ったのか」を考えることができます。

つまり、糖尿病者自身が積極的に治療に関わるという側面が血糖自己測定にはあると言えます。


上記からも、1型だけでなく2型糖尿病でも血糖自己測定が重要であることがわかると思います。

なお、一般的に言われている血糖自己測定の適応について挙げると以下の通りです。

  1. 1型糖尿病、2型糖尿病の両者における厳格な血糖コントロール。
  2. 1型糖尿病、2型糖尿病の薬物療法(インスリン、経口血糖降下薬)での低血糖の認知と予後
  3. 重症高血糖の回避
  4. ライフスタイルに合った薬物療法の調整
  5. 糖尿病妊婦での血糖プロフィールの把握とインスリン療法開始の決定

以下では1型糖尿病、2型糖尿病での血糖自己測定の適応について詳しく述べていきましょう。


1型糖尿病の発症想起にはインスリン非依存の時期も見られ、少量のインスリン単回投与で良好な血糖コントロールができる症例もあり、このような症例では1日1回から3回の食膳の血糖測定で十分です。

インスリン依存になった場合、持続型あるいは混合型インスリンを1日1回ないし2回打ちの症例では1日2回から3回の血糖測定を行います。

強化インスリン療法の症例では、1日4回から7回(場合によっては9回)測定することが望ましいとされています。


2型糖尿病で食事療法と運動療法のみで薬物療法を行っていない場合は、血糖コントロールの程度を把握するのが目的のため、血糖測定のタイミングは1日1回で十分とされています。

経口血糖降下薬の投与を受けている患者では1日1回ないし2回の測定で十分であるが、時には7回の測定を行うこともあります。

病院に空腹時で来院して空腹時血糖値を測定すると意外と高くて、食事後の血糖値の方がHbA1c値からすればリーズナブルと思われる症例があり、こういう場合には血糖自己測定機器を貸し出してでも自宅早朝空腹時の血糖値を確認すると有用なデータを得られることがあります。

また、2型糖尿病では定義からしてインスリンは生命の維持に必要というわけではありませんが、良好な血糖コントロールを得るためにはインスリン投与が不可欠な症例も多く、これらの症例での血糖自己測定のタイミングやその評価は1型糖尿病に準じます。


このように2型糖尿病であってもSMBGは重要であることがわかりますね。

よって選択肢③は誤りと判断できます。



④ 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある。

1990年代後半以降、非定型抗精神病薬が相次いで発売されました。

従来の定型抗精神病薬と比べて、錐体外路症状・口渇・便秘などの副作用が少なく、統合失調症の初期・急性期増悪時に効果が高いため汎用されるようになりました。

一方で、非定型抗精神病薬は糖代謝異常の副作用が多く、日本ではクエチアピンとオランザピンは糖尿病患者には使用禁忌、その他の薬剤も慎重投与になっており、使用時には糖尿病関連の既往歴や家族歴、定期的な血糖値の検査、肥満度、血圧の確認が必要です。


なお、糖尿病を有する精神疾患患者が治療を自己中断し、高血糖性の昏睡となり搬送されることがあります。

精神疾患の病勢によって糖尿病治療を中断してしまうことがありますが、精神科への通院は続けることが多いので、精神科医等との綿密な連携を図り、通院中断を防ぐことが糖尿病治療では重要になってきます。


ちなみに、他にもインスリン抵抗性増大により耐糖能を悪化させる薬剤はあります。

アレルギー疾患、自己免疫疾患、悪性疾患、重症感染症など多岐にわたり頻用されるグルココルチコイドは、糖尿病の悪化や耐糖能障害を生じさせやすく、糖尿病発症頻度は6~25%と高値を示し、40歳以上で糖尿病の家族歴・投与量や投与期間が発症の危険因子となっています。

他にも、脂質異常症治療薬はインスリン感受性を低下させて耐糖能障害を生じさせ、経口避妊薬(プロゲステロン)はインスリン抵抗性を増大させて耐糖能障害を招きます。


このように、非定型抗精神病薬をはじめ、糖尿病患者に禁忌とされる薬剤は複数あるので理解しておくことが大切です。

よって、選択肢④は正しいと判断できます。



⑤ 検診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い。

糖尿病の検査では、毎回の診察で検査する項目がいくつかあります。

その代表がHbA1c(グリコヘモグロビン)値であり、これは赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。

血糖値の低い状態が続くとヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が少くなるのでHbA1c値は低くなり、血糖値の高い状態が続くとHbA1c値は高くなります。

HbA1c値は過去1~2か月の平均血糖値を反映します。

通常、HbA1c値は4.6%~6.2%が基準範囲で、6.5%以上を糖尿病型とします。

日本糖尿病学会によれば、糖尿病の管理目標としては、①血糖正常化を目指す場合:6.0%未満、②合併症予防のため:7.0%未満、③治療強化が困難な際:8.0%未満、の3段階に分類しています。

このように、本選択肢の数値は糖尿病を示すものになっていますから、「糖尿病の可能性は低い」とすることはできませんね。

よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。


なお、他にも糖尿病の検査で毎回測るものとして、血糖値、グリコアルブミン(過去2~3週間の血糖の平均値と相関し、HbA1c値の評価が困難な場合に有用。基準範囲は11~16%程度)、1,5-AG(過去2~3日の血糖値の平均値と相関し、基準値は14ug/ml以上)体重(肥満者ではまず5%程度の体重減少を目標にする)、血圧(動脈硬化を基盤とした心血管疾患の一次・二次予防のためには血圧管理が重要)などがあります。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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