公認心理師 2020-8

2020年12月29日火曜日

 心理学実験の基本的な考え方について問うた内容になっています。

変数、要因、水準、相関の意味について理解しておくことが大切です。

これらの用語は、実験や研究では当たり前のように使われますからね。


問8 心理学の実験において、「XがYに及ぼす影響」の因果的検討を行うとき、正しいものを1つ選べ。

① Xを剰余変数という。

② Yを独立変数という。

③ 研究者があらかじめ操作するのはYである。

④ Xは、値又はカテゴリーが2つ以上設定される。

⑤ 結果の分析には、XとYの相関を求めるのが一般的である。



解答のポイント

心理学実験の基本的事項について理解していること。



選択肢の解説


① Xを剰余変数という。
② Yを独立変数という。
③ 研究者があらかじめ操作するのはYである。

心理学実験に関わる重要な変数として、独立変数・従属変数・剰余変数が挙げられます。

ちなみに「変数」とは、対象や状況によって値が変化するものを指します。

例えば、身長・体重や検査の結果など、世の中には多くの変数に溢れていると言えますね。

変数は、常に一定である「定数」に対する概念です。

この変数は、質的・量的や名義・順序・間隔・比例などに性質によって分けられますが、ここでは問題の本質から外れてしまうので説明は省きます。


さて、ここで挙げた選択肢に答えるために必要なのは、問題文の「XがYに及ぼす影響」という表現から、XとYが独立変数なのか、従属変数なのか、剰余変数なのかを見分けられることです。

まずは独立変数・従属変数・剰余変数について理解しましょう。

独立変数とは、効果に関して検討するために人為的に操作する側の変数のことで、「原因→結果」の枠組みで言えば原因に該当する変数です。

これに対して従属変数とは、実験の結果得られる変数であり、「原因→結果」の枠組みで言えば結果に該当する変数です。

「従属」というのは「他のものにつき従うこと」を意味しますが、これは独立変数などによって変わるので「従属」という表現がなされているわけです。

つまり、独立変数は実験者が設定する変数であり、従属変数は実験者が測定する変数と言えます。

そして剰余変数とは、独立変数以外で従属変数に影響を及ぼし得る変数のことを指します。

心理学実験では、例えばシールドルームのような光や音までも制限できる環境下で実験を行うことがありますが、それは光や音が剰余変数となって従属変数に影響を及ぼさないようにするためです。

まとめると以下の図のようなイメージでしょうか。


このように見れば、問題文の「XがYに及ぼす影響」の理解がすぐにできると思います。

「XがYに及ぼす影響」という表現は、Yが影響を与えられる側ですから従属変数になり、それに影響を与えるXが独立変数ということになります。

もちろん剰余変数もY(従属変数)に影響を与えるわけですが、そもそもの前提が「心理学実験において」である以上、「因果的検討」を行うのは実験者が設定する独立変数以外にあり得ません。


よって、Xが「研究者が操作する」「独立変数」であり、Yが「従属変数」であることがわかります。

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢③は誤りと判断できます。



④ Xは、値又はカテゴリーが2つ以上設定される。

先述の通り、「変数」とは対象や状況によって変わる数字であり、本問におけるXは「独立変数」であることがわかります。

心理学実験において、研究者が設定する「独立変数」のことを要因と呼び、要因とは複数の水準を包括する概念です。


繰り返しますが、変数とは対象や状況によって変わる数字ですから、1つだけということはあり得ません。

性別なら男性と女性(生物学的には)、血液型なら4種類、周波数ならHz数に従って存在するわけです。

これらの例の前半部分(性別、血液型、周波数)が「要因」であり、後半部分(男女、4種類、Hz数)が「水準」と呼ばれます。

研究者は従属変数(本問ではY)と因果関係があると思われる独立変数(=要因、本問ではX)を設定することになりますが、そこには2つ以上の値、すなわち2つ以上の水準が含まれていることになります。


つまり、独立変数(=要因、本問ではX)が1つであっても、そこには自ずと2つ以上の水準が含まれているということになりますから、心理学実験を行う際には必ず2つ以上の値やカテゴリーと従属変数との因果的関係を調べることになります。

もちろん、要因自体を増やすことも可能であり、その場合は要因数に従ってその研究計画は「○要因計画(○の部分は要因数)」と呼ばれます。


なお、要因の数は可能な限り2つ以内に抑えることが望ましいとされています。

なぜならば要因が多すぎると、検定方法が複雑になることに加え、検定結果の解釈も難しくなるので、明快な結論を導きにくくなってしまいます。

これに対して、水準数は多くてもかまわず、多ければそれだけ多くの情報を得やすくなると考えられています(もちろん、実験に不要な水準を増やすのは論外)。


よって、選択肢④が正しいと判断できます。



⑤ 結果の分析には、XとYの相関を求めるのが一般的である。

本選択肢に答えるには、問題文にある「因果」という表現と、本選択肢の「相関」という表現の違いについてきちんと理解しておく必要があります。

まず、心理実験の目的は相関関係の特定ではなく、因果関係の特定にあります。

相関とはXとYが関連していることを指し、因果とは原因Xによって結果Yが生じることを指しますから、相関は因果よりも広い概念であり、因果を包含するということになります。


この点は「相関」に関する説明で何度も注意をされることです。

相関は「因果関係」を示すのではなく、あくまでも「あっちが上がったら、こっちも上がる(もしくは下がる)」ということに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもありません。

例えば、かき氷の売れ行きと水着の売れ行きは相関があるかもしれませんが、これら同士に因果関係がないというのはよくわかると思います(別の要因、例えば気温などが介在している)。

「相関関係は因果関係を表すのではない」というのは、どのような状況においても変わらないルールのようなものですので、しっかりと理解しておくことにしましょう。


以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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