公認心理師 2019-12

2019年08月29日木曜日

問12は神経細胞の生理についてです。
神経細胞の仕組みや、そこで生じる信号の種類、その流れなどについての理解が問われています。

問12 神経細胞の生理について、正しいものを1つ選べ。
①グルタミン酸は抑制性神経伝達物質である。
②活動電位は樹状突起を通して標的に送られる。
③無髄繊維では有髄繊維より活動電位の伝達速度が速い。
④シナプス後細胞の興奮性シナプス後電位は「全か無かの法則」に従う。
⑤1つの神経細胞における個々の活動電位の大きさは刺激の大きさにかかわらず一定である。

何と言っても選択肢④と選択肢⑤の正誤判断が難しい問題だったと思います。
キーワードは「デジアナ変換」ですね(懐かしい)。
こういった書籍などを参考にしています。



解答のポイント

ニューロンの仕組みを把握していること。
特に「活動電位→神経伝達物質の放出」を「デジタル信号→アナログ信号」という認識をもち、アナログ信号に関しては段階的な電位変化になるということを理解していること。



選択肢の解説


①グルタミン酸は抑制性神経伝達物質である。

神経細胞の詳しい構造は後述しますが、グルタミン酸などの神経伝達物質はシナプス前細胞で合成され、シナプス小胞に貯蔵されます。
シナプス前細胞に活動電位が到達すると放出され、拡散して後シナプス細胞にある受容体と結合し、再び活動電位が発生します



神経伝達物質はそれぞれ対応する受容体に結合することで作用します。
後シナプス細胞には受容体タンパクがあり、神経伝達物質が結合することで、細胞外のシグナルを細胞内シグナルに変換します
受容体はそれぞれ特異的な物質としか結合しないことになっています。

この放出される神経伝達物質は、大きくアミノ酸、ペプチド類、モノアミン類の3種類に分けられます。
グルタミン酸は、興奮性の神経伝達物質で、アミノ酸であり、他のどの神経伝達物質よりも多く脳内に分布しています
グルタミン酸受容体の一つであるNMDA(NメチルDアスパラギン酸塩)受容体は、学習や記憶に役割を果たしていると考えられており、海馬のニューロンは、特にNMDA受容体が多く、グルタミン酸は新しい記憶の形成に欠くことができないと考えられています

この結合した神経伝達物質によって、次の細胞を興奮させる、あるいは抑制するなどのように効果が異なります
グルタミン酸は興奮性神経伝達物質の代表的なものの一つと言えます。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。



②活動電位は樹状突起を通して標的に送られる。

神経系の基本単位は「ニューロン」(=神経細胞)になります。
これは、神経インパルス(メッセージ)を他のニューロンや内分泌腺や筋肉に伝えることに特殊化した細胞です。

神経系の多くの種類の神経細胞は形や大きさが著しく異なっているが、以下のような一定の共通特徴を持っています。
  • 樹状突起:隣接する細胞から神経インパルスを受け取る
  • 軸索:体細胞から伸びている細い管で、他の神経細胞、筋肉、内分泌にメッセージを伝える。
  • 終末ボタン:軸索の終端で、軸索がたくさんの枝に分かれ「シナプス終末」と呼ばれる小さな膨らみ(終末ボタン)に終わる。
これらを図で示すと以下の通りです。


メッセージは樹状突起で受け取り、終末ボタンの方向へ流れていきます
終末ボタンは、隣接する神経細胞に密着していません。
受け手側の神経細胞の細胞体や樹状突起との間にはわずかな隙間があるのです。
この接合部分を「シナプス」と、隙間そのものを「シナプス間隙」と呼びます。

活動電位が軸索を伝わって終末に到達すると、それが終末ボタンにある「シナプス小胞」を刺激します
シナプス小胞が刺激されることで神経伝達物質は放出され、受け手の(もしくは樹状突起の膜のタンパク質である)「受容体」に結合することになります。


このように、活動電位は樹状突起で受け取り、それが軸索を通って、終末ボタンから、受け手である神経細胞の樹状突起に伝わっていくことがわかりますね

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



③無髄繊維では有髄繊維より活動電位の伝達速度が速い。

こちらは選択肢②と同じく、神経細胞の構造に関する内容です
選択肢②では、樹状突起、軸索、終末ボタンという構造について簡単に説明しました。
この軸索部分についてもう少し詳しく解説していきましょう。

神経細胞(ニューロン)で電気信号を伝える神経繊維(情報を伝える突起=軸索)は普通何本も束になって走っています。
電気信号(活動電位)が伝わって行くとき、何本もの神経線維が隣りあって進むと、お互いにインパルスがもれてしまい混信する恐れがあります
混信を防ぐため、神経線維の周囲を絶縁物質が取りまいています。
脊椎動物における多くの神経線維では、この絶縁物質の薄い膜が何重にも巻き付いています。
このように何重にも巻き付いた絶縁物質の膜を「髄鞘(ずいしょう)」と呼んでいます。
絶縁物質の薄い膜は、数十ミクロン間隔で、途切れた部分(くびれ)を作っており、これを「ランビエ絞輪(こうりん)」と呼びます。
このような構造を持つ神経線維を、髄鞘を持つ神経線維という意味で有髄線維と呼んでいます


髄鞘を持つ神経線維の、信号伝達の仕組みを理解することが重要です。
この選択肢を解く上で欠かせない「跳躍伝導」についての理解が求められます。

絶縁物質のくびれ部分(ランビエ絞輪)ではインパルスが発生しやすく、くびれ部分以外のところではインパルスが発生しにくいことが日本人の研究によって明らかにされました
更に、インパルスが絶縁物質のくびれ部分にのみ発生し、くびれからくびれへと跳び跳びに伝わっていく仕組みを明らかにしました。
この「ランビエ絞輪」を飛び飛びで電気信号が伝わっていく仕組みのことを「跳躍伝導」と呼びます

跳躍伝導でランビエ絞輪からランビエ絞輪へと電気信号が伝わるときは、普通の電線を電気が伝わるときのように電子の移動で伝わり、くびれ部分でのみ神経線維の膜の中と外とのイオンの移動によってインパルスが発生します。
このため、髄鞘をもつ神経線維(有髄繊維)では、髄鞘を持たず髄鞘の間のくびれも持たない神経線維(無髄線維)よりもずっと速い伝導速度が可能になるわけです


無髄線維では隣り合った膜の部分に順繰りに膜電位変化が伝わるので伝導に時間がかかりますが、有髄線維ではランビエ絞輪部分でのみ膜電位変化が起こればよいのでスピードが速くなるということです

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。



④シナプス後細胞の興奮性シナプス後電位は「全か無かの法則」に従う。
⑤1つの神経細胞における個々の活動電位の大きさは刺激の大きさにかかわらず一定である。

まずは選択肢⑤を中心に説明し、その後、選択肢④の解説に入ります。

シナプス間隙は数万分の1mmほどではあるが間が空いているので当然、電気信号は通ることができません。
よって、電気信号を化学信号に置き換え、それをシナプス間隙に放出させ、次のニューロン(シナプス後細胞)に受け取らせることで、伝達していくことになります。
この化学信号を「神経伝達物質」と呼びます(セロトニンとかドーパミンとかですね。選択肢①のないようですね)。
シナプスの終末はこぶ状に膨らんでおり、化学信号(神経伝達物質)は、その先端にある「シナプス小胞」という袋から放出されます。

活動電位の発生を理解するための鍵は、ニューロンが通常は、どのイオンが細胞へ流入あるいは流出するかについて、非常に選択性があるということを理解する点にあります。
ここでは、大まかな流れだけを示すことにしましょう。
  1. 活動電位を発生していない時のニューロンは「静止ニューロン」とよばれ、静止時のニューロンの電位(=静止膜電位)は、−50mv〜−100mvに安定した状態となっている。
  2. 情報(信号)が軸索の末端まで伝わると、電位依存性のカルシウムチャネルが開く。
  3. 流れ込んだカルシウム(Ca+)が、シナプス小胞にくっつき、細胞膜と融合する (袋が破れる)。 この時、袋の中(シナプス小胞)に入っていた神経伝達物質が、シナプス間隙に放出される。
  4. 次のニューロンの樹状突起にある受容体(レセプター)に出てきた神経伝達物質がくっつき、ナトリウムチャネルが開く。
  5. ナトリウム(Na+)が次のニューロンに流れ込み、それによって細胞膜内の電位が+に なることで静止膜電位が上がる(脱分極)する。この時に見られる膜電位のことを、 特に興奮性シナプス後電位という
沢山のシナプスを介して伝えられた刺激が一定の閾値を超えたときに、単一の神経細胞は発火し、活動電位が起こります。
活動電位は「起こるか、起こらないか」のいずれかで、起これば「いつも同じ大きさ」になります

要は、活動電位を発生させていない時のニューロンの状態(静止ニューロン)があり、ある一定の均衡を保っているわけです。
その均衡がイオンの流入等によって崩れることで活動電位は生じるわけですが、その際、活動電位は「ある一定の閾値を超えると生じる」という法則があり、これが上記の「起こるか、起こらないか」「起こればいつも同じ大きさ」ということになります
そして、この法則のことを「全か無かの法則」と呼ぶのです
こちらが選択肢⑤の内容を指しております。

一見すると、選択肢④も正しいように読み取れますよね。
しかし、選択肢⑤の内容で大切なのは「1つの神経細胞における個々の活動電位の大きさ」という点です。
確かに1つの神経細胞レベルで言えば活動電位の大きさは「全か無かの法則」で規定されるので、常に「生じるか生じないか」「生じれば一定強度」「そのままの強度で終末まで伝わる」ということになります

ですが、神経終末から伝達物質が放出され、それがシナプス後細胞に興奮性シナプス後電位もしくは抑制性シナプス後電位を生じさせます(選択肢④の内容は興奮性シナプス後電位になっていましたね)。
実は、このシナプス後電位というのは大きさが段階的に変わる反応(段階的反応)、すなわち「アナログ反応」なのです

まず、神経細胞は空間的・時間的広がりを持って入ってくるアナログ信号を重ね合わせて統合し、活動電位という出力信号に変換します。
この活動電位は、先ほど述べたとおり「全か無かの法則」に従う「デジタル反応」です
生じた活動電位はそのまま変わることなく軸索を通って終末まで送られます(このことも「全か無かの法則」の枠内のお話ですね)。

活動電位を受けて終末から伝達物質を放出することにより、シナプス後細胞に情報を伝えるわけですが、この際にデジタル信号(活動電位)をアナログ信号(神経伝達物質という化学的信号)に変換しているということです
神経系では、このようにアナログ信号をデジタル信号に変換し、それを再びアナログ信号に変換するということを繰り返しながら情報の処理と伝達が行われます。
以下の図がわかりやすいかなと思います。


このように、神経細胞を伝わってきた電気的な情報(デジタル信号、全か無かの法則によって生じた)は、シナプスにおいて神経伝達物質による化学的な信号(アナログ信号)へと変換され、次の神経細胞に伝えられます。

先ほど「段階的」としましたが、この化学的な信号(アナログ信号)を受け取るときには、「全か無かの法則」も起こさず、その代わりに刺激の強さと長さに応じた段階的(graded)な電位変化を示します
それを可能にしているのは「リガンド結合型受容体」などなのですが、それはここでは触れないでおきましょう。

以上より、選択肢④は誤りと判断でき、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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