公認心理師 2020-27

2021年01月29日金曜日

過去に何度も出題されている、職場のメンタルヘルスに関する問題です。

各スタッフの役割など、基本的な事項が問われていると言えます。

過去問との絡みもあるので、しっかりと理解しておきましょう。


問27 事業場における労働者のメンタルヘルスケアについて、正しいものを1つ選べ。

① 労働者は、自己保健義務を負っている。

② 労働者の主治医が中心となって推進する。

③ 人事労務管理スタッフは、関与してはならない。

④ 産業医の中心的な役割は、事業場内で診療を行うことである。

⑤ 対象範囲を、業務に起因するストレスに限定することが大切である。



解答のポイント

「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」に示されている各スタッフの役割、対象を把握していること。



選択肢の解説


① 労働者は、自己保健義務を負っている。

自己保健義務とは、従業員に求められている義務で、安全で健康に働けるよう、自らの健康状態を注意し、管理していくことを言います。

従業員の安全は会社の努力のみで達成されるものではないので、会社側が行う措置・配慮に対して従業員は協力することが求められているということですね。

ちなみに、労働者自身が負う義務に対して、企業にも労働者の安全と健康を守る、安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。


自己保健義務は労働安全衛生法第26条に定められております。

労働者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

重要なのは上記の第20条~第25条までの措置を知っていることです。

第20条は電気機械に関する安全、第21条は掘削、採石、荷役、伐木等の業務に関する安全、第22条はガスや放射線などに関する安全、第23条は建造物内の安全、第24条は労働災害の防止、第25条は労働災害が生じたときの避難についてです。


また、自己保健義務は上記だけに留まらないことを把握しておきましょう。

労働安全衛生法第66条第5項には以下のように定められています。

労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

これは、健康診断についても労働者が受ける義務があることを示しています。

健康診断は私的領域も含めた生活習慣も踏まえた結果がでるため、この受診義務は、自己保健義務の一内容と解されます。


また、ストレスチェック(同法第66条の10)についても、労働者が検査結果を事業者に提出しなければ、事業者としてはその後の医師の面接指導などの義務について対応することができないという性質上、労働者自身の責任にかかる自己保健義務に委ねられることになります。


なお、裁判例には「労務指揮等に関係がない場面における健康確保は労働者自身がその責任においてなすべき事柄」、「本来自己の体調の異常や健康障害の兆は、特段の事情がない限り、自己が真先に気付くものであり、これに基づいて本人自らが健康管理の配慮をするもの」とするものがあり、自己保健義務は私生活における健康管理義務を含むと解されます。


以上より、選択肢①が正しいと判断できます。



② 労働者の主治医が中心となって推進する。
③ 人事労務管理スタッフは、関与してはならない。
④ 産業医の中心的な役割は、事業場内で診療を行うことである。

厚生労働省から出ている「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」には、それぞれの事業場内産業保健スタッフ等の役割が以下のように示されています。

  • 事業場内メンタルヘルス推進担当者
    原則として衛生管理者等がその役割を担うものとし、産業医の助言を得ながら、心の健康づくり計画の企画・立案、評価・改善、教育研修等の実施、関係者の連絡調整などの実務を担当し、ストレスチェックを含めた事業場の心の健康づくり活動を中心的に推進する。
  • 衛生管理者等(事業場内メンタルヘルス推進担当者を除く)
    産業医と協力して、ストレスチェックを含めた心の健康づくり活動を推進する。
  • 産業医
    ・心の健康づくり計画の企画・立案及び評価への協力
    ・従業員、管理監督者からの相談への対応と保健指導
    ・職場環境等の評価と改善によるストレスの軽減(ストレスチェックの集団分析結果等に基づくものを含む)
    ・従業員、管理監督者等に対する情報提供及び教育研修
    ・外部医療機関等との連絡
    ・就業上の配慮についての意見(ストレスチェック結果に基づく面接指導の事後措置を含む)
  • 人事労務部門
    人事労務管理担当者は、従業員、管理監督者からの相談があれば、その対応を行う。人事労務管理の担当者は、管理監督者だけでは対応が困難な問題(職場配置、人事異動等)に対応し、また、労働時間等の改善及び適正配置を行う。
  • 衛生委員会
    衛生委員会は、事業場内メンタルヘルス推進担当者を中心に心の健康づくり計画の策定、評価に関わる。また、ストレスチェックを含む心の健康づくり活動が計画どおり進められているか評価を行い、継続的な活動を推進する。
  • ストレスチェック実施者
    ・ストレスチェック実施の企画・立案及び評価への協力
    ・ストレスチェック受検者からの相談への対応
    ・ストレスチェックの集団分析結果等に基づく職場環境等の評価ならびにその結果の事業者への提供
    ・ストレスチェック受検者に対する情報提供及び教育研修

ちなみに「主治医」は、事業場における労働者のメンタルヘルスケアの「外」にいる専門家として捉えられています。

主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。

このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。

このように、主治医は、あくまでも患者(労働者)の心身の状態を診る役割であり、具体的な職場での支援を考えていくためには、職場環境等について詳しく理解しているメンタルヘルス推進担当者が中心となって行っていきます。


また、「人事労務管理担当者」は、従業員、管理監督者からの相談があれば、その対応を行い、管理監督者だけでは対応が困難な問題(職場配置、人事異動等)に対応し、また、労働時間等の改善及び適正配置を行う役割を担っています。

更に、「産業医」の役割も、労働者の健康管理等に関して幅広い役割を担っていることがわかります(こちらについては労働安全衛生法第13条にも規定があります)。


以上より、選択肢②、選択肢③および選択肢④は誤りと判断できます。



⑤ 対象範囲を、業務に起因するストレスに限定することが大切である。

指針には「メンタルヘルスケアの基本的考え方」が示されております。

特に、メンタルヘルスケアを推進するに当たっては、次の事項に留意するようにとされています。

  1. 心の健康問題の特性:
    心の健康については、その評価には、本人から心身の状況の情報を取得する必要があり、さらに、心の健康問題の発生過程には個人差が大きいため、そのプロセスの把握が困難です。また、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があります
  2. 労働者の個人情報の保護への配慮:
    メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の個人情報の保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要です。心の健康に関する情報の収集及び利用に当たっての、労働者の個人情報の保護への配慮は、労働者が安心してメンタルヘルスケアに参加できること、ひいてはメンタルヘルスケアがより効果的に推進されるための条件です。
  3. 人事労務管理との関係:
    労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、より大きな影響を受けます。メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多くあります。
  4. 家庭・個人生活等の職場以外の問題:
    心の健康問題は、職場のストレス要因のみならず家庭・個人生活等の職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多くあります。また、個人の要因等も心の健康問題に影響を与え、これらは複雑に関係し、相互に影響し合う場合が多くあります。

上記第4項に示されているように、心の健康問題は、家庭・個人生活等の職場外のストレス要因の影響も考えることが重要であると示されています。

事業者は、事業場以外で労働者の私的な生活に配慮する必要はありませんが(公認心理師 2019-104選択肢②)、ストレスに関しては家庭等の職場外の要因も考えておく必要があるということですね。


以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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