公認心理師 2019-31

2019年08月21日水曜日

問31はアヘンが結合するオピオイド受容体に親和性を有する物質=オピオイドに関する内容です。
主に鎮痛を目的として処方されるものですね。

問31 オピオイドの副作用として頻度が高いものを1つ選べ。
①下痢
②疼痛
③流涎
④せん妄
⑤錐体外路症状

解説を見てもらえればわかりますが、本問では以下を問うています。
  • そもそもオピオイドって何?
  • オピオイドで生じ得る副作用を知っているか?
  • オピオイドの副作用に対して使用される薬物による副作用は?
これらを把握することで、本問はやっとスッキリと解くことができます。
そういう意味では「間違いなくこれで合っている」と自信をもって選ぶには、それなりにこの領域に明るくないといけない気がします。

非がん性に関する書籍ですが、以下を参考にしています。
緩和ケアでの利用についても述べてありましたよ。

迷うのが、この問題を「緩和ケア」という「健康・医療に関する心理学」の分類とするか、「がん」という「人体の構造と機能及び疾病」の分類とするかです。
ここでは「健康・医療に関する心理学」にしておきました(緩和ケアの領域で出てきやすいようなテーマな気がするので)。



解答のポイント

オピオイドとその副作用にまつわる事柄について把握していること。



選択肢の解説


①下痢
②疼痛
③流涎
④せん妄

オピオイドとは、アヘン由来のアルカロイドであるモルヒネやその半合成誘導体を指す「オピエート」から派生した用語です(医療用オピオイドとしては、トラマドール、フェンタニル、モルヒネ、オキシコドンなどが使用されている)。
1970年代にオピオイド受容体が発見され、オピオイド受容体に結合する全ての物質がオピオイドと総称されるようになりました。

オピオイドは様々な疾患の痛みを軽減することが多くの無作為化比較試験で明らかにされています
よってオピオイド鎮痛薬は、周術期管理、緩和ケア、非がん性慢性疼痛などの幅広い領域において、痛みの緩和によって患者に多大な恩恵をもたらします
各領域におけるオピオイド治療の特徴は以下の通りです。
  • 周術期管理:
      使用目的…有害反応(神経内分泌反応)の抑制→術後合併症の予防
      投与期間…限られた期間(数日間)
      問題点…呼吸抑制、除脈、低血圧など
  • 緩和ケア:
      使用目的…痛みの緩和→QOLの改善、がん治療の支持
      投与期間…限られた期間(数週間~数か月間)
      問題点…悪心・嘔吐、便秘、眠気など
  • 非がん性慢性疼痛:
      使用目的…QOLの改善→痛みにより損なわれていたQOLを向上させる
      試用期間…不確かな期間(数週間~数年)。3か月以内に留めることが望ましい。
      問題点…認知機能障害、腸機能障害、鎮痛耐性、乱用・依存
特に緩和ケアにおいては、痛みの強さに応じてオピオイド鎮痛薬の選択、投与の開始、容量が決定されることがあります。
副作用が問題とならない限り、患者が満足を得られる痛みの緩和を目指して、適切なオピオイド鎮痛薬が選択され、必要に応じて増量されます。
緩和ケアにおいては、その使用期間が限られるので乱用・依存という問題が生じることが少ないともされています。

オピオイド鎮痛薬による治療では様々な副作用が起こる可能性が指摘されています。
ここでは、各副作用について詳細に述べていきましょう。

【悪心・嘔吐】
まず悪心・嘔吐は、治療開始時に起こりやすく、予防的な制吐薬の使用が薦められます。
耐性が形成されるため1~2週間程度で改善することが多いが、オピオイドの増量時には改めて対策が必要とされています。

オピオイド鎮痛薬による悪心・嘔吐に用いられる薬物としてはドパミン受容体拮抗薬や抗精神病薬などがあるが、これらは長期投与によって錐体外路症状を引き起こす可能性があり、悪心・嘔吐が改善したら速やかに休薬すべきです

【便秘】
オピオイドによる治療中には、便秘が高頻度で出現します
耐性の形成はほとんど起こらないため、オピオイド鎮痛薬による治療機関を通して、排便指導や緩下薬の投与など継続的な対策が必要です。

【眠気】
オピオイドによる眠気は、投与開始後や増量時に起こりやすいが、通常、耐性が形成されるため、数日で軽減することが多いとされています。
がん性疼痛の場合、痛みがなく強度の眠気がある場合は、オピオイドを減量します。
眠気のためにオピオイドの増量が困難な場合は、オピオイドローテーションを検討する。
非がん性疼痛の場合、眠気の発現に至るまでオピオイドを増量することは望ましくないとされています。

【せん妄】
がん患者においては、さまざまな要因でせん妄などの認知機能障害が出現するといわれており、原因を鑑別することが大切です
オピオイドによる幻覚、せん妄は投与開始初期や増量時に出現することが多いです

オピオイドを含む薬剤性のせん妄は、原因薬剤の投与中止により数日から1週間で改善する場合が多いです
オピオイドが原因薬剤である可能性が疑われる場合は、オピオイドの減量やオピオイドローテーションを検討します。
薬物療法も検討していくことがあります。

【呼吸抑制】
一般的にはがん疼痛の治療を目的としてオピオイドを適切に投与する限り、呼吸数は低下しないか、または呼吸数が低下しても1回換気量が増加するので低酸素血症になることはまれです。
ただし、急速静注などの投与法で血中濃度を急激に上昇させた場合や疼痛治療に必要な量を大きく上回る過量投与を行った場合には起こりうる副作用であるので、過量投与とならないように、効果と副作用を確認しながら増量を行う必要がある。

【口内乾燥】
進行がん患者の口内乾燥の発生頻度は30~97%とされています
その背景として、唾液分泌の減少(頭頸部への放射線照射、三環系抗うつ薬、抗コリン薬など)、口腔粘膜の障害(化学療法や放射線治療による口内炎、口腔カンジダ症)、脱水などが考えられます

対策としては、可能であれば投与量の減量、口内乾燥を生じる薬物の変更を行います。
頻回に水分や氷を摂取する、部屋を加湿するなど水分と湿度の補給を行い、人工唾液や口腔内保湿剤を使用するなども考えていきます。

【痛覚過敏】
痛覚過敏とは、通常痛みを感じる刺激によって誘発される反応が、通常よりも強くなった状態のことを指します。
大量のオピオイドを硬膜外投与することにより、まれに生じることがあるとされています

オピオイドが原因の痛覚過敏の状態ではオピオイドを増量すると痛みが悪化するので、オピオイドの増量に伴い急激に痛みが増強する場合は痛覚過敏の可能性を考慮する必要があります。
対策としては、オピオイドの減量または中止、オピオイド以外の鎮痛薬、オピオイドローテーションを検討します。


他にもありますが、この程度にしておきましょう。
選択肢の検証を行っていきます。

まず選択肢②の疼痛については、そもそもオピオイド自体が疼痛などの痛みを緩和するためのものであり、それが副作用として生じるというのは何が何やらですね
一応、副作用に「痛覚過敏」があるので、それとの混乱を狙っている可能性もあります。

また、選択肢①の下痢、選択肢③の流涎については、それぞれ逆の副作用(便秘・口渇)が挙げられています
一方、選択肢④のせん妄については、副作用として生じることが示されております

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢③はオピオイドの副作用として頻度が高いとは言えず、選択肢④が頻度が高いと判断することができます。



⑤錐体外路症状

既に述べたとおり、オピオイドを使った緩和ケアの副作用に悪心・嘔吐や腸間蠕動運動があります。
この副作用に対して抗ドパミン薬などが使われるが、この抗ドパミン薬や抗精神病薬によって別の副作用が発生する場合があり、それがアカシジアなどの薬原性錐体外路症状です

すべての抗精神病薬は錐体外路症状の原因薬物となり得ます
錐体外路症状は慢性と急性に分類でき、急性の場合は抗精神病薬投与開始後数日から数週で出現し、用量依存的で、原因薬物の減量や中止により改善します。
一方、慢性の錐体外路症状は数か月から数年で出現し、明らかな用量依存性はなく、原因薬物の中止後も持続することがあり治療抵抗性です。

錐体外路症状は比較的頻度の高い副作用であり、アドヒアランス低下を招きやすく、その対策は重要です。
主な錐体外路症状として、パーキンソンニズム、急性ジストニア、急性アカシジア、遅発性ジスキネジアの4つがあります

以上のように、錐体外路症状は、オピオイド自体の副作用ではなく、オピオイドで出現する悪心・嘔吐などの副作用に対して用いられる抗精神病薬によって起こり得るものとなります
よって、選択肢⑤はオピオイドの副作用として頻度が高いとは言えないと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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