公認心理師 2019-104

2019年10月07日月曜日

問104は職場のメンタルヘルスに関する問題です。
労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づいた問題となっておりますので、こちらの指針の内容を引用しつつ解説を述べていきましょう。

問104 労働者の心の健康の保持増進のための指針について、正しいものを1つ選べ。
①事業者は、職場のメンタルヘルスケアを実施しなければならない。
②事業者は、事業場以外で労働者の私的な生活に配慮しなければならない。
③個人情報保護の観点から、人事労務管理とは異なる部署でのケアが望ましい。
④労働者の心の健康問題についてケアを行う場合は、客観的な測定方法に基づかなければならない。
⑤事業者は、メンタルヘルスケアを実施するにあたり、事業場の現状とその問題点を明確にし、基本的な計画を策定する必要がある。

上記の指針は重要ですが、その根拠法となっている労働安全衛生法に関してもしっかりとチェックしておきたいところです。
労働安全衛生法に関しては多くの過去問がありますね。
また、指針に関する問題も2018-29および2018-112がありますのでチェックしておきましょう。



解答のポイント

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の内容を把握している。



選択肢の解説


①事業者は、職場のメンタルヘルスケアを実施しなければならない。

この指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置(メンタルヘルスケア)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものです

ここで重要なのは本指針の根拠となっている労働安全衛生法の条文です。
労働安全衛生法の第69条には「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない」とあります。
この条文は「努力義務」であることがわかりますね。

対して問題文の表現(実施しなければならない)は「法的義務」を踏まえた表現となっております。
本来「努力義務」である事業者の役割を「法的義務」として扱っているという点に、本選択肢の瑕疵があると言ってよいでしょう
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。



②事業者は、事業場以外で労働者の私的な生活に配慮しなければならない。

あくまでも問題は「労働者の心の健康の保持増進のための指針について」という但し書きがあるわけですから、この指針の枠組みで答えていくことが重要になります

本指針の趣旨に関しての記述は以下の通りです。
  • 労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が半数を超える状況にある。
  • また、精神障害等に係る労災補償状況をみると、請求件数、認定件数とも近年、増加傾向にある。
  • このような中で、心の健康問題が労働者、その家族、事業場及び社会に与える影響は、今日、ますます大きくなっている。
  • 事業場において、より積極的に心の健康の保持増進を図ることは、労働者とその家族の幸せを確保するとともに、我が国社会の健全な発展という観点からも、非常に重要な課題となっている
  • 本指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置(メンタルヘルスケア)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものである。

上記より、本指針は「事業場において」労働者の心の健康の保持増進を図るために策定されてものであることがわかりますね。
ただし、家庭の問題によって事業場での不調が生じていることもあり得ます。
この点の把握は大切になりますね(2018-29の選択肢①に示されています)。

もちろん、事業者が自分の意思で労働者の私的な生活に配慮することはあっても良いですし、それ自体は(もちろんその内容によりますが)素晴らしいことだと思います。
ですが、あくまでも本指針の枠組みで答えると、この選択肢の内容はその指針に沿っているとは言えませんね
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



③個人情報保護の観点から、人事労務管理とは異なる部署でのケアが望ましい。

指針には「メンタルヘルスケアの基本的考え方」が示されております。
特に、メンタルヘルスケアを推進するに当たっては、次の事項に留意するようにとされています。
  1. 心の健康問題の特性:
    心の健康については、その評価には、本人から心身の状況の情報を取得する必要があり、さらに、心の健康問題の発生過程には個人差が大きいため、そのプロセスの把握が困難です。また、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があります
  2. 労働者の個人情報の保護への配慮:
    メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の個人情報の保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要です。心の健康に関する情報の収集及び利用に当たっての、労働者の個人情報の保護への配慮は、労働者が安心してメンタルヘルスケアに参加できること、ひいてはメンタルヘルスケアがより効果的に推進されるための条件です。
  3. 人事労務管理との関係:
    労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、より大きな影響を受けます。メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多くあります。
  4. 家庭・個人生活等の職場以外の問題:
    心の健康問題は、職場のストレス要因のみならず家庭・個人生活等の職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多くあります。また、個人の要因等も心の健康問題に影響を与え、これらは複雑に関係し、相互に影響し合う場合が多くあります。
上記の通り、個人情報の保護は重要な事項ですが、人事労務管理との連携をしないと、そもそもケア自体が難しいということも少なくありません。

人事労務管理スタッフは、管理監督者だけでは解決できない職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理が心の健康に及ぼしている具体的な影響を把握し、労働時間等の労働条件の改善及び適正配置に配慮する役割を担っています
また、人事労務管理担当者は、管理監督者、産業医、当社と契約している「○○クリニック」の医師と相談しながら、従業員や管理監督者に対して助言や指示を行います。
人事労務管理担当者は、相談者本人や管理監督者が相談した場合にはその当該従業員に相談したことによって不利益が発生しないよう配慮することが求められています。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。





④労働者の心の健康問題についてケアを行う場合は、客観的な測定方法に基づかなければならない。

本指針の「メンタルヘルスに関する基本的な考え方」の中にある「心の健康問題の特性」について記した箇所を引用します。
心の健康については、客観的な測定方法が十分確立しておらず、その評価には労働者本人から心身の状況に関する情報を取得する必要があり、さらに、心の健康問題の発生過程には個人差が大きく、そのプロセスの把握が難しい。また、心の健康は、すべての労働者に関わることであり、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題や、心の健康問題自体についての誤解や偏見等解決すべき問題が存在している」

上記の通り、心の健康に関して客観的な測定方法が確立できていないことが示されております
実際の評価に関しては、労働者の心の健康には以下のとおり様々な要因が影響を与えることから、日常の職場管理や労働者からの意見聴取の結果、ストレスチェック制度を活用し、職場環境等を評価して問題点を把握することになります。
管理監督者による日常的な観察や、産業保健スタッフによる職場巡視、労働者からのヒアリング結果なども手がかりになります。
また、ストレスチェック結果の集団ごとの分析結果から得られる「仕事のストレス判定図」では、ストレス調査により職場単位でのストレスを数値化することができます。

これらの手法を用いつつ、労働者の状態を評価していくということになりますね。
以上より、選択肢④は誤りと判断できます。



⑤事業者は、メンタルヘルスケアを実施するにあたり、事業場の現状とその問題点を明確にし、基本的な計画を策定する必要がある。

本指針によると「労働者の心の健康づくりを推進していくためには、職場環境の改善も含め、事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要であり、労働の場における組織的かつ計画的な対策の実施は、大きな役割を果たすもの」です。

このため、事業者は自らがストレスチェック制度を含めた事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明するとともに、衛生委員会又は安全衛生委員会において十分調査審議を行い、メンタルヘルスケアに関する事業場の現状とその問題点を明確にし、その問題点を解決する具体的な実施事項等についての基本的な計画(心の健康づくり計画)を策定・実施するとともに、ストレスチェック制度の実施方法等に関する規程を策定し、制度の円滑な実施を図る必要があります

選択肢の内容はこの「心の健康づくり計画」のことを指しております
指針によると「心の健康づくり計画」に盛り込む事項は、次に掲げるとおりです。
  1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
  2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
  3. 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
  4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
  5. 労働者の健康情報の保護に関すること
  6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
  7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
これらを盛り込んだものが「基本的な計画(心の健康づくり計画)」であり、こちらを策定することが事業者には求められるということです

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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