公認心理師 2019-94

2019年09月29日日曜日

問94は適正処遇交互作用に関する問題です。
元々、クロンバックが実験心理学(処遇の効果のみを問題とする)と相関心理学(個人差の相関関係だけを問題とする)の統合を意図して唱えた概念です。
※クロンバックは、この「適正処遇交互作用」の他に、信頼性係数である「クロンバックのα係数」が有名ですね。

問94 適性処遇交互作用の説明として、正しいものを1つ選べ。
①学習者の適性は遺伝と環境の相互作用によって形成される。
②学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。
③教授法などの学習条件と学習者の適性の組合せによって学習成果が異なる。
④困難な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。
⑤容易な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。

適正処遇交互作用については、過去に一度簡単にまとめていますのでご参照ください。
ブループリントには適正処遇交互作用に関して明記されていましたが、きちんとした形での出題は今回が初めてですね。
ただし、間接的には2018追加-22のRNRモデルの問題で触れられています。

いずれにせよ、ブループリントの項目を押さえておくことで取れる問題は、しっかりと取っておきたいところですね。



解答のポイント

適正処遇交互作用の基本理念について理解している。


選択肢の解説


①学習者の適性は遺伝と環境の相互作用によって形成される。
②学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。
③教授法などの学習条件と学習者の適性の組合せによって学習成果が異なる。

どんなに優れた教授法でも、その効果が学習者全員に同じ程度の学習効果をもたらすとは限りません。
この背景には学習能力というものが1つの一般的な能力として連続的に発達するものではなく、学習段階、方略、認知の型などと関連して捉えなければならないという事情があります。

適正処遇交互作用とは、このように何らかの個人の適性の違いによって処遇(教授法、学習形態、教材など)の効果が異なる現象を指しています。
能力の型(=適性)によって、与えられた指導方法(=処遇)に対する反応が異なる現象を適正処遇交互作用ということもできますね

適正処遇交互作用に関して示される模式図が以下の通りです。


こちらの図からは3つのポイントが示されます。
  1. 教授法Aと教授法Bの指導を受けた学習者全員の学習成績(全平均)を比較すると、教授法Aの方が教授法Bよりも効果的である(教授法A>教授法B)。
  2. ある適性が分岐点X以上の学習者だけを取り出して教授法Aと教授法Bの効果を比較すると、教授法Bの指導を受けた学習者の方が教授法Aの指導を受けた学習者よりも学習成績が良い(教授法B>教授法A)。
  3. ある適性が分岐点X以下の学習者だけを取り出して教授法Aと教授法Bの効果を比較すると、教授法Aの指導を受けた学習者の方が教授法Bの指導を受けた学習者よりも学習成績が良い(教授法B>教授法A)。
これらの点を総合すると「多様な個性を持つ学習者の学力を平等に向上させるためには、学習者の個性に応じた教授法を工夫することが重要である」と言え、これが適正処遇交互作用の基本理念となっています。

以上より、選択肢①および選択肢②が誤りと判断でき、選択肢③が正しいと判断できます。



④困難な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。
⑤容易な学習課題であるほど、学習成果は教授法などの学習条件よりも学習者の適性によって規定される。

上記より、これらも適正処遇交互作用の文脈による知見ではないことが、わかると思います

困難な課題・容易な課題という分け方で変わってくる、という捉え方で思いつく心理学の理論としては、社会心理学における「社会的促進」が思い起こされます。
こちらは、特に容易な課題の遂行は他者の存在によって促進されるが、難しい課題を実行する場合には、かえって成績が低下するということが明らかになっています。

もしかしたら学習課題の難易度と、学習者の適性に関する知見もあるとは思うのですが、そこまでは把握しきれていません。
いずれにせよ、選択肢④も選択肢⑤も適正処遇交互作用の論理によって導かれているものではないことは確かです。
よって、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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