公認心理師 2018追加-94

2019年04月15日月曜日

認知症の症状を呈する病態で、治療が可能で病前の正常な状態に回復する可能性があるものとして、適切なものを1つ選ぶ問題です。

多くの認知症では、症状が出現した時点で神経細胞に何らかの変性や障害が生じているため、脱落した機能の回復は難しいと言えます。
すなわち本問を言い換えるならば「症状が出た時点で治療を開始しても、病前の正常な状態に回復する可能性があるもの」を選ぶことになります。



解答のポイント


症状が出た時点で治療を開始しても、病前の正常な状態に回復する可能性がある認知症の症状を呈する病態を把握していること。



選択肢の解説


『①Pick病』

ピック病とは、前頭側頭葉変性症のうちもっとも古くから知られているものです。
前頭側頭葉変性症とイコールで扱われていた時期もあったようですが、現在ピック病という用語はピック球がみられるタイプに限って最近では使う傾向にあります。

病変の部位は、前頭葉、側頭葉が主であり海馬にも変化があります
しばしば線条体、視床、黒質にも変化が及びます

神経細胞の脱落、大脳皮質の第二層における小空胞形成による基質の抜け、白質のグリア繊維の増生がみられますが、更に特徴的な変化としてピック細胞あるいはピック嗜銀球が認められます。
要は、異常構造物(ピック細胞等)が神経細胞の中に溜まるということですね。

このように大脳の神経細胞に脱落が認められるなど、不可逆的な変化と言えます。
以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②進行麻痺』

進行麻痺は、フランスの内科医Bayleによって慢性炎症性疾患であることが明らかにされました(1822年)。
本病と梅毒との関係が決定的になったのは、野口英世とMooreによるお進行麻痺の患者の脳におけるトレポネマ(梅毒の病原体として知られる、螺旋状の細菌の一種)の発見によります。
今日では抗生物質による治療がなされるようになっています。

進行麻痺では、慢性の梅毒性の髄膜脳炎とその結果に生じた神経組織の変性が主な脳病変です
大脳皮質、特に前頭葉の変化が著しい脳炎ですが、線条体、視床下部などにも変化がみられます
慢性脳炎の特徴として、血管周囲へのリンパ球、プラズマ細胞などの炎症細胞の浸潤や血管周囲への集積があります。
長期にわたって炎症が続くと神経細胞が破壊されるので、細胞の配列は乱れ、その結果、病変の部位は荒蕪巣(荒蕪とは、土地が荒れて雑草の茂るがままになっていること)と呼ばれるような状態になります。

以上のように神経組織の変性があり、不可逆的な変化と言えます。
以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



『③低酸素脳症』

中枢神経系はとくに低酸素症において損傷を起こしやすい臓器です。
低酸素症は、無酸素症(心肺停止等による血中酸素分圧の低下)、貧血性(対象出血などによる酸素の運搬が障害)、断血性(うっ血性心不全などによる血流障害で局所に低酸素状態が生ずる)、組織毒性(シアン化物、アジ化物などによる中毒など、組織における酸素の利用が障害)などに分けられます。

以下のようなタイプに分けられます。
  • 線条体型:
    線条体、大脳皮質の深層、海馬、視床、小脳、黒質、歯状核、オリーブ核などに壊死病変がみられるのが一般的な病変のパターンです。
    低酸素性、貧血性、断血性などいずれでも見られます。
  • 白質型:
    大脳深部白質に広範な脱髄ないし壊死をきたします。
    低酸素状態になると白質は影響を受けやすいとされています。
  • 淡蒼球型:
    淡蒼球、黒質、ルイ体などに障害をきたすものです。
    特に、一酸化炭素中毒やシアン化物中毒で見られます。
いずれも中枢神経系に障害が出ることがわかりますね

後遺症としては、一般的には、昏睡から覚醒してもしばらくは通過症候群(意識障害をほとんどともなわない種々の精神症状のこと)が持続します。
脳損傷が重篤であれば認知障害を残すことになります
極めて重篤で広範な脳損傷が残れば、失外套症候群の状態が続きます

上記のように、不可逆的な変化であることがわかります。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。




『④正常圧水頭症』

水頭症とは、脳室内の過剰な脳脊髄液の貯留を指します。
正常圧水頭症は水頭症の一種で、特に60代、70代の高齢者に発症します
正常な状態では、「脳室」と呼ばれる空洞内で脳脊髄液の産生、循環、吸収の微妙なバランスが保たれています。
水頭症は、脳脊髄液が脳室系を流れて通過できなくなったときや血流内に吸収される脳脊髄液の量と産生される脳脊髄液の量のバランスが崩れたときに起こります。

正常圧水頭症の特徴として、通常は以下の順で次の3症状が徐々に現れます。
  1. 歩行障害(歩行困難):
    小幅で足を引きずるように歩く。転びやすい。足が重く感じられる。階段使用が困難。
  2. 尿失禁(排尿のコントロールの障害):
    頻繁に、または急に排尿したくなる。排尿を我慢することができない。
  3. 軽い認知症(認識機能障害):
    健忘症。短期記憶喪失。行動への関心の欠如。気分の変化。
こうした症状の原因は脳室の肥大です。
拡張した脳室は、脳と脊髄の間の神経経路をゆがませ、症状を引き起こすと考えられています。

正常圧水頭症は、外科手術で治る唯一の認知症であり、脳室にチューブをいれそのチューブを皮下を通しておなかの中にチューブを埋め込む手術が一般的に行われます(脳室-腹腔短絡術)
主な症状である歩行障害・軽度の認知症症状・排尿機能障害は髄液シャント術後数日で改善する場合もあれば、数週間、数ヶ月で改善することもあります。

改善が見られる患者は、多くの場合髄液シャント術後の1週間で変化が見られます。
さらに、この改善には軽度から劇的改善まであり得ますが、この改善がどの程度長続きするかを予測することは不可能です。

以上のように、正常圧水頭症は症状が出現していても改善が可能であることがわかります。
よって、選択肢④が適切と判断できます。



『⑤Creutzfeldt-Jakob病』

クロイツフェルト・ヤコブ病については、公認心理師2018追加-25の選択肢⑤にて詳しく解説しています。
そちらを見てもらうのが一番だと思います。

クロイツフェルド・ヤコブ病は、初老期に発症し、筋委縮、錐体路症状、錐体外路症状、認知症などをきたし、多くは数カ月の経過をとって死亡する特異な疾患です。
今日では、羊のスクレーピー、牛の海綿状脳症、ヒトにおける異型クロイツフェルド・ヤコブ病などとともにプリオン(prion)によって発症する疾患であるとされています。

プリオンとはタンパク質からなる感染性因子のことであり、ミスフォールド(たんぱく質が折りたたまれる過程で特定の立体構造をとらず、生体内で正しい機能や役割を果たせなくなること)したタンパク質がその構造を正常の構造のタンパク質に伝えることによって伝播します。
今日、広く知られているような大脳の海綿状態(光学顕微鏡で多数の泡の集まりのように見えるので海綿状と表現される)といった激しい変化が出現します

すなわち、タンパク質の変性であり、大脳の不可逆的な変化による病態です。
以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

Share /

0 件のコメント

コメントを投稿

About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

Followers

CONTACT

名前

メール *

メッセージ *

© 公認心理師・臨床心理士の勉強会
designed by templatesZoo