公認心理師 2018追加-37

2019年02月23日土曜日

認知症のケアに用いる技法として、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

こちらは有斐閣から出ている「臨床心理学 (New Liberal Arts Selection) 」に概ね記載がありました。
このシリーズはいろいろ載っているので助かります。
お値段がそれなりにするので、シリーズを集めるのは大変ですが…。



解答のポイント


認知症のケアの方法について把握していること。



選択肢の解説


『①回想法』

回想法とは、単純に言えば昔のことを思い出してもらう方法と言えます。
Butrlerによって提唱された方法です。
回想しやすいように昔の写真や音、香りを刺激として用いることがあります。

一般に、自身を安定させる、自尊感情を高めるなどの個人内効果と、対人関係を促進させるなどの社会的効果の両方が期待されます。
認知症の場合は、情動機能の回復、意欲の向上、発語回数の増加、非言語的表現の豊かさの増加、集中力の増大、問題行動の軽減、社会的交流の促進、支持的・共感的な対人関係の形成および他者への関心の増加、などが効果として挙げられています。

実施にあたっては、高齢者の人生の歴史に関心を寄せて耳を傾けること、慎み深い聞き手になること、安易な受容や共感もどきは避けること、揺らぎつつもどっしりと構えること、相手を変えようとしないこと、答えを与えようとしないこと、笑い・遊び・色の心を大切にすることなどが挙げられます。

以上より、選択肢①は認知症のケアの方法として適切と判断できます。



『②動作法』

動作法は、成瀬悟策が、脳性まひ児の動作不自由を改善する手立てとして開発しました。
動作を道具と考えており(「正確な動作」が目的ではない)、「意図-努力-身体運動」というメカニズムで、生理的プロセスとしての運動とは区別しています。

上記については公認心理師2018-128の選択肢⑤でも記載があります。
また、過去にまとめた記事もありますので、ご参照ください。

上述した通り、動作法は脳性まひの子の肢体不自由を改善するための動作訓練が発端になっています。
その後、ASDや多動の子どもを落ち着かせ、コミュニケーションを取りやすくすることがわかってきました。
その他にも、ダウン症児や筋ジストロフィーの子どもの指導に用いて有効性が実証されています。

ここ20年くらいは、高齢者認知症へのアプローチとしても広がりを見せています
例えば、こちらの書籍などですね。

いくつかの論文で、高齢者に動作法を行うことの意義が挙げられています。
    1. 自分の身体という自体認知を変容させることによって、自己認知が変容していくことができ、結果として緘黙状態にあった高齢者からことばや身体反応が見られた。
    2. 動作法が固定化されていく身体感から、動く・動かす身体感への身体の注目を再学習させ、心身の弛緩、緊張を新たにつくり、心身の活性化を導く効果的な方法と捉えることができる。
    3. 言語的なやりとりが難しい高齢者に対して、からだを通したやりとりを行うことによって受容的体験が生じたこと、また自己のからだを自分でコントロールするという能動的で自己統制的な体験が不安感を低減させた可能性がある。
    4. 能動的動作体験の重要性を踏まえた上で現在をよりよく、生き生きと感じられることを目指した「からだの感じを味わう」リラックス体験の重要性が指摘されている。
    このように、高齢者への動作法は認知症の有無に関わらず有効なアプローチとして認識されています

    ちなみに重要なのが「動作法」という表現です。
    「臨床動作法」という言葉の略語として「動作法」と呼ばれていると思われがちですが、実際は「動作訓練に用いる方法」という意味合いを指して「動作法」と呼びます
    「臨床動作法」は「動作法」を用いた支援法の総称ということになります。
    公認心理師試験では「動作法」と表記されることが多いのは、この方法論を指してますよという意味があるのだろうと推測できます。

    以上より、選択肢②は認知症のケアの方法として適切と言えます。



    『③バリデーション』
    『⑤リアリティ・オリエンテーション』

    Reality Orientation=ROは、現実検討識訓練を指し、認知機能の低下した患者が見当識などの能力を高めるために行われる方法です。

    24時間型(非定型)とクラスルーム型(定型)があります。
    24時間型は、日常生活のあらゆる機会に「いま」の状況を確認できるような情報によって意図的に患者に働きかけます。
    「いま」の状況は日常のありふれたもので確認され、時計、日付や天気などが書かれた大きな掲示板(ORボード)、食事のにおい、包丁で材料を切る音、風の冷たさなどが用いられます。

    クラスルーム型は、毎日1時間程度の集中的なセッションで24時間型の補完的役割をします。
    認知症病棟などで心理師が行う場合がありますね。
    いずれの方法においても、参加者に強制訓練のような印象を与えないことや自尊心を傷つけないように注意することが求められます。

    ROの不備を補う形で発展したのがバリデーション法です
    Feilが開発した方法で、たとえ不可解な言動であっても患者にとっては意味があり、それを汲み取るように働きかける態度を大切にしています。
    なぜ騒ぐのか、なぜ徘徊するのかを患者の歩んできた人生に照らして考えたり、共に行動したりするというもので、共感的に接することに重点を置いた方法です

    中井久夫先生の「臨床瑣談 続」に以下のような記載があります。
    「老人病院に行って重症の患者を診た時、その医師は、さしあたり、老人たちの個人史を調べて、看護師に語って聞かせたそうです。「この方は夫が戦争で亡くなった後、子どもさんを立派に育てた」とか。そうすると、そのうちに何かが変わったそうです。その人の個人史を知ることは、当然、畏敬の態度を生むでしょう。患者は、それを敏感に感受したらしいのです。こういう感受性は最後まで残るものではないかと思います

    以上より、選択肢③および選択肢⑤は認知症のケアの方法として適切と判断できます。



    『④デブリーフィング』

    公認心理師試験において「デブリーフィング」という用語は以下の2パターンで用いられています

    まずは公認心理師2018-81にも出題がありましたが、実験における倫理的配慮の方法の一つとして「デブリーフィング」があります
    研究内容によっては、実験参加者に本当の目的ではなく、別の目的を説明することがあり、これをカバーストーリーなどと呼びます。
    つまり、実験目的を最初に教えてしまうと、適切なデータが収集できない場合などですね。
    このように最初に実験の真の目的を説明しない場合は、実験が終了した時点で真の目的を参加者にきちんと説明する必要があり、この手続きを「デブリーフィング」と呼びます

    もう一つは、災害支援の中で行われる「心理的デブリーフィング」という手続きです。
    心理的デブリーフィングは、災害直後の数日から数週間後に行われる急性期介入であり、ストレス反応の悪化とPTSDを予防するための方法であると主張され、各国に広められたが、PTSDへの予防効果は現在では否定されており、かえって悪化する場合も報告されています

    災害支援における「デブリーフィング」の有害性については、以下の通り公認心理師資格試験で繰り返し出題されています。
    これらの解説の中でも、デブリーフィングの課題については述べております。

    おそらく本選択肢は後者の「心理的デブリーフィング」を指していると思われますが、上記のように認知症支援として行われているのではなく、外傷体験へのアプローチとして始まりました
    念のため、認知症支援で「デブリーフィング」があるのか調べてみましたが、見つけることができませんでした(ないのかもしれませんけど、わかりません)。

    以上より、選択肢④は認知症ケアの方法として不適切と判断できます。

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    小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
    このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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