公認心理師 2019-75

2019年09月03日火曜日

問75は事例の状態に合致する概念を選択する問題です。
この問題では、結果として「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失し、欠席が続いている」を生じさせる概念を限定していくことが求められています。

問75 23歳の男性A、大学4年生。Aが学生相談室に来室した。昨年度末で卒業の予定であったが、必修科目の単位が取得できず留年した。その必修科目については1年次から何度も履修を繰り返し、単位取得に向けて最大限の努力を続けてきたが、結果は全て不合格であった。今年度からは、留年した学生のための特別な学習指導を新たに受けられるようになった。それにもかかわらず、努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失し、欠席が続いている。
 現在のAについての説明として、最も適切なものを1つ選べ。
①自尊感情が過度に低い。
②テスト不安が過度に高い。
③学習性無力感に陥っている。
④ソーシャルスキルが不十分である。

事例は苦しい状況ですね。
特に必修科目の場合、通年の科目であることも少なくありません。
そうなるとたった1科目のために丸々1年分の学費を支払う必要が出てきます(もちろん、大学によっては救済措置もあるかもしれませんけど)。
学生相談に勤める場合、そういったルールの理解をしっかりとしておくことも大切になります。



解答のポイント

学習性無力感に関して理解していること。



選択肢の解説


①自尊感情が過度に低い。

自尊感情は、自己に対する評価感情を指し、自分自身を基本的に価値あるものとしてみなす感覚のことです
自尊感情は、常に意識されているわけではありませんが、その人の言動や意識態度を基本的に方向づけるものです。
自分自身の存在を基本的に価値あるものと評価し信頼することによって、人は積極的に意欲的に経験を積み重ね、満足感を持ち、自己に対しても他者に対しても受容的になることができます。

自尊感情の高低は、親の暖かで無条件に受容する養育態度と関連があるとされています。
もちろん、外界の種々の出来事によってそれが毀損されることもあり得るでしょう。
何度チャレンジしても不合格であるという事例の状況は、確かに自尊感情を低下させる可能性があると思われます。

しかし、単に自尊感情の低さだけでは「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失」という部分に関しては説明が不可能です。
なぜなら自尊感情とは上述の通り、「自己に対する評価感情」であり「自分自身を基本的に価値あるものとしてみなす感覚」です。
あくまでも自己に対する価値の高低を示す概念ですから「自分には価値がある」「価値が無い」という認識を生じさせはしますが、「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失」という具体性のある感じ方を規定するものではありません

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



②テスト不安が過度に高い。

事例の状態でテスト不安を生じさせることはあるでしょう。
ただし、やはり「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失」ということを説明するには不十分であると考えられます。

なぜならテスト不安が過度に高い場合、事例のように「欠席が続く」ということが不安のために生じることも考えられますが、不安をかき消すように必死になって勉強しようとすることなども考えられます。
すなわち、「テスト不安」という帰属によって生じることとして、「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失」「欠席が続く」ということだけに限定することは不可能です

また、不安を感じさせるような事例情報も記載されておりませんね。
以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



③学習性無力感に陥っている。

セリグマンは、逃避も回避もできない電撃実験が、その後の回避訓練に重大な影響を与えることを実験的に明らかにしました。
イヌに電撃を与えて、それが回避可能か否かで群を分け、その後、回避可能な状況におかれた場合であっても、回避不能であった群のイヌは、解決を諦め受動的に苦痛を受け容れてしまったかのような状態になることが明らかにされています。
そしてこのような効果を「学習性無力感」と呼んでいます。

概念的に言えば、「客観的非随伴が非随伴知覚を導き、別の新たな状況に対しても不適切な一般化を生じて無力感が形成される」ということです。
すなわち、強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果、何をしても環境に対して影響を及ぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることにより、解決への試みが放棄され、あきらめが支配する結果となるということです
セリグマンは、人間のある種の抑うつの形成にも同様なメカニズムが働くことを指摘しています(喪失体験等を通し、自身が無力であると知覚するということ)。

上記定義の「強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果」という箇所に関しては、事例の「その必修科目については1年次から何度も履修を繰り返し、単位取得に向けて最大限の努力を続けてきたが、結果は全て不合格であった」という記述と重なります

また定義の「何をしても環境に対して影響を及ぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることにより、解決への試みが放棄され、あきらめが支配する結果となる」という箇所に関しては、事例の「努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失し、欠席が続いている」という記述と重なることがわかりますね。

このように、本事例の男性Aは学習性無力感の状態を示していると見て相違ありません。
よって、選択肢③が適切と判断できます。



④ソーシャルスキルが不十分である。

事例で示されているのは、あくまでもテストにまつわる事柄であり、ソーシャルスキルとは無関係であると考えるのが妥当です
恐らくは「今年度からは、留年した学生のための特別な学習指導を新たに受けられるようになった。それにもかかわらず、努力をしても無駄だと感じて意欲を喪失し、欠席が続いている」という箇所から導かれた選択肢だと思うのですが(ソーシャルスキルが不足しているから欠席している?)、これをソーシャルスキルの要因に帰することはかなり無理があると考えられますね。

当然ですが、本事例の必修科目が「ソーシャルスキルの高低」によって単位取得が左右されるということはあり得ません(というか、あってはならないことですね)。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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