公認心理師 2018追加-56

2019年03月15日金曜日

動機づけ理論について、適切なものを2つ選ぶ問題です。

この問題の難しいところは、理論名を出さずに、とある理論の考え方を示して正誤の判断をさせているところです。
解く側は、なんという理論であるかアタリをつけながら解いていくことを求められます。
ある程度の理論およびその内容の把握が必要となる問題ですね。

大体はわかるのですが、選択肢④だけ理論のアタリがつけられず、もしかしたら別の概念を使って解説することになっているかもしれません。
もしもわかる方がおられたら、コメント頂けると幸いです。



解答のポイント


動機づけに関するいくつかの理論を把握していること。



選択肢の解説


『①自己実現欲求は欠乏動機である』

自己実現とは、もともとGoldsteinが導入した概念であり、その人の持っている潜在的な可能性を現実化することを指します。
その後、Maslowが自身の理論に転用しました。

マズローは欲求階層説を唱えました。
欲求は階層化されており、低次欲求が(一部であっても)満たされると、より高次の欲求が生じるとされています。
以下のような階層になっています。
  1. 生理的欲求
  2. 安全・安定の欲求
  3. 愛情・所属の欲求
  4. 承認・自尊の欲求
  5. 自己実現の欲求
1~4の欲求を欠乏欲求とし、満たされる度合いが少ないほど強くなり、満たされることによって欲求が減じるとされています。
5の自己実現の欲求は成長欲求という高次の欲求とされ、より個人的で、欲求の強さも個人差があります
自己実現欲求は欠乏欲求が満たされると出てきますが、そうでないと背後に潜んでいることから、メタ欲求とも言われます。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②動機づけ要因は、満たされていれば満足につながる』

こちらはHerzbergの「動機づけ-衛生要因理論」について述べたものと思われます。
2要因理論とも呼ばれています。
以下の図をまずは参照してください。


この図の達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長などが「動機づけ要因」と呼ばれ、会社の方針と管理、上司の存在、上司の関係、労働条件、給与などが「衛生要因」と呼ばれます。

動機づけ要因とは、動機づけの満足感をもたらす要因とされています。
一方で、それだけで満足感が満たされると考えないのがこの理論の重要なポイントです

続く衛生要因とは「それがあっても満足感が高まることはないが、無いと不満足感が高まってしまう」要因を指します
すなわち、動機づけ要因とともに衛生要因が満たされていないと満足感が充足されないということです
例えば動機づけ要因が満たされていても、衛生要因が十分でなければ不満足を招くことになります。

「給料もっともらわないとやる気でないよ」という人がいますが、お金をもらってもやる気が出るわけではなく、下がらないだけです。
そういった点を明確に示した理論と言えます。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



『③有能さや自己決定の感覚が強められると、動機づけは高まる』

こちらはDeciの提唱した、内発的動機づけの本質を有能さと自己決定の感覚であるとする考えのことを指しています

「有能さ」とは、自己の環境を効果的に処理することのできる能力や力量を意味します。
「自己決定の感覚」とは、自らが行動の主体となり、自由意思で自らの行為を選択できる感覚を指します。
つまり、自らの能力や力量によって環境をコントロールできると感じられたときに(有能さと自己決定の感覚が満たされていれば)、人は納得して活動に取り組むことができる(行動への動機づけが高まる)と考えます

外部からの報酬がなくても、有能さと自己決定感があれば、行動への動機づけが高まることを示しました。
また、逆に外的な報酬への依存は、内発的動機づけを損なうとされています。

以上より、選択肢③は適切と判断できます。



『④金銭などの外的報酬は、その水準が変わらなければ、動機づけを維持する効果は時間とともに弱まる』

たとえば強い生理学的な動機づけを引き起こす嗜癖薬物では、繰り返し服用することで、その薬によって活性化される快感系は、通常の均衡のとれた状態に戻そうとする力に対する抵抗が強くなります。
この一部は耐性によるものであり、同じ陶酔感を得るにはより多くの薬を必要とすることを意味しています。

これは何も依存症関連の問題でのみ生じることではありません。
外的報酬でも同様で、昇給によって動機づけが上がることはあり得るでしょうが、その後努力を重ねても給料は上がらずそのまま据え置きだったら、仕事へのモチベーションは低下してしまう可能性が高いです
この不満を解消するには、さらに給料を上げて新しい刺激を与え続けねばならなくなります

この現象は「馴化」と呼ばれており、ある刺激がくり返し提示されることによって、その刺激に対する反応が徐々に見られなくなっていく現象(馴れ、慣れ)を指します
これを避けるためには、別の刺激を与えるか、更なる刺激、すなわち外的報酬を与え続けることが必要になってきます(脱馴化)。

以上より、選択肢④は適切と判断できます。



『⑤内発的動機づけが働いている行動に、賞罰などの外的報酬を加えることで、動機づけは更に高められる』

こちらは選択肢③のデシの理論と関連します。
デシは、外部からの報酬がなくても、有能さと自己決定感があれば、行動への動機づけが高まることを示しました。
また、逆に外的な報酬への依存は、内発的動機づけを損なうとされています

またLepperらは保育園児に対する実験で同様の結果を示しています。
絵を描くのが好きな園児に対して、報酬を与える予告をして与える群、予告せずに与える群、無報酬群に分けた結果、報酬を与える予告をして与える群の動機づけが有意に下がりました
すなわち、報酬が問題なのではなく、「期待させられた報酬」が問題であることが明らかになりました
よって、目の前にニンジンをぶら下げることで(不登校の子に「学校に行ったらゲームを買ってあげるよ」など)、やる気がなくなるということですね

彼らの理論は、アンダーマイニング効果を説明するものとされています
アンダーマイニング効果は過剰正当化効果とも呼びます。

アンダーマイニング効果では、その人の意思で始めたこと(内発的動機づけによる行動)に安易な外的報酬を与えると、意欲の火が消えてしまうとされています
その人の行為が善意で内的なものなら、外的報酬よりも労いやその行為への理解を周囲が示すほうが望ましいわけです。
自発的にやっていることに対して報いたいのであれば、真っ直ぐな感謝や労いの表現が大切ということですね。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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