公認心理師 2020-9

2020年12月30日水曜日

 本問はある法則に関する理解が問われている内容になっています。

思考の順序は、①問題文から問われている法則がわかる、②その法則に沿って正答を導く、ということになりますね。

計算式自体はかなり簡略化してくれていますから、法則を知っていれば問題ありませんし、その法則自体もブループリントに「心理物理学」として記載があります。


問9 100gの重さの知覚における弁別閾を測定したところ10gであった。この時に予測される400gの重さの知覚における弁別閾として、正しいものを1つ選べ。

① 2.5g

② 10g

③ 13.01g

④ 20g

⑤ 40g



解答のポイント

ウェーバー=フェヒナーの法則について問われていることがわかっていること。

ウェーバー=フェヒナーの法則について理解していること。



必要な知識・選択肢の解説

「人の心をどのように研究するか」という命題に対し、19世紀のドイツの物理学者であるギュスターヴ・フェヒナーは、こころとからだの依存関係を調べる学問として精神物理学(心理物理学)を提唱しました。

フェヒナーは、物理的刺激を体系的に与えてそれに対する感覚の変化を観察するという方法で、こころとからだの関係を調べることができると考えました(ここで示された方法論は現在でも使われていますし、公認心理師試験でも出題がありますね)。

このとき、既にドイツの生理学者エルンスト・ハインリッヒ・ウェーバーは、ある刺激の強度が変化したという体験を生じるのに必要な刺激強度は感覚領域(重さとか明るさとか)によって異なること、その際に元の標準刺激と比較する刺激との間の刺激強度の違いを判断する際の基準は相対的であることを報告していました。


少しわかりにくいかもしれないので、もう少し詳しく述べていきましょう。

フェヒナーやウェーバーは、物理的刺激に対する感覚の変化を観察することで人の心や身体について理解するというアプローチを試みたわけです。

その中でウェーバーが行ったのは、「強度の変化を検出する」ということでした。

典型的な変化検出の研究では、標準刺激と比較刺激が対となって複数提示され、被験者は比較刺激が標準刺激よりも「より多い」か「より少ない」かで応答することを求められます。

こうして測定されるのは「丁度可知差異」と呼ばれ、二つの刺激を区別するのに必要な刺激の大きさの最小の値ということです。


この研究の結果示されたのは、標準刺激の値が大きくなればなるほど、感覚系は強度の変化に対して敏感でなくなるということです。

すなわち「気づかれるために標準を増大しなければならない強度は標準の強度に比例する」ということになりますね。

例えば、ろうそくが20本あって、1本のろうそくを追加することで「明るくなった」と検出できたとします。

20本のろうそくという標準刺激に対して、1本のろうそくの追加ですから5%増大したことで変化を検出できたということになり、この5%というのがこの状況での「丁度可知差異」ということになります。

さて、次はろうそくが100本あった場合に、変化を検出できるようになるには当然1本ではダメです。

必要なのは「5%増大」ということですから、標準刺激100本の5%で5本のろうそくが必要ということになります。


このように標準刺激に「ある定まった数(上の例で言えば5%:0.05)」を掛け合わせるという知見はウェーバーの法則と呼ばれ、心理学に最初に数量化された法則です。

ちなみに元々「ウェーバーの法則」と呼ばれていましたが、現在では「ウェーバー=フェヒナーの法則」と呼ばれています。

なお、さまざまな感覚の質に関する丁度可知差異は、以下の通りいくつか示されています。

  • 光の強度:8%
  • 音の強さ:5%
  • 音の周波数:1%
  • においの濃度:15%
  • 塩の濃度:20%
  • 重さ:2.5%
  • 電気ショック:1%
こうした比例定数は「ウェーバー比」と呼ばれています。
現在では「S=k log R」と公式化されており、Sは感覚、Rは刺激、kは定数ということになります。
ちなみに味覚や嗅覚よりも、音に敏感なのは、聴覚が元来危険察知器官であることと関連していますね(お化け屋敷に入ると物音に敏感になるのはそのため)。


では、これらを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。



① 2.5g
② 10g
③ 13.01g
④ 20g
⑤ 40g

どの選択肢が正しいかを見極めるのに最も大切なのは、問題文の「100gの重さの知覚における弁別閾を測定したところ10g」という箇所です。

ここからウェーバー比(定数)を導く必要があります。

100gの標準刺激で、弁別閾が10%(10g増やしたら「増えたことがわかった」)ということになります。


この「10%」というのがウェーバー比ということになりますから、標準刺激にこちらを掛け合わせることで答えが導かれます。

本問では「この時に予測される400gの重さの知覚における弁別閾」を求める必要があるので、この400gという重さの10%(×0.1)が正答ということになります。

よって、400g×0.1=40ということになりますから、標準刺激が400gの場合は40g増加すれば弁別することができるということになりますね。


ちなみに、一般的な重さのウェーバー比は0.025ですから、本問のウェーバー比は問題のためにかなり簡略化して示してあるということになります。

まさかこのことを知っていて選択肢②の10gを選んだ人はいないと思いますが…(いたとしても不正解です。なぜなら問題文から本問におけるウェーバー比は10%と示されていますから)。

以上より、選択肢⑤が正答となり、選択肢①~選択肢④は誤りと判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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