公認心理師 2018追加-2

2019年02月03日日曜日

精神科病院に通院中のクライエントが特定の人へ危害を加える可能性があると判断される場合、公認心理師が最初に行うべき行動として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

こういった自傷他害の可能性がある場合は、守秘義務を超えて対応することが求められます。
この公認心理師については、病院内の心理師か別機関の心理師かは明言されていませんね。
よって、いずれの場合であっても大丈夫なように考えていくことが求められます。



解答のポイント


公認心理師法第42条第2項について把握していること。
事例の状況において、社会的にどのような対応が求められるかを想定できること。



選択肢の解説


『①ただちに警察に連絡する』

診察室での予告通りに殺人が実行され、知っていたのにその警告をしなかった医師が訴えられたという出来事があります(殺された方の名前を取ってタラソフ判決などと呼ばれます)。
1976年の「タラソフ判決」で示された専門家の義務は以下の通りです。
  1. 犠牲者となり得る人に対して、その危険について警告する。
  2. 犠牲者となり得る人の家族や友人などに警告する。
  3. 警察に通告する。
  4. その他、必要と判断される方法を、どんな方法でも実行する。
こうした対応を取る必要があるとされていますが、やはり主治医への報告が第一であり、その後に上記のいずれかが判断されるという流れになります。

まずは主治医に自傷他害の可能性があることを報告し、その上で警察への連絡を検討することになります。
警察としても、加害者の診療情報、加害者家族等の連絡先、被害者となり得る人の情報、その他行動が実行されると判断されるに足る情報および行動を止めるのに必要な種々な情報を求めてくると思います。
こういった情報をきちんと伝えるためには、主治医との連携が欠かせません。

中には「自分の方が多くの情報を持っている」という公認心理師もおられるかもしれませんが、それは結果的にわかることであり、クライエントの行動を止めなければならない段階ではわからないはずです。
よって、クライエントの福利に資する対応(きちんと行動を止めること)をするためにも、主治医との連携が第一となります。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②クライエントの主治医に状況を報告する』

公認心理師法第42条第2項に「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」とあります。
本事例の状況は、この条項に該当します
上記のタラソフ判決の専門家の義務についても、主治医の義務と見ても良いかもしれませんね。

こちらについては「公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準」の中にも以下のような記載があります。
  • 当該公認心理師が要支援者に対して、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行うこと等によって、結果として要支援者の状態に効果的な改善が図られない可能性があることに鑑み、要支援者に主治の医師がある場合に、その治療方針と公認心理師の支援行為の内容との齟齬を避けるために設けられた規定である。
  • 要支援者に主治の医師がある場合には、要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等により、公認心理師が主治の医師と密接に連携しながら、主治の医師の指示を受けて支援行為を行うことで、当該要支援者の状態の更なる改善につながることが期待される。
  • 公認心理師が主治の医師の指示と異なる方針に基づき支援行為を行った場合は、当該支援行為に関する説明責任は当該公認心理師が負うものであることに留意することとする。
これらの点より、「クライエントが他者に危害を加えるかもしれない」という公認心理師の見解を主治医に伝えることが第一となります。
その結果、通報等が必要だと判断されれば主治医の判断として行うことが望ましいと言えます。

この公認心理師法第42条第2項については様々な意見があるようですね。
通常の臨床場面を想定した場合は、この条項はネガティブな部分が目立つのかもしれません。
しかし、本事例のように生死が問われる場面、最終的にクライエントやその周辺の人物の命に係わる判断を求められる場面、もしくは問題行動が実行された後の責任を問われる場面を想定した時に、医師という資格の力は大きいものだと思います。
実際に、患者が社会的問題を起こす前に通院していたという記録が残っていれば、その主治医がどのような判断をしていたのかが問われることがほとんどです。

以上より、選択肢②が適切であると判断できます。



『③クライエントに入院の可能性が高いことを説明する』

クライエントの入院の可否を決めるのは公認心理師ではありません
この場合は主治医であり、公認心理師はその判断材料である情報を共有することになります。

もちろん主治医との診察の結果、自傷他害の可能性があり、その背景には病状の悪化が関連していると思われる場合は入院の可能性もあるでしょう。
しかし、それを公認心理師は判断できる立場にないことをきちんと自覚しておきましょう

「境界線をもっておく」「分を弁える」など様々な言い方はありますが、自身と自らの職責の範囲をきちんと知っておくことが社会で活動するためには欠かせないところだと思います。

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。



『④犠牲者となり得る人に対して安全な所に身を隠すよう伝える』

1976年の「タラソフ判決」で示された専門家の義務は以下の通りです。
  1. 犠牲者となり得る人に対して、その危険について警告する。
  2. 犠牲者となり得る人の家族や友人などに警告する。
  3. 警察に通告する。
  4. その他、必要と判断される方法を、どんな方法でも実行する。
こうした対応を取る必要があるとされていますが、やはり主治医への報告が第一であり、その後に上記のいずれかが判断されるという流れになります。

主治医に自傷他害の可能性を報告し、その緊急度が高いと判断されれば、主治医を通して犠牲者となり得る人に連絡することが多いでしょうし、公認心理師の方が面識があるなどとなると任される可能性もあるかもしれません。
ただし、同時に警察に通告するなどを主治医が行うなど、密に役割分担とその内容を共有しておくことが重要になりますから、主治医への連絡が第一となります。

犠牲者となり得る人にとっては急に「安全な所に身を隠すように」と言われるわけです。
やはり社会的発言力がある主治医からの連絡か、公認心理師が主治医と連携を取っているという事実がある方が、伝わるものが大きいように思います。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。



『⑤クライエントの家族に、クライエントの行動について注意するよう助言する』

1976年の「タラソフ判決」で示された専門家の義務は以下の通りです。
  1. 犠牲者となり得る人に対して、その危険について警告する。
  2. 犠牲者となり得る人の家族や友人などに警告する。
  3. 警察に通告する。
  4. その他、必要と判断される方法を、どんな方法でも実行する。
こうした対応を取る必要があるとされていますが、やはり主治医への報告が第一であり、その後に上記のいずれかが判断されるという流れになります。

公認心理師が家族と面識がある等の記載もなく、クライエントの家族に連絡することがどの程度の抑止力になるのかも不透明な状況です。
事例のクライエントの場合、家族に連絡することで大きな抑止力になると判断されるならば、その判断を主治医に伝えることが重要です。

主治医が家族に連絡することが必要と判断し、主治医との話し合いの結果として公認心理師の方が家族と面識があって適当だと判断されれば、公認心理師から…ということもあり得るのかもしれません。
その場合でも、どのような言い方をするか等について打ち合わせておくことが重要です。

これは事例対応としても大切ですが、公認心理師が自分の身を守るという危機管理上の意味もあると言えますね。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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