公認心理師 2019-14

2019年09月02日月曜日

問14は社会的参照に関する内容です。
類似の問題として2018-31がありますので、併せてチェックしておきましょう。

問14 乳幼児の社会的参照について、正しいものを1つ選べ。
①心の理論の成立後に生じてくる。
②共同注意の出現より遅れて1歳以降に現われ始める。
③自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる。
④自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である。
⑤乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する。

発達初期の種々の概念はよく出題されますね。
実際に子どもを育てていると、この辺も実感としてわかりますから、そういう経験がある人は実感のある学びが可能になりますね。
私の知り合いは、自分の子どもにストレンジ・シチュエーションを行っておりました。
示された愛着のタイプは聞いておりませんけど。



解答のポイント

社会的参照が生じる発達の流れを理解していること。



選択肢の解説


①心の理論の成立後に生じてくる。

心の理論とは、自分自身や他者の心的状態、すなわち、深淵や欲求や意図や情動などへの帰属に基づいて、行為や発言を説明し、予測し、解釈する能力の基礎です
自他を含めた社会的な能力の中核であると見なされています。
心の理論という用語は、チンパンジーの研究から始まったものであり、行動に関して推論を行う際に相手の「心」の状態にその原因があると主張し、「心の理論」を持つのだと名づけられました。

これを観察する方法として誤信念課題があります。
最も有名なのがサリーとアン課題でしょうか。
「サリーがおもちゃを青い箱に隠し、部屋の外へ出ていく。入れ替わりにアンが入ってきて、おもちゃを青い箱から赤い箱に移してしまう。サリーが部屋に戻ってくる」
劇を見た被験者に「さて、サリーはどちらの箱を探すかな?」と質問し、「青い箱」と答えれば、他者であるサリーの心的状態を自分自身に帰することができたと言えるわけです。

ここで正答を導くには、キャラクターが保っているものの位置についての信念(知っていると思っていること)と話を聞いて自分が保っている信念(自分が知っていること)とが異なっていることを、子どもが認識しなければなりません。
ある年齢以上の子どもは、自分とは異なり、自分の視点から見ると誤っているキャラクターの信念を推測し、行動をその信念に帰属させることによって、正しく質問に答えられます。

これまでの発達心理学の研究により、ヒトの3才児は誤信念課題に答えるのは難しいが、4、5歳児くらいからは見ることと知ることの関係を理解できるようになり誤信念課題に正答することがわかっています
設問にある社会的参照の出現時期は別選択肢で細かく述べていきますが、おおむね生後8~10か月くらいから見られるとされております

よって、選択肢①は誤りと判断できます。



②共同注意の出現より遅れて1歳以降に現われ始める。
③自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる。
④自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である。
⑤乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する。

乳児は生後数か月間、主に母親との関係で生活を営み、この二者の関係を二項関係と呼びます。
生後6か月前後になると、母親が指さしたり、見たりする対象を乳児も中止するようになります。
これは、母親と乳児が視線を共有し、母親-玩具-乳児という三者の関係が成立するので三項関係と呼びます
相手と視線の共有が見られるこの三項関係のことを広義な意味で「共同注意」と呼びます。

ブルーナーは乳幼児の共同注意行動に2つの段階があることを示しました。
  • 第1段階:
    2ヶ月頃の乳児が大人と視線を合わせる行動。
    この段階では、外界と関わるやり方として、大人と視線を合わせたりして関わる子ども―大人のやりとり(二項関係)と、モノと関わる子ども―モノのやりとり(二項関係)しかもっていない
  • 第2段階:
    9~10ヶ月では、例えば大人が指さした対象(犬)を子どもも一緒に見るといった、外界の対象への注意を相手と共有する行動がみられるようになる。
    第1段階が乳児と大人という2者間の注意共有であったのに対し(二項関係)、第2段階では、自分-対象-他者の3者間での注意のやりとりが可能になる(三項関係)。 
トマセロは、9~10ヶ月頃の子どもは大人と同じ対象に注意を向けるだけだが、12ヶ月頃になると対象を指さした後、大人を振り返ってその対象を見ているかどうかを確認する行動が出現するとし、これを他者の意図を理解した行動と指摘しました。

また共同注意の発達過程を以下のように分類することも可能です。
  1. 対面的共同注意:
    生後2か月から半年の間に最も顕著に出現する。この時期には乳児の視線が他者の顔、とりわけ目をしっかりとらえ、更に社会的微笑の出現が明確になってくる。この乳児が他者と視線をしっかり合わせる状態を「2者の視線が出会う単純な共同注意」と呼び、共同注意の原型的形態と見なされている。
  2. 支持的共同注意:
    乳児と他者のいずれかが相手の視線を追跡して同じ方向を見たり、そこに存在する対象物を注目したりするときに生じる。このタイプの共同注意では、他者と同じ方向や対象物を見ていることに乳児が気づいているかは不明である。Butterworthらはこの誰かほかの人が見ているところを見ることを視覚的共同注意と呼んでいる。この共同注意は6か月頃より出現する。
    更に乳児があるものを凝視したときに、養育者がそれに気づき、その対象物に視線を向けるように作用する。これにより養育者は乳児の対象物に対する意図を感じ取り、それに促されるように一定の行動、例えば、対象物を見せたり動かしたり、手に持たせようとしたり、感情表現に合わせるようにするなど。このような行動は、乳児に対して対象物を目立たせ、母親自身や母親自身とのコミュニケーションチャンネルを浮かび上がらせ、乳児がそれに気づきやすくする方向に働く。このような母親の与える様々な情報に基づいた共同注意を支持的共同注意と呼んでいる。
  3. 意図共有的共同注意:
    生後9~12か月頃より乳児の共同注意に新たな質的変化が生じる。乳児は自分、大人、そしてこの両者が注意を共有する第三の対象物から三項関係をより緊密なものにし、参照的な相互作用に関わりだす。例えば乳児は自分の視線を柔軟に調整しながら、大人が見ているところを確実に見始める。子どもは自分の注意を対象物と大人にしっかり配分させながら共同注意をしている。そこには大人による乳児の意図理解と同時に、乳児による大人の意図理解がある。こうした他者への注意の配分を明確に伴う共同注意行動を「意図共有的共同注意」と呼ぶ。ここで共同注意が一応完成したと言える。これらによって視線追跡、社会的参照、模倣学習といったことが可能になる。さらにこの時期に身振りを使って、自分が関心を持った対象に大人の注意や行動を誘導しようとし始める。指さしの出現である。
このように、三項関係を表す共同注意行動には、指さし(見てほしいものを指差す)、参照視(既知の物を目にした場合にも母親の方を見る)、社会的参照(対象に対する評価を大人の表情などを見て参考にする)などがあります

社会的参照は、生後8~10か月くらいに生じます
曖昧な状況において乳児は母親の表情を参照して、自分の次に採るべき行動を判断するというものです。
社会的参照の典型的実験である視覚的断崖では、断崖という明らかに危機的な場面であっても、母親が笑顔などであればに沿って断崖を渡る行動を取りますが、危機的な顔をしている場合に渡る乳児は皆無です。
社会的参照の発達には、単に他者の感情を検出したり弁別したりするだけでなく、他者の感情と環境に存在する事象や物体との連結を理解することが必要になってきます。

社会的参照は乳幼児に限らず、その後の様々な場面で見られます
大人になると、自分自身の行動・発言について、確証や自信を持っているので、乳幼児が行なうような社会的参照は少なくはなります。
正確には、そもそもこうした確証や自信を持てるようになるほどまでには、社会的参照の繰り返しによって自己の言動への確信を高めたとも言えますね。
しかし、自信がない場面などでは周囲の顔を見回すなどはよくありますね(大学の講義で当てたりすると、よく見る現象です)。

以上より、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断でき、選択肢③は正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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