臨床心理士 ロールシャッハ:H8-43

2020年02月11日火曜日

ロールシャッハの解釈仮説に関する問題です。
心理学の理論って、どこまでいっても「仮説」にすぎないと思うのです。
自然科学領域の「理論」の枠組みとは大きく異なるように思います。

心理学は、どちらかと言えば、地層学、気象学に近いんじゃないのかな、と個人的には考えています。
自然科学に近づきたい人は多いのでしょうけど。



A.「反応領域」は、課題への取り組み方を表している。

反応領域のカテゴリーは、被験者が外界をどのような仕方で把握するか、あるいは与えられた課題をどのような仕方で処理するか、すなわち、総合的か、分析的か、演繹的か、帰納的か、抽象的か、具体的かなどの認識様式を反映します。
また、これらの諸因子から、完全癖の有無、成熟度、知的水準などの人格特性を知ることも可能です。

Wであれば、総合的、抽象的に物事を捉え、処理することを表しています。
優れたWの場合、複数の部分反応(DとかDd)を「総合的」に捉え、目の前の現実(DとかDd)から離れた把握の仕方(つまりは抽象的)をするということを示しています。

上記にもあったように、多くのD反応は、目の前の図版のある部分を「何か」に見立てることが多いため、目の前の現実を処理するという意味で「現実的・具体的に物事を捉え、処理をする」ということになります。

Ddになると、人があまり注目しないような部分に注目するという意味で、一般的ではない物事の捉え方、などと大きく解釈されます。
従来、Ddの意味づけに際して、現実からの逃避、不安、劣等感、完全癖などの特徴があげられているが、実証的研究による裏づけは乏しいですね。
片口法ではDdを、dd、de、di、drなどと細分化しています。

更に、Rorschach(1976)は、S領域について「S反応が一つ以上あるときには、問題性を疑ってみることである。この反応は、頑固で風変わりな《正常者》に最も多く見られ、ときに拒絶的な支離滅裂の統合失調症者に多く、てんかん患者では比較的少ない。(中略)この反応は、常になんらかの反対傾向を予想させるのである」としています。
また、Rapaport(1946)は「懐疑、すなわち自己自身の考えに対する抵抗」を反映するものといい、Brussel(1950)は「多くのSを示す被験者は、彼自身の強さと個性に自信を持っている」とも述べています。
このほか多くの研究者たちも、この反応が、何らかの意味で、反対傾向に関係を持つという点で見解は一致していますね。

S反応に関しての解釈はそう難しくないだろうと思います。
多くの人が図版の色がついている部分、つまり「図」に注目して反応するのに対して、S反応を示している人は「地」に注目しているわけです。
よって、多くの人が注目するところを見ずに、多くの人が見ないところを見ようとするという意味で、「反対傾向」「個性に自信」などの解釈が生じるわけです。
実践上は大きく「反対傾向」と見なしておくと良いだろうと思います。

ちなみに、不登校児やひきこもりでS反応があるのは良い傾向ですね。
あまり動いていないように見えても、彼らの中に何かしらの「反対傾向」というエネルギーがあることが確認できるわけです。

いずれにせよ、反応領域は、物事の把握の仕方、それに対してどのように関わり、取り組んでいくのかを示すと言えるでしょう。
よって、○になります。



B.「人間運動反応と色彩反応の比」は、情緒統制の強さを表している。

Rorschachは、ロールシャッハ・テストから、被験者が具体的に何を求め、どのように行動するかは知ることができないが、ものごとをどのように体験していくかを体験型によって知ることができると述べています。
本選択肢の「人間運動反応と色彩反応の比」とは、彼の言う体験型のことになります。
ヘルマンロールシャッハは、運動因子Mと色彩因子ΣCとの相互関係が、内的な精神活動を示す内向的要素と、外界への関心を示す外拡的要素との関係を反映すると考え、これを《体験型》と名づけ、四つの類型を提唱しました。

体験型は情緒統制の強さを示すものではなく、ものごとの体験の仕方についてみるものです。
例えば、今日の晩御飯をスーパーで考えるときに「あっ、おいしそう!」と決めちゃうのが外拡型の人で、「昨日の献立は〇○だったし…」と決めるのが内向型の人です。
物事の判断基準において、思考と感情のどちらが優位であるか、と言うのが基本的な視点であると言えます。
他のところでも書いた覚えがありますが、これはそもそもユングの「内向・外向」の視点を取り入れたものですから、そちらを引いてみるのも役立つでしょう。

さて、では選択肢後半部分の「情緒統制の強さ」は何で見るのかを考えてみましょう。
情緒統制における外的統御を見る指標はFC:CF+Cがその代表的なものです。
FCとはカラー反応の中でも「概念」に包まれた反応と言えます。
「概念」に包まれているという表現がわかりにくければ、「比較的形がハッキリしているものに色を付加している」反応というイメージでしょうか。
例えば、赤いリンゴ、みたいな。

CF⇒Cとなるにつれてその形のハッキリ度が減っていきます。
CFであれば「血が垂れている」などの反応です。
「垂れている」という表現で、ぼんやりとですが形が想起できるでしょう。
「これは血です。真っ赤ですね」などはCになるでしょう。

この辺の反応をどうコーディングするかは、学派によっても違いがあるかもしれません。
私はエクスナー法なので、それに基づいたコーディングで説明しています。

いずれにせよ、FC⇒CF⇒Cの順で「色という感情を賦活するもの」が「形という概念にくるまれている」割合が減っていくわけです。
よって、FCが多い方が「情緒統制が高い」とされていますし、CF+Cが優位であれば「情緒統制が弱い」と解釈されます。

以上より、本選択肢は×と判断できますね。



C.「形態水準」は、現実をとらえる適切さの程度を表している。

形態水準は、ものの見かたの公共性、現実吟味の良否、知的水準、自己統制力など人格の重要な機能を捉えるのに、もっとも有効な手がかりとなるとされています。

片口(1974)は、形態水準を総合的に評価する目的で、F+%、ΣF+%、R+%の3種の計算式を用いることを提案しています。
  • F+%:
    Σ〔(F+)+(F±)〕/ΣF×100で算出する。ブロットの形態因子にのみ依存してなされた反応に関するものであり、比較的限定された状況における、自己統制や現実吟味の程度を示すといえる。
  • ΣF+%:
    Σ〔(F+)+(F±)+(一次的F+)+(一次的F±)〕/(ΣF+Σ一次的F)×100で算出する。一次的形態反応とはM、FM、FC、FT、FV、FYといった形態が表立ったものである。これはブロットの様々な知覚的属性を含んだ、一次的形態反応に関するものであり、この指標は、より開かれた変化に富んだ状況における、自己統制や現実吟味の程度を表す。
    ※一般のプロトコルにおいて、F+%とΣF+%との間に大きな差は認められず、高い相関を持つ。一般成人でこれらが50%以下になることは稀で、平均値は78.8%である。これらの指数の値は高いほど望ましいわけではない。高すぎるこれらは、杓子定規、過度の几帳面さ、抑制的傾向など、堅苦しく柔軟性に乏しい人柄を反映するであろう。また、50%以下を示す被験者は、情緒的不安定、衝動性、低い知的水準、現実吟味の弱さなどの問題を持つ可能性がある。Rの多少にかかわらず、40%以下になるときには、成人である限りきわめて問題である。とくに平均値以下のRを示すプロトコルにおいては、知的欠陥、人格障害などを考慮する必要がある。
  • R+%:
    Σ〔(F+)+(F±)+(一次的F+)+(一次的F±)〕/R×100で算出する。上記2つが各ブロットの刺激特性との対応を捉えているのに対し、これはプロトコル全体における形態質の水準と、割合を示した指標である。これは、自己統制や現実吟味力が、その人のパーソナリティの中で占める重みと、安定性を表していると解釈できる。
以上より、形態水準は現実吟味、すなわち現実を捉える適切さを見る指標と見なして相違ありません。
よって、本選択肢は〇になります。



D.「平凡反応」は、社会性や共通感覚を表している。

平均数は少なくとも4で、一般には5あるいはそれ以上のPが見られます。
Pの存在は、適度の公共性を示す行動を取れるか否かを示すとされています。
ただし、P%が高すぎる場合(40%以上)、あまりに常識的で、紋切り型の思考を示すと見てよいでしょう。
また、Pが少なすぎる場合(P≦3)、社会的協調性に乏しく、ときに著しく内閉的で、正常な対人関係がもち得ない人柄を推定できます。
知的欠陥、極度の不安状態、現実との接触を喪失した精神病などにおいて、Pの減少が顕著です。

エクスナー法での平均数はRによって違います。
Rが16以下なら期待値は4~6個、Rが17~28で青年以上なら5~7個、12歳未満なら4~7個。

平凡反応からわかるのは、どのような行動が期待され、受け入れられるのかについての手がかりが容易に見つけられるような場面で、明らかに慣習的でありきたりの反応をするかどうかについてです。
よって、本選択肢は〇とはんだんできますね。



E.「反応内容」は、ステレオタイプな思考の程度を表している。

反応内容は、被験者の観念内容の豊かさ、常識性、価値観などを反映します。
また、このカテゴリーは、地域的・文化的条件の影響を受けるとされていますね。
さらに教養や知識、不安の内容や性質をも反映します。
また、その分類の角度や視点を変えることによって、人格特性についての理解を深めることが可能です。

このように本選択肢は×であると言えますが、選択肢後半の「ステレオタイプな思考の程度」は何で見るのかを考えてみましょう。
ステレオタイプな思考の程度を示すのは、P反応の多さ、F+%の高さ、A%などから判断されることが多いです。

P反応は平凡反応ですから「多くの人が示す反応」という意味でステレオタイプな見方、と見なすことも可能でしょう。
また、高いF+%も「現実検討が高い」ことを示していますが、それは紋切り型の思考と紙一重な面もあります。
A%は動物反応の割合を指しますが、ロールシャッハ図版が動物に見える箇所を多く含んでいることを踏まえると、あまり個性的な反応をしていないという点でステレオタイプという考え方もできなくはないでしょう。
ただし、A%のあまりの高さは知的能力の問題と見なすのが、資格試験では定説です。

以上より、本選択肢は×と判断できます。

Share /

0 件のコメント

コメントを投稿

About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

Followers

CONTACT

名前

メール *

メッセージ *

© 公認心理師・臨床心理士の勉強会
designed by templatesZoo