公認心理師 2018追加-27

2019年02月28日木曜日

神経性無食欲症について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス 総合サイト」に統計的な資料は載っています。
個人的な印象ではありますが、摂食障害治療の得意・不得意は結構ハッキリ分かれるような気がしています。
中井久夫先生は「私の戦争における飢餓体験が、摂食障害の治療を難しくしている」といったことを述べておられました。

公認心理師2018-101で神経性無食欲症については出題がありますね。
しっかりと過去問を押さえておきましょう。
以前の記事でも関連があるところを述べていますし、診断基準の変更についてはこちらに記載しました。
これらも併せてご参照ください。



解答のポイント


神経性無食欲症という病理の特徴について把握していること。



選択肢の解説


『①主な死因は自殺である』

日本における調査では、初診後4~10年経過した患者を対象とした場合、47%が全快、10%が部分回復、慢性化36%、そして死亡7%とされています。
ただし、排出行為など不適切な代償行為のある患者の退院5年以上のフォローアップ調査では、死亡率が15%を超えているなど、状態像によって死亡率はかなり変わってきます。

他の報告では、不整脈による突然死をはじめとする多様な身体合併症からくるものが54%、自殺が27%、他のあるいは特定できない死因が19%とされています
いずれにしても、他の精神疾患より高い死亡率であることが示されております。

下坂幸三先生は摂食障害治療について「その死亡率の高さゆえに、実際よりも難治と認識されやすい」と述べておられ、治療の困難度は強迫性障害と同等である旨を指摘しておられます(強迫性障害もかなり幅がありますが…)。

神経性無食欲症の死因として自殺もありますが、電解質異常とそれに伴う不整脈、極度の低栄養に起因する衰弱死、感染症などの割合が高いとされています
電解質代謝異常は利尿剤の乱用が見られる症例では起こりやすく、時に低カリウム血症から致死性の不整脈をきたし急死することがあります。
自殺が死因となるのは、神経性大食症/過食症であることが多いです
排出行為などがあると、その背景に衝動性を有している場合が多く、それによって自殺企図をしやすいと考えられます

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。



『②摂食制限型は衝動性が高い』

選択肢①の解説中にも述べましたが、衝動性の高さは神経性大食症/過食症で目立ちます
また神経性無食欲症は、過去3か月に過食や排出行動がない「摂食制限型」と、それを有している「過食・排出型」に分類されます。

摂食障害では、ずっと「摂食制限型」で通す人はいても稀であり、ほとんどが「過食・排出型」の時期を有しています。
不食の場合は抑うつが前景に出ることが多いですが、大食が出てくると日内変動もあり食行動と関連して気分の上下が出てきているのがわかります

過食・排出行動の存在は不適切な代償行為と見做すことができ、重篤な事例になるとアルコール、安定剤、睡眠剤などへの強度の依存を示すようになります。
気分の著しい転変や自己破壊的行動、行動全般に衝動性が目立つようになりがちです。

過食に嘔吐など代償行為をともなった例では、ともなわない制限型に比べて自傷行為、自殺企図、アルコールや薬物乱用などの自己破壊的行為や万引き、性的逸脱などの衝動行為をともなう例が多いです
摂食障害と境界例に似た心性が指摘されていますが、こういった事情があると思われます。

これは摂食制限型が衝動性が高くないことを示してはいますが、だからと言って治療が容易というわけではありません。
摂食制限型における不食が強いほど、そのクライエントの内面の空虚感が大きい印象を受けます。
過食はその空虚感を埋めるように行われることが多いのですが、その空虚感を抱えたままでいるクライエントにどうアプローチするかということは、心理療法を行うのであれば考えておかねばならないことだと思います。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。



『③有病率の男女比は約1:2である』

男女比は1:20とされており、一般に90%以上が女性と報告があります
かつてから女性が圧倒的に多い病態であることは指摘されています。

この点に加え思春期以降に見られ始めることから、いわゆる「成熟拒否」という心性の存在が指摘されていました。
すなわち、女性としてのふくらみが出てきて女性らしい姿かたちになること、大人の女性として成熟していくことを無意識に拒否しているために、食事を摂らなくなるという考え方です。

こうした成熟を拒否する心性には、身近な成熟女性(多くは母親)のイメージに棄損があるために生じるとされ、母子の関係性に問題があるという言説が多くなり、一時期は「母原病」という表現もなされました。
しかし、彼女たちは母親そのものというよりは母親の日常生活に代表される女性のマイナスの役割に反発していることが多く、現実には全例が究極には生身の母親と父親の愛情を求めているのが見て取れました。

最近は女性の地位向上(これはこれで異論がある方もおられるでしょうが)、性を不潔視する傾向の激減等によってか、以前ほど成熟拒否を示す例は見られなくなっています。
むしろ「普通」であることへの恐怖心があるように見受けられると下坂幸三先生は指摘しておられます。

こうした特徴は「理想的な自己の追及」という心性が絡んできていると思われます。
多くの事例で「そういった姿でなければ存在できない」という、意識・無意識の恐怖を抱えているように見受けられます。
もちろん、こういった恐怖は男性にも生じ得るものでしょうが女性の方が身体的な所に出やすいようで、この点についてもいくつかの仮説が示されていますが、本選択肢の解説ではそこまでは過剰かなと思います。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。



『④体重と体型に関する自己認識の障害がある』

この点についてはDSM-5にも以下のような記載があります。
自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如
これはいわゆる「ボディイメージの認知的歪み」などとも呼ばれたりしました。

具体的なクライエントの認識としては、
  • どんなに痩せていても「太っている」と感じる。
  • 他の人を見ても太っていると思わないし、むしろ健康的で良いなと感じるけど、自分の体重が少しでも増えると恐怖でパニックになる。
  • 体重が低いほど、自己評価が保たれているように感じる。
  • 痩せていることに対しては問題を感じないけど、些細な身体的問題にはしっかりと気遣う様子がある(健康診断で痩せと関係ない指標の異常には結構敏感)。
などが見られます。

こうした点は古くから摂食障害の特徴とされています。
実際にいくつかの事例で面接をしていると、「それまでは(手がかからなかったから)相手にされなかったけど、痩せてはじめて注目してもらえた」などの表現が聞かれます。
もちろん、彼女らがわざと痩せることで注目を集めているというわけではありません。

ですが、彼女たちにとって痩せは何かしら自己存在を規定する要因として機能しており、それを手放すことはそう簡単ではないのだと思います

以上より、選択肢④は正しいと判断できます。



『⑤WHOの基準でBody Mass Index〈BMI〉17kg/㎡は、成人では最重度のやせである』

DSM-5では、重症度の特定にBMIが新たに採用されました。
期待される体重の85%以下という基準を撤廃し、以下のように重症度を分類しています。
 軽 度:BMI≧17kg/㎡
 中等度:BMI16~16.99 kg/㎡
 重 度:BMI15~15.99 kg/㎡
 最重度:BMI<15 kg/㎡
※BMI(Body Mass Index)=体重(kg)÷身長²(m)

BMIについては、WHOに基準があります。
それによると上記の中等度の範囲はWHOの「痩せ」の基準であり、それ以下になると「痩せすぎ」という枠組みに入ります(ちなみに軽度の範囲は「痩せぎみ」とされている)

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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