公認心理師 2020-5

2020年12月22日火曜日

 公認心理師試験はじめての遊戯療法に関する問題ですね。

正答の人物は、まさに遊戯療法の歴史を語る上で欠かせない人物ですから、しっかりと押さえておきたいところです。

当然ですが、正答以外の人物の業績も把握することが学ぶ上で大切なのは言うまでもありませんね。


問5 遊戯療法と最も関係が深い人物として、正しいものを1つ選べ。

① A. Ellis

② A. Freud

③ A. T. Beck

④ H. A. Murray

⑤ J. B. Watson



解答のポイント

遊戯療法の大まかな歴史について理解していること。

正答以外の選択肢の人物についても、大まかな業績を把握していること。



選択肢の解説


① A. Ellis

アルバート・エリスは論理療法の創始者です。

ベックによる認知療法とほぼ同時期に登場したのが、マイケンバウムの自己教示訓練やエリスの論理療法です。

エリスは、カレン・ホーナイの研究所で精神分析のトレーニングを受けていましたが、1955年ごろに精神分析から離れて行動療法や一般意味論、実存主義などの影響を受けながらABCシェマという独自の理論を構築し、論理療法を創始しました。

論理療法はその後、論理情動行動療法と呼ばれるようになります(他にも合理情動療法と呼んだりもします。2018追加-92では論理情動行動療法という呼び名で出題しているので、本当は統一してほしいなと思うのですが)。


論理療法は、出来事(A)そのものが悩み(C)を引き起こすのではなく、出来事に対する物事の受け取り方(B)が悩みを引き起こすと考える、いわゆるABCシェマ(モデル)によってクライエントの悩みを説明しようとします。

この出来事に対する受け取り方を「信念」と呼び、この信念に変化をもたらすことで悩みを和らげようとします。

このように論理療法では、ABCシェマの構造を学び、非合理な信念を見出して、それに代わって問題を軽減させる思考、すなわち「合理的な信念」を使用するよう勧めます。

信念の変更に抵抗がある場合は、論駁(要は論破すること、説得すること)を行います。

認知的構えを変更させる手法が主体であり、そのことで行動の変容を図っており、認知行動療法の発展に大きな影響を与えています。


このように、エリスは遊戯療法と関連が深い人物とは言えないことがわかります。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。



② A. Freud

アンナ・フロイトは、フロイトの末娘であり、教育者として経験を重ねたのちに児童分析という新しい分野を開拓しました。

アンナ・フロイトの功績としては「精神分析療法の児童への適応」と「自我の防衛機制に関する理論の展開」が主なものと言えます。


アンナ・フロイトは、精神分析を児童へ導入することを試み、自由連想法の代わりに遊戯療法を取り入れました。

この自由遊び中心の児童分析の中でアンナ・フロイトが強調しているのは、子どもへの教育的配慮の必要性があり、治療者は魅力的な大人という地位を得ることが大切であるということです。

また、子どもの面接を主としながらも、子どもの環境要因である保護者の役割も重視して、親との面接の必要性も主張し、保護者への面接を実施し積極的に子どもにとって成長促進的な環境を整えることを目指しました。


つまり、アンナ・フロイトは、大人と子どもの心性の違い、立場の違いに着目し、児童分析の技法を展開していったわけです。

特に彼女は、日常生活において両親と結びついているという点で、大人と子どもに最も大きな違いがあると考えていたのです。

これに対し、メラニー・クラインは、大人にとっての自由連想が子どもにとっては遊びに相当するだけであるという考えに基づき、遊びを用いる以外は成人にも児童にも同じ技法を用いました。

この意見の相違に関しては、当時、長い論争となりました。


アンナ・フロイトは、こうした児童分析を通して、実際の事例から自我の防衛機制についても理論を提示・展開しています。

「自我と防衛」(1936)という論文の中で、主要な防衛機制として、退行、抑圧、反動形成、分裂、打ち消し、投影、取り入れ、自己への向き換え(人に向ける怒りを自分に向ける)、逆転(愛を憎しみに変える)、昇華の10種類を挙げ、体系化を行いました。

更に、幼児期においては、現実の危険、不快を避けるための現実否認、自我機能の制限などを明らかにしました。


即ち、アンナ・フロイトは、児童への遊戯療法を発端として、精神分析の諸問題を整理・明確化し、父フロイトから継承した防衛理論を発展させるとともに、精神分析的自我心理学の確立に寄与しました。

以上より、選択肢②が適切と判断できます。



③ A. T. Beck

アーロン・ベックは認知療法の創始者として知られています。

元々は精神分析を学んでいましたが、とある患者とのやり取りで「自動思考」の着想を得ました。

ベックがある患者に自由連想法を行っていたところ、怒りだしてベックを非難するという出来事が起こりました。

その後、患者は「言うべきではなかったのに言ってしまった」という罪悪感をもっていることが明らかになり、その考えが自動的に現れるような特徴を有しているとベックが気づき、これを「自動思考」と名付けたのです。


こうした着想と、ベック自身が精神分析を裏付けるような研究に成功できなかったこと、彼自身が教育分析を受けることが嫌だった(かもしれない)ことなども重なり、精神分析から離れて認知療法を体系するに至ります。

認知療法の本質は、クライエントの認知の歪みの是正にあります。

その是正の直接的な治療対象は「否定的自動思考」であり、上記のように当人の思考に熟慮なく入り込んでくる習慣的な思考です。

この存在によって、知らぬ間に否定的感情をもたらされ、うつ気分を生じさせると説明されています。

そのため、認知療法は主にうつ病に有効であると一般には確かめられていますが、他にもパニック障害や不安障害、統合失調症といった対象にも有効性が認められています。


そして、スキーマ、仮説、信念などと呼ばれている上位の概念が否定的自動思考の背景にあり、これらは幼児期から次第に形成されるとされ、これらの歪みも認知療法の重要な治療・予防の対象とされています。

認知では「スキーマ(深層にある信念や態度などの認知構造)→(推論の誤り)→自動思考」があり、推論の誤りは以下のものが示されています。

  • 恣意的推論:証拠もないのにネガティブに
  • 選択的注目:明らかなものには目もくれず、些細なネガティブに
  • 過度の一般化:坊主憎けりゃ袈裟まで
  • 拡大解釈と過小評価:失敗を人格全体に、成功を小さなものと思う
  • 個人化・自己関係づけ:関係ないものを自分に関係すると思う
  • 完全主義・二分的思考:白黒つけたい

こうした推論の誤りに対して、認知を同定・検証・修正するといった関わりや、ホームワークとして非機能的思考記録を取ってもらうなどの方法を採ることが多いです。

なお「非合理的信念」という考え方はエリスの論理療法にもあり、論理療法ではこれを論駁するという方法を持って対応しています。


このように、ベックの業績は遊戯療法と関連が深いとは言えないことがわかります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。



④ H. A. Murray

マレーは、TAT(Thematic Apperception Test:主題統覚検査)の考案者です。

モーガンと共著で1935年に「空想研究の一方法」という論文を著し、この中で紹介されたのがTATです(TATはマレーが主な考案者だが、なぜかこの論文のファーストオーサーはモーガンだった。いろいろ事情があるんでしょうね)。

TATは、マレーを中心としたハーバード大学心理学クリニックのスタッフが考案した、絵に対して作られる物語から、作った人のパーソナリティの特徴を明らかにしようとする心理検査です。

TATは、ロールシャッハと共に投影法の双璧とも言うべき存在でしたが、解釈の困難さなども相まって、現在では使用者が決して多いとは言えない検査です。

もちろん、心理検査の使用頻度に関しては地域差や個人差が大きいので一概には言えませんが、外国の文献も減少傾向にあることから使用頻度は少なくなっているだろうと思います。


TATは、多様な受け取り方ができる場面を描いた図版30枚と、何も描かれていない白紙図版1枚から構成されています。

この31枚から何枚かを選び(マレーの原法では20枚を選ぶ)、被検査者に1枚ずつ見せて、それぞれに物語を作ってもらいます。

展開される物語のテーマから、クライエントが当面している困難さの内容やそれに対する態度、願望や周囲への期待などを読み取る検査です。

TATでは、人物図版が多く、人間関係の様相が現れやすいとされています。

それ以外にも、社会的態度、自己の役割の自覚、他人の役割に対する期待、直接的質問では把握しがたい不満、不安などを探ります。


TATはマレーの提唱した欲求圧力理論を基盤としており、パーソナリティを欲求と圧力の相互作用で捉えます。

この理論では、物語の主人公はほぼ被検査者自身を表していると捉え、主人公の衝動、願望、意図など、彼(彼女)が衝動、願望、意図等の人間が環境に向かって発する力(=欲求)と、環境から主人公に対して発する力(=圧力)とを詳細に吟味すれば、被検査者の行動の支配的な動機と環境の捉え方を理解できるというものです。


先述したようにTATは実施する人が少なくなっているが、その背景には施行法や解釈法に未確定の部分が大きいということが挙げられます。

ですが、ロールシャッハがパーソナリティの骨格部分を明らかにするのに対し、TATは肉の部分を明らかにするという見方もあり、「いろいろ定まっていないから使えない」と一蹴できるほど薄っぺらいものでもないという認識は重要ですね。


このようにマレーの代表的な業績はTATの考案であり、遊戯療法と関連が深い人物とは言えません。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。



⑤ J. B. Watson

ワトソンは、アメリカの行動主義心理学の主唱者です。

少年時代はなかなかのならず者で、拳銃を撃って傷害事件を起こすほどでした。

最初に入った大学を辞めてシカゴ大学に入学し直したり、動物心理学で哲学博士の学位を得るなど異色の経歴を持ちますが、優秀だったのは間違いなく自身が設立した動物心理学実験室で研究を次々に行い、1908年には高額の年棒と優れた実験設備をもってワトソンを助教授として大学に迎え入れられました。


ワトソンは1912年にキャッテルに招かれてコロンビア大学で「行動主義者が考えているような心理学」という表題で講演を行い、それが研究誌に掲載されました。

これが「行動主義」という言葉が表に出た最初です。

ワトソンは、心理学は人間の行動を扱う自然科学の一分野であると考え、その目的は行動の予測と統制で、研究対象は観測可能な物理刺激に対する有機体の筋運動、腺分泌、それらによって引き起こされた環境の変化であるとしました。

それまでの心理学では、その対象は「意識」とするのが常識でしたが、これは仮定にすぎないものであり注意するに値しないというのがワトソンの主張で、これは若手の心理学者たちから強い支持を受けて、37歳という若さでアメリカ心理学会の会長に選出されました。

ワトソンの理論は、スキナー、ハル、トールマンなどの新行動主義に発展的に継承されたり、ウォルピやアイゼンクなどの行動療法の創始にも大きな影響を与えるなど、各方面に絶大な影響力をもっていました。


その後、ワトソンはパブロフの研究から理論を発展させていきましたが、さまざまなスキャンダルや研究倫理の問題を起こし、大学から罷免されました。

しかし、そこから実業家として財をなし、その傍らで心理学の研究を再開するなど波乱に満ちた人生を歩んだ人です。


このようにワトソンは行動主義に関連する重要人物であり、遊戯療法と関連が深い人物とは言えません。

ちなみにワトソンは子どもを使った実験を先駆け的に行っていますが、それは遊戯療法とは関係がありません。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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