公認心理師 2018追加-41

2019年03月17日日曜日

精神障害に対するスティグマ(差別、偏見)について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

WHOのファクトシート(疾病や健康課題に関する一般市民向けの基本情報)では以下が挙げられています。

  1. 世界の児童・青年のうち、約20%が精神障害・問題を抱えている。
  2. 精神障害・物質乱用は、世界の障害者の多数を占める。
  3. 世界では、毎年約80万人が自殺で亡くなる。
  4. 戦争と災害は、精神保健と精神的健康に大きな影響を与える。
  5. 精神障害は、他の傷病(意図的な外傷、意図しない外傷など)と同じ、大きな疾病上昇リスクファクターである。
  6. 患者や患者家族へのスティグマ・差別は、人々を精神障害の治療から遠ざける。
  7. 多くの国々では、精神障害・社会的行動障害をもつ人々への人権侵害が繰り返し行われている。
  8. 精神保健従事者の人的資源は、世界的に大きな偏りがある。
  9. 精神保健サービスの普及を妨げる障壁は主に5つあり、公衆衛生政策の欠如と財源不足、現状の精神保健サービス団体、プライマリケアとの連携欠如、従事者人材の不足、公衆精神衛生におけるリーダーシップ欠如である。
  10. サービス向上のために割かれる財源は、現状では相対的に控えめである。
精神障害発症から初回受診までの期間のことを「精神病未治療期間:Duration of untreated psychosis(DUP)」と言いますが、これが長いほど障害が長期化するとされています。

複数の国でDUPを3か月未満とすることを目標としているが、多くの国々では非常にDUPが長い現状であり、ある研究では平均10年以上と言われています。
とりわけ若年者については、多くのOECD諸国では未治療率が最も高く、かつ治療されるまでの待ち時間も最長でした。
たとえば、豪州においてはDUPは平均8.7週間、米国においては1-3年、日本の統合失調症患者においては平均34.6ヶ月と報告されています。

この発症から治療までの期間の長さに影響を与えている要因の一つがスティグマの問題です。
スティグマは、もともとはギリシアで奴隷・犯罪人・謀反人であることを示す焼き印・肉体上の「しるし」のことで、汚れた者・忌むべき者というマイナスイメージが肉体上に烙印されたものを指していました。
現在では、他者や社会集団によって個人に押し付けられた負の表象・烙印・レッテルを差
し、それによって、当事者・家族・社会の⾏動が変容してしまうことを指しています。
スティグマの現在の用法は、ゴフマンが示した「スティグマの社会学」に沿ったものになっています。

近年、世界保健機関及び世界精神医学会は世界的に反スティグマ活動を進めています。
日本においても2002年に厚生労働省が「こころのバリアフリー宣言」を示していますね。



解答のポイント


スティグマに関する概論を理解していること。
スティグマの測定法について把握していること。



選択肢の解説


『①セルフスティグマを軽減する方法はない』

スティグマは、Public stigma(社会的スティグマ)とSelf stigma(自己(セルフ)スティグマ)に分類できます。
このうちセルフスティグマとは、精神疾患を持つ人が、他の人から差別・偏⾒を受けていると感じたり経験したりすることで、差別を受ける予測が立ち、それが内在化されてしまったものを指します(差別体験→病気だから周りから避けられる、と思う→外出しない)。
差別されるのではないかという不安や恐れとしてスティグマは内面化され、セルフスティグマになっていくというわけですね

セルフスティグマは、自尊感情、治療道守、回復、QOLなどに影響を及ぼしていると指摘されています。
こうしたセルフスティグマを軽減していくことが、本人の心理的健康や社会参加にとって重要になります。

スティグマを軽減していこうとする活動をアンチスティグマ活動と言いますが、その中でも特に、当事者自身やその家族が体験を語ることは周囲のスティグマやセルフスティグマ解消に効果があることが明らかにされています
べてるの家の活動などはまさにそれですね。

こうした語りの中で、例えば「精神障害を個性として理解し、受容している家族の存在」「精神科の病も他科の病気と同じであるという認識」「精神障害と知った上で働く場が見つかったという経験」などがセルフスティグマが低い人の特徴として示されるなど、さまざまなセルフスティグマ軽減に向けての情報が明らかになっています。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。



『②社会的スティグマは認知的側面と感情的側面の2つから構成される』

精神障害を持つ人々を地域で支えていく上での大きな阻害要因として、地域住民の精神疾患・障害へのスティグマ(社会的スティグマ)による当事者の社会参加の制約があります。
この「社会的スティグマ」は、社会参加を困難にするばかりでなく、当事者及び当事者家族に「セルフスティグマ」を生じさせ、発病後あるいは再発後の精神科受診を遅らせ症状を悪化させる原因になります
従って、社会的スティグマ及びセルフスティグマの両者を低減することができれば、受診行動なども容易になり、その結果医療による治療効果もさらにあがることが期待できます。

精神障害者のスティグマに関するCorrigan&Shapiro (2010) のモデルでは、精神疾患全
般に対するスティグマを、認知・感情・行動の3要因に分類しています
精神障害者に対して、「精神障害者は何をするかわからない」といった「危険」を認知すると、「恐怖」の感情が喚起され、精神障害者を「回避」するといった社会的距離が遠くなるような行動が生起しやすくなることを説明しています

このように社会的スティグマは「認知的側面」「感情的側面」「行動的側面」によって構成されていると考えられています。
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



『③社会的スティグマの強さと当事者の自尊感情との間には正の相関がある』

こちらは平易に言い換えれば感覚的に誤りだと判断できると思います。
すなわち「社会的スティグマが高まるほどに、スティグマが向けられている精神病者の自尊感情は高くなる」ということですが、実際の現実感覚とは真逆の内容と言えますね

まずセルフスティグマとの関連については多くの資料があります。
例えば、Link(1987)の研究では、セルフスティグマが強いほどに自尊感情が低下する、すなわち負の相関の関係にあることが示されております。

そもそも精神障害者のセルフスティグマは、固定観念の認識・固定観念の同意・固定観念の自己一致で構成されており、これらの因子は差別体験や社会的スティグマおよび基本的属性によって影響を受けるとされています
選択肢①の解説でも述べたように、社会的スティグマを内在化していきセルフスティグマになっていくというわけですから、社会的スティグマが強いと当然セルフスティグマが生じやすくなり、そこから自尊感情への影響が生じると考えることができます

今回、社会的スティグマと自尊感情との関連については見つけきれていませんが、セルフスティグマへの影響を考えると、社会的スティグマも自尊感情と負の相関があると見るのが合理的です。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。



『④対象への反応時間を測定することにより潜在的なスティグマが評価できる』

潜在尺度は、文字や画像といった刺激に対する回答者の反応時間といった、無意識的・潜在的なプロセスで表出された反応を態度の指標として用いることで、「態度を内省する」「どう回答するか検討する」といった意識的なプロセスの影響を受けづらい形で態度の測定を行うことができます

似たニュアンスのものとして、乳児期の発達に関する心理学的研究手法があります。
公認心理師2018-43などがありましたね。
好選注視法では、注視する時間などをもとに乳児の識別能力を測定しています。

「潜在連合テスト (Implicit Association Test;IAT)」では、コンピュータ上に表れる単語 (刺激語) が指定された 2 つのカテゴリー対 (例えば「虫−不快」「花−快」) のどちらに当てはまるかを判断させる課題を実施し、その際の反応時間を用いて、特定の対象に抱かれる態度の強さ (例えば「虫」という対象に「不快」という否定的な態度がどの程度強く関連付けられているか) を検討する手続きを用いています。

IAT は、反応する時間を測定し、その時間が短いほど概念間の連合が強いと判断します。
詳しいやり方などはこちらをご参照ください。
反応時間指標は、信頼性が高く妥当性の検証が広く行われており、スティグマやステレオタイプといった社会的にセンシティブな態度の測定として予測力が高いことも示されています

以上より、選択肢④が正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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