公認心理師 2019-4

2019年08月05日月曜日

問4は知能の客観的観測法(つまりは知能検査)を最初に開発した人物を問う設問です。
そもそも心理学の歴史において、こうした知能の判定が非常に大きなウエイトを占めていた時代がありました。
ですから、歴史の流れとともに覚えておきたいところです。

問4 普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法を最初に開発した人物は誰か、正しいものを1つ選べ。
①A.Binet
②D.Wechsler
③E.Kraepelin
④F.Galton
⑤J.Piaget

正解を知っていることも大切ですが、それ以外の人がどういった業績を上げたのかも把握しておきたいところです。



解答のポイント

「普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法」が今日の知能検査のことであると見なすことができること。
知能検査の歴史に関する理解があること。



選択肢の解説


①A.Binet

それぞれの人の知能を客観的に測って、客観的に表す「ものさし」があれば、非常に便利なことは想像し易いと思います。
その「ものさし」によって、ある子どもの知能の発達程度を他の子どものそれと比較できるので、検査結果を指導の目安として使うことができます。

フランスではBinetが、知的障害児を選別するための鑑別法を編み出そうとしていました。
順序をでたらめに並べた数字の列を記憶させるとか、正方形やひし形を模写させるとかの検査項目を児童にさせてみました。
ビネーは、それからさらに、精神医学者のシモンと協同で、自分の考案した検査問題の多くの児童にやらせてみたところ、ある問題では正答する子どもの数が多いのに、ある問題では正答できる子どもの数が減ってくることに気づきました。

そこで、多くの子どもが正答を与えることができる正答率の高い問題から、少しの子どもしか正答を与えることのできない難しい問題を順番に並べ、どこまで正しく答えるかを見れば、その子どもの「知能」が測れるだろうと考えたわけです。

当時のパリの教育委員会では、公立学校で、知能程度が大体等しい児童を集めて学級を編成すれば、教育する上で効果が上がるのではないかと考えて、その方法を考案するようにビネーに委嘱しました
そこで、ビネーとシモンは、容易な検査問題から難しい検査問題までを選定して「知能検査」を作り上げたのです。
これが、世に現われた最初の知能検査法で、今から100年以上前の1905年のことになります

ビネーは、この検査問題の作成に大変な努力を払いました。
問題の難易度を歴年齢と合わせることが大変な作業だったとのことです。
同年齢の様々な社会仮想の子どもたちに、それぞれの問題をテストしてみて、その結果から適当なものを選び出し、更にその問題を修正しました。
このとき、検査を受けたその年齢の多数の児童のうち、50%~75%が合格するということを目安にしました。
また、どのように答えたときに正答とするのか、制限時間をどの程度にするか、といった細かい基準を設定しなければなりませんでした。
このようにしてビネーは、ついにテストの標準化の仕事を成し遂げました。

このビネー式知能検査の成功は、ドイツ、イギリス、アメリカでも認められ、それぞれの国で改訂が行われました。
その中で有名なのが、アメリカのスタンフォード大学でターマンによって行われた改訂です。
ターマンは、ビネーよりももっと多数の児童・成人について、問題を一つひとつ再検討し、1916年にこれを「スタンフォード・ビネー改訂知能検査」として発表しました。
この改訂版は1937年と1960年に、更に改訂を加えられ、世界各地で知能検査の普及に貢献しました。

以上より、問題文にある「普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法を最初に開発した人物」は選択肢①のA.Binetであると判断できます。



②D.Wechsler

ビネー検査では、知能を精神年齢という一次元的な尺度で表示します。
発達途上にある幼児や児童の知能は質的な差異を考えるよりもその発達の遅速を問題にする方が重要であると考えられていたためです。

しかし、成人や知的障害者を相手にするときには、知能構造の質的な差異を知る方が重要になってきます。
アメリカのヴェルビュー病院の精神科医Wechslerは、1929年に、この診断的な目的に沿った検査(ウェクスラー・ヴェルビュー成人用知能尺度:WAIS)を作りました
すなわちウェクスラーは、知能を「知的な諸機能の複合」とし、ウェクスラー式知能検査を開発したということになります。

ウェクスラー式では知能指数には「偏差知能指数=DIQ(Deviation IQ)」が用いられます。
偏差知能指数とは、一般的な知能指数(平均)からどの程度異なるかを示した値であり、集団の平均を100とします。
こちらは「(個人の得点−同じ年齢集団の平均)÷([15分の1]×同じ年齢集団の標準偏差)+100」で算出されます。

以上のように、ウェクスラーは知能検査を作成したという点では該当しますが、その作成時期を踏まえると選択肢②は誤りであると判断できます。



③E.Kraepelin

エミール・クレペリンの業績は大きく分けて2つ覚えておきたいところです。

まず1つは統合失調症概念の提出です
現在の統合失調症概念を示したのは、ブロイラーとクレペリンの2人になります。
ブロイラーの方はより広範な状態像の統合失調症者を含めて捉えていたので、クレペリンの示したいわゆる「早発性痴呆」の病態の方が重たいとされています。

もう1つは連続加算法の考案です
クレペリンは人間が単純な作業を継続した場合に、作業量と経過時間の間には一定の法則があることを見出し、連続加算法による作業量と単位時間当りの変動に寄与する因子に考察を加えて、1902年に「作業曲線」という論文を発表しました。
臨床心理士資格試験でよく出題されていることですが、日本の「内田クレペリン作業検査法」はクレペリンが作成したものではありません。
クレペリンの連続加算法を、内田勇三郎が取り入れて独自に考案した心理検査になります(「内田クレペリン検査が翻訳されたものである」という形で正誤を問うてきます)。

ちなみにクレペリンの弟子には、現在アルツハイマー型認知症として知られる疾患を初めて報告したアロイス・アルツハイマーや、レビー小体型認知症の名称のもとになったフレデリック・レビーなどがおります。

以上より、選択肢③は「普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法を最初に開発した人物」としては誤りであると判断できます。



④F.Galton

フランシス・ゴルトンは19世紀イギリスの学者です。
ダーウィンのいとこにあたり、知能には遺伝的要因が大きいとして、人間の素質に関する学問である「優生学」を提唱しました

また、統計学でも重要な業績を残しています
例えば、正規分布に関して「誤差曲線」という表現を使ったのはゴルトンです。
また、相関係数に関して測定方法を最初に開発したのはゴルトンになります(グラフを作成し、2世代のスイートピーの関係を調べた)。
ゴルトンが相関という概念を出すまで、2つの事象の関係は物理化学を中心に「因果関係」が主体でした。
反因果主義のゴルトンに出会い、ピアソンは「相関関係を因果関係と解釈してはならない」という主張をするようになったとされています。

以上より、選択肢④は「普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法を最初に開発した人物」としては誤りであると判断できます。



⑤J.Piaget

ジャン・ジャック・ピアジェはスイスの心理学者です(有名ですよね)。
乳児期から幼児期にかけての認知発達に関する理論を構築し、その後の発達心理学に大きな影響を与えました
特に1960年代はピアジェに多大な関心が集まった時期であるとされています(この背景には同時期に起こった認知心理学の興隆があったと考えられます。これはイコール当時の行動主義の凋落を意味していました)。

ピアジェの発達理論の詳しい内容に関しては、こちらの記事で詳しく述べていますのでご参照ください。
ちなみにピアジェは2002年に調査された「20世紀で最も影響力のある100人の心理学者」で第2位に選ばれています。

以上より、選択肢⑤は「普通教育に適する子どもとそうでない子どもを見分けるための検査法を最初に開発した人物」としては誤りであると判断できます。

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About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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