公認心理師 2019-102

2019年09月15日日曜日

問102は医療機関との連携が必要な事例を見分ける問題です。
本問では「学校での支援」という前提がありますね。
学校の事例で、どういう場合に医療機関との連携が必要になるか、を考えていくわけです。

問102 学校での支援において医療機関との連携が必要な事例として、最も適切なものを1つ選べ。
①小学3年生の男児。粗暴で級友とのトラブルが多い。父親からの虐待が疑われる。
②小学5年生の男児。忘れ物が多く、気が散りやすい。順番を待てずに他児を蹴るなど、トラブルが多い。
③中学1年生の女子。しばしば腹痛を訴え、保健室を訪れる。級友からの無視や嫌がらせがある。
④中学2年生の女子。不登校。インターネットで知り合った成人男性との性的関係が疑われる。
⑤中学3年生の男子。授業中の居眠り。夜遅くまで、高校生の友人とゲームセンターで遊んでいる。

「医療機関に紹介すべき事例」を選択する問題は2018-134および2018追加-28で出題されていますね。
今回の問題はそこまで切迫している場合ではなく、「連携が必要」というレベルに設定されています。
上記の過去問は、こちらの手を離れて医療機関で支援を受けるというニュアンスが強かったですが、本問では医療機関と連携しつつ本人の支援にあたるということになりそうです。

さて、本問で大切なのは、示されている各事例状況において、第一選択として採られるだろう対応について理解していることです。
そこに医療機関が入ってくるような選択肢を選ぶわけですね。



解答のポイント

各状況において優先すべきことを理解している。



選択肢の解説


①小学3年生の男児。粗暴で級友とのトラブルが多い。父親からの虐待が疑われる。

まず学校での問題は「粗暴で級友とのトラブルが多い」となっておりますが、それよりも「父親からの虐待が疑われる」という点が重要ですね。
被虐待児は粗暴だったり落ち着かなくなるなどの反応を見せることが知られており、当然、級友とのトラブルは多くなります。

すなわち、この事例では「父親からの虐待」にアプローチすることが、「粗暴」という点にも間接的にアプローチすることになると考えられます。
言い換えるなら、単に「粗暴で級友とのトラブルが多い」という点だけにアプローチするという対応(例えば、ADHD等を疑って情報収集する、学校の生徒指導のレベルで対応しようとすること)は、対症療法のようなものであると言えるでしょう。

繰り返しますが、ここで大切なのは「父親からの虐待が疑われる」という点にアプローチすることです。
そうなってくると児童虐待防止法の理解がここで求められます。
児童虐待防止法第6条には「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」とあります。
この「思われる」という点は、本選択肢の状況のように「疑われる」というだけで通告の対象になるということです

よって本選択肢の状況は「市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所」などの福祉機関への通告が第一選択となると考えられます。
従って、選択肢①は不適切と判断できます。



②小学5年生の男児。忘れ物が多く、気が散りやすい。順番を待てずに他児を蹴るなど、トラブルが多い。

本選択肢の状況は、ADHDを念頭に置いておく必要があります。
もちろん、養育環境や過去の学校での様子などを把握しておくことが大切になるのですが、現時点で「他児を蹴るなど、トラブルが多い」ということですから、周囲のため、周囲との関係の悪化による本人の二次障害の出現を防ぐためにも、早急に対応することが求められる事例です

選択肢①のように、養育環境によって本選択肢の状態が生じていると見なせるような情報が見られませんから、医療機関への受診を念頭に置きつつ情報収集および保護者との連携が大切になってくる事例です

ちなみに、本選択肢の状況で第一選択とされるのは「情報収集」です。
その上で、医療機関受診を考えていくのであれば「保護者との連携」が来て、そこから医療機関受診ということになるでしょう。
実践では、このステップが重要になりますね。

ですが、本問では上記のような「情報収集」「保護者との連携」のいずれの段階であっても医療機関との連携を視野に入れつつ行うという点で、「医療機関との連携が必要な事例」と見なすことができますね
よって、選択肢②が適切と判断できます。



③中学1年生の女子。しばしば腹痛を訴え、保健室を訪れる。級友からの無視や嫌がらせがある。

本選択肢の内容は、おそらく「無視や嫌がらせによって、腹痛という身体反応を示している事例」と見なすのが妥当だと思われます。
このような状況で「最初に医療機関の受診を勧めるか」と問われればNoです。
腹痛が「級友からの無視や嫌がらせ」によって生じているかどうかはわかりませんが、腹痛の有無に関わらず「級友からの無視や嫌がらせ」に対してアプローチしていくことが求められる状況と言えます。

こちらについてはいじめ防止対策推進法第23条第2項に「学校は、前項の規定による通報(いじめの通報)を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする」と規定があります。
よって、本選択肢の状況では、まずいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、学校設置者に報告することが第一選択となります

もちろん、腹痛が急性的なものであると見なせる場合は、当然、医療機関受診(というか救急車)を考えていきますが「保健室を訪れる」というレベルで済んでいる場合は、まずはいじめへの対処が優先されるでしょう。
そして、いじめによる「身体反応としての腹痛」という見立てもできることを鑑みれば、いじめに対応することが腹痛のケアにもなっていると言えるでしょう

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。



④中学2年生の女子。不登校。インターネットで知り合った成人男性との性的関係が疑われる。

まず前半にある「不登校」は棚上げしておくことになるでしょう。
後半の「インターネットで知り合った成人男性との性的関係が疑われる」という点へのアプローチが、本人の福利のためにも優先されるべきです。

学校でこの事実が判明した場合、例えばSCや教職員との関わりの中で明らかになったとしたら、保護者にその事実を伝える必要があることを伝えることになります(本人の了承を得る、ではない)
こうした性的な事例の場合、背景に保護者との関係がこじれているということも考えられ、本人が了承しないこともあるでしょう。
それでも、この事例の状況は保護者への連絡をしないということはあり得ない状況です。
本人が了承せずとも「これは伝えます」と告げて、保護者に連絡することも止むを得ません。
本人の心身の安全を第一に考え、行動することがこういう事態では求められます。

併せて、警察への連絡もなされることになるでしょう。
選択肢中の「成人男性」は明らかに犯罪行為に手を染めているわけですから、本選択肢の状況で警察が絡まないということはあり得ません
誰が警察に通報するかは状況によって変わってきますが、できる限り早い段階で警察とも連携を取ることになります
例えば、保護者から警察に通報する場合、保護者にタイミングを委ねるのではなく、学校の場ですぐに通報してもらう方が適切でしょう。

同時に児童相談所への通告も必要だと思います。
先述のように、家庭環境が整っていないことによって本選択肢のような事態が生じている可能性も見受けられます。
例えば、両親が娘の外出を止めることができないでいる、ということも少なくありません。
このような場合、福祉的な措置を通して本人を守っていくことになるかもしれないので、児童相談所との連携が重要になります
もしも、児童相談所が絡まなくても「こういう事態が起こっていることを知っておいてもらう」ということはあってよいでしょう。

以上より、本選択肢の状況は医療機関が第一選択になるものではないことがわかります。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。



⑤中学3年生の男子。授業中の居眠り。夜遅くまで、高校生の友人とゲームセンターで遊んでいる。

まず犯罪を犯した14歳以降の子どもは、警察や家庭裁判所が対応することになります。
本事例では、まだ犯罪とは言えませんね。

少年法第3条では虞犯少年を以下のように定めています。
  1. 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
  2. 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
  3. 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
  4. 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
「高校生の友人とゲームセンター」では、まだ虞犯と見なすにも難しいでしょう。
しかし、明らかに不良行為であり、児童相談所ではこうした行為に対する相談も受け付けていますから、連携を考えるのであれば児童相談所がその一つとなるでしょう

また、上記では「犯罪とは言えない」と述べましたが、犯罪ではない=警察は関係がない、というわけではありません。
補導をされているなどの場合もありますから、警察と連携を取って対応していくことも十分に考えられます

上記に先立って、学校では担任や生徒指導主任の対応もなされることになります。
保護者を呼んで話し合うことも採られ得る対応です
他機関との連携や、学校内での指導の流れがどのようになるかは、どのように問題行動が明らかになるか、その問題行動の程度によってまちまちとなります。

いずれにせよ、本選択肢の状況は医療機関との連携を第一とするものではありません。
よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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