公認心理師 2018追加-70

2019年02月15日金曜日

15歳の女子A、中学3年生の事例です。

詳細は以下の通りです。
  • 8歳で発達障害と診断されたが、Aの保護者はその診断を受け入れられず、その後Aを通院させていなかった。
  • Aはクラスメイトとのトラブルが続き、半年前から学校への行きしぶりが続いている。
  • Aの保護者は、学校のAに対する対応に不満を持ち、担任教師Bに協力的な姿勢ではなかった。
  • Bの依頼を受けた公認心理師であるスクールカウンセラーが介入することになった。
A、Aの保護者及びBに対する支援として、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

この事例の課題は、Aの保護者が発達障害であることを受け入れていないこと、Aのトラブルは学校側が発達的な視点を取り入れていない可能性があること、その結果としてAの保護者と学校がうまくいっていないこと、などが挙げられます。

発達障害であることは受け入れないけど、学校が発達障害を前提としない対応をすると不満を示す、という事例はときどき見受けられますね。
学校としてもサポーティブな体制を取りたくならない状況と言えますが、その辺をSCとしてうまく立ち回ることが大切になります。



解答のポイント


障害受容ができていない保護者への心理支援について、実践的な見地から対応を考えることができる。



選択肢の解説


『①Aに適した指導案をBに指示する』

この対応はいくつかの視点で誤りです。
まず「指導案」の作成は、あくまでも教師の役割であり、SCは意見を求められれば発達的・心理的見地からの助言を行うという立場です。
こうしたSCの役割を超える行いに関する設問・選択肢が公認心理師試験では散見できます。
こういった「分際」「境界」「権限の範囲」についての意識の高低はSCとして(他の職種でも、でしょうが)働いていくために非常に大切なことです。

更に、この対応では、Aの保護者に対する支援が抜け落ちております
本事例の課題として、保護者が学校に対して不信感を持っているということが挙げられます。
保護者と学校との関係に何らかのアプローチを行うことが求められますね

Aに対する指導案の内容が、発達障害対応に寄せている場合もあり得るでしょう。
しかし、その場合は「保護者が発達障害であることを受け入れていない」ということが課題としてあがってきます。
必要だと思う対応であっても、保護者の了解が得られなければ実行は難しいですし、実行できたとしても効果は薄いものです。

中学生くらいだと、個人の発達度合いにも関連しますが、保護者の了解・協力が得られないような支援は予測されるよりもずいぶん効果が低くなりがちです。

以上より、選択肢①が不適切な対応と言えるので、こちらを選択することが求められます。



『②学校に対するAの保護者の気持ちを受け止める』

こちらはあり得る対応の一つです。
学校への不信感について、きちんと話し合えることが重要です。
「文句も言えない関係は冷たすぎる」と思っておくと良いでしょう
(逆に「先生は優しいですね」と言われる場合は「やりすぎ」なことが多いですね)

保護者の不信感は、さまざまな内容が予想されます。
Aの負担になるようなことをさせないでほしい、どうしてトラブルでAばかりが怒られるのか、学校がトラブルからAを守ってくれない、などなどです。
事例からは、こうした学校でのトラブルはAの発達障害に大きな要因があるという見立てが成り立ちます

すなわち、学校への不満を共有することは、その背景にあるAの発達障害について話題にすることにつながるのです。
学校への不信感を語る中で、「どうしてAにばかりこんなことが起こるのか」「どういった対応ならAは落ち着いて学校生活を送れるのか」「Aが落ち着いて学校生活を送れるような環境調整は、発達障害支援を参考にすると構築しやすいようだ」「だからと言って、Aが発達障害であるという断定を我々はする立場ではないのですが」といったことが生じてくる可能性があるでしょう。

こういった話し合いの基盤となるのは、保護者とSCとの安定的な関係性です。
そのためにも、学校に対する不信感を当たり前のようにやり取りできる関係が大切です。

以上より、選択肢②は適切だと判断できるので、除外することが求められます。

余談ですが、チーム学校の中でSCの常勤化があがっています。
いわゆる「外部性」によって、上記のような学校への不信感を共有しやすい関係が構築できるから、常勤化はいかがなものかという意見もあるでしょう
しかし、真の「外部性」とは「専門性」によって生じるものです。

すなわち、教職員の方から「私たちとは異なった視点を持つ専門家である」と見做されており、同時にその力を互いに認め合っているという状況によって「専門性を基盤とした外部性」が生まれてくるのだと思います。
ですから、教職員から「私たちから見たらサボりにしか見えないけど、心理の先生から見たら違うことが言えるかもしれないから、一度見て頂けませんか?」と言われるようなSCになっていくことが今後は特に求められます。



『③学校全体で対応する視点を持つようにBに助言する』

Aに発達障害があり、それによって対人関係上のトラブルが生じています。
特にクラスメイトとの関係でトラブルは生じやすくなっており、担任はその間に入って状況を納める役割が求められます。
その際、どうしてもAの問題にも言及せざるを得ず、そのことによって保護者との軋轢が生まれてしまう可能性もあるでしょう。

すなわち保護者の担任Bへの不信感は、B個人に対するものではなく、担任という役割によって生じている可能性が高いと言えます。
こうした状況を鑑みると、Bのみで対応していると保護者の不信感が募る恐れがあるので、担任以外の役割が介入することの有用性は高いと言えます。

養護教諭、学年主任、校長や教頭といった管理職だけでなく、かつてAを担任していた教師など、Aやその保護者と担任とは異なった関係性を築くことがしやすいメンバーで問題を共有し、個々の役割に沿った対応を考えていくことが重要です
もちろん、SCがその中で具体的な支援について助言することも大切になってきます。

更に、Aが発達障害であるにも関わらず保護者がそれを認めていない状況であれば、A自身が自分の発達的特徴を認めていない可能性も高いと言えます。
その際、過度に他罰的な構えになることも予見されるので、学校全体できちんと情報共有を行い事実関係を確認しておくことで、A本人や保護者への説明等がしやすくなります
こちらはAや保護者への支援と、学校の危機管理の両面から見て必要なことだと思います。

以上より、選択肢③は適切だと判断できるので、除外することが求められます。



『④Aの保護者とBに一般的な発達障害の特性について説明する』

Aのトラブルについては、おそらく発達障害由来のものも多いのでしょう。
発達障害の特性を理解してもらうことで、そういった事態の説明がしやすくなると思われます。
担任Bに対しては、それを行うことで教室での指導に役立ててもらえれば良いという考えがあると思われます

一方で、Aの保護者に対しては「説明することで、障害受容がしやすくなるか否か」という点での見立てが必要になります。
一般的な特性を説明し、それがAの状態像と合致するために、多少なりとも受け入れていく…というのはやや楽観的に過ぎる気はしますが、こうしたトラブルが続いて保護者の困り感が高まっている状態は、そういった言説が受け入れられやすい状態とも言えます。
そういう意味で、本選択肢の対応はあり得るものの一つと言えるでしょう。

以上より、選択肢④は適切だと判断できるので、除外することが求められます。

学校で保護者に対して行う障害受容を念頭に置いた支援については、あまり定式的なものが無いように見受けられます。
ただ、学校で多いトラブルとして、発達障害ではないかという見解を粗雑な形で伝えたために生じていることも多いように思います。

私個人としては、以下のような対応を取ることが多いです。
  1. 発達障害由来の問題については「なぜこのようなことが生じるのか」についての保護者の考えを聞く。
  2. その考えに沿って、学校内で可能な支援を保護者とSCの両者で考えていく。
  3. 発達障害であることを念頭に置いてない対応だと必ず綻びが出てくる。その際の困り感を両者の間で共有する。
  4. こうした困り感の共有の背景には、「どうしてこの子にこういうことが起こるのか」という疑問があることが重要であり、その疑問が膨らむよう関わっていく。
  5. そうする中で、時折保護者の方から発達障害である可能性を話題にしてきたり、SCからの発達障害という概念の提示が「疑問を氷解する概念」として支援的に作用するようになる。
ざっと書くとこんな感じでしょうか。
大切なのは、発達障害という言葉が「傷つき」になるのではなく、「理解」の言葉として伝わるような状況を演出することです
「発達障害支援はできる限り早い方が良い」というのは真実でありますが、障害受容という人のこころの営みは論理で縛ることはできないものです
そのことを失念した対応が、SCが招くトラブルのもとになっているような気がします。



『⑤Aの保護者にAの医療機関への受診を検討するように勧める』

発達障害を背景としたトラブルが頻発していたこと、それによって登校しぶりが出てきていることなど、Aの状態が懸念される状況です。
また、対人関係が薄くなるにつれ、発達障害的な要素は色濃くなっていく傾向があります

これは状況が発達障害を作るという意味ではなく、誰でも元々持っている特徴が強化されてしまうということを意味しています。
例えば、聴覚過敏の特徴がある人は孤立感が高まってくると更に過敏性が高まります。
対人関係に難のあるAにおいては、対人関係に過度に恐れを抱く可能性もあるので、その辺の支援が大切になってきます

医療機関の受診は、何も発達障害に関することに限定しなくても、上記のような孤立感やそれに伴う不安感の軽減のためにという論理で勧めることも可能です
そもそも発達障害であることを受け入れていない保護者に対して、発達障害を理由に受診せよというのは少々無理くり感が拭えません。

一方で、選択肢④でも記載しましたが、Aおよび保護者の困り感が高まっている状態だと発達障害という概念にも理解を示す可能性はあります
そのように見立てられる場合には、以前発達障害と診断された病院を中心に受診先を話し合い、学校とSC合作の情報提供書(管理職のチェック済み)を携えて受診してもらうなどの対応を取ることが多いと思います。

以上より、選択肢⑤は適切だと判断できるので、除外することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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