公認心理師 2018追加-128

2019年05月01日水曜日

大脳の生理学的機能について、正しいものを2つ選ぶ問題です。

大脳については、基本的な事項は押さえておきたいところですね。
例えば以下のような事柄。
  • 大脳は、ヒトでは他のどの生体よりも高度に発達している。
    大脳の一番外側の層を「大脳皮質」と呼ぶ(ラテン語の木の皮に由来)。
    感覚系は大脳皮質の特定の領域に、それぞれ情報を送っている。
    運動反応や身体の動きは、大脳皮質のある領域で制御されている。
    感覚野でも運動野でもない、それ以外の大脳皮質の領域を「連合野」と呼び、記憶・思考・言語に関係している。
  • 大脳は脳梁でつながった脳の左右両側の二つの半球(右半球・左半球)から成っている。
  • 各半球はさまざまな異なった機能を営む大脳皮質の広い領域の4つの葉(前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉)に分けられる。
これらを踏まえつつ、各領域の特異的な機能も把握しておきたいです。


解答のポイント


大脳の生理学的機能について把握していること。



選択肢の解説


『①Broca野は発語に関わる』

言語の主要な機能は、右利き者の95%以上、非右利き者でも65%以上が左大脳半球に偏って存在しています(このことを「側性化」といいます)。
従って、失語症のほとんどのが左半球の損傷によって生じます(もちろん右半球損傷による失語もないわけではありませんが、ここでは割愛)。

古くから言語野として知られている部位には、脳の前方にあるブローカ野と後方のウェルニッケ野があります
ブローカ野は左下前頭回後方とされており、ウェルニッケ野は通常左上側頭回の後半もしくは後方1/3とされています。

ブローカ野の損傷によって生じる失語は、表出性失語とも呼ばれ、発語に関わる領域が障害されるために生じます
理解は単語レベルでは比較的良好ですが、統語理解に障害が出やすいとされています。
単語を正しく発音できない、ゆっくりたどたどしく話す、意味は分かるが重要語しか出てきません。
典型例では、発話量が減少し、表出される句の長さが短くなる。構音は歪みや置換が生じ、発話開始の困難や発話速度の低下、アクセントやイントネーションの平板化、不自然な音の途切れがあります。
名詞は通常単数形で表現され、形容詞・副詞・冠詞・接続詞は省略されがちです。

以上より、選択肢①は正しいと判断できます。



『②側頭葉は温痛覚と触覚に関わる』

一次体性感覚野は、運動野と中心溝で隔てられている頭頂葉の中心後回(頭頂葉の最も前側)に存在し、刺激を与えると身体の反対側(神経線維が交叉している)に何らかの感覚を生じさせます
ここでは、温覚、冷覚、触覚、痛覚、身体の動きの感覚を司ります。
ちなみに体性感覚野の広さは、その感覚の鋭敏さと使われ方に比例します。
このように選択肢にあるような感覚は、頭頂葉にある一次体性感覚野と関わると言えます

一方、側頭葉では「聴覚」や「言語の処理」を行います
一次聴覚野は左右の半球の側頭葉の表面に位置し、複雑な聴覚信号の分析に関係があります。
左右の耳は皮質の左右の聴覚領域に連絡しているが、反対側への連絡の方が強力な仕組みになっています(右の耳は左側の聴覚領域により多くの情報を送っている)。

聴覚理解の中枢である「ウェルニッケ野」がここに存在します(一般的には左半球)。
ウェルニッケ野は感覚性失語とも呼ばれ、言葉の意味を理解することができない、聞いても意味がわからない、言葉を発することや発音も正しいが使い方に誤りがあるなどの問題が出てきます。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



『③頭頂連合野は主に物の判別と記憶に関わる』

まず選択肢内にある「物の判別」について考えていきます。
選択肢②でも述べたように、頭頂葉には一次体性感覚野があり、温覚、冷覚、触覚、痛覚、身体の動きの感覚を司っています。
もちろん、これらも「物の判別」と関連が無いとは言えないのですが、物をきちんと認識するという意味で言えば他の領域が重要になってきます

例えば、失認は単一の感覚情報だけでは対象を認知できない状態です
失認は、視覚性失認、聴覚性失認、触覚性失認などがあり、一般的には視覚性失認が耳にすることが多いのではないかと思います。
このうち、物体失認であれば物体全てを視覚的に認知できないとされ、多くの場合、両側の後頭側頭病変によるとされています
その他にも画像失認、相貌失認、街並失認などがありますが、いずれも後頭葉および側頭葉の病変と絡むとされています

これらより、「物の判別」を頭頂連合野で司っているとするには抵抗があります(関わっていないとは言えないのでは…とも思うので)。
ただし頭頂葉は、失認という「特定の感覚だけでは対象を認知できない状態」にかかわるのではなく、失行という「その運動・行為を行うために必要な運動機能が保存され、何をするのかもわかっているし、それに必要な対象の認知ができているにも関わらず、目的とする運動・行為ができない状態」にかかわる部位であるという認識の方が重要な気がしています

一方、選択肢内の「記憶」については以下の通りです。
健忘症を引き起こす代表的な部位として、側頭葉内側部(海馬)、間脳(視床)、前脳基底核が挙げられます
  • 海馬を中心とした側頭葉内側部
    アルツハイマー病や無酸素脳症などにより障害を受けやすい領域で、障害されると重度の前向性健忘(記銘力の障害)が生じる。ここが損傷されると、記銘が困難で再認成績も悪い重度の前向性健忘となる。
  • 間脳
    脳の中心部にありコルサコフ症候群の責任病巣。ここの障害では、障害に対して無自覚だったり、見当識障害や自発的な作話を示すこともある。
  • 前脳基底核
    前頭葉の眼窩面に位置し、くも膜下出血で損傷を受けやすい領域である。ここが損傷されても、ある程度の情報の記銘・保持が可能な一方で、情報の文脈やその前後関係の判断が困難になる。
上記以外にも脳梁膨大後域や脳弓などもパペッツの回路やヤコブフレの回路として知られ、それらの障害によって健忘が生じるとされています。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。



『④劣位半球の障害によって失読と失書が起こる』

大脳は大脳縦裂と呼ばれる深い溝で左右の大脳半球に分かれ、その間は脳梁などで繋がっています。
選択肢①で述べたように、特定の知的活動は主に左右いずれかの脳で行われることを「脳の側性化」と呼びます
このことは、1981年にノーベル生理学医学賞を受賞したアメリカの神経科学者であるR.W.Sperryが、分離脳患者(大脳半球間を連絡する脳梁などの交連繊維が切断された脳の状態)の研究で大脳半球の機能差を明らかしました。

体性感覚や運動中枢などは左右の脳に機能の差はありませんが、一般的には(右利きの場合は特に)「言語や文字、単語、書字、計算などの言語性操作」は左脳優先です
一方、「音楽や非言語的環境音、顔などのような複雑な幾何学パターンの認識などの心像性操作」は右脳優先となっています。

この際、一般的に言語中枢がある方を優位半球、もう一方を劣位半球と呼びます
すなわち、選択肢の内容は「劣位半球」ではなく、「優位半球」が正しいと言えますね。
よって、選択肢④は誤りと判断できます。



『⑤前頭連合野は主に思考、意欲及び情動に関わる』

前頭連合野は、前頭葉で運動皮質よりも前の部分を指します。
前頭連合野は、行動計画に必要な情報を側頭連合野や頭頂連合野から受け取り、複雑な行動計画を組み立て、その実行の判断を行います
また、視覚的に与えられた目標への眼球運動の制御もこの領域で行われています。

ヒトの前頭連合野の破壊によって引き起こされる一連の症状を前頭葉機能障害(前頭葉機能不全)と呼び、以下のような症状や障害が現れるとされています。
  • 無気づき症候群
  • 神経疲労
  • 無気力症:発動性の困難、発想法の欠如、自発性の欠如
  • 抑制困難:衝動性亢進、反応の調節下手、多動症、イライラ、情動の洪水、感情の爆発
  • 基本的な注意力障害:覚醒レベル、選択的注意、注意力維持
  • コミュニケーションスキルの低下
  • 記憶能力の低下
  • 論理的思考力の低下:収束的思考力・拡散的思考力の低下
  • 不適切な対人的行為:思いやりの不十分、社会的判断力の乏しさ、反感を持たせるコミュニケーション、機転や親愛感の不十分
これらの特徴は定型的な神経心理学的検査では捉え難いとされています。

いわゆる社会的生物としての人間にとって重要な機能が集まっていると言えます。
併せて、「前頭葉ロボトミー」や「ケージのケース」などについても押さえておいてよいかもしれません。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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