公認心理師 2019-119

2019年10月20日日曜日

問119はストレス反応に関する理解を問うています。
明らかに瑕疵のある選択肢が含まれているので、この辺は解きやすいところかもしれませんね。

問119 ストレス反応について、誤っているものを1つ選べ。
①身体的ストレス反応は、中枢神経系に引き続き内分泌系に現れる。
②身体的ストレス反応には、交感神経系と副交感神経系の両方が関わる。
③心身症とは、発症や経過に身体的ストレス反応が関わる身体疾患である。
④ストレッサーの種類によって、心身に生じるストレス反応の内容も決まる。
⑤心理的ストレス反応には、抑うつ、不安、怒りなどのネガティブな感情が含まれる。

過去問でも何回も出てきている領域になりますね。
2019年度のストレス関連の問題はかなり解きやすくなっています。
素朴に、一般的感覚で解答することもできますね。



解答のポイント

ストレスによる心身の反応を理解していること。



選択肢の解説


①身体的ストレス反応は、中枢神経系に引き続き内分泌系に現れる。

汎適応症候群を指摘したセリエですが、その研究の最初期において適応における副腎の重要性に気づき、また、下垂体-副腎皮質系がストレス反応に重要であることを実証しました。
この重要なストレス反応系を「視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenalaxis:HPA系)」と呼びます

大脳皮質がストレスを認識すると、視床下部へと刺激が伝えられ、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)放出ホルモン(CRH)が分泌されると下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が促進されます

大脳皮質がストレスを認識すると、視床下部へと刺激が伝えられ、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)放出ホルモン(CRH)が分泌されると下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が促進されます
ACTHは副腎皮質において糖質コルチコイド(ステロイド)の合成と放出を促します。
ステロイドは短期的にはエネルギー利用促進、循環器系活動の増加、成長や生殖に関する機能を抑制します。
また、ストレスによって免疫機能が阻害されますが、こちらもステロイドによるものであるとされています。

このように、人体内における情報伝達は、中枢神経系によるものと内分泌系によるものがあります。
中枢神経系の伝達速度は速いのですが、内分泌系は血液の循環に伴ってゆっくりと全身に広がっていきますから、非常にゆっくりとした作用になります
その分、効果の持続も長時間になるとされています。
この辺は、2018追加-100でも解説済みですね。

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、除外することが求められます。



②身体的ストレス反応には、交感神経系と副交感神経系の両方が関わる。

交感神経系は通常、強い興奮状態で活動します。
まとまって働くことが多いとされ、興奮すると、心拍を速め・骨格筋や心臓の動脈を拡張し・皮膚や消化器官の動脈を収縮し発汗を促すとされています。

一方、副交感神経系は通常、休息時に働きます。
1回に一つの器官に作用することが多いとされ、一般に身体資源を保存及び保護する機能を維持するとされています(心拍数の減少・呼吸を遅くする→交感神経系よりも少ないエネルギー消費で済む)。

これらを合わせて自律神経と呼びますが、ほとんどの臓器がこれらの二重支配を受けているため、ストレスが長期にわたると自律神経が影響をうけてバランスが崩れ、胃腸や肌への不具合や頭痛を起こすことがあるのです

ストレスにおける交感神経系の反応は「闘争=逃走反応」として有名です。
脅威的状況に立ち向かうか、それとも逃げ去るかという身体的状態を指します。
即座に行動するためにエネルギーが必要とされ、肝臓は筋肉を動かすための余分な糖分を分泌し(グルコースですね)、脂肪と蛋白質を等分に変換するのを刺激するホルモンも分泌されます。
身体の新陳代謝が盛んになって、身体を動かすエネルギーが増大する体制が整うわけです。

それと同時に、不必要な活動は抑制されることになります。
消化活動は抑制され、唾液と粘液が渇くことによって肺への器官の大きさは確保されます(口が渇くのはそのため)。
傷を負っても大丈夫なように血管は収縮し、脾臓は酸素を運ぶために赤血球をより多く放出し、骨髄は感染症と戦うために白血球を産出します。

これらは全て交感神経系の働きであり、代表的なストレス反応と言えるでしょう。
セリエの汎適応症候群における第一段階(警告期)の反応を指しています

このように、ストレスを受け続けると交感神経が優位になり続けてしまうため、副交感神経とのバランスも崩れてしまいます
その結果、心身の不調を引き起こしやすくしてしまうのです。
いわゆる自律神経失調症とは、そのような現象を指しています。

交感神経系と副交感神経系はバランスが重要であり、アクセルとブレーキような関係です。
心拍を例にとると、ストレス状態では「アクセル(交感神経)」が強く踏まれますが、同時に、心拍数の上昇を抑えようと「ブレーキ(副交感神経)」も強く踏まれることになるため、ストレス状態では心拍リズムは非常に不規則になります。
このようにストレスは自律神経全体に影響を与えるものと見なすことができます

以上より、選択肢②は正しいと判断でき、除外することが求められます。



③心身症とは、発症や経過に身体的ストレス反応が関わる身体疾患である。

こちらは2018-129の選択肢③ですでに述べている内容ですね。

心身症という概念はイギリスのHallidayによって初めて提唱され、その後、Alexanderらの古典的研究をはじめ、数多くの研究報告がなされています。
日本では心身医学会が1970年に「身体症状を主とするが、その診断や治療に心理的因子についての配慮がとくに重要な意味を持つ病態」と定義しています。
一方でこの規定では、身体症状を主とする神経症やうつ病も含まれる可能性があり、概念理解の混乱を招きました。
そこで同学会は1991年に「心身症とは、身体疾患の中でその発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義し直しました

ICD-10やDSM-5に心身症の項目は無く、心身症は独立した精神障害とは見なされません。
身体疾患を心身相関の立場から整理し直した概念であると考えておきましょう。

以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することが求められます。



④ストレッサーの種類によって、心身に生じるストレス反応の内容も決まる。

この選択肢の内容をよく精査すれば、自ずと誤った内容であることがわかると思います。
ストレッサーの種類によって、心身のストレス反応の内容が決まるということでしたら、例えば、「Aという種類のストレス因ならば、必ず腹痛や頭痛が起こる」ということが言えるということです。
そんなはずがないことは常識的に理解できると思います

例えば、心身症では、呼吸器系・循環器・消化器・内分泌・神経や筋・皮膚・外科・整形外科・泌尿や生殖器・産婦人科・眼科・耳鼻科・歯科、などの領域でさまざまな症状が示されることを指摘しています。
これら一つひとつの症状が、特定のストレス因と結びついているということはありません

ストレス反応の内容は、むしろ、その個人の特性や歴史に強く影響を受けます
個人によって、ストレス内容はさまざまでも、特定の反応を示すという場合があります。
このストレス内容を問わず、常に特定の反応を示すという状況は精神的に不健康になりやすいと言えます。
むしろ、いろいろなパターンの反応がある方が、全体的に見ればプラスも多いと思われます(不定愁訴はそれ自体が一つの反応であり、「色んな症状がある」と見なさない方がよい)。
ストレス反応も、身体の自然な対処法の一つですから、対処法が常に一つというのはあまり健全とはいえないようです。

また「個人の歴史」としましたが、例えば、自殺や不登校が多い家庭というのは確かに有ります。
しかし、その多くは「苦しいときの対処法として、身近にその方法を採用した人を見ているから」という面がかなり強いと思われます。
身近で自殺した人がいれば、自分が苦しいときにその選択肢を思い浮かべるのは当然と言えば当然ですからね(児童・生徒の自殺について報道の規制を考えねばならないのはそのためです)。

以上より、選択肢④が誤りと判断でき、こちらを選択することが求められます。



⑤心理的ストレス反応には、抑うつ、不安、怒りなどのネガティブな感情が含まれる。

こちらについては、心理的ストレスの代表的(強いものの代表という意味)であるPTSDを思い浮かべれば理解しやすいと思います
診断基準で言えば、回避、認知・気分の否定的変化、覚醒と反応性の変化などと称される部分ですね。

不安がちになり特定の物を避けたり、イライラしたり、他者や物を壊して怒りをぶつけたり、ちょっとしたことで怒りやすくなったりします。
一方で、出来事の原因や結果を自責的(他責的もある)に考えてしまうということも少なくありません

文部科学省の「心のケア 各論」において、ストレス反応を以下のようにまとめています。
  1. 心理面の反応:
    情緒的反応として、不安、イライラ、恐怖、落ち込み、緊張、怒り、罪悪感、感情鈍麻、孤独感、疎外感、無気力などの感情が現れる
    心理的機能の変化として、集中困難、思考力低下、短期記憶喪失、判断・決断力低下などの障害が現れる。
  2. 行動面の反応:
    心理面の反応は、行動面の変化としても現れる。
    怒りの爆発、けんかなどの攻撃的行動、過激な行動、泣く、引きこもり、孤立、拒食・過食、幼児返り、チック、吃音、ストレス場面からの回避行動などが現れる。
  3. 身体面の反応:
    動悸、異常な発熱、頭痛、腹痛、疲労感、食欲の減退、嘔吐、下痢、のぼせ、めまい、しびれ、睡眠障害、悪寒による震えなど、全身にわたる症状が現れる。
このように、心理的反応としての抑うつ、不安、怒りなどはかなり一般的なものであると考えてよいでしょう。
この辺は理論的な判断を不要するところかもしれないですね。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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