一般にタイプAは心筋梗塞などの虚血性心疾患が多いタイプ、タイプBはタイプAの逆の傾向を持つ人たち、タイプCはがんになりやすい人たちとされています。
タイプCの「C」はCancer(がん)の頭文字とされています。
タイプAと関連がある用語として、「心身症」「アレキシサイミア」などが重要です。
併せて押さえておきましょう。
解答のポイント
タイプA型行動パターンの提唱者、特徴などを掴んでおくこと。
選択肢の解説
『①M.Friedmanが提唱した性格傾向である』
『②時間的切迫感、感情抑制、他者評価懸念及び社会的同調性の特徴を持つ』
『⑤複数の特徴のうち、時間的切迫感が心筋梗塞発症の最も強いリスク要因であることが示されている』
Friedman&Rosenman(1959)は、タイプAと呼ばれる性格の人が冠動脈疾患になりやすいことを指摘しています。タイプA性格とは、自分が定めた目標を達成しようとする強い欲求を持ち、人と競争することを好み、功名心が強く、つねに時間に追われながら多くのことをこなそうとする傾向のことを指します。
身体的・精神的に過敏で、強い敵意や攻撃性を示し、大声で早口にしゃべる傾向があるとされています。
これらの行動傾向のうち、基本的で重要なものは以下の通りです。
- 時間的切迫感:
時間に追われながらの多方面にわたる活動。 - 性急さ:
身体的精神的活動速度を常に速めようとする習癖。 - 達成努力:
自分が定めた目標を達成しようとする持続的な強い欲求。 - 野心:
永続的な功名心。 - 競争:
競争を好み、追求する傾向。 - 敵意性:
身体的精神的な著しい過敏性を伴う。
これらがタイプA型の特徴を言えます。
その中でも特に「敵意性」が冠動脈疾患の重要な予測因子であることがわかっています(Sadock&Sadock,2003)。
※この点については、選択肢③でも詳しく論じます。
これに対してTemoshok によって提唱された、多くのがん患者に共通して見られるタイプC型行動パターンという型があります(タイプBもあり、これはタイプAの逆の特徴)。
こちらは、がん罹患のリスクファクターになるのではないかとまで言われているものです。
タイプC行動型パターンとは、怒りをはじめとしたネガティブな感情を表出せず、経験もしないということや忍耐強く控え目で、周囲の人々に対して協力的で、権威に対して従順であるというもの、他者の要求を満たすためには極端に自己犠牲的になり得るなどの特徴を示す行動パターンのことを指します。
そのため、表面的にはいわゆる「良い人」に見えるのであるが、何らかの葛藤やストレスを抱えている可能性も考えられる。
選択肢②の内容は、タイプA型パターンに上記のタイプC型パターンを混ぜているような印象を受けます。
以上より、選択肢①は正しいと判断でき、選択肢②および選択肢⑤は誤りと判断できます。
『③1950年代の最初の報告以来、心筋梗塞の発症に関わることが一貫して示されてきた』
アメリカ西海岸の大規模な共同研究の結果によれば、確かに、タイプAは逆のタイプBに比べて冠状動脈性心臓疾患の相対的危険度は約2倍という結果が出ています。タイプA行動は冠状動脈性心臓疾患になりやすい人の特徴的な行動としてみてよいでしょう。
ちなみにこれらの結果は、食事、年齢、喫煙、その他の変数を考慮しても同様でした。
多くの研究結果を背景として、1981年にアメリカ心臓病学会は、タイプA行動が冠状動脈心臓疾患の危険因子と分類されるべきだと発表しました。
しかし、それ以降の2つの研究結果(1983年と1985年)では、タイプA行動と心臓疾患との関連を見つけることはできませんでした。
その理由として、タイプAの評定法の違いに原因があるのではないかという研究者と、タイプA行動の定義が拡散しすぎているせいではないかという研究者がいます。
多くの研究者は「時間的切迫感」と「競争」については、対して重要な要因ではないと論じており、そこから「敵意性」が重要な係数であると示しました。
その後の研究でも、「敵意性」が冠状動脈性心臓疾患の発生率の向上に絡むことがわかってきています。
このメカニズムとして、交感神経系のストレスに対する反応様式が挙げられます。
「敵意性」が高い人は、血圧や心拍数、ストレスに関連するホルモンの分泌量が大幅に増加するなどの結果が示されています。
すなわち「敵意性」が高い人の交感神経系は、ストレスとなる状況に過剰反応すると言えます。
また日本人における検討では、欧米の先行研究における「タイプA行動パターン仮説」に反して、男性において「タイプB行動パターン」が虚血性心疾患発症リスクの上昇と関係していました(女性はタイプAに虚血性心疾患が高い。これは欧米と同じ)。
タイプB行動パターンを持つ男性はストレスを内にためこみ、虚血性心疾患リスクを上昇させている可能性があります。
このことは、行動パターンの影響が性・文化的背景によって異なることを示しています。
ただし、エバンスは、タイプAの特徴は国や文化の違いに関係がないとしており、この辺は曖昧です(ちなみに上記の日本の研究結果は、国立がん研究センターの予防研究グループの発表です)。
以上のように、タイプA行動と心筋梗塞との関連については、タイプA行動というよりも、その中の「敵意性」が重要であるという指摘があるなど、選択肢にあるような「心筋梗塞の発症に関わることが一貫して示されてきた」とは言い難いと思われます。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。
『④行動パターンを変容させる介入研究により、心筋梗塞の再発を抑える効果が示されている』
フリードマンら(1994)は認知療法的技法と行動療法的技法を組み合わせることで、タイプA行動を減少させることができることを証明しました。過去に少なくとも1回心臓発作を経験したことがある1000人以上の被験者の治療群に対して、以下のようなアプローチを行いました。
- 普段なら時間をかけてじっくり考えない事柄をじっくり考える機会を持たせる。
- 他人を観察してもらう。
- 見知らぬ人と会話を交わす機会を持つ。
- 人に爆発することなく自分の感情を表現できるように、また特定の行動を変えるように助言を受ける。
更に、治療者はタイプA型行動の背景にある基本的な信念(成功か否かは、仕事量による等)を再評価できるよう援助しました。
これらによって参加者は、家庭環境と仕事環境のストレスを減らす方法を見つけていきました。
この研究では、もう一度心臓発作が起こるか否かを重要な従属変数と見立て、縦断的に経過を追っていきました。
その結果、4年半の間、治療を受けた群の心臓発作の再発率は、統制群(特に生活に修正を加えられていない)のほぼ半分であったことがわかりました。
このことは、明らかにタイプA行動を修正することを学習することは、彼らの健康に有益であったことを示しています。
以上より、選択肢④は正しいと判断できます。
0 件のコメント
コメントを投稿