公認心理師 2019-41

2019年08月24日土曜日

問41は脳動脈系に関する問題です。
見立てを行う上で、外因による症候を見落とさないようにすることが大切ですね。

問41 右利きの者が右中大脳動脈領域の脳梗塞を起こした場合に、通常はみられないものを1つ選べ。
①失語症
②左片麻痺
③全般性注意障害
④左半身感覚障害
⑤左半側空間無視

この手の問題は文字だけで読んでいても把握しづらいので、図や表を多く用いて説明していきます。
この手の問題を理解しやすく説明しようとすると、けっこうな資料が必要になるから大変ですね。



解答のポイント

脳動脈系のかん流領域と機能局在を対応させて把握していること。
また、閉塞部位とそれに対応する主な神経症状を把握していること。



脳動脈系:中大脳動脈を中心に

脳動脈の走行から捉えていきましょう。
脳動脈は、総頸動脈から分岐する左右の内頸動脈2本と、鎖骨下動脈から分岐する左右の椎骨動脈2本の、合計4本で栄養されています。


ちなみに総頸動脈からは内頸動脈と外頸動脈に分岐していますが、この「内外」という表現は、「頭蓋腔内外に分布する」という意味があります。
よって、内頸動脈は「頭蓋腔の内に分布する動脈」となり、外頸動脈は「頭蓋腔の外に分布する動脈」となりますから、本問で重要になってくるのは内頸動脈ということになります

内頸動脈は主に前大脳動脈、中大脳動脈につながります(ここで大脳への血液供給の大部分を担っています)
椎骨動脈は脳底動脈を経て後大脳動脈につながります。

前大脳動脈は大脳の内側を、中大脳動脈は外側表面を中心とした大脳半球の広範囲を、後大脳動脈は大脳の後部~下内側面をかん流しています。
中大脳動脈は内頸動脈系最大の分枝であり、分岐後すぐに外側へ走ってSylvius裂に達し、そこから扇状に大脳の外側へと皮質枝を出します。
この間は以下のように4つに区分されています。


このように中大脳動脈は広い範囲をカバーしていることがわかりますね
内頸動脈系と椎骨・脳底動脈系がそれぞれかん流している領域を以下のようにまとめてみました。



上記からもわかるとおり、中大脳動脈は後頭葉以外の大脳半球外側面(側頭葉、前頭葉、頭頂葉の一部)という広い範囲に広がっています
ちょっとくどいですけど大切なことなので、図で各動脈の広がりを見てみましょう(こういう風に視覚的に訴えた方がわかりやすい人も多いですね)。



これらが脳大動脈、特に中大脳動脈の走行になります。
まずこれらを基本知識として、以下に進んでいきましょう。


閉塞部位とそれに対応する主な神経症状

本問では「中大脳動脈が梗塞が起こることによって、どのような神経症状が出るのか」ということに対する理解が求められています。
閉塞部位と、それによって生じることが多い神経症状をまとめてみていきましょう。
なお、ここでは左側を優位側、右側を劣位側とします(つまり事例の状況ということですね)


さて、本問と絡む部分を抜き出してみていきましょう。
中大脳動脈に梗塞が起こった場合、まずは梗塞が生じた反対側に「片麻痺(上肢に強い)」「半身の感覚障害(上肢に強い)」が生じることが考えられます
これら以外では「同名性半盲または同名性上四分盲」「病側への共同偏視」「意識障害」などが生じます

右利きの人(≒左側を優位・右側を劣位)の人の左側に梗塞が生じた場合、「失語」「物体失認」「失読失書」「Gerstmann症候群」「観念性失行」「観念運動性失行」などが生じるとされています。
一方で、右利きの人の人の右側に梗塞が生じた場合、「半側空間無視」「着衣失行」「半側身体失認」「相貌失認」などが生じるとされています
また左右のいずれかによって、「構成障害」「肢節運動失行」が生じます。

これらを踏まえた上で、各選択肢の解説に入っていきます。
各神経症状については、その選択肢の解説内で詳しく説明していくことにしましょう。



選択肢の解説


①失語症

失語とは、脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態です。
言語中枢は大きく分けて2つ(BrocaとWernicke)存在し、この2つは弓状束により連絡しています。
右利き者の9割以上で、Broca野・Wernicke野は左脳に局在しており、中大脳動脈によって栄養されています

事例の状況は「右利き者が右中大脳動脈の脳梗塞を起こした場合」ということですから、この事例で失語症を生じさせるのは左中大脳動脈に梗塞が生じた場合であると考えられます
すなわち「右利きの者が右中大脳動脈領域の脳梗塞を起こした場合」では、失語症は通常見られません。

よって、選択肢①が通常見られないと判断でき、こちらを選択することが求められます。



②左片麻痺
④左半身感覚障害

中大脳動脈は一次運動野と一次体性感覚野に広くかん流しています
中大脳動脈が障害されることで、これらの領域に関連した神経症状が生じることになります

19世紀後半にJacksonは、てんかん患者の発作時に見られる痙攣がしばしば手に始まり、より近位の腕から体幹に、あるいは顔に移行していく様子を観察し、中心溝付近に体部位局在があると推測しました。
その後、ヒトやサルの一次運動野の表面に電極を当て、弱い電流で局所的に刺激すると、反対側の四肢や顔面の運動が誘発されることが分かりました。
こうした体部位局在である一次運動野が損傷されると、局在に対応する体部位の運動麻痺が反対側に起こります
事例の場合は、右側が梗塞したので左側に麻痺が生じるということになります

また、一次体性感覚野は、中心溝に沿って内外側に帯状に広がる大脳皮質の領域で、視床中継核を経由して入力する末梢からの体性感覚情報を処理し、対象物の触識別や運動制御に必要な体性感覚情報を二次体性感覚野、頭頂連合野、運動野等に出力する重要な一次感覚皮質です
事例の場合は、梗塞側の反対、すなわち左側に感覚障害が生じると考えられます

以上より、選択肢②および選択肢④は通常みられるものと判断でき、除外することが求められます。

一般に大脳で損傷を生じた場合には反対側の麻痺を生じます。
つまり、右脳が損傷されれば左側の麻痺が、また、左脳では右側の麻痺を生じます。
これは、運動に関係する脳の神経線維が脳幹の延髄という場所で交叉し、反対側の手足を支配しているためです。

例えば、右側に外傷を負った瞬間に右側が動かなくなると、その外傷をもたらした何かから自分を守る行動が取りにくくなりますよね。
そういう危機的状況において、運動に関係する脳の神経線維が交叉していることの価値が大きいわけです。
これが本当かどうかはわかりませんが、人体の仕組みには全て何かしらの生き抜くための意味があるように思っています。



③全般性注意障害

まず注意は通常「方向性注意」と「全般性注意」に大別され、注意障害というと臨床的には後者を指します。
全般性注意はその内容によっていくつかのコンポーネントに分けられております。
Sohlbergの分類では、5つのコンポーネントに分けられております。
  1. 焦点性注意:内的・外的刺激に対して反応する
  2. 持続性注意:一定時間、一定の強度で注意を向け続ける
  3. 選択性注意:周囲の刺激から必要な刺激を選択し、妨害刺激への注意の転動を抑制する
  4. 転換性注意:注意を現在の対象から他に柔軟に切り替える
  5. 分割性注意:同時に複数のものに対して注意を向ける
ちなみにこれらは階層性を有しており、下層の機能は、上層の機能が正常に働くための基礎になります。
最下層にあるのは、刺激に対して反応できる状態を実現・維持する焦点性注意であり、これは覚醒水準と重なるものと考えられます。
持続性と選択性注意は、より低次の注意機能、転換性と分割性注意はより高次の注意機能と考えられ、特に後者は目的志向的な行動を制御していくという点で重要です。

こうした注意機能に関しては頭頂連合野の機能が重要とされています
頭頂連合野は中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域を指します。

頭頂連合野には、体性感覚情報、後頭葉からの視覚情報、側頭葉からの聴覚情報、複数の感覚情報が統合される領域です。
体性感覚情報より自己身体情報をもとに、自己の空間・運動知覚や対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われ、視覚情報により空間知覚、運動知覚に関わる処理が行われている。
また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能、前頭前野機能と結びついた注意の制御が行われていると言われています

損傷研究では左右差が顕著であり、右下頭頂小葉が注意、左下頭頂小葉は言語理解の中核部位とされています。
右頭頂損傷により左半身無視、左半身麻痺の否認、左半側の身体失認などが生じ、これらの障害は空間認知や注意との関連が強いと考えられています
頭頂連合野の外側部は、中大脳動脈の支配下にあって脳梗塞などによる損傷が多い一方、頭頂連合野内側部と正中性領域は前大脳動脈の下流にある

このため、注意障害は前大脳動脈の梗塞で生じるとされていますが、同時に中大脳動脈の梗塞によって生じ得るものです
よって、選択肢③は通常みられるものと判断でき、除外することが求められます。



⑤左半側空間無視

半側空間無視は多くは左半分を無視します。
全視野が目に入っているにも関わらず、意識して注意を向けない限り、左側(病巣の対側)の物体に気づかない状態です。
例えば、食事の皿の左半分を残したり、歩行時に左側の物体にぶつかったりします。

左半球が優位側である場合の病巣と症状の出現側としては、病巣は右の頭頂葉後方、すなわち下頭頂小葉や上頭頂小葉とされており、症状は左側に生じます
右大脳半球損傷患者の約4割に出現するとされ、特に、右中大脳動脈閉塞による脳梗塞の急性期(1か月以内)では、代表的な症状の一つです

以上より、選択肢⑤は通常見られるものなので、除外することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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