公認心理師 2018追加-84

2019年05月03日金曜日

感情と認知の関係について、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

こちらの問題は気分一致効果に関する内容になっています。
気分一致効果については有斐閣の「社会心理学」にしっかりと載っていましたので、ご参照ください(こちら、増補版が出ていますね)。

ちなみに選択肢③の解説に納得はしていません。
また考えてみます。



解答のポイント


気分一致効果を理解していること。



選択肢の解説


『①現在の気分は将来の出来事の予測には影響を与えない』

気分に一致する記憶に優れている効果を気分一致効果と呼びますが、気分一致効果は過去の記憶だけでなく、将来の予測にも用いられます。
例えば、将来離婚する確率を予測する際、良い気分のときにはその確率が低く予想され、ネガティブな気分のときには高く予想されます

これを示す研究は以下の通りです。
調査の回答者にさまざまな出来事を示し、それが起こる確率を想起させました。
そして、そのときの回答者の気分も回答させました。
その結果、全般的に良い気分の人の方が好ましい出来事が起こる確率を高く推測し、好ましくない出来事については低く推測していました

よって、現在の気分によって、将来の出来事の予測は影響されることが示されています。
以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②感情が喚起されるとそれに結びついた知識の活性化が抑制される』
『④記銘時と想起時の気分が一致していると、記憶が再生されにくくなる』

記憶と気分は密接な関係にあり、私たちはその時の気分に一致する記憶に優れており、この現象を「記憶の気分一致効果」と呼びます

この効果は、記銘時(覚える過程)と想起時(思い出す過程)の両方で生じます
前者は、情報を記銘するときの気分と、記銘される情報の内容が一致している時の方が、そうでない時よりも記銘されやすい効果を指します(楽しい気分のときには、楽しい事柄を覚えやすい)。
後者は、記憶を想起するときの気分状態と一致した内容の記憶が想起されやすくなる効果を指します(楽しい気分のときには、楽しい事柄を思い出しやすい)

なお、こういった情報や事象のもつ感情的意味合いを「感情価」と呼びます。
一般的に感情価は、ポジティブ、ネガティブといった区分がなされることが多いです。

この現象を示す実験としては、以下の通りです。
実験参加者に、例えば「天気」というカテゴリーに関する言葉を想起させた際、想起された単語の感情価(「晴れ」はポジティブ、「豪雨」はネガティブなど)と実験参加者の気分状態を調べたところ、参加者は自分の気分と一致する感情価の単語を多く想起していました

想起時の気分一致効果は、そのときの気分にリンクした記憶や知識が活性化しやすいことで生じ、記銘時の気分一致効果は、気分に一致した記憶や知識が活性化する結果、その活性化した知識に一致した感情価の情報に注意が向きやすくなり、入念に処理された結果、記憶に残りやすくなる、と連合ネットワークモデルの立場から説明されています
つまり、とある感情が喚起されれば、その感情と結びついている記憶・知識が活性化されやすくなると言えますね

気分一致効果に基づけば、良い気分のときにポジティブな感情価の情報が想起されやすく、嫌な気分のときにはネガティブな感情価の情報が想起されやすくなると言え、そうなるとその時の気分状態が維持されやすくなると考えられます。
ただし、これについては良い気分時には当てはまるが、嫌な気分のときには必ずしもそうはならないと指摘されています(この点については選択肢③で解説します)。

以上より、選択肢②および選択肢④は不適切と判断できます。



『③自分の気分を能動的に制御する場合は、気分一致効果は生じない』

一般に、私たちは自らに生じた気分を受動的に受け止め、感じているだけではなく、自分の気分を能動的に制御しようとすることもあります
これをそのまま「気分制御」と呼びます。
「気分転換」という言葉が当たり前に使われているのは、この「気分制御」が自明のことと考えているためです。

特に気分を制御する必要が無い場合は、生じた気分に対して能動的に働きかけることがないため、様々な形で気分一致効果が生じます。
その際の気分一致効果は、そのときの気分を持続させるように働きます。

そういった気分を変えようとする、つまり「気分制御」を行う場合は、気分とは異なる記憶を想起したり、情報を選択的に処理する(あのことは考えないようにする、など)といった方法を取ることが多いです。
すなわち、そのときの気分と想起する感情価が一致しないという状況が生じさせるわけですね。

選択肢②および選択肢④の解説の最後でも述べたとおり、ネガティブな気分のときには気分一致効果が生じないこともあることを示しました。
この現象は、嫌な気分のときにはその気分を改善したいと動機づけられることによって生じると説明されてきました。
すなわち、気分制御は、嫌な気分を改善したいという気分改善動機が働くことによって、ネガティブな気分をニュートラルな状態に戻そうとするために生じると考えられていました。

しかしアーバーらは、ポジティブな気分においても状況によって気分制御が働くことを示しました。
彼らは大学の講義を利用し、講義の前にポジティブまたはネガティブな気分に導入するグループと、講義の後に気分導入するグループに分け、その後に自分の過去についての想起を行ってもらいました。
その結果、講義の後に気分導入を受けた場合は気分に一致するような記憶の想起つまり気分一致効果が見られたのに対し、講義の前に気分導入を受けた場合には気分一致効果が見られませんでした
この説明として「講義の後」であれば気分を制御する理由がないため気分一致効果が現れるが、「講義の前」だとネガティブな気分を導入されてもポジティブな記憶が想起されるという気分一致効果とは逆の現象が生じています。

更に、アーバーらの別の実験では、課題を一人で行うと説明されたグループでは、自分の気分と一致する内容の記事を選ぶ傾向があったのに対し、課題を別の参加者と一緒に行うと説明されたグループでは、自分の気分と一致しない内容の記事を選ぶ傾向にあったことを示しています
つまり、他者と一緒に課題を行うと説明された参加者は、自分の気分をニュートラルな状態に戻そうとする行動をとっていたことになりますね。

ここで重要なのは、その気分がポジティブかネガティブかによって気分制御が生じるのではないということですね
アーバーらはこの結果から、我々は自分が置かれた社会的状況に適した気分になるように、自分の気分を能動的に制御するとしていると結論付けています

これらをまとめると以下の通りです。
  1. 気分一致効果は、そのときの気分に一致する記憶に優れている効果である。
  2. ただし、人は自らの置かれた社会的状況に適した気分になるように、能動的に気分を制御している。
  3. そのときの社会的状況と気分に齟齬がなければ気分一致効果は示される(上記で言えば、講義後のような気分を状況に合わせなくてもよい場合)が、気分を社会的状況に合わせて変化させる必要があれば気分一致効果は生じにくくなる(上記で言えば、他者と作業することがわかっている時など)
以上を踏まえると、選択肢にある「気分を能動的に制御する場合は、気分一致効果は生じない」とは言えないことがわかります。
大雑把にいえば「気分一致効果は、そのときの社会的状況によって生じるか否かが変化してくる」ということですから、選択肢のように一概に「気分一致効果は生じない」とは言えないということですね

以上より、選択肢③は最も適切とは言えないと判断できます。

…ですが、上記の論理には瑕疵があるように思えてなりません。
なぜなら「社会的状況に気分を合わせる必要が無い場面」は、言い換えれば「気分を能動的に制御していない」と捉えることができるからです。
そうなれば、その「気分を能動的に制御していない」状況は、本選択肢の状況と合致しないということになります。

つまり以下のような感じです。
  • 「気分を能動的に制御する場合は、気分一致効果は生じない」→×となる。
  • その説明として、気分一致効果は、社会的状況によって生じるか否かが変わってくるので、社会的状況によっては気分一致効果が生じるだろう。
  • だが「気分を社会的状況に合わせて変えなくてよい場面」では、そもそも「気分を能動的に制御していない場合」と捉えることもできるので、上記の選択肢内容の設定枠と異なってくるのではないか?
ということです。

しかし、手持ちの資料ではこれ以上の展開は難しいです。
もしかしたらアーバーの研究の捉え方が間違っているのかもしれませんし、それ以降の研究をチェックできていない可能性もかなりあります。
一応、公式に本選択肢は「最も適切とは言えない」ということですから、その論理を頑張って導いた感じです。
個人的にはあまり納得できていないので、また続報があるかもしれません。



『⑤認知心理学の実験における気分誘導法の1つとして、音楽が用いられる』

気分誘導の方法としては、これまで多くの方法が示されてきています。
その方法として、参加者にある文章を読み上げるよう促し意図的に気分を誘導すると言ったものもありますが、こちらは実験者効果が生じてしまう、言語課題への干渉が生じやすいなどの批判がなされています

これに対して、音楽による気分誘導効果は、感情認知研究においてしばしば用いらており、ある音楽を聴いた後に気分を聴取すると、その音楽の感情的性格にほぼ合致した気分が聴取されることが明らかにされています
音楽は言語課題との干渉が生じにくく、課題遂行中に使用可能であり、誘導された気分を維持するのに優れているとされています

以上より、選択肢⑤が適切と判断することができます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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