公認心理師 2018-95(修正・最終版)

2018年12月25日火曜日

この問題については以前解説を行いましたが、以下の通り修正します。
以前の記事をご確認のうえで、以下を読み進めて頂けると幸いです。

本問は選択肢④を正答と捉えておりましたが、公式回答では選択肢③が正答となるとのことでした。

ここでは、選択肢③を「誤り」とした判断の修正と、選択肢④を「正しい」とした判断の修正を行っていきます。
また以前の解説では、選択肢⑤の説明も不十分でしたので、こちらも新たに解説を書かせてもらいます。



選択肢③を誤りとした判断の修正

この点につきましては、以前の解説の中ですでに「選択肢③を誤りとするのは難しいというのが個人的な意見です」としております。

その根拠を採録しますと以下の通りです。
コーエンは、積極的なコーピング方略(ラザルスの言う「問題焦点型コーピング」を指します)の短所について指摘しました。
積極的な対処努力によって状況の改善に成功し、対処努力に伴う以下の3種類のコストが個人の健康や行動に有害な影響を及ぼすと主張しています。
  1. 蓄積疲労:
    ストレスフルな状況に長時間・積極的に対処することで、生理的・心理的エネルギーが低下した状態を指す
  2. コーピングによる副次的影響:
    積極的なコーピング努力自体が覚醒レベルを上昇させているので、それ以外の健康維持活動に振り分ける努力を低下させる。
  3. 方略使用の過度の一般化:
    ある状況で成功したコーピング方略を、その後のいかなる状況でも使用することを指しており、うまくいかなくなることでストレスを高めます。
上記の「1.蓄積疲労」については、明らかに選択肢③の内容と合致しております。

このように、明らかに選択肢③が正しい内容であることを明示した上で、「引っかかるとするなら、以下の点」として挙げています。
  • 選択肢③の内容は「コーピング」という大きな括りで記述しているが、コーピングのコストについては「問題焦点型コーピング」について記述したものである。
  • コーピングのコストには3種類示されているが、選択肢③では「蓄積疲労」のみを「コーピングのコスト」であるかのように表記している。
この点を踏まえても「上記の内容も「誤り」と言うには難しいように感じます」と書いていますので、やはり選択肢③を誤りにするのにはかなり困難さを感じたことを覚えています。

上記の内容から見て、選択肢③は正しいと判断できると捉えることができますが、解説上重要なのが「誤りとなっている選択肢④を、どうして正しいと判断してしまったのか?」です
解説内にもあるように、選択肢③を誤りとしたのは「選択肢④が明らかに正しい内容である」という判断のためでした。
以下で、この点の検証を行っていきます。



選択肢④を正しいとした判断の修正

選択肢④を正しいと判断したのは、ラザルス&フォルクマンの以下の記述からです。
  • 二次的アプレイザルから一次的アプレイザルへのフィードバックが想定され、2つのアプレイザルは継時的に反復すると考えられ、この継時的相互作用が、アプレイザルのプロセスとなって、経験されるストレスの程度を調整する(ストレス測定法、p181-182)。
  • イベントに対する個人のコーピング能力は、個人に自覚されて二次的アプレイザルに影響を与えるし、また、実際に取られたコーピング行動とその効果も、その後のアプレイザルのプロセスに多大な影響を及ぼす(ストレス測定法、p182)。
これらの内容は、選択肢④を正答とするに十分であると、解説を書いていた当時考えました。
ですが、こちらは誤りと明示されましたので、もう少し突っ込んで調べてみました。

参考にしたのは以下の書籍です。

一般に、二次的評価とは以下のような内容を指します。
「あるコーピング方略を採用した場合、どんな結果が起こるのか、その結果を導くための行動をうまく遂行できるのか、という見通しを立てた上で、いかなるコーピング方略の選択が可能かを評定する段階」
すなわち、二次的評定は、刺激状況がストレスフルと評定された状況に対処するのに何ができるのかを検討する過程と言えます。

一方で、この認知的評定をより理解するための留意点が指摘されております。

第1の留意点は、認知的評定の「一次的」「二次的」という表現は、時間的な前後関係や重要度を意味しているものではない、ということです。
すなわち、一次評定が二次評定よりも時間的に先行したり、二次評定が一次評定に従属しているのではなく、これら2つは単にその内容が異なっているにすぎず、両者は相互に影響を及ぼしあっていることを意味しています

第2の留意点は、一次的評定・二次的評定は、必ずしも意識的である必要がないという事です。
ラザルスは認知的評定の過程に、意識的になされるものと、無意識になされる直観的、自動的なものがあると述べています。

私たちはこれまでに情動を喚起するようなさまざまな状況を繰り返し体験しています。
これらの体験は、各々の詳細は異なっていても、背景となる基本的な意味や自分にとっての意味は類似していることが多いです。
そのため刺激状況を評定する際、似たような状況を以前に体験していれば、認知的評定における全てのプロセスを経る必要はないとされます。
すなわち、類似した状況を過去に体験していれば、改めてその状況を慎重に評定することなく、その後のコーピングのプロセスに移行するということです。

この点は、選択肢④の内容が誤りであることを示しています。
すなわち、過去に似た経験をしていれば「評定」というプロセスを経ずに「コーピング」に移行するということなります。
よって、選択肢④は誤りと判断できます。



選択肢⑤の解説の加筆・修正

元々の解説には読み間違えがあったので、解説全体を修正します。
(以前の解説ページでコメント頂いた方、ありがとうございます)

選択肢の内容は「一時的に生じたネガティブな感情を改善するコーピング」となっていました。
これを「問題焦点型コーピング」で対応するものと考え違いをしておりました。

あくまでも「ネガティブな感情を改善する」というものなので、情動焦点型コーピングを行うと見るのが適切ですね。
「情動焦点型コーピング」の主な目的は、情動的な苦痛を減らすことであり、ストレスを回避したり距離をとったり希望的観測を行うことも含みます

選択肢にある「慢性的なストレス反応の改善」については、例えば、慢性疾患に罹っている状況や、ずっと変わらない環境によるストレス反応の存在が挙げられると思います。
こうした状況において、認知的再評価を行い、実際にその事態を変えるのではなく、その事態の意味を変えることによって、付随する脅威を低減するというのは情動的コーピングの代表的方法ですね

上記より、「一時的に生じたネガティブな感情を改善するコーピング」が慢性的なストレス反応の改善に効果がないと言い切ることはできないと言えます。
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。

逆に、元々の解説に示していたように「問題解決型コーピング」を選択肢の「慢性的なストレス反応」に応用しようとすると健康を害するという知見は多く見受けられます
この選択肢は、こうした知見とごっちゃにさせて混乱させようとする狙いもあったのかなと思われます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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