公認心理師 2018追加-150

2019年04月29日月曜日

14歳の男子A、中学2年生の事例です。

事例の内容は以下の通りです。
  • Aは日頃学業への取組が不十分であり、定期試験の答案が返却される度に、点数が低いのは自分の能力がないからだと考えていた。
  • しかし、今回の定期試験では努力した結果、Aは高得点を取ることができた。
  • Aはたまたま問題が簡単だったからだと考えている。
原因帰属理論に基づいて、Aの担任教師がAの学業への取組を促すための対応として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

9月9日実施の試験問題の中でも解説が大変だった公認心理師2018-118の類似問題になります。
本問もワイナーの原因帰属理論の基づいた問題ですね。

まずはおさらいとしてワイナーの原因帰属理論を振り返っておきましょう。

この理論によると、原因帰属のスタイルは「統制」と「安定性」の組み合わせによるとされます。
 統制:内的統制(その人の内部要因)・外的統制(環境要因)
 安定性:安定(あんまり変わらない要因)・不安定(変わりやすい要因)

上記の組み合わせ4つとその例を挙げると…
・内的+安定=本人の先天的・潜在的能力に帰属する:知能が高い、低い等。
・内的+不安定=本人の頑張り次第の要因に帰属する:努力したから、努力が足りない等。
・外的+安定=課題の困難度の帰属する:テストが簡単だったから、難しかったから等。
・外的+不安定=神のみぞ知る的帰属:運が良かったから、悪かったから等。

この理論のミソは、どういう帰属をすると好ましいかは状況によって変わるということが明確に示されている点です。

例えば、悪い状況で「内的+安定」の原因帰属を行うことは、自分の能力が低くてダメだから…と悲観的になってしまいがちです(安定しているものは変わらないから)。
事例Aはまさにこの状態になっており、学習に意欲的になれる帰属ではないことがわかります。

こうした状態のAに、どういった声掛けをすれば意欲的になれるのか、各選択肢の解説をしつつ考えていきましょう。



解答のポイント


ワイナーの原因帰属理論を把握していること。



選択肢の解説


『①次回のテストも簡単かもしれないから大丈夫だと伝える』

こちらのアプローチは「外的統制」+「安定」という原因帰属に基づいたものになっています
テストの困難度はA本人の要因ではないので「外的統制」であり、本来はあまり変化のない要因なので「安定」になります。

外に要因がある上に、Aがどんなに頑張っても変えようがないところに「良い点数だった理由」をもってくることによって、今回は偶然テストが簡単だっただけでどうせ次はまた難しいテストになってダメに違いない、という思考になりやすいと思われます。
当然、こういった原因帰属を行っても意欲は向上しないことが推測されます。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。



『②今回は運が良かっただけなので慢心しないように注意する』

こちらのアプローチは「外的統制」+「不安定」という原因帰属に基づいたものになっています
運はA本人の要因ではないので「外的統制」であり、移ろいやすい要因なので「不安定」になります。

普通に考えて、教員から「今回テストが良かったのは運が良かっただけだよ」と言われてやる気が出る人間って相当変わっていると思います。
ワイナーの理論においては、当人が変えられず移ろいやすい要因に帰属した場合、頑張っても運によって左右されてしまうなら頑張っても意味がないという思考になりやすいとされています
当然、Aが学業に取り組む意欲が出てくるとは言えないと考えるのが妥当です。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。



『③Aには高得点をとる能力があるのだということを繰り返し強調する』

一般的に考えて、こちらと選択肢④を迷った方も多いかもしれませんね。
ワイナーの原因帰属理論に基づいて考えると、選択肢③が不適切になります

能力というのは「内的統制」+「安定」の原因帰属です。
問題は「安定」であることであり、人の能力はそう簡単に変わらないものです。
すなわち能力という「簡単に変わらないもの」に帰属することによって、高い能力を持っているのだから努力しなくても大丈夫、という論理が成り立ってしまうわけです

選択肢④でも示しますが、一番やる気が出る原因帰属は「内的統制」+「不安定」というものです。
「不安定」というのは変わりやすいということを意味し、それ故に本人の力によって変えていけるという論理が成り立ち、意欲的に取り組みやすくなるということです

自身の能力に悲観的になっているAに対し、能力が低くないのだと伝えたい気持ちは、一般的には理解可能です。
また、こうした励ましがプラスに働くこともあるでしょう。
ですが、これはあくまでも「自尊感情」などへのアプローチと考えた方がよいでしょう。
我々は公認心理師もしくはそれを目指す者ですから、常識的な関わりの重要性と効果を把握しつつも、専門的な知見に基づいたアプローチを提案できることが大切です

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。



『④問題が簡単だったからではなく努力したから高得点だったと強調する』

先述の通り、ワイナーの原因帰属理論において最も意欲の発現を促す原因帰属は「内的統制」+「不安定」というものであり、本選択肢の「努力したから高得点だった」という帰属がそれに該当します
「問題が簡単だった」という「外的統制」+「安定」の帰属を否定し、「努力したから」という「内的統制」+「不安定」の帰属を強調しているわけですね。
理論的には、このアプローチが最も意欲発現を促すと考えられます。

努力への帰属は、A本人に備わる要因(内的統制)であり、変えることができる(不安定)わけですから、次も努力すれば得点に結びつくという論理が成り立ちます
本選択肢のアプローチが、Aの学業への取組を促す可能性が一番高いと理論的には言えるでしょう。

よって、選択肢④が適切と判断できます。

Share /

0 件のコメント

コメントを投稿

About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

Followers

CONTACT

名前

メール *

メッセージ *

© 公認心理師・臨床心理士の勉強会
designed by templatesZoo