公認心理師 2019-54

2019年08月30日金曜日

問54は二次的外傷性ストレスに関する問題です。
知ってはいるけど、詳しく聞かれるとわかっていない、という概念になるかもしれないですね。
これを機会にしっかりと理解しておきましょう。

問54 二次的外傷性ストレス[Secondary Traumatic Stress〈STS〉]による反応について、正しいものを2つ選べ。
①幼児期のトラウマ体験を原因とする。
②フラッシュバックを呈することがある。
③被害者の支援活動をしている人に生じる。
④回復には年単位の時間を要することが多い。
⑤不安発作の反復を恐れ、社会的活動が制限される。

こちらについては以下の書籍を参考にしました。
おそらくこちらの書籍が、この概念の基本書だろうと思います。
もちろん、概説している書籍はあるのでしょうけど、やはり基本的なところを把握しておかないと落ち着かないですよね。
正しい理解を仕入れて地盤を固めてから、試験に臨むようにしたいものです。



解答のポイント

二次的外傷性ストレス概念を理解していること。



二次的外傷性ストレス[Secondary Traumatic Stress〈STS〉]

ここでは、上記の書籍をまとめる形で二次的外傷性ストレスの概説を行っていきます。
第一著者のStammの知見が中心になっていますね。

Stammは以下のように述べております。
「援助者であることはまたリスクも負う。すなわち、人々をケアすることで時には、相手の外傷性の体験に曝された直接の結果として苦痛を経験することもある。トラウマに二次的に曝されることによって、援助者にそのつもりはなくても、元々のトラウマを負った人に余計な苦痛を与えてしまうこともあるだろう。この状況-共感疲労とも共感ストレスとも二次的外傷性ストレスともいうが-は苦しむ人々に力添えするときに起こる好ましくない結果であるが、それは起こるべくして起こる、予見し得る、治療可能な、そして、防ぐことができるものである」

重要なのは、単に支援者側のメンタルヘルスだけではなく、それによって本来支援されるべきクライエントを傷つける可能性があるという点だと思います。
それは互いにとって避けるべき事態ですよね。


トラウマ概念について

もともとトラウマ概念は、外傷体験を経験した人を対象に発展してきましたが、「人間は直接的にも間接的にもトラウマを負うものである」とされています。
DSM-5の出来事基準を抜き出すと以下の通りです。
  1. 心的外傷的出来事を直接体験する。
  2. 他人に起こった出来事を直に目撃する。
  3. 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうだった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない
  4. 心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする(例:遺体を収容する緊急対応要員、児童虐待の詳細に繰り返し曝露される警官)。
下線部の箇所は、明らかに二次的にトラウマを負うことがあるとしていることになります。

Stammは、クゥヴァード現象(妻に共感して夫が妊娠時の症状を呈すること)、配偶者の精神疾患を共有しているように見える二人組精神病などを「二次的破局的ストレス反応」と呼び、集団ヒステリーや心因性疾患が集団に広まる仕組みの一つと考えています。


トラウマの定義

起こり得るトラウマの種類は以下のように分類できます。
  1. 同時的トラウマ:
    自然災害時など、システム構成員全員が直接一斉に影響を受けるときに起こる。
  2. 代理トラウマ:
    一人の構成員が他の構成員と離れたところで影響を受けるとき(戦争、炭鉱事故、人質に取られる、遠隔地の災害)に起こる。
  3. 家族内トラウマ:
    ある構成員が他構成員を情緒的に侵害するときに起こる。
  4. キアズマ的トラウマまたは二次的トラウマ:
    最初一人だけの構成員に見られた外傷性ストレスがシステム全体に「感染」したようなときに起こる。
この最後に述べた現象が、現在二次的外傷性ストレスと呼称しているものに近いとされています。


二次的外傷性ストレスの定義

Stammは二次的外傷性ストレスを「配偶者など親しい間柄の者がトラウマとなる出来事を体験したことを知ることにより自然に必然的に起こる行動や感情」と定義しています。
トラウマを受けた人あるいは苦しんでいる人を支える、支えようとすることにより生じるストレスとされています。

外傷性の出来事の最中か後か、直接ストレッサーに曝された人か二次的に曝された人かで経過あるいは反応パターンに根本的な違いがあります。
また、直接ストレッサーに曝された人(すなわち被害者)の家族や友人だけでなく、メンタルヘルスの専門家やその他援助者も二次的外傷性ストレスやストレス障害で傷つきやすいとしています
すなわち、PTSDとSTSの違いは「他者が体験したトラウマとなる出来事に曝されることがもう一方の者のトラウマになる」という1点のみということになります

ここではStammの挙げている二次的外傷性ストレスの基準を以下に示します。

A. ストレッサー
  1. 実際に又は危うく死ぬ又は重傷を負うような出来事を、1度又は数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険、患者が体験し、目撃し、または直面した。
  2. その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。
    a.トラウマを受けた人(TP)への深刻な脅威
    b.予想外のTPの周囲の状況の破壊をもたらす出来事
B.トラウマ出来事の再体験
  1. 出来事/TPの想起
  2. 出来事/TPの夢
  3. 思いがけないときに出来事/TPを再体験
  4. 出来事/TPに関連する刺激に対する苦痛
C.関連する刺激に対する回避/麻痺
  1. 思考/感情を回避しようとする努力
  2. 活動/場所・人物を避けようとする努力
  3. 生理的健忘
  4. 重要な活動への関心の減退
  5. 他の人から孤立している、または疎遠になっているという感覚
  6. 感情の範囲の縮小
  7. 未来が短縮した感覚
D.持続的な覚醒亢進状態
  1. 入眠または睡眠維持の困難
  2. 易刺激性または怒りの爆発
  3. 集中困難
  4. TPの周りへの過度の警戒心
  5. 過剰な驚愕反応
  6. 関連する刺激に対する生理学的反応性

先述の通り、ほぼPTSDの基準と変わらないことが見て取れますね。
ちなみにStammは、通常のPTSDを「一次的外傷性ストレス障害」と呼称すべきと提案しています。


共感ストレス・共感疲労との関連

二次的外傷性ストレスと最も関連がある概念は「共感疲労」であるとしています。
共感疲労において、共感とは「苦痛や逆境に見舞われた他者に対する深い共感や悲嘆の感情で、その人の苦痛やその原因を取り除き癒したいという強い希求を伴うもの」と定義されています。

トラウマ支援者はこうした共感疲労になりやすいとされており、その理由としては以下の理由が挙げられています。
  1. 共感性が、トラウマ・ワーカーがトラウマを負った人を援助する上で最も重要な資質であること。
  2. 多くのトラウマ・ワーカーは人生において何らかの外傷性の出来事を体験していること。
  3. トラウマ・ワーカーがもつ未解決のトラウマが、クライエントが同様のトラウマを離した時に活性化される。
  4. 子どものトラウマはケア提供者にとって見過ごせないものである。
これらを踏まえて、各選択肢の解説を行っていきましょう。




選択肢の解説


①幼児期のトラウマ体験を原因とする。

こちらはDSM-5における出来事基準に基づいたものになっています。
まずは6歳以上の出来事基準は以下の通りです。

実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露:
  1. 心的外傷的出来事を直接体験する
  2. 他人に起こった出来事を直に目撃する。
  3. 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうだった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない
  4. 心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする。
下線部が「幼児期のトラウマ体験」と絡む箇所になるでしょう。
また、幼児期の体験が外傷反応になることは6歳以下の基準を見ても明らかです。

6歳以下の子どもにおける、実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露
  1. 心的外傷的出来事を直接体験する。
  2. 他人、特に主な養育者に起こった出来事を直に目撃する。
  3. 親または養育者に起こった心的外傷的出来事を耳にする。
この基準は虐待体験などを想定していると思われ、それは幼児期のトラウマ体験の最たるものと見なすことができます。

以上より、選択肢①の内容はSTSではなくPTSDの内容を示していると言えます。
すでに述べたように支援者が幼児期のトラウマ体験があると、STSになりやすいという事情もあるでしょうが、あくまでもSTSについて述べたものとして考えると誤りとなりますね。
よって、選択肢①は誤りと判断できます。



②フラッシュバックを呈することがある。
③被害者の支援活動をしている人に生じる。

上記で述べたとおり、これらはSTSに該当する項目であると言えます。
STSは「配偶者など親しい間柄の者がトラウマとなる出来事を体験したことを知ることにより自然に必然的に起こる行動や感情」と定義され、トラウマを受けた人あるいは苦しんでいる人を支える、支えようとすることにより生じるストレスとされています。

また、直接ストレッサーに曝された人(すなわち被害者)の家族や友人だけでなく、メンタルヘルスの専門家やその他援助者も二次的外傷性ストレスやストレス障害で傷つきやすいとしています
すなわち、PTSDとSTSの違いは「他者が体験したトラウマとなる出来事に曝されることがもう一方の者のトラウマになる」という1点のみということになります
症状を見てみても、再体験症状も生じるとされており、PTSDとの違いは「トラウマを受けた人」に関する想起があることになります。

以上より、選択肢②および選択肢③は正しいと判断できます。



④回復には年単位の時間を要することが多い。

こちらのページに二次的外傷性ストレスの特徴の記載がありました。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)とほぼ同様の症状が現れる
  • 何の前触れもなく突然起こる(バーンアウトが徐々におきるのに対し)
  • 無力感や困惑、孤立無援感がある
  • 回復のペースも速い
また、支援自体がその職務上の役割であること、支援者側の体験の中に賦活化されるものがある場合などが考えられるため、繰り返し生じるということが考えられます

まずは普段から職場での人間関係が円滑に行われていることがメンタルヘルスの維持には必要ですが、二次的外傷性ストレスが生じている場合には以下のような対策や予防策が考えられます。
  • 一人で抱え込まないこと(上司や同僚と話し合える環境を持つ)
  • ケースカンファレンス(職場内外)の機会を持つ
  • スーパーヴィジョンを受ける
  • ケースを相談できる専門家の仲間を持っている
  • 自分なりのリラクゼーション方法をもつ
  • 診察やカウンセリング業務以外に、事務作業や研究・教育活動を行うなど仕事内容のバランスを点検する
  • 援助者自身が外傷的な体験を経験した、あるいは経験している場合は、現在の安全が確保され、かつその体験が過去のものとして整理されていること
複数の論文で、予防としては孤立を避けること、SVなどの利用が示されていますね。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。



⑤不安発作の反復を恐れ、社会的活動が制限される。

こちらはパニック障害のことを指していると思われます。
一応、パニック障害の診断基準を示すと以下の通りです。

A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる
注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる。
  1. 動機、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは振え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気または腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うまたは“どうかなってしまう”ことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖
    注:文化特有の症状(例:耳鳴り、首の痛み、頭痛、抑制を失っての叫びまたは号泣)がみられることもある。この症状は、必要な4つ異常の1つと数えるべきではない。
B.発作のうちの少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1ヵ月(またはそれ以上)続いている。
  1. さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、“どうかなってしまう”)。
  2. 発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)。
C.その障害は、物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)、または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)によるものではない。
D.その障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない。

これらがパニック障害の診断基準で、選択肢の内容を指していると思われます。
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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