公認心理師 2019-78

2019年09月09日月曜日

問78はBPSモデルに関する設問です。
ブループリントにも明確に示されている項目ですから、押さえておきたいところですね。
BPSモデルが提唱された経緯も含めて理解しておくと良いでしょう。

問78 生物心理社会モデルについて、適切なものを1つ選べ。
①スピリチュアリティを最も重視するモデルである。
②クライエントを包括的に理解する上で有用なモデルである。
③医療技術の高度化を促進するために考案されたモデルである。
④生物生態学的モデルへの批判を背景に生まれたモデルである。
⑤クライエントの健康や疾病に責任を持つのは医療従事者とみなすモデルである。

BPSモデルについては、わかりやすいような広すぎてスパッと説明できないような、そんな印象を持っています。
ここでは簡単に解説をしておきましたが、もっと詳しく理解しておくことも大切でしょうね。



解答のポイント

生物心理社会モデルの概要を理解していること。
特に、その提唱された経緯について把握しておくことが望ましい。



選択肢の解説


①スピリチュアリティを最も重視するモデルである。

WHO憲章では、その前文の中で「健康」を「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」と定義しています。

この憲章の健康定義ですが、1998年のWHO委員会において「健康の定義」を新しく見直そうという提案がなされました。
上記の定義に加えて、霊的(spiritual)に健全な状態を新たに加えることを提案され、理事会では投票の結果、賛成多数で総会の議題とすることが採択されました

すなわち、WHO憲章およびその後の改定の動きの中で、
  1. physical health(肉体的な健康)
  2. mental health(精神的な健康)
  3. social health(社会的な健康)
  4. spiritual health(直訳:霊的な健康)
上記3つは生物心理社会モデルと重なる面がありますが、これに霊的な健康の追加を提案しているということです。
しかし、これらは生物心理社会モデルの枠の話ではなく、あくまでもWHOにおける「健康の定義」に関する改定の流れということになっています

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



②クライエントを包括的に理解する上で有用なモデルである。

人間の健康や医療を考える上で、生物学(医学)、心理学、社会学という各専門領域を分化させて研究を進め、そのうえでこれらの視点を統合していこうとするポリシーのことを生物心理社会の分化統合モデルと呼びます
これはEngelが提唱した概念で、医療において生物医学的な理解は必要だが、同時に人としての側面、かかわる他人との関係や家族、コミュニティといった側面も理解していこうというものです。

このモデルでは、心理的問題は生物学的要因(脳神経、遺伝子など)、心理学的要因(パーソナリティ、認知、感情、ストレスなど)、社会学的要因(家族、職場、地域のソーシャルネットワークや文化、教育、経済状況など)のそれぞれが複合して生じると考えます。
従って、こうした各領域の要因を解きほぐして詳しく分析し、そのうえで心理的問題に対して見立てを行っていくことが大切です

なおDSMでは、Ⅲ~Ⅳまで生物心理社会モデルを採用しており、1人のクライエントについて5つの次元から総合的に診断するものとしていました。
各領域と関連が深い軸は以下の通りです。
  1. 生物学:Ⅰ軸(臨床症候群)、Ⅲ軸(身体疾患)
  2. 心理学:Ⅰ軸(臨床症候群)、Ⅱ軸(人格障害と知的障害)
  3. 社会学:Ⅳ軸(心理社会的問題とストレス)、Ⅴ軸(生活適応度)
このようにDSMの多軸評定は生物心理社会モデルを前提としていました。
DSM-5では多軸評定システムによる記載方法は廃しましたが、その基本的な考え方は残っています。
Ⅲ軸はⅠ軸またはⅡ軸と合体し、Ⅳ軸はICDを、Ⅴ軸はICFかそれに準拠した世界保健機構能力低下尺度を参考にするべきと明記されています。
すなわち、表記法や参考にすべき尺度は変わったが、多軸評定システム的な考え方がすべて排除されているわけではないということです。

以上より、生物心理社会モデルは、クライエントを生物学的要因(脳神経、遺伝子など)、心理学的要因(パーソナリティ、認知、感情、ストレスなど)、社会学的要因(家族、職場、地域のソーシャルネットワークや文化、教育、経済状況など)から多面的・包括的に理解しようとするモデルと言えます
よって、選択肢②が適切と判断できます。



③医療技術の高度化を促進するために考案されたモデルである。
⑤クライエントの健康や疾病に責任を持つのは医療従事者とみなすモデルである。

生物心理社会モデルを体系的に統合したEngelは、その論文「新しい医学モデルの必要性-生物医学への異議申し立て」の中で以下のように述べています。
  • 医師の責任は、心理生物的な統一体である患者の問題がどういう問題であるか評価し、他の援助専門職へのリファーを含め、患者がどう行動すべきか勧奨することである
  • 医師の専門職としての基本的な知識・技能は、社会的・心理的・生物的なものに渡らなければならない。患者のために行う問題評価と行動勧奨はこれら3つを含むからである
上記の通り、生物心理社会モデルは、生物モデルに偏ったものではなく、心理・社会モデルの援助専門職との連携を重視したモデルであると見なすことができますね
事実、各専門領域をカバーする各専門家がいるということになりますから、それらの専門家間の連携を重視しているということですね。

以上より、選択肢③および選択肢⑤は不適切と判断できます。



④生物生態学的モデルへの批判を背景に生まれたモデルである。

生物心理社会モデルは、Engelがbiomedical model(生物医学モデル)に対比する疾患モデルとしてを提唱しました。
生物医学モデルが病気の原因を臓器や細胞に求めるのに対し、生物心理社会モデルでは人間の疾患(disease)あるいは病い(illness)を、病因→疾患という直線的な因果関係 ではなく、生物・心理・社会的な要因のシステムとして捉えようという提言です。

生物医学モデルのパラダイムに基づく医学研究は、疾患の病態生理の解明、画期的な治療法の開発など極めて重要かつ有用な成果を挙げてきました。
しかし、このモデルにおいては、個々の患者は一般科学法則の適応例の一つとなり、他の症例と互換可能なものと認識されます
従って、個々の患者のユニークな人生、こころの問題、社会文化政治的問題、対人関係、家族や友人、医療者自身、患者自身の病いへの理解、患者自身にとっての病いの意味、治療に対する患者の希望・価値観・選択といったことは全て捨象せざるを得ないということになります。

こうした「生物医学モデル」への批判を背景に、「生物心理社会モデル」は提唱されました。
なお、選択肢にある生態学は「生物と環境の間の相互作用を扱う学問分野」となり、生物医学モデルとは別物と言えます

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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