公認心理師 2018追加-74

2019年02月28日木曜日

36歳の女性A、事務職の事例です。

事例の内容は以下の通りです。
  • がん検診で乳がんが見つかった。
  • 通院のため、上司に事情を説明すると「がんの治療のことを考えたら、退職せざるを得ないね」と言われ、ショックを受けた。
  • 社内相談室の公認心理師に相談に来て、「もう立ち直れない。何も考えられない。退職するしかない」と訴えた。
Aへの公認心理師の対応として、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

今や日本人の2人に1人はがんになる時代です。
がん就労者は、経済的な不安、職場に病名・病状をどこまで伝えたらよいか、健康上の不安などを抱えています。
こうしたことを念頭に置きつつ、社内の活用できる資源を把握し、支援の方針を考えていくことが大切です。



解答のポイント


仕事を継続しながらの治療、休職、復職といった産業領域における身体疾患の対応について理解していること。



選択肢の解説


『①Aの心理的な状態を把握し、産業保健スタッフと連携する』

まずは、この事例の状態をどのように見立てるか、です。
一見すると、上司の言葉によって「治療と仕事の両立ができない」ということにショックを受けているようにも見えます。
もちろん、それもあるとは思いますが事例Aの思いを細やかに考えてみると、その表向きのショックの中には「がんと宣告されたこと」による精神的揺らぎが含まれていると捉えることもできると思います

上記以外にも、支援策の検討には本人の意向の聴取、上司・人事労務・産業医間での検討などが重要になってきます
これらの状態を細やかに把握し、それをもって産業保健スタッフとの連携を通して支援策の決定を行うことになります

ちなみに産業保健スタッフは、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、働く人々及び管理監督者に対する支援を行うとともに、具体的な職場のメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、個人の健康情報の取り扱い、事業場外資源とのネットワーク形成やその窓口等、中心的な役割を担います。

以上より、選択肢①は適切と判断できます。



『②休職して治療に専念し、完治したら職場復帰の手続をとるように助言する』

一般にがん就労者への支援については、A本人の状態の把握が重要になります。
その中で、以下のような事柄について本人の意向の確認や見立てを行います。
  • 仕事(いつまで続けるか、休職するか、復職)に対する気持ち。
  • がん、手術、抗がん剤などによる障害。
  • 倦怠感、集中力の低下、疲労感。
  • メンタル不調の合併の有無。
上記のうち、事例Aの思いとしては仕事を続けながら治療を行いたいという意向があることが読み取れますね。

こうした意向が明確にあるにも関わらず、選択肢にあるような「休職して治療に専念し」と確定した物言いは不適切だと思われます
もちろん、本人の意向に沿わねばならないということではありません。
本人の業務遂行能力の低下等も予測されるので、その辺の見極めてお互いの意向をすり合わせていくことが大切になります

ただやはり即座に休職というのは、本人の経済的不安等も踏まえると性急すぎる印象が強いです
それも病状によってではありますが。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



『③Aの要望に応じて、産業医から上司にAの病状や必要な配慮について説明できることを伝える』

先述したとおり、Aの病状等によっては即座に休職という措置を採らなくてよい場合も十分にあり得ます。
しかし、現状で上司が知っているのは「Aから報告された情報」のみになっています。

上司の「がんの治療のことを考えたら、退職せざるを得ないね」という言葉はAを気遣ってのものと取ることもできますが、病状についてどの程度正確な把握をしているかは不明です。
少なくとも上司がAとのやり取りだけでAの状態を判断し、「退職せざるを得ない」と考えたことには間違いありません

こうした場合には、Aの状態やそれに合わせた職場で可能な配慮について、産業医という専門的な立場から上司に説明することは、十分あり得ることだと思えます

上司にもさまざまな不安があるでしょう。
Aの病名に関するプライバシーの問題、Aの業務遂行能力の程度、仕事をカバーすることになる同僚への対応、急変した時の対応、死亡した場合の同僚の精神的ダメージ等々です。
こうした点についても、専門的立場から話し合うことは、上司にとっても助けになるはずです

ただし、選択肢の先頭に書いてある通り「Aの要望に応じて」ということが前提です。
がんに限らず、病気であるということはその人の最大のプライバシーです
Aの病状について上司も詳しくわかっていない可能性がありますが、病気についてどこまで表現できるかはかなり個人差や関係性によって変わってくると思われます。
こういった点にも留意しつつ、Aの意向を確認しながら進めていくことが重要です。

以上より、選択肢③は適切と判断できます。



『④社内の産業保健スタッフと医療機関とが連携し、仕事を継続しながら治療を受ける方法があることを説明する』

こちらは視野狭窄に陥っているAに対して、現実的・具体的に可能な対応を説明するという関わりになります
Aの病状は不明ですから、すぐに休職せねばならない状態である可能性もあります。
しかし、Aに仕事を続けながら治療を行うという考えがあったことからも、即休職という可能性は低いのではないかと思われます

上司への病状の伝え方のためか「退職せざるを得ない」と判断されてしまい、大きなショックを受けて「辞めるしかない」と非常に狭い思考に囚われていることがわかります。
この状態ではA本人から正確な情報を得ることが難しい場合も考えられるので、Aの許可を得たうえで主治医などから情報収集することはAの健康状態を把握するためにも重要なことです

主治医からは「病名の告知状況」「今後の治療計画(入院機関や補助療法等)」「予後の告知状況」などの情報を共有することになります。
その結果、仕事を継続しながら治療を受けることが可能であると判断されれば、その旨をA本人に説明し、然るべき対応を協議していくことになります
この際、上司にも正確な情報を共有することになるのだろうと思います。

以上より、選択肢④は適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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