公認心理師 2019-115

2019年10月14日月曜日

問115は糖尿病に関する問題です。
2019年度の試験では糖尿病と関連する問題が多かったですね(問53の生活習慣病の問題、問76の糖尿病内科を受診した女性の事例)。
過去には、2018-64において糖尿病で生活習慣の見直しを求められる事例が、2018-133では2型糖尿病が出題されていますから、糖尿病は比較的出やすい問題と見なして良いでしょうね。

問115 糖尿病について、誤っているものを1つ選べ。
①うつ病発症のリスクを高める。
②認知症発症のリスクを高める。
③勃起不全発症のリスクを高める。
④肥満は1型糖尿病の発症リスクを高める。
⑤加齢は2型糖尿病の発症リスクを高める。

意外と間違えてはいけないのは、「糖尿病になることでリスクを高める」ということであり、例えば「うつ病は糖尿病のリスクを高める」という捉え方ではないということです。
服薬等の問題で、うつ病や認知症があると糖尿病も悪化しやすいですからね。
論理を逆にしてしまわないように解説していきましょう(気をつけておかないと、いつの間にか逆になっていることがあるので)。



解答のポイント

糖尿病のリスク因子に関して理解していること。



選択肢の解説


①うつ病発症のリスクを高める。

糖尿病と診断されることや、糖尿病の治療を始める、続けてゆくなどの、糖尿病との関わり合いのなかで、患者はさまざまな感情を経験します。
怒りや否認、恐れ、罪悪感などなどです。
糖尿病とともに歩むなかで、こういった負の感情を感じることは当たり前のことです。

調査によると、日本人の約15人に1人が一生のうちに1回はうつ病になると報告されています。
うつ病は、いわゆる糖尿病の合併症ではありませんが、糖尿病患者はそうでない人と比べて、何らかの抑うつ症状を有する人が約2倍程度多いと言われています。
さらに糖尿病のある人の約10%が、医療機関で専門的に治療を受ける必要があるうつ病にかかっているといわれています

糖尿病とうつ病との合併は様々な問題を生じさせます。
  1. 糖尿病とうつ病の合併率は高い。
  2. うつ病は感情、思考、意欲、行動すべての面を抑制し、患者のQOLを大きく低下させる。
  3. 血糖コントロールが悪化する。
  4. 運動量が低下し、肥満傾向が見られ、自己管理の実行度が低くなる。
  5. 慢性合併症の発症率が高くなる。
うつ病は適切に診断されれば治療できる疾患であり、抗うつ薬及びカウンセリングによる治療が有効です。
抗うつ薬の効果については、抑うつ症状の改善度と血糖コントロールの改善度には関連が認められています。

ちなみにうつ病と糖尿病との関連は、2018-133の選択肢②で出題がありますね。
併せて確認しておきましょう。

余談ですが、1型糖尿病を持つ若い女性に摂食障害が伴うことがあります。
摂食障害を合併すると、極端なカロリー制限、むちゃ食い、自己誘発性嘔吐、自己管理行動へのノンアドヒアランス、体重増加防止のためのインスリン省略などのために、血糖値が極めて不安定になります。

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、除外することが求められます。




②認知症発症のリスクを高める。

高齢糖尿病患者で認知機能が問題になることは複数の調査で明らかにされています(久山町研究など)。
これまで高齢認知症患者の認知症は動脈硬化、脳梗塞による血管性認知症が主と考えられていましたが、アルツハイマー型が糖尿病と関連すること、そしてインスリン抵抗性による認知機能障害のメカニズムも報告されました

糖尿病の人はそうでない人と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。
また、糖尿病治療の副作用で重症な低血糖が起きると、認知症を引き起こすリスクが高くなると言われています

これまでは低血糖は良好な血糖コントロールに必発する現象であり、低血糖を起こすことが改善の徴候とも考えられていましたが、これらの知見を機に、低血糖が起こったら治療スタイルを見直さなければならないという考え方にシフトしたのです
糖尿病患者ではMMESの遅延再生機能が低下する確率が高いとされております。
遅延再生機能の低下はアルツハイマー型認知症で特徴的な所見であり、糖尿病患者の認知症発症を止める目的で低血糖防止は大変重要であると言えます。

以上より、選択肢②は正しいと判断でき、除外することが求められます。



③勃起不全発症のリスクを高める。

糖尿病にはさまざまな合併症が見られますが、泌尿・生殖器系では腎機能障害や排尿障害、勃起障害、射精障害、精子形成障害などがよく知られています。
勃起機能障害はQOLの面から見ても重要な問題であり、特に若年層にとっては深刻な悩みとなります。

勃起をするには陰茎に血液を一杯満たす必要がありますが、そのためには自律神経が正常に働いて血管が拡張し、陰茎平滑筋が持続的に弛緩しなければなりません。
高血糖が持続した結果、自律神経障害が起こり神経伝達が悪くなれば、性的刺激や感度が鈍くなり、勃起力に影響を及ぼします。

また、血管内皮や血管壁の障害により血管が硬くなると、性的刺激による血管拡張や陰茎平滑筋の弛緩が妨げられやすくなります。
こうなると血液の流入が抑えられ、十分な勃起が得られなくなって、勃起不全を引き起こしやすくなります。
さらに、陰茎白膜の弾性低下による陰茎内血液の流出も勃起不全を助長させます。

糖尿病性勃起障害の頻度は男性糖尿病患者の64%と、非糖尿病患者の2倍の高頻度であるという報告があります
しかし、勃起障害の治療を求めて受診する糖尿病患者はごく少数で、相談率は0.3%と極めて低い数値であるという報告があります。
この背景には羞恥心や糖尿病医の無関心も考えらえますが、勃起障害があっても生命や生活に支障がなく放置しても困らないことや患者の性欲の低下や諦めが大きく、また、日本では勃起障害治療に対して消極的な配偶者が多いのも理由となっています。
ですが、QOLの調査においては、患者自身は性障害を最重要視しているのに対し、医師は失明や脳心血管障害や腎不全を重視しており、認識の乖離があることがわかります。

以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することが求められます。



④肥満は1型糖尿病の発症リスクを高める。
⑤加齢は2型糖尿病の発症リスクを高める。

糖尿病は成因により1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序・疾患による糖尿病、妊娠糖尿病の4つに分類されます。
主なものとしては1型糖尿病と2型糖尿病になりますし、出題もこの2つからなので、これらについて簡単に解説していきましょう。

1型糖尿病では膵β細胞の破壊により、インスリン分泌が急速・不可逆的に低下し高血糖となります。
インスリン分泌能は最終的には廃絶します。
自己抗体が検出される自己免疫性と、自己抗体が証明できない特発性に分類されます。
日本において1型糖尿病は少なく、全糖尿病の5%以下とされています。

1型糖尿病の好発年齢は小児~思春期とされており、肥満とは関連が無く、むしろ痩せていることも多いです(インスリン欠乏によって糖が取りこめないため)
1型糖尿病は、多尿・口渇・多飲など高血糖による脱水症状や、体重減少、または糖尿病ケトアシドーシス(インスリン欠乏が原因と思われる昏睡)などによって発見されることが多いとされています。

一方、2型糖尿病はインスリン分泌障害とインスリン抵抗性(インスリン抵抗性に関してはこちらに詳しく述べています)の増大がさまざまな程度で生じ、慢性の高血糖状態となる疾患です。
複数の遺伝因子に、過食・運動不足・ストレスなどの環境因子(つまり生活習慣の不良)や加齢が加わり発症します。
遺伝因子に関しては、1型・2型ともに関わっているが、その関与の程度は2型の方が強いとされています。
日本における糖尿病の大半(95%くらい)を占め、生活習慣病の代表とも言うべき疾患です。

2型糖尿病の好発は生活習慣不良の中高年であり、体型は正常~軽度の肥満、または高度の肥満が認められることが多いです。
2型糖尿病は進行が緩徐であるため、発症しても長期間無自覚で過ごしたり、早期に診断されても自覚症状がないため受診・治療を中断してしまうことが多いです。
これが加齢が2型糖尿病のリスク因子になる要因でもあります。

また、加齢とともに耐糖能が低下することが知られており、高齢者の耐糖能障害は加齢にともないインスリン分泌が低下するとともに、インスリン抵抗性が増大していきます
つまり、インスリンという血糖値を下げるホルモンに対する感受性が低下した状態になり、インスリンはたくさん分泌されていても、血糖値が下がりにくくなります。
この点も加齢が2型糖尿病のリスク因子になる要因でしょう。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できるので除外し、選択肢④は誤りと判断できるのでこちらを選択することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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