公認心理師 2019-106

2019年10月14日月曜日

問106は自殺のリスク因子の高低を判断する問題です。
自殺を予防する 世界の優先課題」という資料には、いろいろ詳しく載っているのでご参照ください。

問106 自殺の予防の観点から、自殺のリスクが最も低い因子を1つ選べ。
①精神障害
②自殺企図歴
③中年期の女性
④社会的支援の欠如
⑤自殺手段への容易なアクセス

自殺予防は精神科独自の問題と考えられがちですが、自殺の実施には精神科医療に導入されないうちに自殺行動に及んでいる人が圧倒的に多いです。
むしろ、自殺の危険の高い患者でもまずは精神科以外の科に受診している人が圧倒的に多いです。
そのため、医療に係わる多くの人が自殺の危険評価について正しい知識をもつことが望まれます。
我々も職業柄、しっかりと押さえておかねばならない事項であると言えるでしょう。



解答のポイント

自殺のリスク因子の高低を把握していること。



選択肢の解説


①精神障害
②自殺企図歴
④社会的支援の欠如
⑤自殺手段への容易なアクセス

自殺の危険因子については以下の通りまとめられます。
  1. 自殺未遂歴:自殺未遂は最も重要な危険因子。自殺未遂の状況、方法、意図、周囲からの反応などを検討する
  2. 精神障害の既往:気分障害、統合失調症、パーソナリティ障害、アルコール依存症、薬物乱用など
  3. サポート不足:未婚、離婚、配偶者との死別、職場での孤立など
  4. 性別:自殺既遂者は男性>女性、自殺未遂者は女性>男性
  5. 年齢:年齢が高くなるとともに自殺率も上昇
  6. 喪失体験:経済的損失、地位の失墜、病気やけが、業績不振、予想外の失敗
  7. 他者の死の影響:精神的に重要なつながりのあった人が突然不幸な形で死亡
  8. 事故傾性:自己を防ぐのに必要な措置を不注意にも取らない。慢性疾患に対する予防や医学的な助言を無視する。
上記より、選択肢と関連が深いものに関して詳しく述べていきます。

まず精神障害に関しては、自殺者の約9割は最後の行動に及ぶ前に、何らかの精神障害に罹患していたことを多くの報告が共通して指摘しています
気分障害、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、パーソナリティ障害などが問題となりやすいとされています。
特に、複数の精神障害に同時に罹患している状態は自殺の危険をさらに高めます。
身体疾患と精神疾患の合併も自殺の危険を高める要因です。
日本における自殺と精神障害の関連を調べた研究では、気分障害が第1位であり、物質関連障害、統合失調症、パーソナリティ障害と続き、この4者で全体の約3/4を占めています
特に1/3の自殺の背景に存在していたうつ病に対しては、自殺予防の第一のターゲットとして、うつ病の早期発見、適切な治療をWHOは挙げています。

また、これまでに自殺を図ったものの幸い救命された人は、自殺未遂を認めない人に比べて、将来も同様の行為を繰り返し、結局、自殺によって命を失う率が高いとされています
たとえ、薬を少し余分に飲むとか、手首を浅く切るといった、それ自体は死に直結しない自傷行為であっても、長期的に追跡調査をすると一般人口よりはるかに自殺率が高いという報告がなされています。
自殺未遂があったということ自体、きわめて重要な危険因子と捉えるべきです

こうした自殺の適否には、その手段が大きな要因となります。
人が自殺する理由については一言で説明することはできないものですが、自殺の多くは衝動的であり、そのような状況においては、農薬や銃器等の自殺の手段への容易なアクセスが、生死を分けることになります
自殺関連行動をとる人の多くは、その行為の瞬間にも、死にたいことに両価的であり、また自殺関連行動の一部は急性の心理社会的ストレスへの衝動的な反応です。
手段の制限(自殺手段へのアクセスを制限すること)は自殺予防活動の主要な要素になります。
なぜなら手段の制限は、こうした個人が自ら起こそうとしている行動に影響を及ぼし、うまくいけば、危機が過ぎ去るからです。

手段への直接のアクセス、もしくは手段(農薬、銃器、高所、線路、毒物、医薬品、車の排ガスや木炭等の一酸化炭素源、そして他の低酸素・有毒ガスを含む)が身近にあることは自殺の危険を高めますが、これへの対応は難しい部分もあります
なぜなら、特定の自殺手段の入手可能性や選択は、地理的および文化的背景によって異なるという事情もあるからです。
こちらの資料では、自殺手段への容易なアクセスを制限することが、重要な自殺予防になることを繰り返し述べていますね。

周囲からのサポートが得られない状況で、自殺がしばしば起きます
最初に考慮すべき側面は、個人の社会的ネットワークです。
同僚やより大きな社会との結びつきは、自殺性癖ときわめて密接に関連しています。
社会関係が、多く、長く、強く、質が良いことは、すべて自殺リスクの低減と関係しています。
夫や妻、家族、職業上の結びつき、友情、または他のタイプの社会的絆を持っている人々は、このような絆の無い人々に比べて自殺リスクが低いとされています。
特に男性の自殺は女性に比べ、社会的状況に左右されやすいというされています。
男性の自殺は外部環境の変化に呼応する性質がより大きいということです(個人的事情による場合は、男女差は認められない)。

これらは周りに人がいればソーシャル・サポートを受けることができることを指しているが、ソーシャル・サポートは目に見える形に限らない。
居住地域に適応していると、毎日の活動はある種の慣例に従うことになり、それ自体が自殺の防御につながります。
万が一最悪の事態に陥った場合でも、周りの人が意図的又は偶然に介入することで多くの自殺を防ぐことができます。
更に、社会的絆の予防的効果には累積作用があるようです。
離婚者や伴侶を亡くしたものは結婚している者に比べ自殺率が高いが、その中でも失業者などの自殺率は一層高まります。

これらのような項目を参考にして、自殺の危険を疑ったら、早い段階で精神科治療へと導入することが重要になります。
治療の原則としては、
  1. 問題解決能力を高めるための精神療法
  2. 自殺の危険の背後に潜んでいる精神障害に対する適切な薬物療法
  3. 周囲の人々との絆の回復
…の3本の柱を中心に進めていくことになります。
自殺の危険の高い患者では同様の危険が繰り返し生じる可能性が高いことを念頭に置いて、治療計画を立てていきます。
外来治療と入院治療の間で緊密な連携を取ることができる場で、長期的な視野に立って治療を実施することが重要です。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は自殺リスクの高い因子であると判断でき、除外することが求められます。



③中年期の女性

WHOの調査では、唯一の例外(中国)を除き、首尾一貫して男性の自殺率が女性よりも高いことが示されています
1950年以来の全世界の自殺率では、1950年~1995年の間に、男性では49%の、女性では約35%の自殺率の増加が認められます。
男性の自殺率は女性の自殺率よりも常に高いことが示され、男女比は、1950年は3.2:1、1995年は3.9:1、2020年は3.9:1(当時の推定値)となっています

年齢に着目すると、加齢とともに自殺率が増加する傾向にあります
年齢層別の自殺率は、5~14歳の0.9にはじまり、75歳以上の66.9まで増え続けます。
この傾向自体は女性にも認められ、5~14歳の0.5、75歳以上では29.7へと増加します。

厚生労働省のこちらの資料にもありますが、男性で自殺は10歳~44歳まで第1位、女性では15歳~29歳で第1位となっています。
上述した通り、男性は社会状況の変化による自殺もかなり見受けられるため、中年期の自殺が多く見られます。
古くからの日本の自殺では、二峰分布(若年と中年に山がある)となっていましたが、ここ数年は中年の山は下がってきているということですね。

以上より、もちろん中年期の女性でも自殺の可能性はあるのですが、男性の中年期よりも低いこと、本問で示されているその他の因子の方が自殺リスクという面では重要であることなどが言えそうです
中年期の女性の場合は、がんなどの身体疾患によるリスクの方が大きそうですね。
よって、選択肢③は他の選択肢の要因に比べて自殺リスクは高いと言えず、こちらを選択することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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