臨床心理士 ロールシャッハ:H6-49

2019年11月28日木曜日

臨床心理士のロールシャッハ問題、平成6年出題の内容になります。
かなり細かい内容が出ていますが、これ以降、同様の問題は一切出ていませんので(あくまでも公開されている範囲、での話ですけど)、覚える必要があるかは不明です。
が、一度は出題されたわけですから、押さえておきましょう。


a.Buhler,C.らが創案したものを片口が翻訳した修正BRSは、適応状態の概要を把握するのによい尺度として知られている。

BRS(Basic Rorschach Score)は、Buhler(1949、1952)が作成したもので、人格の客観的な診断を可能にしようとしたものです。
彼は、精神疾患の構造は、人格統合の基本的障害から生ずると考えました。
この人格統合の度合いをlevel Ⅰ(適応)、level Ⅱ(葛藤)、level Ⅲ(欠陥)、level Ⅳ(現実喪失)にわけ、得点によっていずれかに分類されるとしました。

一般正常者は適応の水準、神経症群は葛藤の水準、アルコール中毒・知的欠陥・てんかん・性格異常などは欠陥の水準、統合失調症の大部分は、現実喪失の水準のそれぞれに評定されています。

片口(1959)は、BRSがアメリカのデータをもとに作成されていること、項目数が余りに多く実際に使用しにくい点を解決するため、修正BRSを作成しました。
片口は修正BRSの示すものとして、「サイコセラピーなどによって生じてくる、人格変容の相対的変化を、客観的に把握する際にその真価を発揮するであろう」としています。
BRSも修正BRSも、人格の適応水準を把握するものであるといえますね。

以上より、本選択肢の内容は○と判断できます。



b.Klopfer,B.らによるRPRSは、治療の予後を予測しえるような自我の強さの指標として知られている。

Klopfer(1951)のRPRS(Rorschach Prognostic Rating Scale;ロールシャッハ予後評定尺度)は、予後判定に用いるものとして、潜在的可能性として存在している自我の強さをもあわせて測定しようと考えられ、このため付加反応も合わせて計算するようになっています。

この尺度は、現実吟味、情緒的統合、自己実現、現実状況の統御などの面から、自我の強さを評定するものです。
Klopferは「サイコセラピーにおける患者の予後について、彼の現在の適応水準だけでなく、すぐには役立たないが、治療を通じて役立つようになる自我の強さ、すなわち潜在的な自我の強さを考慮することが大切である」という観点からこの評定法を考案しました。

ただし、河合(1969)はこの点について「彼(Klopfer)のように、潜在的な自我の強さというよりは、「広い意味での自我の強さ」と考えたほうが妥当ではないか。そして、この自我の強さは、個人にとって、ある程度きまったものではあっても、もちろん、不変のものではなく、たとえば心理療法によって増加しても不思議なものではない」と述べています。
なお、この計算のためには、ロールシャッハを試行するときに、質問や限界吟味を十分にしておかねばならないとされています。

いずれにせよ、上記より本選択肢は○と判断できます。



c.Exner,J.E.によるSCZIは、信頼性のある6項目からなる分裂病指標として知られている。

記述は精神分裂病指標(SCZI)のことで、現在のPTI(知覚と思考の指標)を指しています。
この研究は1986年に始まり、非患者、統合失調症者、非統合失調症者を含む多様な被験者標本に対し、50以上の判別関数分析が行われました。

この指標の臨界値は4です。
つまり、4つ該当すれば統合失調症が存在するというかなりの可能性を示すが、偽陽性である可能性も高いです。
5つや6つの該当は、より決定的で、統合失調症である高い可能性と、偽陽性である非常に低い可能性とを示します。

指標は、SCZIのときには…
  1. X+%<.61かつS-%<.41、またはX+%<.50
  2. X-%>.29
  3. SumFQ->SumFQu、またはSumFQ->Sum(FQo+FQ+)
  4. LVL2>1かつFAB2>0
  5. Sum6>6またはWSum6>17
  6. M->1またはX-%>.40
…となっていました。
これがPTIになってからは…
  1. XA%<.70かつWDA%<.75
  2. X-%>.29
  3. LVL2>2かつFAB2>0
  4. R<17かつWSum6>12またはR>16かつWSum6>17
  5. M->1またはX-%>.40
の5つとなっています。
ちなみに、SCZIからPTIに名称変更がなされたのは、この指標に該当したからといって必ずしも統合失調症ではないということがわかってきたからです。
だからSCZI(統合失調症の略語)から、PTI(知覚と思考の指標)という表記に変更がなされ、項目の修正も行われたということです。
当初は統合失調症の鑑別に使われていたけど、それが統合失調症に限らず精神的な問題を広く検知するのに使われている、というものとして、クルト・シュナイダーの一級症状がありますね。
何となく成立過程が似ています。

以上より、この問題が出題された当時は○になると判断できます。
ちなみに、現在では○にならないですね。



d.Piotrowski,Z.A.らによるアルファ指標は、脳の器質障害の有無を査定するのに有効なことが知られている。

Piotrowski&Lewis(1950)は、エネルギーとそれへの統制力という点から、統合失調症を他の疾患から鑑別するためにアルファ指標を作りました。
これはW、SumC、C′ショック、F+%<70%について検討する方法です。
よって、「脳の器質障害の有無の査定」という記述は誤りと判断できるので、この選択肢が×となります。

ちなみに「脳の器質障害の有無の査定」のサインアプローチは、Piotrowski(1937)のOrganic Signs(脳器質疾患指標)になります。
彼は、脳損傷を認める18名の患者を、他の臨床群(転換ヒステリーを含む15名)と比較することによって以下の項目を抽出しました。
  1. Rは15以下である
  2. ひとつの反応を与えるのに1分以上を要する
  3. Mは1を超えない
  4. Cnが存在する
  5. F+%が70%以下である
  6. P%は25%以下である
  7. いくつかの図版に同じ反応を3回以上繰り返す(PSV)
  8. 適切でないことを承知しながら反応してしまう
  9. 決定することができず、どうしてよいかわからず、依存的で、当惑して検査者に確認を求める
  10. いくつかの図版に同じ語句を繰り返す
この10項目のうち、5項目以上に該当すれば、器質疾患をみなしてよいとピオトロフスキーは考えています。
以上より、本選択肢は×ということがわかりますね。




e.Lerner,P.M.によるDefence Scaleは、人格障害の査定に有効なものとして知られている。

Kernbergの防衛の理論的概念化と、Mayman(1967)やPeebles(1975)の臨床的検査研究に基づいて、Lernerら(1980)は、発達的に低次水準の防衛機制を特徴付けていると考えられる特定の防衛操作を評価するための、ロールシャッハ・スコアリング・マニュアルを考案しました。
スコアリング・マニュアルは、スプリッティング、脱価値化、理想化、投影性同一視、否認といった特定の防衛に基づいた項目に分けられています。
各項目内では、その防衛が定義され、そのロールシャッハ指標が示され、臨床例が提示されております。

以上より、本選択肢は○と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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