公認心理師 2019-121

2019年09月30日月曜日

問121はスーパービジョンに関する問題です。
2018-462018追加-3で出題がありますね。
過去問の内容で解ける選択肢もあります。

問121 公認心理師に求められるスーパービジョンについて、最も適切なものを1つ選べ。
①スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は対等である。
②スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行うべきではない。
③スーパーバイザーはスーパーバイジーが行う心理的支援の実践上の責任を負う。
④スーパービジョンとはスーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うものをいう。

スーパービジョンについては、長い臨床心理学の歴史の中で徐々に考え方が変わってきた面があります。
本問は、そうした変化について理解していないと間違えてしまうような内容を含んでおります。



解答のポイント

スーパービジョンの基本的なルールについて把握している。



選択肢の解説


①スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は対等である。
③スーパーバイザーはスーパーバイジーが行う心理的支援の実践上の責任を負う。

これらの選択肢については、コンサルテーションとSVとの違いの中で議論されることが多い事項になります。
コミュニティ・アプローチにおけるコンサルテーションでは…
  1. コンサルタントとコンサルティは平等な関係:SVでは上下関係がある
  2. コンサルタントは助言の段階に留まり、その助言をどのように活用するかはコンサルティ次第となる。すなわち、事例の状態への管理的責任を負うのはあくまでもコンサルティとなる:SVではヴァイザーが負うこともある
  3. コンサルテーションの時間や回数は、一般にその度毎に頼まれてという形態が多く、何回か継続する場合もその期間が決まっているのが普通:SVはそこまで明確ではない
…などの特徴があります。
第1項が選択肢①の内容と、第2項が選択肢③の内容とリンクしていますね。
これらについて詳しく述べていきましょう。

まずSVにおけるバイザーとバイジーの関係は、上下関係のあるものです。
なぜならSVというシステム自体、教育の枠組みで行われるものであり「面接における技法や技術、ケースの概念化、専門職としての役割、バイジーの自己内的・対人的気づき、などを伸ばす」という営みです2018追加-3の選択肢①でもその点については述べております)。
当然、バイザーは指導者的立場となるので、上下関係が存在することになります

上記にも示した通り「SVではバイザーが責任を負うこともある」とされております。
しかし、実は「バイザーがバイジーのカウンセリングの責任を持つ」という状況は、かなり限定された状況です
どういう状況であるかというと、以下のような条件が揃った場合になります。
  1. 大学院などの教育機関において、
  2. 学内の教員がスーパーバイザーを務め、
  3. 学内で学生が担当しているケースについてSVを行っている。
…という状況かなと思います。
そして、こういう場合にはスーパーバイザーとなる教員が、学生がそのケースを担当するか否かの判断にまで関わったり、ケースの契約時にSVを受ける前提であることを説明するなどを行っていたわけです。
そこまでした場合には、「バイザーが責任を持つ」ということが可能でした
事実、このような状況はかつて各大学院で散見されました。

ですが、現在は外部にスーパーバイザーを務められるカウンセラーも増えましたし、そうなってくると、外部で時々会うだけのスーパーバイザーがバイジーのケースの責任を持つという仕組みにかなり無理が生じるのは当然のことと言えるでしょう
率直に言えば、責任が生じてしまうのであれば、スーパーバイザーは引き受けられないと感じるのが人情だと思います。

また、臨床のトレーニングの在り方として、かつては「師弟関係」という面が少なからずあったのに対し、現在は「教育」という枠組みで行われることがほとんどになっています。
師弟関係を結べるような師匠も、そして弟子も減ってきているような気がしています(本当は減っていないのかもしれないけど、教育の仕組みとして「師弟関係」という現象が生じなくなっている)。
そういう変化も「バイザーが責任を持つ」ということが合わなくなってきた一因ではないかと思うのです。

いずれにせよ、現在の臨床教育において「バイザーがバイジーの心理的支援の実践上の責任を負う」ということはなされておりません。
ただこの選択肢③は荒唐無稽な内容なのではなく、そうした臨床教育の在り方の変化に伴って推移した事柄の一つだと私は考えております

以上より、選択肢①および選択肢③は不適切と判断できます。



②スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行うべきではない。

こちらについては2018-46の選択肢②にほぼ同じ内容が出題されております。
そちらでの解説を引用しつつ述べていきましょう。

バイザーがバイジーに心理療法を行う問題点の1つ目は、関係性の混乱が生じることです
心理療法を行うことで「スーパーバイジーとスーパーバイザー」という関係と「クライエントとセラピスト」という関係を重ねる、変更する、混在させる、という状況が生じます。
SVにまつわる関係は一般的に「上下関係」が存在するものとされており、心理療法上の関係は「平等」なものです。
こうした異なる関係性を混在させるような関わりは、スーパーバイジーの混乱を招くものと思われます。

問題点の2つ目は、スーパーバイザーが上記のような対応を取ることを「見せる」ことが挙げられます。
SVでの状況とカウンセリング状況は並行プロセスになります(つまりバイザーとバイジーの関係は、カウンセラー(バイジー)とクライエントの関係と重なりやすい)。
スーパーバイザーがSVという枠組みを超えて個人的事情に偏ること、上記のような関係性を混乱させるような行為に出るということを見せること自体による、バイジーが行っているカウンセリング場面への影響を考慮しなければなりません

問題点の3つ目は、SVで「個人的な問題」にまで踏み込むことはしないのが一般的です。
行ったとしても、あくまでも話題になっている事例を通したスーパーバイジーの特徴について言及するという場合がほとんどだと思われます

以上より、選択肢②は適切であると判断できます。



④スーパービジョンとはスーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うものをいう。

SVの定義としては「バイザーがバイジーに対して一対一で、臨床実践上のアセスメントと介入の具体的方法について、時間と構造を定めて、継続的に教育・訓練を行うこと」(平木典子,1997)が示されております。
これを見る限り、本選択肢は適切に見えますね。

しかし、上記の定義は1997年とかなり古いことがわかると思います。
現在ではSVの形式も多様になりました。
2018-46の選択肢③にある「ライブ・スーパービジョン」もSVの形式の一つですね。

現在では「グループ・スーパービジョン」が積極的に行われています。
個人同士で行うスーパービジョンに対し、こちらは複数人で行うものになります。
グループを活用してスーパーバイジー同士の相互作用による質的な向上を目指すものです

神田橋先生が花クリニックで行っているスーパービジョンは、神田橋先生とバイジーが対面してSVをしている様子を、聴衆が見ているという形式ですね。
こちらは「ケースカンファレンス・グループ」という表記ですから、SVと見なしていないのかもしれませんけど。

以上より、SVの形式は多様になっております。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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