公認心理師 2019-88

2019年09月20日金曜日

問88は1歳半の幼児の認知・言語機能を評価する心理検査を選択する問題です。
各選択肢で挙げられている検査は、ほとんどが過去問で扱われたことがあるものです。
唯一、遠城寺式だけが初出になりますから、この機会にしっかりと学んでおきましょう。

問88 乳児院に一時保護された1歳半の幼児の認知・言語機能を評価する心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
①WPPSI-Ⅲ
②日本語版KABC-Ⅱ
③田中ビネー知能検査Ⅴ
④ベンダー・ゲシュタルト検査
⑤遠城寺式乳幼児分析的発達検査

こういう問題の要点は大抵は以下の2つです。
  1. 年齢がその検査の適用範囲に入っているか否か
  2. その検査の目的に沿った使用になっているか否か
多くの場合が第1項で除外され、残ったものの中で第2項を基準に選定していきます。
第2項まで残るのはどんなに多くても3つの選択肢に留まるので、そこまでいけば検査の目的を把握してなくても30%以上の確率で正答を選べるわけです。

本問の場合、年齢の把握だけで解くことができる問題です。
仮にベンダー・ゲシュタルト検査が残ったとしても、明らかに検査目的が違うことがわかりますよね。

過去問を見渡してみても、第2項の検査目的で正誤を判断させるものよりも、第1項の適用年齢によって判断させるものが圧倒的に多いです。
実践する能力云々の前に、まずは「年齢を基準にして適用できるかどうか位は判断できるようにしておきなさいよ」ということだと思います。



解答のポイント

各検査の適用年齢および使用目的を把握している。



選択肢の解説


①WPPSI-Ⅲ

WPPSIについては2019-61の選択肢①でも出題がありますね。
2019年度になってからWPPSIが出題されるようになっていますが、そもそもウェクスラー式知能検査については、そのすべてが頻出であると見なされているのでしっかりと押さえておきましょう。

WPPSIは、ウェクスラーによって考案された幼児用個別式知能検査です。
成人用のWAIS、児童用のWISC同様、ウェクスラーの知能観を反映し、その特徴を備えています。

ウェクスラーは知能を「目的的に行動し、合理的に思考し、能率的に環境を処理するための、個人の総合的、全体的能力」と定義し、質的に異なる知的能力から構成されていると考えました
そこで、それぞれの異なる能力をはかるための複数の下位検査からなる検査を考案しました。

当初、就学前の子どもの能力を適切に評価できる検査が欲しいという声に応えるべく、はじめはWISCの適用年齢を引き下げようとしましたが、予備実験の結果、断念したとされており、別枠でWPPSIを作成したということになります
よって、基本的にはWISCらと同様の能力を測ろうとしています。
WPPSIの対象年齢は2歳6カ月~7歳3カ月であり、その狭さがWPPSIが使用されにくい一因となっています

2歳6カ月~3歳11カ月では、4つの基本検査の実施から「全検査IQ(FSIQ)」「言語理解指標(VCI)」「知覚推理指標(PRI)」を、5検査の実施でさらに「語い総合得点(GLC)」を算出することができます
4歳0カ月~7歳3カ月では、7つの基本検査の実施からFSIQ、VCI、PRIを、10検査の実施でさらに「処理速度指標(PSI)」とGLCを算出することができます。

旧版WPPSIの下位検査「動物の家」「算数」「迷路」「幾何図形」「文章」が削除され、新たに「行列推理」「絵の概念」「記号探し」「語の推理」「符号」「ことばの理解」「組合せ」「絵の名前」が追加されました。
これによって、幼い子どもの認知能力をより適切かつ多面的に測定することができるようになりました

上記の通り、事例の状態にマッチする面はあるのですが、年齢が対象から外れているのでWPPSIを採用することはできません
よって、選択肢①は不適切と判断できます。



②日本語版KABC-Ⅱ

まずK-ABC(Ⅱじゃない方)は、2歳6か月~12歳までの子どものための個別式知能検査です。
その特徴としては…
  1. 認知処理能力と習得度を分けて測定すること
  2. 認知能力をルリア理論(継時処理と同時処理)から測定すること
…などが挙げられます。
すなわち、認知処理過程尺度に継時処理尺度(3つの下位検査)と同時処理尺度(6つの下位検査)があり、それとは別に習得度尺度(5つの下位検査)が加わる形で構成されています。

算数や読み(習得度)などで困難さを示す発達障害等のある子どもにとっては、情報を処理する認知処理能力を習得度(語彙や算数など)と分けて測定することが望ましいというのがカウフマン夫妻の考え方です。

2004年に、K-ABCが改訂されてKABC-Ⅱが刊行されました。
日本版KABC-Ⅱでは、「認知-習得度」というカウフマンモデルを継承しながら、大幅な改良が加えられています。
主な点としては、以下が挙げられます。
  1. 適応年齢の上限が12歳11か月から18歳11か月になった(下は2歳6か月)
  2. 認知処理の焦点が「継時、同時、計画、学習」と拡大された。
  3. 習得度で測定されるものが「語彙、読み、書き、算数」と拡大した
ちなみにアメリカ版ではKTEA-Ⅱという優れた個別学力検査があるので、K-ABCの習得度に含まれていた「算数」「言葉の読み」「文の理解」はのぞかれています。
アメリカ版と日本版の違いについては、2018追加-122で詳しく問われているので、こちらをご参照ください。

このように、本検査の特徴は事例のアセスメントに採用することが適切であると考えられますが、年齢が適用できない範囲となっています
よって、選択肢②は不適切と判断できます。



③田中ビネー知能検査Ⅴ

ビネー式知能検査はフランスのビネーとその弟子であるシモンが作成した世界で初めての知能検査法です。
その後、アメリカにおいては、ターマンがビネーの方法論を継承し、スタンフォード改定案を公刊しました。
日本では1947年に田中寛一が、このスタンフォード改定案をもとに「田中ビネー知能検査」を発刊しました。
その後、改訂を重ね、現在の田中ビネー知能検査Ⅴに至っています。

ビネー法は、通常「一般知能」を測定しているとされています
つまり、知能を各因子に分かれた個々別々の能力の寄せ集めと考えるのではなく、1つの総合体として捉えており、言い換えるならば、記憶力、弁別力、推理力などさまざまな能力の基礎となる精神機能が存在し、それが一般知能とされます
ビネーは、人が何かの問題に直面したとき、共通に作用する力が働くのではないかと考えていたらしく、その共通する能力とは、方向性、目的性、自己批判性であり、知能とは、この3側面を持った心的能力であると考えられます。

田中ビネー知能検査はウェクスラー式知能検査と並んで、日本でよく用いられる個別式知能検査であり、子どもの知的側面の発達状態を客観的に示す指標の1つとして、さまざまな場面で使用されています。
検査対象が2歳から成人と幅広く、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達レベルと比較することが容易になっています

上記の通り、まず適用年齢から外れている点、また、田中ビネーの検査の目的としては「認知・言語機能」という個々の能力を見るというものではないので、この点からも適用はできないことがわかります。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。



④ベンダー・ゲシュタルト検査

ベンダー・ゲシュタルトについては、2018追加-90の選択肢④2018追加-138の選択肢⑤2019-23の選択肢③、などで出題があります。

ベンダー・ゲシュタルト検査は、9枚の簡単な幾何学図形を模写することによって、ゲシュタルト機能の成熟程度およびその障害、心理的障害、器質的な脳障害、パーソナリティ傾向、知能的側面などの多方面にわたる情報を査定することができます。

ベンダー自身は、このテストは「4-11歳の子どもの脳の機能ゲシュタルト機能の成熟を評価する方法で、与えられた刺激の布置全体に反応する。反応は知覚されたゲシュタルトのパターン化の運動過程である」と述べています

この図版はゲシュタルト心理学で有名なWertheimerが作成しました。
実用上、ベンダー・ゲシュタルト検査は器質的な脳障害の有無に関して、図形の崩壊などから判定がかなり期待できるとされています
ベンダー自身は損傷部位との関連も述べてはいますが、実際には部位の特定は困難です。

当初はこうした器質的な脳障害の判定に有効な検査でしたが、画像診断技術の向上に伴って不要になってきています。
そこでパーソナリティ評価という側面に舵を切っているという印象も受けます。
いずれにせよ、器質的な脳障害を把握できるということが本検査の基本的な役割であると理解しておきましょう

以上より、ベンダー・ゲシュタルト検査は「1歳半の幼児の認知・言語機能を評価する心理検査」として適切でないことがわかりますね。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。



⑤遠城寺式乳幼児分析的発達検査

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は1960年に発表され、1977年に改訂された簡易式の発達のスクリーニング検査です。
項目別に短時間で測定でき、プロフィールとして示すことで、その発達状況を分析的に評価できるという特徴を有しています。

以下の3領域6項目の発達の状況が測定できます。
  • 「運動」:移動運動・手の運動
  • 「社会性」:基本的習慣・対人関係
  • 「理解・言語」:発語・言語理解
これらの領域・項目について、0歳0か月より4歳8か月までを対象に実施可能です
観察と保護者からの聞き取りによって評価します。


認知能力については明確な記述がありませんが、上記の「手の運動」「対人関係」「言語理解」などの項目を見ればわかるように、これらは乳児期の認知発達と連動して生じるものであり、これらの判定から認知機能の推定・評価は十分に可能です

実施方法は、グラフ欄の歴年齢線上に年齢相当位置をプロットし、被検査児の歴年齢相当の問題から開始します。
事前に発達の遅れが疑われる場合には、発達の状況に見合った年齢の項目から開始します。
その問題が合格であれば、上の年齢段階の問題へと進み、不合格が3つ続いたところで中止します。
また下の年齢段階の問題についても、合格が3つ続いたところで、それ以下の年齢段階の問題については通過していると判断し、中止します。

3領域・6項目とも、順次実施し、合格・不合格を○×で問題のところに記載します。
3連続して合格の場合は合格の一番上の問題の線上にプロットし、合格・不合格が入れ替わる場合には、合格の問題数でプロットします。
全ての領域・項目についてプロットが終了した後、各項目のプロットを結び、プロフィール表を完成させます。
歴年齢よりもプロフィールで描いた線が上にあれば発達が早く、下であれば発達の遅れが指摘されるというわけです。
プロフィールの描き方によって、発達のアンバランスさも把握が可能です。

本問のように「言語機能」「認知機能」を評価するとなると新版K式も検討してよいのではないかと思いますが、あくまでも示された選択肢で選ぶと遠城寺となりますね
以上より、選択肢⑤が正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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