公認心理師 2019-89

2019年09月18日水曜日

問89は回想法に関する問題です。
対象が「認知症」の高齢者となっていますから、その辺も加味して答えることが大切です。

問89 認知症の高齢者への回想法について、正しいものを1つ選べ。
①行動の変容を目標とする。
②個人面接では実施しない。
③昔の物品を手掛かりにする。
④一定の間隔をあけて繰り返す。
⑤認知に焦点を当てたアプローチである。

回想法が出題されている過去問としては、2018追加-37の選択肢①2019-36の選択肢②などがあります(2019年度の問題を過去問と捉えてはいけないのかもしれないですけど)。
回想法が単体で出題されたのはこれが初めてですね。



解答のポイント

回想法の概要を理解している。



選択肢の解説


①行動の変容を目標とする。
⑤認知に焦点を当てたアプローチである。

回想法は記憶の想起により人生の連続性の自覚を促し、自尊心やコミュニケーション能力を回復させる方法です
すなわち、自尊心を高めるという個人内効果と、対人関係を促進させるなどの社会的効果の両方が期待されています。
認知症の場合は、情動機能の回復、意欲の向上、発語回数の増加、非言語的表現の豊かさの増加、集中力の増大、問題行動の軽減、社会的交流の促進、支持的・共感的な対人関係の形成および他者への関心の増加、などが効果として挙げられています

回想法は1963年にアメリカの精神科医Butlerによって示された方法であり、「高齢者の回想法は、死が近づいてくることにより自然に起こる心理的過程であり、過去の未解決の課題を再度とらえ直すことも導く積極的な役割がある」と提唱し、これまで「過去の繰り言」「現実逃避」と否定的に捉えられてきた高齢者の回想行為を意味あるものとして論じてきたことが回想法の起点となっています。
Butlerは「ライフレビュー(人生の復習)」という概念を提出しています。
彼によると、ライフレビューが成功に終わった後の到達点は受容であり、人生を無駄なもの、価値のないものと見なした後の到達点は絶望です(この辺はエリクソンの8段階と同じですね)。

高齢者に回想に取り組むよう勧めることは、価値ある治療活動であり、高齢者が生涯の経験を正面から取り組み、それを客観的に捉える助けになるとされています
回想法は「私の若い頃はね…」というセリフの繰り返しに代表されます。
認知症者の支援にあたっている人が、こうしたセリフの重要性に気づき、高齢者の過去の出来事について話し合うことは価値があると気づいたことで回想法は拡がりを見せました。

高齢者と話し合うことによって通じ合い、交流が深まる中で高齢者の過去の生活や経験を理解できるようになります。
それによって支援者は現在の会話や行動の意味をより的確につかめるようになります。

ただし、こうしたライフレビューは個人的な事柄を含みます。
回想を忌避する人にそれを強いることは、害ばかり多く益はありません。
従って、実行する前にその人の態度やニードを慎重に調べておくことが重要になります。
苦痛に満ちた過去の想起、失敗体験や喪失体験などからうつや不安を誘発しないように留意することが求められます。

以上より、選択肢①および選択肢⑤は誤りと判断できます。



②個人面接では実施しない。
③昔の物品を手掛かりにする。
④一定の間隔をあけて繰り返す。

回想法は日本では多くの場合、集団で行われているが、個別に行うことも可能です。
集団で行う場合は10人程度にすることが勧められています。

回想法が普及した背景には、回想の助けになるものが多く使えるようになってきたことが挙げられます。
ライフレビューの作業では、古い写真や記念品がきっかけとなって過去のさまざまな時代の経験が思い出されることが多いです。
本や音楽、遊び道具、昔から慣れ親しんだ動作や作業、香りを刺激として用いることもあります
こうした品物は広く手に入るようになっており、高齢者と関わる多くの人は回想という作業を試してみようという気になり、その結果として双方がその作業を楽しむということが起こるわけです。

セッションは、幼児期から現在に至るまで特定の人物、出来事を時系列に沿って想起していく方法(物語を話す「情報型回想」)と、適宜話題を提供して自由に想起を進めていく方法(過去を思い出す「単純回想」)があり、一般的には後者が選択されることが多いように感じます。
高齢者の記憶に関して、現在と結びつけるのが良いか、それとも記憶の中で過去を追体験するだけで十分なのかは意見が分かれています。

一回のセッションにかける時間は30分程度が適当とされています。
頻度は、日本においては週に1回程度という報告が多く、同じ時間同じ曜日という設定も見受けられますね。
ただし、多く採用されている週に1回というペースは方法論的な縛りではありません。
あまり間を空けると、聴き手を忘れられ、話が最初からということになります。
または前回の話につながらないことがあります(これらは、大きな問題ではありませんが、短時間で実施する場合においては進展が遅くなります)。
また、逆に週に数回となると本人や施設の負担にもなりかねない場合もあると考えられます。

要は回想法の頻度は、対象者の状態や施設の状況を勘案して決められていることが多く、それらの状況を総合して決められるべきものと言えます。
認知症の高齢者への回想法になると、あまり間を空けると忘れてしまい、回想法の大切な要因である連続性が失われてしまう可能性が高いですね

以上より、選択肢②および選択肢④は誤りと判断でき、選択肢③が正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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