公認心理師 2018追加-42

2019年02月24日日曜日

要支援者等の個人情報とプライバシーの保護について、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

公認心理師2018-47などが類似問題ですね。
基本は公認心理師法第41条になりますが、それ以外にも「個人情報保護法」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」などもきちんと押さえておくことが大切です。



解答のポイント


個人情報保護法について把握していること。
守秘義務を超えた対応を取る状況を把握していること。
クライエントの秘密を巡るやり取り自体が心理療法であることを自覚しておくこと。



選択肢の解説


『①心理的支援にあたって収集する情報は、すべて要配慮個人情報に該当する』

まずは「要配慮個人情報」という用語の理解が大切です。
こちらは個人情報保護法第2条第3項に規定されており、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」を指します。

また上記の規定内にある「政令で定める記述」については、施行令第2条により、次の事項のいずれかを内容とする記述等が「要配慮個人情報」にあたるとされています
  1. 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
  2. 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という)の結果
  3. 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。
  4. 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。
  5. 本人を少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第三条第一項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。
上記にあたらないものは、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」には該当しません
よって、選択肢にあるような心理的支援にあたって収集する情報すべてが該当するということにはならないと考えるのが妥当です

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②未成年者の支援事例について学会発表を行う場合、保護者の代諾を得るだけでよい』

こちらについては「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」のなかに明記されています。
「代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の手続等」という項目が設けられており、以下のように記載があります。
  • 研究対象者が中学校等の課程を修了している又は16歳以上の未成年者であり、かつ、研究を実施されることに関する十分な判断能力を有すると判断される場合であって、次に掲げる事項が研究計画書に記載され、当該研究の実施について倫理審査委員会の意見を聴いた上で研究機関の長が許可したときは、代諾者ではなく当該研究対象者からインフォームド・コンセントを受けるものとする
    ①研究の実施に侵襲を伴わない旨
    ②研究の目的及び試料・情報の取扱いを含む研究の実施についての情報を公開し、当該研究が実施又は継続されることについて、研究対象者の親権者又は未成年後見人が拒否できる機会を保障する旨
  • 研究者等又は既存試料・情報の提供を行う者が、代諾者からインフォームド・コンセントを受けた場合であって、研究対象者が中学校等の課程を修了している又は16歳以上の未成年者であり、かつ、研究を実施されることに関する十分な判断能力を有すると判断されるときには、当該研究対象者からもインフォームド・コンセントを受けなければならない
上記の通り、16歳以上であって十分な判断能力を備えていれば、保護者が代諾していたとしても、本人に説明をする必要があります。

上記の指針では「16歳以上」というのがラインとして設けられておりますが、実際はどのような年齢であれ「本人から許可を得る努力」をする必要があると思います
発表内容がどのような研究手法を用いていたとしても、支援事例の発表なわけですから、心理支援の中身を公的に発表することになります。

そういった「本人から許可を得る努力」自体が心理療法の一つであると捉え、関わっていくことが大切です。
本人から許可を得ることなく学会発表を行えば、その罪悪感が必ず支援過程を歪めることになります。
ユングが患者の大切な秘密について「カルテにも書かない」と述べたのは、そういった支援者側の感情体験が支援に影響することを知ってのことです。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



『③効果的な援助のためにプライバシー開示が必要な場合でも、要支援者に開示を強制してはならない』

公認心理師法第41条の「秘密保持義務」で「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」とされております。

本選択肢の争点は、上記の「正当な理由」に「効果的な援助」が該当するか否かです
次の選択肢④の解説でも示しますが、秘密保持義務の例外状況は生命が差し迫った場合(タラソフ判決等)や法的な定めがある場合となります。
「効果的な援助」という理由だけでは、クライエント本人の許可なく開示すること、ましてやクライエントに開示を強制することは不適切だと判断できます。

そもそも「開示を強制する」ということ自体が、どのような場合に生じるのか想像し難いです
秘密保持義務の例外状況であれば、クライエントに「開示を強制する」のではなく、守秘義務を超えてセラピストが第三者に開示するということになります。
もちろん、この際にクライエント自身が開示するということもあるでしょうが、危険な状況であるほどクライエントだけに任せてしまうのは適切とは言えないでしょう。
よって、「開示を強制する」という文言自体に瑕疵があると捉えることも可能ですね

心理療法の観点からも考えていきましょう。
いくら効果的と判断されたとしても、クライエントの許可なく開示をした時点で効果的な心理支援にならなくなると考えるのが自然です
「あなたにとって、これを開示することがベターだと思う」というセラピストの意見を伝え、それを踏まえて両者で話し合うこと自体が心理療法の過程と言えます(「ベスト」ではなく「ベター」と表現せねばならない。「ベスト」だとその道しかないみたいな印象を与えるから)
クライエントの情報の取り扱いは、それ自体が心理療法の一過程であると捉えることが適切と言えます。

以上より、選択肢③が適切と判断できます。



『④どのような場合でも、要支援者本人の同意を得ることなく第三者に個人情報を提供してはならない』

こちらの選択肢の瑕疵は「どのような場合でも」という点になります
基本的に要心理支援者の同意を得ることなく、第三者に個人情報を提供してはなりません。

これは公認心理師法第41条の「秘密保持義務」で「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」とされております。
本選択肢と関係があるのは、上記の「正当な理由がなく」の部分になりますね。

当然、個人情報を提供しないことでクライエントの福利に反すると判断される場合は、守秘義務を超えて第三者に個人情報を提供することがあり得るわけです

具体的な秘密保持義務の例外状況は以下の通りです(現任者講習会テキストより)。
  1. 明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
  2. 自殺など、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
  3. 虐待などが疑われる場合
  4. そのクライエントのケアなどに直接関わっている専門家同士で話し合う場合(相談室内のケース・カンファレンスなど)
  5. 法による定めがある場合
  6. 医療保険による支払いが行われる場合
  7. クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判などによって提起した場合
  8. クライエントによる明示的な意思表示がある場合
上記のように、生命が差し迫った場合(タラソフ判決等)や法的な定めがある場合は例外状況に該当します。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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