公認心理師 2018追加-147

2019年05月06日月曜日

55歳の男性Aの事例です。

事例の内容は以下の通りです。
  • 従業員 20 名の企業の社長(事業者)である。
  • 職場で精神疾患による休職者が多発し、対応に苦慮している。
  • ストレスチェック制度を活用することで、これ以上の休職者が出ないようにしたいと、相談室の公認心理師Bに相談に来た。
  • Bは必要な研修を修了し、産業医とともに、ストレスチェックの共同実施者となっている。
Aの相談に対するBの対応について、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

ストレスチェック制度とは、平成27年12月1日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」により新たに設けられた制度です。
この制度により、雇用主である事業者や団体等に対し、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)と、ストレスの程度が高いと認められ、労働者本人が希望する場合の面接指導の実施等が義務づけられました。

心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下、指針)には、「常時使用する労働者数が50人未満の小規模事業場においては、当分の間、ストレスチェックの実施は努力義務とされている」となっています。
なお、こちらの指針には第2号が出ています(以下、第2号指針)。

事例の職場は従業員が20名ということなので、努力義務ではありますが、休職者の多発ということで社長さんが導入を希望したということですね。
社長さんが相談室を訪れ、ストレスチェック制度の利用を希望されたということから、非常に心理的健康に配慮されている方だなという印象を受けます。

それでは、各選択肢の解説に入っていきましょう。



解答のポイント

ストレスチェック制度を理解し、労働者の個人情報(健康情報)の取り扱いについて把握していること。



選択肢の解説


『①Aに職場の集団分析結果を提供し、必要な対応を協議する』

労働安全衛生法施行規則第52条の14には「検査結果の集団ごとの分析等」が以下の通り示されております。
  1. 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない
  2. 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない
特に第2項から、事業者Aが集団分析結果を見ても良いことが示されていますから、公認心理師BがAに集団分析結果を提供するのは問題ありません。

そして、事業者Aは「当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない」とありますから、検査結果について公認心理師Bと協議することも自然な行為であると言えますね

よって、選択肢①は適切と判断できます。



『②Aに未受検者のリストを提供し、未受検者に受検の勧奨を行うよう助言する』

指針には「受検の勧奨」という項目が設けられており、以下のように示されています。
「自らのストレスの状況について気付きを促すとともに、必要に応じ面接指導等の対応につなげることで、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止するためには、全ての労働者がストレスチェックを受けることが望ましいことから、事業者は、実施者からストレスチェックを受けた労働者のリストを入手する等の方法により、労働者の受検の有無を把握し、ストレスチェックを受けていない労働者に対して、ストレスチェックの受検を勧奨することができるものとする。なお、この場合において、実施者は、ストレスチェックを受けた労働者のリスト等労働者の受検の有無の情報を事業者に提供するに当たって、労働者の同意を得る必要はないものとする

上記の通り、ストレスチェックの未受験者に関しては、そのリストを公認心理師が事業者に渡すことは問題ありません
ストレスチェック制度において重要と見なされているのは「労働者の健康情報」になります。
健康情報とは、ストレスチェックを受けたときの結果の内容ということになりますね。

以上より、選択肢②は適切と判断できます。



『④Aに面接指導を受けていない者のリストを提供し、面接指導を受けるように勧奨するよう勧める』

平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)及びその結果に基づく面接指導の実施を事業者に義務付けること等を内容としたストレスチェック制度が創設されました。
ストレスチェック制度の実施に当たっては、個人情報の保護に関する法律の趣旨を踏まえ、特に労働者の健康に関する個人情報の適正な取扱いの確保を図る必要があることが指摘されていますこちらなど)。

第2号指針には、ストレスチェック制度における情報の取り扱いについて記載されています。
本選択肢と関連がある部分を抜粋していきます。
  1. 実施事務従事者の範囲と留意事項:
    規則第52条の10第2項の規定に基づき、ストレスチェックを受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならない
  2. ストレスチェック結果の労働者への通知に当たっての留意事項:
    規則第52条の12の規定に基づき、事業者は、実施者にストレスチェック結果を労働者に通知させるに当たっては、封書又は電子メール等で当該労働者に直接通知させる等、結果を当該労働者以外が把握できない方法で通知させなければならないものとする
  3. ストレスチェック結果の事業者への提供に当たっての留意事項:
    ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、当該労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法
    なお、ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えないものとする
    事業者へのストレスチェック結果の提供について労働者の同意が得られた場合には、実施者は、事業者に対して当該労働者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができるものとする。
上記の通り、ストレスチェックの内容は基本的に伝えてはダメで、可能になるのは「労働者が事業者に面接指導の申出を行った場合」に限られます

選択肢にある「面接指導を受けていない者のリスト」とは、読み替えれば「ストレスチェックの結果、面接指導を受けることが望ましいにも関わらず受けていない者のリスト」ということです
上記の通り、Aは社長なので「労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者」に該当しますから、面接指導が必要であるという情報を知ることが禁止されていますし、公認心理師Bは伝えてはいけないことになっています

なお、面接指導を勧めること自体は労働安全衛生法施行規則第52条の16第3項に以下の通り規定されています。
検査を行つた医師等は、前条の要件に該当する労働者に対して、申出を行うよう勧奨することができる
この内容からもわかりますが、面接指導を勧めてよいのは実施者である「医師等」に限られます。
ちなみに「医師等」には公認心理師も含まれますね(こちらが示されております)。

指針には「受検の勧奨」という項目が設けられており、以下のように示されています。
「自らのストレスの状況について気付きを促すとともに、必要に応じ面接指導等の対応につなげることで、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止するためには、全ての労働者がストレスチェックを受けることが望ましいことから、事業者は、実施者からストレスチェックを受けた労働者のリストを入手する等の方法により、労働者の受検の有無を把握し、ストレスチェックを受けていない労働者に対して、ストレスチェックの受検を勧奨することができるものとする。なお、この場合において、実施者は、ストレスチェックを受けた労働者のリスト等労働者の受検の有無の情報を事業者に提供するに当たって、労働者の同意を得る必要はないものとする

事業者が行ってよいのは「ストレスチェックを受けるように勧めること」であり、そのために公認心理師が「ストレスチェックの未受験者のリスト」を渡すことは問題ないということです
選択肢の内容は「面接指導を受けていない者のリスト」ですから、この点が誤りであることがわかりますね。

選択肢は「ストレスチェック後の面接指導」と「ストレスチェック自体」をごっちゃにした内容になっており、その辺の混乱を狙ったものと思われます。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。



『③面接指導の実施日時について、Aと従業員とが情報を共有できるよう助言する』

選択肢④にも示した通り、労働者が面接指導の申出をした時点で、ストレスチェックの結果は事業者Aに渡ることなります(申出=結果を渡すことを了承した、と見なされる)。
この点は第2号指針にも以下の通り記載があります。
「事業者は、労働者から面接指導の申出があったときは、当該労働者が面接指導の対象となる者かどうかを確認するため、当該労働者からストレスチェック結果を提出させる方法のほか、実施者に当該労働者の要件への該当の有無を確認する方法によることができるものとする
申出があった時点から、事業者Aは従業員が滞りなく面接指導を受けられるよう協力することが求められます。

労働安全衛生法施行規則第52条の18では、事業者が面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存することが義務付けられています。
同条に定められた、その記録の具体的項目は以下の通りです。
  1. 実施年月日
  2. 当該労働者の氏名
  3. 面接指導を行つた医師の氏名
  4. 法第六十六条の十第五項の規定による医師の意見
上記の通り、実施年月日は事業者が記録せねばならない事項として挙げられています
よって、選択肢にあるように「面接指導の実施日時について、Aと従業員とが情報を共有できるよう助言する」という公認心理師Bの行為は、事業者にとって必要な事柄と言えるので適切です。

以上より、選択肢③は適切と判断できます。



『⑤面接指導を実施した医師から、Aが就業上の措置の必要性及び措置の内容について意見聴取するよう助言する』

こちらは労働安全衛生法第66条の10に以下のように規定があります。
  • 第5項:事業者は、第三項の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない
  • 第6項:事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
これらが事業者であるAに課せられた義務ということになります。

公認心理師Bが事業者Aに対して、医師からの意見を聴取するよう助言することは、上記の条項に則った行為であり、当然適切なものと言えます
よって、選択肢⑤は適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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