公認心理師 2019-97

2019年09月25日水曜日

問97は合理的配慮に関する問題です。
合理的配慮は小中高および大学で勤務する上では欠かせない認識です(もちろん、産業領域でも同様ですね)。

問97 大学における合理的配慮について、最も適切なものを1つ選べ。
①合理的配慮の妥当性の検討には、医師の診断書が必須である。
②合理的配慮の内容は、授業担当者の個人の判断に任されている。
③合理的配慮は学生の保護者又は保証人の申出によって検討される。
④合理的配慮の決定手続は学内規程に沿って組織的に行うべきである。
⑤意思決定が困難な学生への合理的配慮は、意思確認を行わず配慮する側の責任で行う。

合理的配慮については、一度こちらの記事でまとめています。
基本法を理解し、その上で各法律の把握をしておきましょう。

本問では、障害者差別解消法を基本としつつ「合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~」を把握しておくと解きやすくなっています。
法律や国の施策などもわかりやすくまとめてあるので、こちらを一読しておくことをお勧めします。



解答のポイント

「合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~」の内容を把握している。



教育機関における合理的配慮

障害者差別解消法では、第7条および第11条に以下の通り規定があります。

【第7条:行政機関等における障害を理由とする差別の禁止】
  1. 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
  2. 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

【第8条:事業者における障害を理由とする差別の禁止】
  1. 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
  2. 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

【第9条:国等職員対応要領】
  1. 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領を定めるものとする。
  2. 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
  3. 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
  4. 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。

【第10条:地方公共団体等職員対応要領】
  1. 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めるものとする。
  2. 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
  3. 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
  4. 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。
  5. 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。

【第11条:事業者のための対応指針】
  1. 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針を定めるものとする。
  2. 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

これらの内容を学校に当てはめると、設置者によって適用される規定に違いが生じることになります。
地方公共団体が設置する学校、すなわち公立学校では、第7条の合理的配慮の提供は「法的義務」となり、第10条の設置者による職員のための対応要領の策定は「努力義務」となります。
国立大学法人が設置する学校、すなわち国立学校では、第7条の合理的配慮の提供と第9条の設置者による職員のための対応要領の策定は共に「法的義務」となります。
学校法人等が設置する学校、すなわち私立学校では、第8条第1項の不当な差別的取り扱いの禁止は「法的義務」であり、同条第2項の合理的配慮の提供は「努力義務」となっています。
また、私立学校の場合は、対応要領等の策定義務はなく、代わりに主務大臣が学校法人の参考となる対応指針を策定する義務を負います(第11条の内容ですね)

このように設置者によって法的義務・努力義務の違いが見られます。
それでは学校が具体的に留意対応すべき内容は、設置者によって異なるのかと言われれば、実はそうではありません。
文部科学省が示している「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」によると、学校教育を担う教育機関である以上、設置者を問わず、一定水準以上の対応を求めています。

よって、障害者差別解消法で規定されている内容に批准する形で、教育機関は合理的配慮を行うことが前提となっていることがわかりますね。
このことを踏まえ、各選択肢の解説に入っていきましょう。



選択肢の解説


①合理的配慮の妥当性の検討には、医師の診断書が必須である。

こちらについては2019-52の選択肢①にほぼ同じ内容が出ていますね。
そもそも診断書や障害者手帳等の有無が、合理的配慮の提供に関する判断の基準ではありません

医師は外部の人間であり、その事業者や行政機関がどういう場であり、どのような配慮が可能であるのかは具体的に把握できません。
このような状況でなされる意見というものは、たいていの場合は、その場にとって現実感の無いものになりがちであり、現場が振り回される結果になりかねません。
よって、適切な配慮を行うにあたっての具体的な内容は、各機関の中で調整されることになります

また「合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~」には以下のように記載があります。
合理的配慮の内容が妥当かどうかの判断基準として、教育の目的・内容・評価の本質を変えないという原則があります。合理的配慮としてできること、できないことの基準が明確となるよう、これらの本質は明確にして公開される必要があります。具体的には、教育に関する三つのポリシーや授業のシラバスがそれに当たります。判断の基準になるよう、抽象的で形式的記述ではなく、具体的であることが期待されます

教育に関する三つのポリシーおよびシラバスの概要は以下の通りです。
  • ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針):どのような力を身に付けた者に卒業を認定し、学位を授与するのかを定めたもの。
  • カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針):どのような教育課程を編成し、どのような教育内容・方法を実施し、学修成果をどのように評価するのかを定めたもの。
  • アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針):どのように入学者を受け入れるかを定めたもの。受け入れる学生に求める学修成果を示す。具体的評価方法は募集要項等で公開。
  • シラバス(授業計画):授業で修得すべきもの、授業方法、授業計画、評価基準を明記。
例えば、これらにおいて他者とのコミュニケーション能力の評価が重要となっている場合には、それを合理的配慮の名において免除することはできません。
合理的配慮で行うのは、その人のコミュニケーション能力が発揮されるような状況を設定するなどして評価を行うことになります

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



②合理的配慮の内容は、授業担当者の個人の判断に任されている。
④合理的配慮の決定手続は学内規程に沿って組織的に行うべきである。

障害者差別解消法第5条には「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」とあります。

また、同法第14条には「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする」とされております。

これらのように、組織的に対応することが前提となっております。
また「合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~」には、「合理的配慮の決定手続きについては、学内規定を定め、それに沿って行ないます」「合理的配慮の内容は、授業担当者や特定の教職員の個人判断ではなく、委員会等で組織として最終決定がなされるようにします」とされております。

以上より、選択肢②は不適切と判断でき、選択肢④は適切と判断できます。



③合理的配慮は学生の保護者又は保証人の申出によって検討される。

障害者差別解消法第7条第2項および第8条第2項には以下のように規定があります。
  • 第7条第2項:
    行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
  • 第8条第2項:
    事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
このように法的義務・努力義務の違いはありますが、いずれも障害者からの訴えがあった場合に合理的配慮を行うということになっております。

以上より、選択肢③不適切と判断できます。



⑤意思決定が困難な学生への合理的配慮は、意思確認を行わず配慮する側の責任で行う。

意思の表明に関しては「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」にて示されております。
  • 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む)により伝えられる。
  • また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む
  • なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい

上記の通り、どのような場合であっても「当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努める」とありますので、コミュニケーションを取りながらの内容検討となります。

また「合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~」には、以下のように記載があります。
  • 合理的配慮の内容を検討する際、大学等が一方的に決めるのではなく、障害のある学生本人の意思決定を重視します。
  • 障害のある学生の困り感やニーズを丁寧に聴き取るとともに、大学等としてできること、できないことを伝えるなど、建設的対話を重ねて双方が納得できる決定ができるようにします。この際、本人が具体的にどうしたらよいか分からない場合、自ら意思決定を行なうことが困難である場合は、配慮の受け方について支援します。「やってあげる」支援ではなく、「自分で決められるようになる」支援であることが重要です
そもそも合理的配慮とは、その人に配慮することによって社会の中で生きていくことが可能になるということですから、一個の人間として自律的な姿を目指すという考え方を基準にしています。
よって、合理的配慮の内容も、本人が自分で決められるようにということが基本となるのが自然と言えるでしょう。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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