公認心理師 2019-112

2019年10月05日土曜日

問112は心理療法の有効性を研究する際の留意点に関する問題です。
「心理療法の有効性」としてはありますが、実際には研究における基本的な事項を問うているにすぎませんので惑わされないようにしたいですね。

問112 心理療法の有効性の研究について、誤っているものを1つ選べ。
①介入期間が定められる。
②介入マニュアルが必要とされる。
③単一の理論に基づく心理療法が用いられる。
④クライエントが抱える多様な問題に焦点を当てる。
⑤クライエントは無作為に介入群と対照群に割り付けられる。

心理療法って山登りと似た部分があると思っています。
山ごとに難しさは異なりますが、山ごとに適した登り方があると思うのです。
私はどちらかといえば、その山に合った登り方をすればよいと考えている方で、その実践のための「信念」や「哲学」はある程度一定を保ちつつも、技術的なアプローチは多く保有していたいと思っています。
毛色の異なる技術的なアプローチをまとめ上げるような「信念」や「哲学」の随時改変が重要だと感じています。



解答のポイント

研究デザインを設定に関する基本的な理解を有している。



選択肢の解説


①介入期間が定められる。

こちらは研究を行う上で大切ですね。
具体的に考えてみれば、この必要性がわかると思います。
例えば、「3か月間、週に1回の心理療法を受けた人」と「3年間、週に1回の心理療法を受けた人」を同じ枠組みで評価するというのは不適切であると理解できると思います。

心理療法の効果は時間に相関するほど単純なものではありませんが、短いなら短いなりにできること、長いなら長いなりに生じることがあります。
それらを同列に並べて比較するのは、その研究の信頼性自体を損なう行為であると言えるでしょう

他の選択肢全般にも言えることですが、研究者側が設定した「心理療法」という要因以外はできるだけ統制しておくことが大切です。
統制とは剰余変数をコントロールすることであり、本選択肢の「介入期間」もその一つと見なすことができます。

よって、選択肢①は正しいと判断でき、除外することが求められます。



②介入マニュアルが必要とされる。

研究を行っていくにあたり、その介入が対象ごとに異なっていてはいけません。
その介入の違いが「心理療法の結果に影響を与えた」と見なされてしまうからです。

繰り返しますが、研究においては研究者の定めた要因(ここでは心理療法ですね)以外が結果に影響を与えていると思われるようなデザインにならないように気を配ることが大切になります。
毎回の介入に違いがあることで、「心理療法」ではなく「毎回の介入法の違い」が結果に影響を与えていると判断され、研究の信頼性が損なわれてしまいます

そうした問題を防ぐために「介入マニュアル」は重要になります。
ある一定の基準に基づいて介入しているということであれば、その関わりによる結果への影響は最小限にできると判断されるからです

「マニュアル」という表現に拒否反応を示される人もいるかもしれませんが、ある一定の基準に従って対応するのは研究であろうがなかろうが大切なことです。
例えば、我々が「治療構造」を大切にするのは何のためかと言えば、時間・場所・料金などの外的要因を一定にすることによって「何によってクライエントが変化したのか」ということをクリアに把握するということが理由のひとつと言えます。

クライエントが心理療法後に混乱を示した場合、その心理療法のやり方によって混乱が生じたのであれば、その事実を踏まえたアプローチが検討されることになるはずです。
ですが、外的要因が定まっていなかった、例えば、カウンセラーの都合でクライエントに面接時間をずらしてもらっていたら、そこからカウンセラーの「不安定感」が伝わってクライエントに「見捨てられる」という感覚が強まった結果、混乱が生じることもあり得ます。
そうなると、「心理療法でのアプローチ」が問題だったのか、「治療構造を変化したこと」によって生じた問題なのかが見えにくくなり、対応が難しくなりますよね。
このように、心理療法においても「一定にできるところは一定にしておく」という努力が大切になります(最も一定にしておきたいのは、カウンセラーの心身の状態ですね)。
もちろん「一定にしようと思っても一定にできない」のが常ですから、実践では「一定にできなかった事柄の影響を踏まえつつ、クライエントの見立てを行う」ということになるでしょう。

個人的な意見ですが、心理療法において「剰余変数」の重要性を認識しないという在り方は不適切な姿だと思っています。
クライエントは多くの外的要因(すなわち剰余変数)によって影響を受けています。
家族の言動とか、その日の天気とか、パチンコで勝ったとか。
その「剰余変数」を重視しないということは、心理療法という要因のみでクライエントの変化を説明しようということになります。
そうなると「本当はAという要因によって生じた変化を、心理療法によって生じた変化と誤って見なしてしまう」ということが生じるわけです。
このような愚を犯さないためにも「一般的に見て些細であっても、クライエントへの影響は大きい場合がある」という認識を持っておくと良いと感じています。

以上より、選択肢②は正しいと判断でき、除外することが求められます。



③単一の理論に基づく心理療法が用いられる。

こちらの選択肢②の解説とほぼ重なる部分があるかなと思います。
理論の異なる心理療法で関わる場合、その理論の違いによって効果の違いを生むことが考えられます。
例えば、自己実現を目指すアプローチと、現在の症状の軽減を目指すアプローチでは、その効果の出方に大きな違いがあることが容易に想像できると思います。

「心理療法の有効性」の研究であれば、その心理療法が一定の理論枠で実施されているという前提が重要になります。
その理論枠が異なれば、対象ごとの効果にも違いが出てくるのが当然と言えますからね。

以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することが求められます。



④クライエントが抱える多様な問題に焦点を当てる。

クライエントが抱えている問題が異なれば、心理療法への反応性、経過、治療目標などすべてが変わってきます。
例えば、人生の方向性という課題にアプローチする場合と、現在行っているリストカットという問題にアプローチする場合では、当然変化の仕方に違いが見られますよね。
ある程度、クライエントの問題は絞ってアプローチしないと、心理療法の有効性を見極めるということが困難になります
行動療法が「問題行動の変容」に優れていても、「人生の方向性」にアプローチするのには適さないのは当然のことです(もちろんできないとは言いませんけど)。

これはクライエント個人が多様な問題を抱えていても同じです。
一人のクライエントが「喫緊の問題」と「人生の問題」の両方を抱えていることはあり得ることであり、もちろん、その二つが分かちがたいという場合もあるでしょう。
しかし、研究という枠組みで言えば、対象とする問題を絞っておくことが大切であり、それによって効果の検証が初めて可能になると言えます

以上より、選択肢④は誤りと判断でき、こちらを選択することが求められます。



⑤クライエントは無作為に介入群と対照群に割り付けられる。

研究者が定めたある特定の介入を行う群が「介入群」であり、それを行わない群を「対照群」と呼びます。
研究を行う上では、介入群と対照群に無作為に割り付けていくことが大切です

例えば、心理療法の研究を行うということでクライエントを募集した場合、申し込んできた順に介入群に割り付け、それが十分な数になったら次は対照群に割り付ける、ということを行ったとしましょう。
しかしその場合「申し込んできた順」には意欲という因子が入りやすいため、それが研究の結果に影響を与える可能性が出てきてしまいます(心理療法で意欲って大事ですよね)

他にも年齢、性別などもある程度バラバラになるように割り付けておかないと、それらの要因が結果に影響していると判断されてしまう場合もあり得ます
研究においては「誰から見ても研究者の定めた要因以外を統制している」という状況を作り、言葉は悪いですが「文句を言われないように」しておくことが重要です。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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