臨床心理士 査定面接:H23-40

2020年10月15日木曜日

心理アセスメントに関する記述について、適否を判断する問題です。

心理アセスメントと表記されている場合、個別の心理検査を指すこともあれば、インテーク面接等での見立てを行う上でのアセスメントを指すこともあります。

本問では面接場面・検査場面の両方にまたがる内容になっていますね。



A.心理臨床機関における心理アセスメントのフィードバックは、クライエントの来談意欲を高めることにならない。

この場合の「心理アセスメント」とは、初回面接のことを指す時もありますし、何らかの心理検査を指すこともありますね。

こうしたクライエントの状態を見立てるという行為ののち、カウンセラー側の見立てを伝えることをフィードバックと言います。

そもそも「見立て」とは、クライエントの過去~現在~未来を含む、クライエントの問題・症状に対するストーリーになります。

当然、未来も含むストーリーですから、どのように改善を目指すのかに関するカウンセラーの考えも含んだものになります。

こうしたストーリーを伝えること(=フィードバック)によって、それまで「手が届かないところにある何か(=症状や問題)」によって失っていた自身へのコントロール感を取り戻し、一定の安定を送ることができます(あぁ、こういうことで自分の問題は起こっていたのか、という理解による安定ですね)。

こうした問題・症状に対して一定のストーリーを示すということで、暗中模索の状態から方向性のある認識になるので、クライエントの来談意欲を高める効果も期待できます。

非常に単純化した言い方をすれば、フィードバックによって「やるべきことが取りあえず見えてくる」ので、何をすればいいかわからない状態よりも前向きに取り組みやすくなるということですね。


もちろん、見立ては仮説であり、クライエントにフィードバックされ、意見をもらい、修正される必要がありますし、その修正の繰り返し自体がカウンセリング過程と呼ぶこともできるでしょう。

つまり、アセスメントの結果をフィードバックするという仕組み自体にクライエントが積極的に関わるようにすることが大切であり、それができれば既にクライエントは意欲的に自身の問題に取り組んでいるということになります。


まとめると、アセスメントのフィードバックにクライエントが能動的に関わるようにすることがそもそもフィードバックの仕組みですし、さらに、フィードバックされることで問題に対して一定のストーリーを示されるわけですから意欲的に問題に取り組みやすくなるということです。

以上より、本選択肢は×であると判断できます。




B.投映法を通して、クライエントを理解するためには、検査者の共感能力を必要とする。

この選択肢は「臨床心理士試験」か「公認心理師試験」かで、適否が変わってくるかもしれません。

というか、公認心理師試験では出題されない類の内容だろうと思います。

実際、公認心理師試験では、ほとんど投映法に関する問題は出ていませんね。

出題されているのはTATに関する問題(2018-115)や、バウムテストの選択肢を含む問題(2018追加-90 ※ただし、本問は除外されている)になりますが、これも解釈に関する突っ込んだ内容にはなっていません。

本選択肢の記述は、投映法の解釈やトレーニングをしていく上で、大切な考え方になると個人的には思っています。

ただ、そこに客観性・エビデンスは存在しません(私の知る限り、ですが)から、公認心理師試験では取り上げられないでしょうね。


さて、投映法を行うときに「検査者の共感能力を必要とする」とはどういうことなのか考えておきましょう。

投映法の解釈過程では、クライエントの反応について「私も同じように見えるか(反応するか)どうか」という思考が大切になります。

同じものが見えるかどうか、見えるのならばそれはどういう心理傾向によって可能なのか、見えなければどのような心理状態であれば見ることが可能なのか、という考え方をしていきます。


もう少し図式的に説明していきましょう。

「A」という反応が出るなら、それはクライエントの「B」という心理傾向によって生じる。

そしてクライエントの「B」を理解するために、検査者自身の「B」に類するような心理傾向を通してクライエントの「B」を見ていくわけです。

このため、カウンセラーに必要な条件として「純粋性」であったり、「自らの感情に明るいこと」が重要になってくるわけですね(カウンセラーが自分の気持ちを分かっていないと、カウンセラーの気持ちを通してクライエントを理解するという手順を踏めないから)。

カウンセラー自身の体験・感情を通してクライエントを理解しようとするのは、カウンセリングにおいて自然に行われていることの一つですね。


そして、それを補完するものとして「これを見る人には、こういう解釈がなされる」という知識があります。

こういう知識はクライエントに当てはめるためだけに存在するのではなく、ある反応がクライエントの何を反映しているのかについての理解を深めるために活用されるものです。


ちなみに、こうしたカウンセラーの共感能力を通してクライエントを理解するというアプローチは、例えば、「逆転移の活用」「フォーカシング」といった視点からも説明されている事象ですね。

ここにエビデンスを介在させることはとても難しいです。

なぜなら、「共感能力とは何ぞや?」「それは数値化できるのか?」といったところから議論が進んでない領域であるからです(もちろん、個々人の範囲で色々言っている人はいますけどね)。

いずれにせよ、数値化は難しいけど、臨床実践上とても重要な視点である、という捉え方をしておくのは悪くないだろうと思います。


以上より、本選択肢は〇と判断できます。




C.心理アセスメントの所見には、問題となる点だけではなく、クライエントの健康な側面にも目を向けることが望ましい。

この選択肢は当然〇なのですが、この選択肢表現では初心者の方たちに誤解を与えるだろうと危惧しています。

どういう誤解かというと「クライエントの問題となる点と、健康な側面が別個のものである」というものです。

有名なKannerが「症状の意義」の中で述べているように、クライエントの症状には「問題解決の企図」という側面があります。

つまり、クライエントが必死になって自身の内にある問題に対処しようとして藻掻いている、その在り様が「症状」と認定されてしまうということです。

例えば、強迫症状は、クライエントが自らの不安に対処しようとしたという側面がありますね。


カウンセラーに限らずクライエントの心理支援に関わる人には、症状に対して「クライエントを支援してきたもの」「クライエントを一時とはいえ支えてきたもの」という理解が重要で、その上に「症状を生み出したクライエント 及び クライエントを支えてきた症状に対する畏敬」を持っておくことが必須だと私は考えています。


つまりは、クライエントの問題点と健康な面は表裏一体であることが多く、これらを分離して考えていくことは実践上勧められません。

クライエントの症状の中には、必ずクライエントを支えるヒントがあるという視点が大切です。

ですから、本選択肢の内容は正しいですが、表現についてはちょっと引っ掛かりがあります。


さて、もっと表面的に考えていきましょう。

カウンセリングという営みをどのように捉えるかは状況や信念によってさまざまでしょうが、「症状や問題を改善していくため」のものであるという見方は、まぁ、しても悪くはないでしょう(改善がどういう意味をもつか…というややこしい議論はさておき)。

改善を目指していくうえで欠かせないのは、クライエントの「健康な側面」になります。

当然、アセスメントを行うときにも、クライエントの「健康な側面」という「治療の伴走者」について詳しく見ていくのが自然です。


以上より、本選択肢は〇と判断できます。




D.心理臨床機関における心理アセスメントのフィードバックは、クライエントに対してのみ行われる。

これは様々な臨床場面を想像すれば自ずと答えが出る問いですね。

例えば、学校で特別支援学級への措置替えを検討するために行われたアセスメントの場合、その内容は教育委員会、保護者らと共有することになりますね。

また、医療機関などでは、支援に必要な情報として支援者間でアセスメント結果を共有することもあるでしょう。

公認心理師法第41条に「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない」とありますが、上記のような場合は「正当な理由」に該当します。


よって、クライエントに対してのみフィードバックが行われるという理解は、ごく狭い範囲でのカウンセリング状況でのみ当てはまるものと言えますから、全般的な理解としては誤りと言えますね。

以上より、本選択肢は×と判断できます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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