公認心理師 2018追加-64

2019年02月01日金曜日

3歳の女児Aの事例です。

事例の詳細は以下の通りです。
  • ネグレクトで児童相談所に保護された。
  • 非嫡出子として出生した。
  • 母親はAの情緒的要求に応じることが乏しく、Aを家に放置することが多かったため、一時保護に至った。
  • 保護をして1か月が過ぎたが、Aは職員とコミュニケーションは取れるものの、怪我をするなど困ったときには助けを求めることがない。
  • 就寝時に絵本を読みきかせたところ、Aは興味を示し、楽しい場面に笑顔を見せた。
Aに考えられる障害として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

上記の情報量では、何かしらの障害であると明確に判断することはできません。
求められるのは、限られた情報の中でどの障害が一番あり得るのかという「アタリ」をつけられることです。



解答のポイント


生育歴やわずかな現在の状況から、可能性の高い障害のアタリをつけることができる。
各選択肢に記載されている障害の診断基準を把握していること。



選択肢の解説


『①広汎性発達障害』

すでに述べたとおり、この問題は診断基準に合致させることはできませんが、それでもチェックしておくことは重要です。
PDDという表現はICD-10ですね。
F84.0 自閉症
F84.1 非定型自閉症
F84.2 レット症候群
F84.3 その他の小児<児童>期崩壊性障害
F84.4 知的障害〈精神遅滞〉と常同運動に関連した過動性障害
F84.5 アスペルガー症候群
F84.8 その他の広汎性発達障害
F84.9 広汎性発達障害、詳細不明

細かい診断基準は載せませんが、事例の内容には上記の基準に該当する障害はありません

コミュニケーションの問題も自閉症圏の子どもが示すものと捉えることは難しいです。
また生育状況の内容を踏まえても、最初にPDDを疑うことはしないだろうと思います。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②反応性愛着障害』

ICD-10によると「中核的な特徴は、5歳以前に形成された養育者との異常な関係パターンであり、正常な子どもにはふつうではみられない不適応の特徴をもち、持続的であるが、育て方が十分にはっきりと変化すればそれに反応する」とされています。

Aの置かれた状況で危険因子なのが以下の通りです。
  • 非嫡出子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子ども)であること。
  • 母親はAの情緒的要求に応じることが乏しく、Aを家に放置することが多かったこと。
  • 児童相談所が「ネグレクト」と判断したような状況があったこと。
これらに加えて、反応性愛着障害の診断基準に合致するような関わりの特徴(怪我をするなど困ったときには助けを求めることがない)が記載されています。
怪我をしても助けを求めない、というのは幼い頃からの学習性無力感があるのだろうと思います。
泣いても反応してくれないから、援助希求行動自体を出さなくなるという形ですね。

また「絵本の読み聞かせに反応していること」は、ICD-10にある「自閉症と異なり、反応性愛着障害は、環境の変化に反応を示さない持続的で重篤な認知上の欠陥を伴わない」という記載と重なります

以上より、選択肢②が適切と判断することができます。



『③重度精神遅滞[知的障害]』

重度精神遅滞は、IQが20~34の範囲内とされています。
  • 生涯を通じて、食事、身支度、入浴および排泄など広範囲におよぶ支援を必要とする
  • ほとんどの人に顕著な運動障害や、中枢神経系の障害を併発する。そのため、身体的な発達が十分に達成できない例が多く見られる。
  • 発語は最小限で、自分の要求をはっきり伝えられないため、体を使ったコミュニケーションが強化される。
などの特徴が基準としては挙げられます。
これらの特徴に合致するような記述は事例内に見られません

かろうじて「自分の要求をはっきり伝えられない」という点が重なるかなと思いますが、生育歴を踏まえれば除外するのが自然だと思います。
以上より、選択肢③は不適切と判断できます。



『④分離不安症/分離不安障害』

分離不安は「愛着の対象(通常両親あるいは他の家族成員)から別れることを中心とした過度の不安」とされています。

事例で示されている養育環境では、分離不安が生じる以前の問題ですね。
実際に分離不安を示す子どもたちに見られるのは「親が目の前からいなくなったら存在しなくなるような不安」の存在です。
ある程度こころの中の安定した像はあるけど、それが揺さぶられているという感じです。

事例の状況では、「ある程度こころの中の安定した像」を形成することも困難だったと思われます
親がある程度でも安定した状態でいるからこそ「分離が怖い」という状態が起こり得るわけですが、本事例ではそれ以前の状態であると考えられます。

分離不安と関連するキーワードは、安全基地、対象恒常性、移行対象などでしょうか。
細やかに聴取してみると、親が軽い交通事故に遭ってしばらくしてから分離不安が示される、ということも多いです(親は関連に気づいていないので、報告されないことも多い)。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。



『⑤注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉』

まず事例内容と診断基準に重なる部分は見られません。
まさか「怪我をするなど困ったときには助けを求めることがない」を不注意と混同することはないでしょうし、「就寝時に絵本を読みきかせたところ、Aは興味を示し」を注意を集中させたら反応したと読むこともないでしょう。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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