公認心理師 2019-5

2019年08月05日月曜日

問5は統計用語、特にいわゆる「統制」について問うている内容です。
「統制」という言葉は載っていませんが、「統制」とはどういうことかを理解していることで解きやすくなります。

問5 実験は実験者が操作する変数と観測される変数によって組み立てられるが、前者以外にも後者に影響を与える変数があることが多い。この変数は何か、正しいものを1つ選べ。
①従属変数
②剰余変数
③独立変数
④離散変数
⑤ダミー変数

大切なのは独立変数、従属変数、剰余変数という概念の違いについて把握していることです。
これらは心理学実験の場では「ここにいる誰もが把握していること」として用いられることになります。



解答のポイント

独立変数・従属変数・剰余変数というセットで把握していること。
実際の実験デザインを行うときに、剰余変数の「統制」が重要であるという認識をもって考える癖をつけること。



選択肢の解説


①従属変数
②剰余変数
③独立変数

問題文にある変数についてまずは確認していきましょう。
まず最初の「実験者が操作する変数」のことを「独立変数」と呼びます
そして次に記載されている「観測される変数」のことを「従属変数」と呼びます

独立変数とはあるシステムに対する入力、従属変数とはシステムからの出力です。
また、独立変数を原因、従属変数を結果と見なすこともあります。
生体をシステムと見なし、独立変数として刺激を与え、従属変数として反応を見るというのが心理学研究の基本スタイルの一つです

実験心理学の文脈では、独立変数は実験的に操作可能な変数であり、従属変数は明確に測定可能な測度になります
例えば、過去問にもあるミュラー・リヤー錯視(2018-150ですね)の実験では、矢羽根の長さや角度を実験的に操作して(つまりこれが独立変数)、錯視量の変化を見る(こちらが従属変数)場合などがこれに該当します。
分散分析法での「要因・水準」と表現されるのは独立変数、測定される測度が従属変数となりますね。

ですが問題文にもあるとおり、こうした実験者が操作する変数(独立変数)以外にも、観測される変数(従属変数)に影響を与える変数が存在します。
いわば実験の関心外となる変数になるわけですが、このような変数を「剰余変数」と呼びます

実験者としては独立変数を設定するわけですが、どうしても設定した独立変数以外にも無数の剰余変数は存在してしまいます。
例えば、陽の光、実験室外からの音、温度、湿度といったものも剰余変数に該当します。
そのため、実験心理学を行う大学や研究所では「シールドルーム」を設けていることが多いです。
これは、温度・光量の調整ができる無刺激・防音設備であり、安定かつ守秘された環境での心理サポートや統制された条件下での実験等が実施されています。
つまり、剰余変数を「統制」することができるわけですね
そしてこの中で、生理的指標(心電図や脳波など)を測定する装置が設置されており、それらの指標を用いた実験を安定した条件下で行うことが可能になります。

それ以外にも、このようなシールドルームが使えないような実験も多く存在します。
そのような場合であっても、例えば実験者の文言を同じにするなどの配慮は必要になります。
文言の違いという「剰余変数」によって、相手の回答が変わってきてしまう可能性がありますからね。

このように「剰余変数」を様々な手法を用いて操作し、できる限り実験者の設定した「独立変数」だけが機能するように状況を整えることを「統制」と呼びます
剰余変数を統制する手法として、以下があります。
  • 除去:
    単純に取り去ること。取りされないものもあります。例えば空気・湿度とか。
  • 恒常化:
    状況を常に一定にすることを指します。室温や湿度を一定にするような感じです。
  • 無作為化(ランダマイズ):
    条件をランダムに割り当てることを指します。
    例えば、実験参加者の特性が影響する場合、事前にそれがわからなくてもランダムに割り当てればバランスが取れる可能性が高いわけです。
  • バランスをとる:
    研究によっては2つの条件をやってもらわなくてはならない場合があります(被験者「内」の場合ですね)。
    その際、「A条件をやった後にB条件をやる」ときと「B条件をやった後にA条件をやる」ときを無作為に割り当てることで、どちらの条件を先に行ったかによって出る影響を相殺できます。
どこまでいっても剰余変数をなくすことは不可能です。
ですが論文執筆にあたっては、こうした統制の努力を行っていないと、それを記載していないと、当然研究結果への信頼性が薄れてしまうわけです

以上より、選択肢①および選択肢③は誤り、選択肢②が正しいと判断できます。



④離散変数

こちらは変数の性質に関する説明概念になります。
頻度や人数のように1・2・3…というような飛び飛びの値しか取りえないものと、時間や長さなどのように本来連続線上のあらゆる値を取りえるものとに分類することができます

そして前者のように「飛び飛びの値しか取りえない」ような変数のことを「離散変数」と呼び、後者のように「本来連続線上のあらゆる値を取りえるもの」のことを「連続変数」と呼びます。

もう少し詳しく述べていきましょう。
離散変数は、中間的な値のない変数となります
男・女といった変数は、男と女の間に中間のものがないので離散変数になります。
また、さいころの目も1の目と2の目の間に何もない(例えば、1.5とか)ので離散変数と言えます。
「さいころの目は1~6の連続じゃないの?」と思う方もおられると思いますが、それは誤りです。

これに対して時間や長さ、具体的には身長や体重のような変数は、174センチと175センチの間に無数の中間値が存在しますよね(174.1、174.2…のように)。
こういう変数のことを連続変数と呼ぶわけです。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。



⑤ダミー変数

統計の分析手法は様々ですが、中には量的データしか分析できないような手法が存在します(例えば重回帰分析などがそれに該当します)。
ですが、重回帰分析を使用する場合でも、質的データを放り込んで分析を行いことがあります
そのような場合に用いられるのが「ダミー変数」となります

すなわち、ダミー変数とは本来数字ではないデータを数字に置き換えることを指します
例えば、男性を「0」、女性を「1」に置き換えるような場合を指します。
他にも「Yes・No」「含む・含まれない」「増税前・増税後」などのような質的データに数字を振って、すなわちダミー変数として統計にかけることができるわけです。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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