ロールシャッハ・テスト:第4回 反応決定因-形態因子および運動因子

2019年07月01日月曜日

久々のロールシャッハ・テストです。
第4回からはロールシャッハの本丸とも言える「反応決定因」になります。
1回で全部は大変なので、今回は総論と運動反応について述べていきます。

反応決定因は、その図版を「どのように見たのか?」について記号化したものの集まりです。
ロールシャッハでは、大きく3カテゴリ+1で見ていくことになります。
以下の通りです。
  1. 運動因子:反応したものに運動を加えたもの
  2. 色彩因子:反応に色を使用しているもの
  3. 濃淡因子:反応に濃淡を使用しているもの
  4. 形態因子:主として形のみを使用して反応を示したもの
この運動因子・色彩因子・濃淡因子が主なものであり、それに形態因子を加えてみていくことになります。
と言っても、形態因子は人によっては半分以上を占めることもあるので、重要な因子であるとも言えます。
ここではその形態因子から解説していきましょう。



純粋形態反応 F(form response)

「運動、色彩、濃淡などの因子を含まず純粋に形態因子のみによって決定された反応」を純粋形態反応と呼び、Fとコードします。
順番としては、運動、色彩、濃淡などの因子が含まれていないかチェックし、いずれも含まれていなければ「F」とコードするということになります。

反応の例としては、「これは蝶です。そういう形をしている」「これはギターですね。ちょっといびつですけど、ギターの形をしていますから」などになります。
これが例えば「蝶が飛んでいます」などになると、「飛ぶ」という運動が含まれるので別のコードが付されることになります。


実践上の活用

ロールシャッハ・テストの実践においては、反応一つひとつのFを見ていくよりも、F%(ΣF/R)として扱われることが多いです。
F%は片口法の記号であり、エクスナー法ではL(ラムダ)がそれに近いものになっています。
ラムダの計算法はL=F/(R-F)となっていますから、片口法のF%とは微妙に異なることがわかります。

とりあえず片口法の知見を示すと、児玉(1958)は36.6%、片口(1958)は43.8%となっており、正常成人の場合25~55%の範囲になるとされています。
計算法が異なるエクスナー法では1.0を超える(つまり、Fの数が全体の半分以上になる)と「ハイラムダ」と呼称され「回避型」という表現がなされます(この点については資格試験から離れすぎるのでここまでにしておきましょう)。


解釈について考える

さて、Fをどのように解釈するかを考えていきましょう。
先述の通り、図版を見て、何かしらの反応を示すときに「運動も色彩も濃淡もない」ときに「F」がコードされます。
この事実をどのように捉えるかが大切になります。

後述しますが、運動因子は「その人の内的なエネルギーが表現されたもの」という捉え方になり、生きている限りそれは付与される可能性があると見なすことができます。
また、色彩や濃淡は実際に図版に確かに有るものです。
つまり、運動も色彩も濃淡も、すべて表現される可能性があるにも関わらず、つまり「見ていただろうけど表現しなかった」と捉えるわけです。

ただし、この「表現しなかった」というのは自覚的というよりも無自覚的な意味合いの方が強いと思っておいてください。
何かしらの心理的要素が働き、運動・色彩・濃淡の因子をサブリミナルでは認知していたはずなのに「表現されなかった」と考えるのです。

それを前提とすると、F%が高い場合(特に80%以上) では、以下のような解釈が可能です。
  1. 主観的着色をせず客観的に物事を認識する、抑制的で感情に左右されない
  2. 想像力が乏しく平板な人、抑うつ的で控えめな人
  3. 自分の欲求を認知できず環境のニュアンスを捉えられない
なぜこのようなことが言えるのかは、上述の考え方を踏まえれば理解しやすいと思います。

1つ目は、運動や色彩、濃淡といったものは、反応する者の「個性」をより強調するものです。
言い換えれば主観的なものの見方を強く反映しているものなので、そういった主観的な捉え方をできるだけ省こうとする人格として「客観的に物事を認識する、抑制的で感情に左右されない」という表現がなされるわけです。

2つ目は、むしろ抑うつ的になって色んな見方ができなくなっている人、という捉え方ですね。
3つ目は、自分の中に生じたものをキャッチできないため、反応として現れていないと考えるわけです。

これらに対し、F%が低い場合(特に30%以下)では以下のように解釈されます。
  1. 外界に対して個性のありすぎる態度をとる、現実を客観的に認知できない世間並みのありふれた形で人間関係を維持できない
  2. 特に形態水準が不良な場合は、混乱した精神状態を示す
F%が低いと「個性」を出し過ぎているということになります。

では、2つ目の混乱した精神状態とはどういう状態を考えれば良いのか?
F%の解釈でよく言われるのが「防衛の強さ」です。
当然ですが、高いほどに内面を曝さないわけですから防衛の壁が高く、低いほどに防衛の壁が低いわけです。

防衛が高いと内面を曝さないため「抑制的な人」という先述の解釈が成り立ちます。
これに対して、防衛が低いということの意味を考えてみる必要があります。
このF%が非常に低いという状態を示す病態の代表が、統合失調症の急性期です。

土居健郎先生や神田橋條冶先生の指摘にあるとおり、統合失調症者にとって秘密は非常に大切なものになります(神田橋先生の「自閉」の利用などが有名ですね)。
急性期ではこの秘密の力、すなわち自分の内面を外に出さずに留めておく力が弱まっており、それがロールシャッハでは低いF%という形で現れるわけです。
これは当然、好ましいことではないので、然るべき治療が速やかに行われることが望まれます。

対して統合失調症の慢性期では、非常に高いF%を示すことが知られており、これは自分を守る防衛の壁ができたという見方もできるわけです。
防衛が高いことが悪いことか否かは、その病態や状況によって異なるということですね。

【H20-48C、H23-26A】



運動因子

ヘルマン・ロールシャッハは、その著書の中で以下のように述べています。
「…実際にはブロットに客観的に存在しないもの、すなわち、運動の状態をそこに見ているのである。色彩や陰影反応を与えない被験者は、色彩や陰影を反応のうちに取り入れなかっただけであって、その場合でも、ブロットの色彩や陰影を認知していないわけではない。それらはブロットの属性として客観的に存在するからである。すなわち、図版に運動を見るためには、多かれ少なかれ想像力の存在を前提とするので、それが著しく貧困な人には見ることができない」

上記からも明らかなように、ロールシャッハにおいて運動因子は「客観的に存在しないものが反応として現れるということは、反応する人の内面にあるものが表現された」と考えるのです。

運動因子は以下で構成されています。
  • 人間運動反応(M)
  • 動物運動反応(FM)
  • 無生物運動反応(m)
これらについて、以下で詳細に見ていきましょう。


人間運動反応 M(human movement response)

Mはロールシャッハが最も重きを置いた記号で、「人間的な内面の力」と言えるものを測る指標とされています。
KlopferはMに関する以下の仮説を示しました。
  1. 知能:多く示す人は知能が高い傾向にある。
  2. 想像力:「そういう動きをしているところ」を創造する力がある。
  3. 内的安定:人間的な内面の力を示すMが多いほど、内的に安定しやすい。
  4. 共感性:その動きに対して共感的であるからこそ反応として示すことができる。
  5. 自己概念:しばしば自分を投影させることがある。
大雑把な考え方も添えるとこのようになります。

Mの平均は2~4くらいとされています(個人的にはもう少し多い印象を持っていますが。5、6個はあっても自然でしょう)。
10個以上あるような場合、内向性が強すぎ、現実に適応しにくい、空想的・現実逃避的な人柄が予想されています。

Mは単体で解釈されるというよりも、さまざまな記号との組み合わせて解釈せることが多いものです。
実際に臨床心理士資格試験でも上記の5項目以外はほとんど出題されていません。
詳しくは、また別の項目で解説します。
とりあえずここでは「M」という記号の存在をしっかりと把握しておきましょう。

【H9-53B、H12-28B、H17-36B、H17-36D、H17-49AB、H18-50A】


動物運動反応 FM(animal movement response)

なぜ「animal movement」なのに「FM」なのか?
という疑問を感じられた方もおられるでしょう。

動物運動反応は、ヘルマン・ロールシャッハは、その存在を確認していたものの解釈の中にそれほど含めた様子が無いのです。
コードは「F→M」としておりましたが、その後、Klopferによって「Mほどには知的な分化を必要とせず、共感性を反映しない反応」として、初めて提案されました。
この際、元々ロールシャッハさんが使っていた「F→M」という表記を活用し、「FM」を動物運動反応としたわけです。

平均は2~6とされています。
「FM」は、先述の「M」に比べてより未熟な内的な力を示すとされており、直接的な満足を得ようとする衝動、人格の原始的な欲求、食欲や睡眠欲などの基本的欲求などを反映するとされています。

そのためFM≦1の場合は、自発性や活動性の欠如、生理的なエネルギーの低下(こちらはピオトロフスキーが提唱した解釈)などを示すとしています。
対して、FM≧7の場合は、欲求充足への衝動を強く感じている、欲求不満の状態などを示すとされます。

FMは臨床心理士資格試験において、それ単体で問われたことが無いものです。
ですが、他の記号と組み合わせて出ることがあるので、しっかりと把握しておきましょう。


無生物運動反応 m(inanimate movement response)

こちらはPiotrowski(1973)によって提案されました。
文字通り、生物以外の運動にコードされます。
「旗がバタバタ揺れている」などですね。

「世界が揺れる」体験を表すとされ、欲求不満や緊張などの要素を伴うと考えられています(Klopferも内的な緊張感と関連づけている)。
自分の葛藤に対し、距離をとって眺めるという構えともされます。
これらより、解釈では何かしらの内的緊張を示しており、その代表として「葛藤」があるとされています。
ちなみに平均は0~1とされています。

内的葛藤という解釈で、臨床心理士資格試験では通しているようです。

【H14-43D、H14-44A、H17-50C】



運動反応の種類

運動反応に対しては、その運動の種類によって分類があります。
まずは片口法の分類法について、その後にエクスナー法の分類法について述べます。


片口法の分類

片口法では、運動反応の種類を「伸張運動反応」「屈曲運動反応」「阻害運動反応」に分けることができます。

伸張運動反応は、「踊っている」「飛び上がっている」などが代表的で、重力を克服するような運動反応を指します。
「神経症的抑制をもっているが、強い自己主張を持つ積極的な人」と解釈されることが多く、以下のような特徴を持つとされます。
  • 積極的に自己を主張し、自分の能力に自信を持ち、他者に頼らず目標を追求する
  • 葛藤や欲求不満に直面して不安を感じたとき、自分の知能や経験によって問題を処理する方法を考え、改善しようとする
  • 他人を考慮しない傾向とみられることも
臨床心理士資格試験では「自己主張」という設問を見たときに、こちらの反応の有無を確認することが求められます。
すなわち、自己主張が強い人はこの種の運動反応が多いということですね。

屈曲運動反応とは、「眠っている」「休んでいる」「座っている」等であり、重力のままに縮みこむ姿勢になる運動反応です。
「受動的な人で、諦観的な〈神経衰弱症〉」と解釈されることが多く、以下のような特徴があるとされます。
  • 本来、従順であり、自分よりも心理的に強い人に頼ることで責任を回避したり、その人の保護や配慮のもと、主導性や創造性や活動性を充分に発揮できる人
  • 心理療法でも治療者を優しい保護者とみなす。
なぜこのような捉え方をするのかについては、エクスナー法の解釈を見てからの方がわかりやすいかもしれません。

阻害運動反応は、「互いに押し合っている」「引っ張り合い」などのように、多くのエネルギーが用いられながら、外に運動が生じていない運動反応を指します。
「知的な人に生じやすく、優柔不断な傾向を示す」とされています。


エクスナー法の分類

エクスナー法では、運動をa(アクティブ)とp(パッシブ)に分けて論じます。
それぞれが、片口法の伸張運動反応、屈曲運動反応に近いと言えます。

この捉え方として、運動反応という内的な、特に「思考」に近い力のアクティブさ、パッシブさを示すと考えます。
そのためエクスナー法における運動反応のタイプの比(a:p)は、態度や価値観がどれほど変わりにくいのかを扱います。
以下のような所見がなされます。
  • 可能な所見1:両辺の合計値が4で、一方の値が0のとき
    その人の思考や価値観はたいていの人より柔軟性がなく変わりにくい。
  • 可能な所見2:両辺の合計値が5以上で、一方の値が他方の2~3倍の範囲
    思考の構えや価値観はかなり凝り固まっていて変わりにくい。
この捉え方は実践を通してみると、適切であると感じることが多いです。

ちなみにエクスナー法ではM反応のアクティブとパッシブの比で以下のような解釈を行います。
Ma:Mpは、「考えたものが頭の中だけのものか、実際に社会に還元されるか」を表す。
  • MpがMaより1大きい:ストレス下では防衛的に空想を使う
  • MpがMaより2以上大きい:白雪姫シンドローム
これらからも、思考の動きやすさ、思考が現実に活用されるか、といった面が解釈として用いられていることがわかります。

パッシブが多い人は、あまり現実場面に反映されないということですね。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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