認知症

2019年06月22日土曜日

認知症はたくさん出題されています。
しっかりと押さえておきたいポイントが沢山ありますね。
赤字はかつて出題されたときの正誤判断に使われた箇所ですので、チェックしておいてください。

認知症については三好先生の「大脳疾患の精神医学」で全部解けます。
少なくともこれまで出た過去問については、これ一冊で大丈夫です。
公認心理師試験にしか使えない資料を購入するより、資格試験後もずっと使える書籍をもっておくことを私は勧めます。
こちらは時の風雪に耐えうる書籍だと思います。



Alzheimer型認知症

本病は1907年、アロイス・アルツハイマーによって報告されました。
彼はエミール・クレペリンが主任教授をしていたミュンヘン大学在学中に、初老期に発症した認知症の症例を報告しました。
その症例がクレペリンの教科書において紹介され、アルツハイマー病と呼ばれるようになりました。

アルツハイマー型認知症の経過は以下のように分けることができます。
  1. 前駆期:
    特徴的な認知障害が明らかになる前に、頭痛、めまい、不安感、自発性の減退、不眠などの軽度の神経衰弱様症状が見られる時期があります。
    軽度の人柄の変化が明らかになり、頑固になったり、繊細さが見られなくなったり、自己中心的な傾向が見られたりします。
    思考力や集中力の低下があって、物忘れに患者自身で深刻に悩むことがありますし、抑うつ気分、不機嫌、不活発、焦燥感などの感情や意欲の変化も見られます。
  2. 初期(第一期):
    近時記憶の障害が目立ってくる時期で、時間的な見当識障害や自発性の低下などを認めます。
    また、新しく経験した事柄や情報を記憶しておくことが困難になりますし、昨日や今朝の当然覚えているはずと思われるような出来事を覚えていないため、周囲の人たちとトラブルを生ずることがあります。
  3. 中期(第二期):
    近時記憶に留まらず、自己及び社会における古い情報に関する記憶が障害されます。外出しても道を間違えて家に帰れなくなったり、自宅にいても他人の家にいると思い込んだり(場所に関する見当識障害)します。判断力が低下して簡単な問題の解決も困難となり、日常生活でも着衣、摂食、排便などで介護が必要になります。
    妄想を形成することもありますが、その内容は断片的です。運動面では、多動があり、徘徊や常同行動があって、行動に混乱が多くなります。この時期には、しばしば失語、失行、失認などの神経心理症状、筋トーヌスの亢進、けいれんなどが見られます。
    ただ、この時期には自分の意思を言葉で他人に伝えるということは可能です。このことは行動障害が出ないで生活できるというためには重要な意味があります。
  4. 後期(第三期):
    言葉によって自分の意思を人に伝えることができない状態です。そのために自分の意思や気持ちを不適切な行動で表現することが行われます。
    記憶障害は最も著名で、近時記憶はもとより、自分の出生地、両親、きょうだいの名前、更には、自分の名前まで忘れてしまうことがあります。人物に対する見当識障害もあって、目の前にいる人が誰かわからないということも起こってきます。更には、鏡に映った自分の顔もわからず、一日中、鏡に向かって話しかけるといったこともあります。
    摂食、排泄、着衣いずれにおいても介護が必要になりますし、失禁も見られます。感情は鈍麻し、まとまった思考は困難です。また自発性の低下は著しく、臥床するようになります。さらに失外套症候群もみられることがありますが、これはもっとも重篤な段階であると言えます。
上記の通り、記憶障害をはじめとした認知障害が目立つのがアルツハイマー病です。
一方で、幻聴や幻視が体験されることもあり、レビー小体型認知症との鑑別が大切になってきます。
認知症で幻覚があるとレビー小体型認知症と診断されることが多く、アルツハイマー型認知症による幻覚や妄想の実態の再検証が必要と言われています。

以下ではアルツハイマー型認知症に特徴的な認知障害について述べていきます。
  • 記憶障害
    初期には、主に近時記憶の障害が見られます。よって、日常生活では繰り返し同じことを尋ねるとか、昨日おとといの出来事についての話が周囲の人たちとかみ合わないといったことが起こります(エピソード記憶の障害)。今日の日付が覚えられないというのは初期から出現する記憶の障害です。
    中期になると、初期にはそれほど障害されない即時記憶(今見たもの、経験したことをすぐに再生する)が障害され、遠時記憶(自分の名前、親・きょうだいの名前、生年月日、住所などの自己に関する古い記憶、なじみ深い事柄に関する記憶)も多くは障害されます。保たれている記憶の内容にも変化が生じ、死亡した配偶者が生きていると思い込んでいたりします。
    後期になると、近時記憶の障害はもとより遠時記憶も失われ、全記憶の障害がみられることになります。自分の名前も思い出せないという状態は最も重篤な記憶の障害を示しています。
  • 見当識障害:
    アルツハイマー型認知症において、見当識障害は一定のパターンで出現します。まず時間に関する見当識障害があらわれ、今日の日付や季節に関して混乱が生じます。
    さらに進行すると場所に関する見当識障害が見られるようになり、自分のいる場所がわからないようになります。自分の家にいても、早く本当の家(以前に住んでいた家)に帰りたいと言って荷物をまとめて外へ出ようとするといったことがあるのはこのためです。
    さらに進行した時期には、人物や状況に対する見当識障害が見られるようになります。自分の前にいる人が、家族か他人かわからなくなりますが、鏡に映った自分の姿も認識されずに他人に話しかけるようになるといったことも起こってきます。
    見当識は、時間・場所・人物といった順序できわめてゆっくりと障害されてゆきます。
  • 思考・判断の障害:
    初期から見られる症状であり、はじめは日常生活において、やや複雑で、これまで経験したことの内容な仕事や作業を行うことができなくなりますが、次第に簡単で、自分にとって慣れた行動ができなくなります。地図を見ながら知らないところにでかけていくというのは、初期から困難ですが、そのうちよく知っているところへも行けなくなります。
  • 神経心理症状:
    構音障害はないのに自発言語が障害される、聴覚の障害はないのに言語の理解が障害されるといった失語がみられることがあります。運動機能自体には障害がないのに、命令された行為ができない失行、感覚機能に障害がないのに事物を認識できない失認などの症状も見られます。
    これらの症状は診断に重要な要素ですが、単独で出現することは稀で、ほとんど記憶障害や他の認知障害と同時に出現します。
上記以外にもうつ病の出現、意欲・行動の障害、認知症が目立たない時期にパーソナリティ変化などが見られることもあります。
ただし、アルツハイマー型認知症では、対人関係の場で礼節が保たれていると表現されることも多いです。




Lewy小体型認知症

認知症と意識障害、それとパーキンソン症状などを特徴とし、大脳においてレビー小体を認める疾患です。
マッキースらによって1996年に「レビー小体をともなう認知症」の臨床的診断基準を提唱したのが注目を集めるきっかけになったのですが、それ以前より、通常はパーキンソン病の脳幹部に限局して見られるレビー小体が大脳皮質にもみられることがあることは知られていました。

老年期の認知症患者において、大脳皮質にレビー小体を認めた報告は、岡崎によってなされましたが、その後、日本を中心に多くの症例が報告されています。
小阪ら(1990)は、このような症例をびまん性レビー小体病と名付けて報告しました。

レビー小体型認知症の診断基準は以下の通りとなります。
  1. 認知症は、進行性の認知機能障害で、正常の社会的、職業的な機能に相当な障害を生ずるものである。いちじるしい、あるいは持続的な記憶障害は必ずしも初期からみられるとは限らないが、進行するにしたがって明らかになる。注意、実行機能、視空間機能の障害は特にいちじるしい。
  2. 中核症状:
    ・浮動的に変化する認知機能(ことに注意と活動性においてみられる)
    ・くりかえされる幻視(細かい点まで、はっきりしている)
    ・パーキソンニズム(特発性)
  3. 示唆する症状:
    ・レム睡眠期の行動障害
    ・神経遮断薬に重篤な過敏性あり
    ・SPECTやPETで基底核にドパミン伝達物質が低値を示す
  4. 支持する症状:
    ・よくみられるが、診断的な特異性は証明されていない
    ・転倒と卒倒(くりかえされる)
    ・一過性の(説明がつかない)意識の喪失
    ・自律神経障害(重篤、たとえば起立性低血圧、尿失禁)
    ・幻覚(あらゆるかたちのもの)
    ・妄想(系統的)
    ・うつ
    ・画像で内側側頭葉が比較的保たれている
    ・画像で後頭部の活動低下
    ・MIBG心筋シンチグラフで異常(低値)
    ・脳波で徐波が目立つ(側頭葉に一過性鋭波)
  5. むしろ否定的な症状:
    ・脳血管障害がある
    ・身体疾患がある、あるいは臨床症状を説明できるような大脳疾患がある
    ・重篤な認知症で、パーキンソンニズムが初めて出現したとき
上記のように、レビー小体型認知症の中核症状としては浮動する認知機能、幻視、パーキンソン症状が挙げられています。

典型的な幻視は人物、小動物、虫が多いとされています。
人物は家族や親戚であったり、知らない他人の場合もあります。
小さい子供が多いが、大人であることもあり、一人も複数も、生きている人も死んでいる人もあり得ます。
生き物以外では、光、紐、糸などの要素的な幻視も認められます。

患者は幻視の存在を確信して家族に訴えますが、診察時に確認すると幻視であることを自覚していることもあります。
幻視は色彩がないものが多いですが、ぼんやりとした人影のようなもの、明瞭なもの、動きの有無など様々で、その不安感、恐怖感、無関心など感情的反応も様々です。



前頭側頭型認知症

プラハ大学の神経科教授だったアーノルド・ピックは、後にピック病とよばれる「葉性委縮による初老期認知症の症例」を報告しました。

今日、前頭側頭型認知症と呼ばれる病態のほとんどはピック病と呼ばれていました。
しかし、次第に前頭葉や側頭葉に限局的な委縮病変がみられる疾患は、稀ではあってもピック病の他にもあることがわかってきました。
そこで、これらの疾患を一括する概念として、それらの共通点に基づいて前頭側頭型認知症という臨床的な疾患名が広く用いられるようになりました。

病変の部位は、前頭葉、側頭葉が主であり海馬にも変化があります。
しばしば線条体、視床、黒質にも変化が及びます。
神経細胞の脱落、大脳皮質の第二層における小空胞形成による基質の抜け、白質のグリア繊維の増生がみられますが、更に特徴的な変化としてピック細胞あるいはピック嗜銀球が認められます。
要は、異常構造物(ピック細胞等)が神経細胞の中に溜まるということですね。
このように大脳の神経細胞に脱落が認められるなど、不可逆的な変化と言えます。

前頭側頭型認知症の神経精神症状は以下のように分類できます。
  • 軽度神経精神症候群:
    ピック病では、潜行性に発症し緩慢な進行経過をとりますから、症状が明らかになる以前にさまざまな前駆的な精神症状を見ることがあります。
    疲れやすくて集中力や思考力が低下し、どことなく不活発で、まるで抑うつ気分があるように見えることもあります。
    また、頭痛や頭重感の訴えもあります。些細なことで立腹したり(易刺激性)、うつ気分や自己不全感がみられたり、態度にも落ち着きがなくなる(不穏)といったこともしばしば見られます。
  • パーソナリティ変化:
    人柄の変化は、本病に特有のものです。
    共通する特徴は社会的な態度の変化であり、発動性の減退あるいは亢進です。アルツハイマー型認知症では、少なくとも初期には、対人的な態度が保たれているのと比べると、この行動面での変化が際立っています。ときには周囲のことをまったく無視して自分勝手に行動するように見えることがあります。また、異常に見えるほど朗らかになって冗談をいったり、機嫌がよくなったりすることもあります。このようなことが続くと、もともとの性格と比べて人格の変化が生じたと見做されるようになります。
    ただ、このような時期には、まだ新しい事柄を記憶する能力は比較的残っていることがあって、アルツハイマー型認知症とは違った印象を受けることが少なくありません。
    特に、衝動のコントロールの障害は、欲動の制止欠如とか、人格の衝動的なコントロールの欠落などと表現され、思考において独特の投げやりな態度は考え不精と呼ばれます。
  • 滞続症状:
    しばしば、話す内容に同じことの繰り返しがあります。これは特有な常道的言語で、運動促迫が加わっています。まるでレコードが同じことを繰り返すようであることから、グラモフォン症候群と呼ばれたこともあります。
    この症状は側頭型ピック病において特徴的とされています。言語機能の荒廃にはまだ至っていない段階で見られるものですが、次第に言語の内容は乏しくなります。
  • 言語における症状:
    言語の内容が貧困になり言語解体と呼ばれる状態になります。自発語や語彙が少なくなり言語の理解も困難になります。中期になると、話を聞いても了解できなくなりますし、自発言語も乏しくなりますが、文章の模写や口真似は十分にできるといった超皮質性失語のかたちをとります。
    本病では、まず健忘失語や皮質性感覚失語が始まり、そのうち超皮質性感覚失語、超皮質性運動失語などが明らかになり、最も進行した段階では全失語も見られます。この段階になると、認知症に加えて、失書、失読、失行、失認、象徴能力の喪失などが出現します。
    同じことを繰り返す反復言語、それに反響言語、緘黙、無表情の四徴候は本病の特徴とされています。
  • ピック病の認知症:
    アルツハイマー型と比べると、初期には記憶障害は目立たないことが少なくありません。しかし、抽象的思考や判断力の低下は、最も初期から認められます。また、対人関係において常道的な態度をとることもあって、社会的な活動はもとより、周囲に対して適切な態度をとることができなくなります。
    初期にはそれまで獲得している日常生活上での技能(自動車の運転など)は残っていますが、トラブルを生じたときに自主的な判断で切り抜けるといったことはできなくなります。しだいに記銘力の低下や健忘が、特有な人柄の変化と相まって、認知症の病像を呈するようになります。しかし、注意力や記銘力は後期においてもかなり残っていることが少なくありません。そのため、前頭側頭型認知症は、記憶よりも言語面で目立つ認知症と表現されることもあります。
  • 精神病様症状:
    神経衰弱様の症状が前駆期に見られることがあります。また、自閉的で無関心な対人的態度や反社会的と周囲から受けとめられるような行為から、統合失調症を疑われることもあります。ただ幻覚妄想を見ることは多くありません。
    精神病様症状としては、進行麻痺様症状、統合失調症破瓜様症状、衝動行為を伴う妄想状態、不安でうつ気分を帯びた状態、強迫症状、身体的影響感情などが知られます。後期になると、自発性の低下が目立ち横臥がちとなります。末期には精神荒廃状態となり、原始反射をともなって無動無言状態となることもあります。
以上のように、前頭側頭型認知症はパーソナリティ変化を特異的な症状とし、アルツハイマー型認知症に比べて記憶障害は生じにくいといえます。

ちなみに前頭葉や側頭葉前方に委縮の中心が認められる変性疾患を包括した臨床病理学的概念として「前頭側頭葉変性症」があります。
「前頭側頭葉変性症」には3つの臨床亜型があります。
  1. 行動異常型前頭側頭型認知症:
    前頭葉を中心に委縮して行動異常を特徴とする(いわゆるピック病と基本的に同じ病態と見てよい)。
  2. 進行性非流暢性/失文法性失語:
    進行性の非流暢性あるいは失文法性失語を呈する。
  3. 意味性認知症:
    初期には語義失語を呈して徐々に物の意味が失われていく。側頭葉前部領域の強い萎縮がみられ、意味記憶(社会全般の一般的な知識)に関する記憶の障害を示す進行性の病態。意味記憶障害に対してエピソード記憶は比較的よく保たれる。発語は流暢であり音韻性錯語や文法的な誤りは認められない。
また、行動障害型の前頭側頭型認知症の症候について記載すると以下の通りです。
  • 病識の欠如:病初期から認められ、病感すら欠いていることもある。
  • 自発性の低下:常同行動や落ち着きのなさと共存して見られることが多い。
  • 感情・情動変化:多幸的であることが多いが、焦燥感、不機嫌が目立つ例もある。
  • 被影響性の亢進:外的な刺激や内的な欲求に対する被刺激閾値が低下し、その処理が短絡的で、反射的、無反省なものになることが特徴的。
  • 脱抑制・我が道を行く:本能の赴くままの行動で、反社会的行為につながることもある。
  • 常同行動:ほぼ全例で認められる。
  • 転動性の亢進:ある行為を維持できないという症状で、外界の刺激に対して過剰に反応する。
  • 食行動の異常:食欲の変化、嗜好の変化、食習慣の変化が見られる。
このように前頭側頭型認知症では、前頭葉や側頭葉障害による行動障害が特徴的です。
特に前頭葉障害による自発性低下や無関心を呈する例では、脳血管性認知症の症候と類似しますが、脳画像所見で鑑別可能です。



血管性認知症

循環障害によって大脳では様々な病変が引き起こされます。
出血、梗塞、大脳白質の変性などが主な病変ですが、それらは認知障害や感情症状などの精神症状や神経症状の原因となります。
血管性認知症は、欧米圏では多発性脳梗塞による認知症を念頭においたものでしたが、今日では、病理変化は梗塞だけではないことがわかっていますし、認知症レベルに達しない認知障害もあるということで、更に広く血管性認知障害として見直されるようになっています。

若年性認知症で最も多いのは、脳血管性認知症とされています。
こちらは脳血管障害に起因する認知症であり、頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患などが原因となります。
交通事故などによって生じることも多いため、ほかの認知症に比べて若年者が割合として高くなります。

血管性認知症は障害部位によって多様な症状が見られるので、例えば、認知障害の傾向は臨床的特徴として診断に役立てることはできても、診断基準に組み込むまでには至っていません。
局所性の神経心理症状が発現すれば症状は更に複雑になり、まだら認知症と表現するのもそのためです。
アルツハイマー型認知症に比べると記憶障害が軽度であるにもかかわらず、日常生活における実行機能の障害が意外と目立つなど非定型に見えることを意味します。

ハチンスキーは脳虚血性スコアを作成しました。
これは多発性梗塞性認知症に出現しやすい症状をチェックして、診断の手がかりにするものです。
ここで示された症状は脳血管性認知症の神経精神症状の特徴と見なされてきましたから、知っておくことが重要です。
  • 急激に起こる:2点
  • 段階的悪化:1点
  • 動揺性の経過:2点
  • 夜間せん妄:1点
  • パーソナリティ保持:1点
  • 抑うつ:1点
  • 身体的訴え:1点
  • 感情失禁:1点
  • 高血圧の既往:1点
  • 脳卒中の既往:2点
  • 動脈硬化合併の証拠:1点
  • 局所神経症状:2点
  • 局所神経学徴候:2点
上記で7点以上ならば脳血管性認知症の可能性ありと考えます。
もちろん、診断にまで用いるには無理がありますが、脳血管性認知症で見られる症状のチェックリストというくらいの気持ちで用いると役立ちます。

また、NINDS-AIRENによる脳血管性認知症の診断基準の中にある「支持する所見」として以下のように記されております。
  • 早期からの歩行障害
  • 不安定性と理由のない転倒の増加
  • 頻尿、尿意切迫
  • 偽性球麻痺
  • 人格や気分の変調、無為、抑うつ、感情失禁、精神運動遅滞
上記の通り、ある程度共通した脳血管性認知症の特徴として、抑うつやせん妄が挙げられていることがわかります。



その他の認知症の症状を示す病態

認知症の症状は上記だけでなく、さまざまな病態で生じます。
ここでは認知症症状を示す病態について挙げていきましょう。

Creuzfeldt-Jakob病

クロイツフェルド・ヤコブ病は、初老期に発症し、筋委縮、錐体路症状、錐体外路症状、認知症などをきたし、多くは数カ月の経過をとって死亡する特異な疾患です。
長い間、神経変性疾患とみなされて、初老期認知症の一つとみなされてきました。
今日では、羊のスクレーピー、牛の海綿状脳症、ヒトにおける異型クロイツフェルド・ヤコブ病などとともにプリオン(prion)によって発症する疾患であるとされています。

1920年、ハンス・ゲルハルト・クロイツフェルドが初めて報告した症例で、性格変化、歩行障害、皮膚炎、発熱などの症状を示した後、せん妄、昏迷と言った意識障害が見られるようになり、更に痙性麻痺(筋肉が硬直し手足の運動ができない状態)、バビンスキー徴候、顔面と上肢の不随意運動、構音障害、けいれん発作が出現して、認知症の状態となり、全体として6年間の経過を辿りました。
神経病理学的な検索では、脳の灰白質のほぼ全域(大脳皮質、大脳基底核、視床、脊髄)の神経細胞の変性と、それに対してグリア細胞が反応性に増殖してグリア結節を作っていることが認められました。

ほぼ同時期に、アルフォンス・ヤコブは、錐体路症状(意識運動をつかさどる錐体路がいずれかの部位で障害されたときに出現する種々の症状)と錐体外路症状(振戦、固縮、無動、舞踏運動、ジストニアなど)を伴い亜急性に経過した認知症3例を報告し、その後、更に2例を追加しました。
そのため、「クロイツフェルド・ヤコブ病」と呼ばれるようになりました。

その後、ハイデンハインは、後頭葉の変化のために視覚の障害が見られることを報告し、今日でも、クロイツフェルド・ヤコブ病の初期診断には視覚障害が大きな意味を持っています。

今日、広く知られているような大脳の海綿状態(光学顕微鏡で多数の泡の集まりのように見えるので海綿状と表現される)といった激しい変化が出現することが知られたのは、ネビンらの1960年の報告がきっかけです。
現在では、この亜急性(疾患において、急性と慢性の中間に位置していること。急性ではないが、慢性ほどゆっくりでもないもの)の海綿状脳症がクロイツフェルド・ヤコブ病の中核的な臨床病理と考えられるようになっています。
急性は「病気が急に症状を呈して激しく進行すること。一般には二~三週間の経過をたどるものをいう」とされており、慢性は「急激に悪化したりはしないが、治癒にも長期間を要する病気の性質。また、一般に、好ましくない状態が長く続くこと」です。
一般的な認知症は数年かけて徐々に進行していくので、慢性に属するだろうと考えられます。

この病理の経過は以下の通りになります。
  • 視覚障害、不定愁訴の時期:
    初期症状は、まずは疲れやすいとか頭痛がするとか訴えられます。不機嫌になって周囲とのトラブルも多くなりがちです。不安や焦燥感があって物事に集中できない、物覚えが悪くなったということが見られます。こういった非特異的な症状がまずは見られます。
    自発性が低下し、ぼんやり一日を過ごすことが多くなります。
    幻覚や錯覚などが見られることもありますが、たいていは一過性です。気分は多幸的であることが多いですが、逆に抑うつ気分、不機嫌などが見られることもあります。
    稀に、関係念慮や幻聴が見られます。
    初期の最も特徴的な症状は、後頭葉の病変を反映していると思われる視覚の異常です。「茶碗が割れてしまっているので、片づけようとすると壊れていない」「酒に酔ったように物が動いて見える」「星を見たら動いて見える、赤いはずの衣服が赤くない」などの視覚の奇妙な体験が訴えられます。
    認知障害が明らかになると、初期には、日付や人の名前を忘れる、仕事上のミスが多くなる、日記に三日前のことを今日のこととして書くなどが見られ、次第に、語健忘、計算障害、失書、失算、図形模写の障害、保続傾向なども明らかになります。
  • ミオクローヌス、脳波異常が見られる時期:
    この時期には、精神症状とともに神経症状がハッキリしてきます。
    神経症状としては筋強剛とミオクローヌスが目立ってきます。ミオクローヌスは特に特徴的で、手足、顔、時には全身に不規則で不随意な運動が見られます。
    錐体路系の障害によって運動麻痺も生じます。筋委縮は著しくなり、四肢は屈曲し特異な姿勢を取るようになりますが、この姿勢異常は本病においてきわめて特徴的です。
    ミオクローヌスが見られる時期にほぼ一致して、周期性同期性放電が見られます。これは、一定の周期で比較的規則的に反復するびまんな左右同期性の突発性異常波で、突発波は鋭波・棘波・徐波等の複合からなる3~5相の波で構成されます。これは広範で重篤な大脳の変化を反映したもので、本病の診断に際して重要な意味を持ちます。
  • 筋委縮、姿勢異常のみられる時期:
    最も進行した段階では、精神神経機能は著しく低下します。横臥している姿勢に特徴があって、多くは、腕を曲げ足を伸ばすか、あるいは強く曲げているという形で固定されます。
    そして、ついに失外套症候群(大脳皮質の損傷によって大脳皮質の機能が完全に失われてしまった状態である。 眼球運動、体動、言葉全てが障害される。 睡眠と覚醒の調節は保たれ、通常通り起床することは確認できる)の状態に陥ります。
    発病から2~3か月の間に、この段階まで症状が進展することが少なくありませんが、多くは全経過は数カ月です。例外的に数年の経過をとることもありますが、たいていは1年以内の経過です。このような症状の進行の速さが本病の特徴と言えます。
上記の内容からも明らかなように、クロイツフェルド・ヤコブ病の特徴はその進行の速さにあります。

ちなみに代表的な精神症状は以下の通りです。
  • 感情・意欲:
    疲れやすさ、頭痛、肩こりなどの心気的な訴え、不機嫌になって周囲とのトラブルを起こしたりしますし、不安や焦燥感もしばしば目立ちます。
    気分は多幸的で児戯的態度が見られますが、逆に抑うつ気分、不機嫌、易刺激性などが見られることがあります。
    認知症が目立つ時期になると、無欲、無関心な態度、感情の鈍麻が明らかになります。
  • 幻覚・妄想:
    せん妄のため、幻視・錯視などの幻覚が見られることがあります。
    被害的な妄想気分(毒を飲まされた、と極端に家人を怖がるなど)が出ることがあります。
    進行するに従い、言語表現能力が低下するので、このような幻覚・妄想は見られなくなります。
  • パーソナリティ障害と認知症:
    初期には、日付や人の名前を忘れたり、仕事上での失敗が多くなり、それを指摘されると怒りだすことがあります。
    たいていは、パーソナリティ障害と思われる状態から認知症まで急激に進行します。
  • 行動障害:
    もっとも初期には、軽度の人格面での障害や行動面での異常のみに限られます。
    電気コードを見ておびえる、手を叩いて歌う、独語が激しく、身体に触られると極端に痛がるといった不穏状態が見られることがあります。
    次第に無為で不活発さが極端になり寝たきりとなりますが、その際の姿勢異常は特有なものです。
これらからも明らかなように、クロイツフェルド・ヤコブ病は全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主徴とし、精神症状を伴う中枢神経の変性疾患です。


進行麻痺

進行麻痺は、フランスの内科医Bayleによって慢性炎症性疾患であることが明らかにされました(1822年)。
本病と梅毒との関係が決定的になったのは、野口英世とMooreによるお進行麻痺の患者の脳におけるトレポネマ(梅毒の病原体として知られる、螺旋状の細菌の一種)の発見によります。
今日では抗生物質による治療がなされるようになっています。

進行麻痺では、慢性の梅毒性の髄膜脳炎とその結果に生じた神経組織の変性が主な脳病変です。
大脳皮質、特に前頭葉の変化が著しい脳炎ですが、線条体、視床下部などにも変化がみられます。
慢性脳炎の特徴として、血管周囲へのリンパ球、プラズマ細胞などの炎症細胞の浸潤や血管周囲への集積があります。
長期にわたって炎症が続くと神経細胞が破壊されるので、細胞の配列は乱れ、その結果、病変の部位は荒蕪巣(荒蕪とは、土地が荒れて雑草の茂るがままになっていること)と呼ばれるような状態になります。
以上のように神経組織の変性があり、不可逆的な変化と言えます。


低酸素脳症

中枢神経系はとくに低酸素症において損傷を起こしやすい臓器です。
低酸素症は、無酸素症(心肺停止等による血中酸素分圧の低下)、貧血性(対象出血などによる酸素の運搬が障害)、断血性(うっ血性心不全などによる血流障害で局所に低酸素状態が生ずる)、組織毒性(シアン化物、アジ化物などによる中毒など、組織における酸素の利用が障害)などに分けられます。

以下のようなタイプに分けられます。
  • 線条体型:
    線条体、大脳皮質の深層、海馬、視床、小脳、黒質、歯状核、オリーブ核などに壊死病変がみられるのが一般的な病変のパターンです。
    低酸素性、貧血性、断血性などいずれでも見られます。
  • 白質型:
    大脳深部白質に広範な脱髄ないし壊死をきたします。
    低酸素状態になると白質は影響を受けやすいとされています。
  • 淡蒼球型:
    淡蒼球、黒質、ルイ体などに障害をきたすものです。特に、一酸化炭素中毒やシアン化物中毒で見られます。
    いずれも中枢神経系に障害が出ることがわかりますね。
後遺症としては、一般的には、昏睡から覚醒してもしばらくは通過症候群(意識障害をほとんどともなわない種々の精神症状のこと)が持続します。
脳損傷が重篤であれば認知障害を残すことになります。
極めて重篤で広範な脳損傷が残れば、失外套症候群の状態が続きます。
上記のように、不可逆的な変化であることがわかります。


正常圧水頭症

水頭症とは、脳室内の過剰な脳脊髄液の貯留を指します。
正常圧水頭症は水頭症の一種で、特に60代、70代の高齢者に発症します。
正常な状態では、「脳室」と呼ばれる空洞内で脳脊髄液の産生、循環、吸収の微妙なバランスが保たれています。
水頭症は、脳脊髄液が脳室系を流れて通過できなくなったときや血流内に吸収される脳脊髄液の量と産生される脳脊髄液の量のバランスが崩れたときに起こります。

正常圧水頭症の特徴として、通常は以下の順で次の3症状が徐々に現れます。
  • 歩行障害(歩行困難):
    小幅で足を引きずるように歩く。転びやすい。足が重く感じられる。階段使用が困難。
  • 尿失禁(排尿のコントロールの障害):
    頻繁に、または急に排尿したくなる。排尿を我慢することができない。
  • 軽い認知症(認識機能障害):
    健忘症。短期記憶喪失。行動への関心の欠如。気分の変化。
こうした症状の原因は脳室の肥大です。
拡張した脳室は、脳と脊髄の間の神経経路をゆがませ、症状を引き起こすと考えられています。

正常圧水頭症は、外科手術で治る唯一の認知症であり、脳室にチューブをいれそのチューブを皮下を通しておなかの中にチューブを埋め込む手術が一般的に行われます(脳室-腹腔短絡術)。
主な症状である歩行障害・軽度の認知症症状・排尿機能障害は髄液シャント術後数日で改善する場合もあれば、数週間、数ヶ月で改善することもあります。

改善が見られる患者は、多くの場合髄液シャント術後の1週間で変化が見られます。
さらに、この改善には軽度から劇的改善まであり得ますが、この改善がどの程度長続きするかを予測することは不可能です。

以上のように、正常圧水頭症は症状が出現していても改善が可能であることがわかります。



その他

上記以外で認知症に関して知っておいた方がよいことを挙げていきます。

中核症状とBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia〈BPSD〉

中核症状は脳の神経細胞が障害されることによって直接起こる症状を指します。
具体的には、以下のような症状が該当します。
  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 失語
  • 失行
  • 失認
  • 注意障害
これらは認知症のタイプや障害される部位によって出方は異なるものの、多くの認知症者に現われるものです。

中核症状に対してBPSDは、本人の性格や生活環境をはじめ、普段から接している人との関係などによって症状の現れ方が異なるので個人差が大きいとされています。
中核症状よりもBPSDの方が、介護者の負担感を増大させ、医療的な介入が求められる症状とされています。
よって、BPSDの評価は、認知症の治療や介護を考える上で、極めて重要と言えます。

国際老年精神医学会が2003年に提示し、日本老年精神医学会が2005年に監訳を行ったBPSDの症状については以下の通りです。
  • 行動面:
    ・活動性の障害:焦燥、不穏、多動、徘徊、不適切な行為
    ・攻撃性:言語性、身体性
    ・摂食障害
    ・日内リズムの変動
    ・睡眠と覚醒の障害
    ・夕暮れ症候群
    ・とくに不適切な行動
  • 心理面:
    ・焦燥、うつ、不安、感情不安定、興奮、無為
    ・妄想:ものを盗まれる、隠されるというもの、ここは自分の家でないという
    ・配偶者や介護者:浮気をしている、だましている
    ・幻の同居人妄想
    ・鏡徴候
    ・幻覚:幻視、幻聴、幻嗅、幻触
また、これら以外にも、喚声、性的抑制欠如、不用品の溜め込み、罵り、つきまとい、弄便、失禁などが含まれます。

BPSDの評価については、ほとんどが本人をよく知っている主介護者から聴取して得られた情報に基づく行動評価尺度です。
例えば、Neuropsychiatric Inventory(NPI)ではBPSDを10項目に抽出し、妄想、幻覚、興奮、抑うつ、不安、多幸、無為・無気力、脱抑制、易刺激性、異常行動について、よく日常生活を知っている介護者に対して、統一した質問により随時下位項目に進んでいく構造化面接を行います。



【2018-24、2018-131、2018追加-18、2018追加-25、2018追加-94】

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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