公認心理師 2018追加-69

2019年03月11日月曜日

9歳の男児A、小学校3年生の事例です。

内容は以下の通りです。
  • 実父母から身体的虐待を受けて小学校1年生のときに児童養護施設に入所した。
  • 入所当初は不眠、落ち着きのなさ、粗暴行為が見られたが、現在はほぼ改善し、日々の生活は問題なく過ごせるようになっている。
  • 実父母は施設の公認心理師との面接などを通して、暴力に頼ったしつけの問題や、虐待にいたるメカニズムを理解できるようになった。
  • 毎週の面会に訪れ、Aとの関係も好転している様子がうかがわれた。
  • 小学校3年になって、Aと実父母が家庭復帰を希望するようになった。
家庭復帰に関して施設が行う支援について、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

本問はブループリントにある「親子関係調整、家族支援、家族再統合」に関する問題と言えます。
どういう問題を出してくるのかなと思っていましたが、こういう形でしたね。

本問については、厚生労働省が出している「第9章 援助(親子分離)」を参照にしていきましょう。
また「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」も見ておくことが重要です。
特に福祉領域に関わっておらず、実際のイメージが湧かない場合は読んでおくと良いでしょう。
細やかに書かれています。

要保護児童対策地域協議=「要対協」と略されることが多いですね。
これは児童福祉法第25条の2に以下のように規定されています。
「地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者により構成される要保護児童対策地域協議会を置くように努めなければならない」

このことを踏まえ、各選択肢の検証を行っていきます。



解答のポイント


施設措置解除の手順や留意すべき事項について把握していること。



選択肢の解説


『①家庭復帰後の懸念される事態について児童相談所と話し合う』

近年、児童虐待のケースが大幅に増加したことを受けて、その地域での相談や虐待対応については、市や施設および施設に併設されている児童家庭支援センターなどが担うようになってきています。
児童相談所も一時保護を検討せねばならないような事例で手いっぱいなので、それ以外の日常的なケアが必要な事例についてはその地域の資源を活用して対応していこうということです。
それくらい、今の児童相談所は大変な状況ですから。

上記の事情もあってか、本事例は施設の公認心理師が保護者の面接を行い、心理教育や内省を通して子どもと保護者の両人から家庭復帰を希望するまでに至った事例ということになります。
ここまで持ってくるだけでも大変だろうなと思います。

さて、本選択肢にあるように、家庭復帰にあたっては面接を重ねてきた施設側と措置を決める児童相談所側で連携を取るのが当然です
その中で、「家庭復帰後の懸念される事態」は当然話し合われる事項と言えます。

具体的に生じそうなことを述べていきます。
小学校3年生まで頻度は不明ですが身体的虐待を受ける状況で育ってきたAは、それなりに愛着の傷つきがあると見るのが自然です。
施設の公認心理師によって虐待の無い家庭環境を目指した支援を行ってきましたし、Aや両親も家庭復帰を希望するようになったわけですから、ある程度安心感のある環境になったと推察できます。

しかし家庭復帰後、Aが安心感のある状況になったからこそ示すだろう様々な問題が予見されます。
例えば、過度に甘えたり、かと思えば両親の感情を逆なでするような言動をするなど、現在の家庭環境、もっと言えば両親がそういった言動によって崩れないか「石橋を叩く」ような言動が考えられます。
それ以外にも、学校で「自分が受けていたような暴力」を同級生相手に振るうなども考えられ、これは両親の罪悪感が引き出され、持っていき場に困ることでしょう。

重要なのは、こうした予見される事態について、両親がどこまで理解を示し、適切な対応ができるかです
これまで両親と面接を重ねてきた施設の公認心理師から、上記のような事態において両親がどこまで対応できるかの見立てを、実際に措置を行う児童相談所と共有し、家庭復帰の枠組みを決めていくことが求められます

以上より、選択肢①は適切と言え、除外することが求められます。



『②実父母と子どもと一緒に、帰省や外泊の日程やルールなどを検討する』
『③週末帰省中に、再び実父母からの虐待が認められた場合には、家庭復帰については再検討する』

一般的に施設での面会状況が安定し、親子関係の改善が見られるようになってくれば、施設からの外出・休日の家庭への帰省も段階を踏んで検討していきます
事例によっては、いきなり家庭復帰をさせざるを得ない場合も考えられますが、本事例のように施設の公認心理師としっかりと面接を重ねてきた場合は、その辺も丁寧にやることができると思います

この際、子どもが保護者の意向を先に読み取って、それを自分の気持ちより優先してしまわないように気を付けることが重要です
「(お父さん、お母さんが帰ってきてほしいって言ってるから)僕も帰りたい」ということがあり得るということです。

初めての面会、外出、帰省は、大切な節目であり、保護者対応について十分協議できるようにします
一時帰宅では「一時帰宅(週末帰宅、短期帰省等)等によって、虐待を行っている保護者に対する態度や気持ちがどのように変化したか」という子どもの気持ちを確認することが、支援上大切になります。

こうした外泊時の状況は家庭引取りの最終的な判断材料となります
施設での面接では、保護者は「子どもも変わりました」、子どもは「お父さん、お母さん、優しくなった」等と、双方とも面会の一瞬を捉えて問題解決されたと錯覚することが多いです。
外泊は入所措置後の親子の変化を相互に体験する機会となるので、親子関係修復のため、面会、外泊等の回数および期間を変える等、個別の事例に応じて課題内容を検討して実施することが求められます

もちろん、こうした外泊時の状況によっては家庭復帰を取りやめることもあり得ます
特に虐待が行われるようでは、当然ですが再検討になります。
外泊で虐待が行われるならば、虐待リスクが高いと言われている家庭復帰後の数カ月が非常に懸念されます

以上より、選択肢②および選択肢③は適切と言え、除外することが求められます。



『④実父母が在住する市の要保護児童対策地域協議会でのケース検討会議の開催を、児童相談所を通して市に依頼する』

要保護児童対策地域協議会を開く手続きとして適切と言えますし、要保護児童対策地域協議会で各専門家による支援について共有しておくことが重要です

「親子関係再構築支援」は、地域の中で家族や家庭を見守る機関としての役割となり、
  1. 地域における子どもと家庭の支援
  2. 親子分離が必要な時の家族への支援
  3. 親子分離中に家庭復帰に向けて行う支援
  4. 家庭復帰後の子どもと家族への支援
など、それぞれの事情に合わせた支援を行います。
要保護児童対策地域協議会では、これらの点について、さまざまな立場の人が集まり、事例に対する支援方針を共有することになります
家庭復帰にあたっては、家庭復帰後の数か月は虐待リスクが高いとされているので、その予防や早期発見のための支援体制を整えておくことが求められます。

要保護児童対策地域協議会で集まったメンバーで、その家庭に応じた支援方法と、それぞれの役割分担、情報の集約の仕方などについて共有しておきます
例えば、民生委員が近所を通った際に確認したり、場合によっては訪問するなどのような形ですね。

以上より、選択肢④は適切と言え、除外することが求められます。



『⑤家庭復帰後は、施設措置が解除となり、市の要保護児童対策地域協議会の監督下に入るため、施設からの支援は終了する』


措置解除の条件として以下が挙げられます。
  1. 家族システムが施設入所措置前(虐待が行われていたころ)から変化し、虐待が再発する可能性が少ないと判断されること。
  2. 保護者が自分の行為を反省し、「もうしない」と断言しており、これに合理的根拠があると判断されること。
  3. 援助機関と保護者の間に信頼関係が樹立されており、今後も継続的な援助が可能と判断されること。
  4. 援助や再発の早期発見のためのネットワーク(セーフティーネットワーク)が地域に存在すること
選択肢①の解説でも示した通り、家庭復帰後にもさまざまな懸念があります。
それ自体は、A自身の愛着の修復と、両親の親としての成長に必要な体験ではありますが、成長痛と同じで痛みが伴います。
適切な対応の助言や、再発防止のためにも地域にネットワークが存在することが上記の通り重要になります。

一般的には、家庭復帰直後の数カ月は特に子ども虐待が再発するハイリスクの期間とされており、保護者の強い希望で家庭に返した数週間後に、子どもが保護者の暴行によって死亡するという事例も報告されています
したがって、退所直後は児童相談所と綿密な連携をとりながら、頻繁に家庭訪問等で観察を続けるべきです。


措置解除後の援助をどう行うかについては以下のようにまとめられます。
  • 措置解除後の援助体制:
    措置解除後の援助に当っては、虐待行為の再発の可能性を十分考慮した取り組みが必要である。そのため、措置解除と同時に児童福祉司指導に切り替え、継続的な援助を行う。
    同時に、家族や子どもに日常的に接触し、様々な援助を行いながら、緊急の場合は児童相談所や福祉事務所に速やかに通告する役割(モニター)を持った人や機関によるネットワークを整備する。
    例えば、子どもが通う幼稚園・小学校・中学校等の学校や保育所にはこの役割を依頼しやすいし、地域では民生・児童委員(主任児童委員)に依頼することもできる。また、近くに住む親族や自治会役員などもあり得る。ただ、虐待という事実や家族関係等、かなりプライバシーに関わることであり、人選には慎重さが必要である。
  • 子どもの通所:
    家からの距離にもよるが、小学校4年生程度になると子どもは一人で児童相談所や以前入所していた施設に通うことが出来る。来所した子どもから家庭の状況を聞き、危険度を判断することも大切だが、それ以上に子どもが楽しく遊べることが大切である。
    なぜなら、虐待をする保護者は、子どもを自分の支配下に置き、自分と異なる感情や価値観を持つことを許さず、ロボットのようにコントロールしようとする。子どもの通所は、「家族の価値観」というマインドコントロールから子どもを解放し、世の中の常識的な価値観や自分自身の感覚を確認する大切な作業である。
    その結果子どもは、保護者の虐待行為を客観的に見つめ直したり、家族のシステムを意識化することで、自らの生き方を主体的に模索することが可能となってくる。何より精神的なバランスの回復を図り、自信をよみがえらせる。
  • 家族の援助:
    子ども虐待は家族システムの問題であるため、家族全体を視野においた援助が常に必要である。
    子どもが施設から家庭に復帰する場合、子どもは施設内で様々な経験をしたり、年齢的にも成長しているが、家族は以前のシステムのまま変わっていないこともある。そのため、帰ってきた家に子どもの居場所がなかったり、数日で以前と同じ親子関係の葛藤が再現する場合もある。
    家庭復帰に先立って面会や試験外泊を繰り返すなど慎重な対応を行うことは言うまでもないが、家庭引取り後も家族全員に定期的に児童相談所に来てもらい、引取り後の様子や対立点を家族療法的に調整していくことが大切である。
そして、これらの対応を採るためには、要保護児童対策地域協議会を活用することも有効と考えられます。
このため、協議会との連携を確保しつつ、施設を退所した子どもが新しい生活環境の下で安定した生活を継続できるように必要な支援を行うことが適当です

要保護児童対策地域協議会は、虐待が疑われている段階から開かれるのが一般的ですが、このように措置解除後にも継続して開催され、その事例に対する支援を続けていくことになります
たいていの場合、他の事例の要保護児童対策地域協議会の中で「この前の事例はどうなってる?」と共有することも多いですね(もちろん守秘義務については留意しつつ)。

こちらには「当該家庭の経過が良好であれば、児童福祉司指導措置等を解除し、その後の対応を市町村に引き継ぐこととする」とありますが、この文章内の「市町村」とは要保護児童対策地域協議会のことを指しています

以上より、選択肢⑤が不適切と言え、こちらを選択することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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