公認心理師 2019-74

2019年09月07日土曜日

問74は事例の状況を踏まえた上で、必要な対応を選択する問題です。
各選択肢の是非の理由をしっかりと説明できることが大切ですね。
何となく解かない、ということが試験では求められます。

問74 35歳の男性A、営業職。時間外・休日労働が社内規定の月60時間を超え、疲労感があるとのことで、上司は公認心理師にAとの面接を依頼した。直近3か月の時間外・休日労働の平均は64時間であった。健康診断では、肥満のために減量が必要であることが指摘されていた。疲労蓄積度自己診断チェックリストでは、中等度の疲労の蓄積が認められた。この1か月、全身倦怠感が強く、布団から出るのもおっくうになった。朝起きたときに十分休めた感じがなく、営業先に向かう運転中にたまに眠気を感じることがあるという。
 公認心理師の対応として、不適切なものを1つ選べ。
①生活習慣の把握を行う。
②うつ病などの可能性の評価を行う。
③Aに運転業務をやめるように指示する。
④Aの医学的評価を求めるように事業主に助言する。
⑤仕事の負担度、仕事のコントロール度及び職場の支援度を把握する。

こちらの問題は厚生労働省の「過重労働による健康障害を防ぐために」を把握しておくと理解しやすいと思います。
まずは事例の状態を把握しておきましょう。

厚生労働省では「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定し、時間外労働の削減と一定時間以上の時間外労働を行わせた場合の健康管理措置の徹底について周知を図る一環として、働く人それぞれが疲労蓄積度を自分自身で判定するためのチェックリストを作成しました。
それが設問の中にある「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」です。
事例では中等度の疲労の蓄積があるということになっていましたね。

さて、事例の具体的状況です。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)・月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

労働安全衛生法第66条の8では以下の通り定められております。
  1. 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
  2. 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
  3. 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
  4. 事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。
  5. 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
これらを踏まえると、事業者が法律的に対策を講じる義務が発生する状況ではないことがわかります。
しかし、労働時間が社内規定を超えていること、チェックリストによって中等度の疲労が認められることなどから、何かしらの支援を検討していく段階であるとは言えます。

「おそらく」超過勤務による不調と思われるのですが、それが確定はしていないという段階ですから、その「おそらく」の部分をアセスメントによってはっきりさせていくことが公認心理師の役割ということになりますね。

こうした状況を踏まえ、どういった視点でアセスメントを行っていくかを考えていきましょう。



解答のポイント

事例の状況で求められている対応を理解していること。
状況から考えて、どういったポイントでアセスメントすることが重要かを把握していること。



選択肢の解説


①生活習慣の把握を行う。

他選択肢でも述べますが、本事例の状況は、面接指導(労働安全衛生法)を即実施しなければならないというわけではありませんが、社内規定を超えた労働時間、疲労感などから事例の状態を細やかに把握していくことが重要になってきます。

「健康診断では、肥満のために減量が必要であることが指摘されていた」ということが示されていますから、事例の生活習慣の把握を行うことはアセスメントやその後の支援において重要な事項であると言えるでしょう
生活習慣の乱れが、こうした超過勤務やそれに起因する疲労感と関連があるか否かなどをしっかりと把握することが重要ですね。

以上より、選択肢①は適切と判断でき、除外することが求められます。



②うつ病などの可能性の評価を行う。

事例では「この1か月、全身倦怠感が強く、布団から出るのもおっくうになった。朝起きたときに十分休めた感じがなく、営業先に向かう運転中にたまに眠気を感じることがあるという」という記述があります。
特に睡眠の問題に関してはうつ病の代表的な症状であり、また、初期には身体的な倦怠感が先に立つことも少なくありません。
よって、選択肢にあるうつ病の可能性の評価は重要になります

以上より、選択肢②は適切と判断でき、除外することが求められます。



③Aに運転業務をやめるように指示する。

事例では超過勤務以外にも、肥満のために減量が必要であること、中等度の疲労の蓄積があること、熟睡感がないこと、などが示されております。
これらを総合的に判定し、うつ病の診断が出たり、面接指導の結果運転をさせることが危険であると判断されれば、そうした措置が採られることはあるでしょう。

しかし、現状では「営業先に向かう運転中にたまに眠気を感じることがある」という情報のみがあるだけであり、現時点では、こうした情報の背景を見立てることが公認心理師の仕事であると考えるのが妥当です
よって、まずは他選択肢で示されるようなポイントから事例の状態をアセスメントするべきであり、アセスメントに先立って本選択肢のような「指示」を出すのは不適切と言えるでしょう

また公認心理師という資格の職域を考えても「運転業務をやめるように指示する」というのは、越権行為になっていると見なせます
むしろ、面接指導の必要性を事業者に伝え、産業医との面接を経て判断される可能性があることの一つだと思われます。

以上より、選択肢③が不適切と判断でき、こちらを選択することが求められます。



④Aの医学的評価を求めるように事業主に助言する。

事例の状況は、面接指導(労働安全衛生法)を受けてもらわねばならない状況ではありませんが、社内規定を超えており、疲労感もあるということで医学的評価を求めることは不自然ではありません

「過重労働による健康障害を防ぐために」の中で示されている「事業場で定める必要な措置に係る基準の策定」としては、時間外・休日労働が月45時間超の労働者について、健康への配慮が必要な者の範囲と措置について検討し、それらの者が措置の対象となるように基準を設定することが望ましいことが明示されています

その対応例としては…
  • 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者で産業医が必要と認めた者には、面接指導を実施する。
  • 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者に係る作業環境、労働時間等の情報を産業医等に提供し、事業場における健康管理について事業者が助言指導を受ける
…などが示されています。

以上より、事例の男性に対して医学的な評価を求めるように事業者に助言することは、こうした規定に則った行為であるので、取り得る対応と言えるでしょう
よって、選択肢④は適切と判断でき、除外することが求められます。



⑤仕事の負担度、仕事のコントロール度及び職場の支援度を把握する。

「時間外・休日労働が社内規定の月60時間を超え」「直近3か月の時間外・休日労働の平均は64時間であった」などから、勤務に関するアセスメントは重要になります。

厚生労働省の推奨している調査票に「職業性ストレス簡易調査票」があります
こちらでは、ストレッサー評価軸として、「仕事の負担度(7項目)」において男性6項目以上、女性5項目以上、「コントロール度(3項目)」では男女とも2項目以上ストレス度の高い上位2つの選択肢への回答があった場合、要チェックと判定することになっています。
これらの加え「職場の支援度」が要チェックになった場合の、心理的ストレス反応が要チェックの確率は男性で18.5倍、女性では12.5倍、身体的ストレス反応が要チェックとな
る確率は男性で5.5倍、女性で6.1倍となることが報告されています。

このように、本選択肢で挙げられている項目はこうした調査票の内容に準拠したものになっていますね
以上より、選択肢⑤は適切と判断でき、除外することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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